株式会社ライドオンエクスプレスホールディングスの“ココだけ”トップインタビュー

怒らない経営”の実践でNo.1企業に成長できた。

江見 朗氏

社長略歴

江見 朗氏
1961年、岐阜県岐阜市生まれ。県立岐阜高校を卒業後、ロサンゼルスへ渡米し、7年半寿司職人を経験。帰国後、92年に岐阜市内でサンドイッチ店を開業。98年に宅配寿司専門店『寿司衛門』(現『銀のさら』)を創業後、宅配寿司業界NO.1企業へと成長させる。2001年レストラン・エクスプレス(現・ライドオンエクスプレスホールディングス)設立、代表取締役社長就任。2013年、東証マザーズ上場。2015年、東証一部に市場変更。『燃えよドラゴン』に夢中になり、空手を愛好する。

■株式会社ライドオンエクスプレスホールディングス
■本社/東京都港区三田3-5-27住友不動産三田ツインビル西館17階
■設立/2001年7月
■従業員数/3,453名(うち正社員350名)(2019年3月31日時点)
■事業内容/フードデリバリーチェーン『銀のさら』『釜寅』『すし上等!』『fineDine』の経営管理業務

宅配寿司『銀のさら』を全国に350店舗以上展開するほか、複合化ブランドとして宅配御膳『釜寅』、宅配寿司『すし上等!』、宅配代行サービス『fineDine』を運営する株式会社ライドオンエクスプレスグループ。躍進の要因は“怒らない経営”をコアとした理念経営。従業員の自発性を高め、生産性を高める合理的な組織運営に成功している。そして、2019年にはイートイン店舗の運営にも乗り出した。そんな同社を創業した代表取締役社長の江見 朗氏に、マネジメント論や人材観、成長戦略について伺った。

インタビュアー

インタビュアー

ディップ株式会社 執行役員 佐賀野 淳
同社 採用コンサルタント 丸山 実緒

1の努力で100や1000を返す方法を考える

―まず、宅配寿司事業を始めた経緯からお教えください。

江見:30歳の頃、行きつけの岐阜市内のショットバーで、同じ常連客だった現在の副社長の松島と意気投合し、岐阜市内に『サブマリン』というサンドイッチ店を開業しました。当時アメリカで『サブウェイ』が伸び始めていたからです。16店舗まで広げましたが、頭打ちになりました。そこで、台車に商品を乗せて売りに出ると、よく売れたのです。売り方を変えればチャンスは広がるとわかりました。しかし、サンドイッチは昼間だけで客単価も低く限界を感じました。そこで、自分が得意で、かつ市場が大きい寿司に着目したのです。当時も宅配寿司という業態はありましたが、伸びていませんでした。おそらく美味しくなくてシステムが良くないからで、そこを良くすれば伸びるはずと踏み、6年目に宅配寿司に業態転換しました。

―その『銀のさら』を躍進させたのは“怒らない経営”と聞いています。その内容や経緯について、伺わせてください。

江見:当初は何もわからず必死にやりましたが、失敗ばかりで、私個人で数億円の借金を抱えました。うまくいかない流れの中で、スタッフを怒鳴りつけるといったこともよくやったわけです。ある時、松島から「このままじゃ、借金返すのに10万年ぐらいかかりそう」と言われました。私自身も、ちょっとやそっとの頑張りや、人脈や、テクニックでは挽回できないと自覚しました。1の努力で2を返すぐらいでは追いつかない、1の努力で100や1000を返すぐらいの、真に効果的なやり方を考えなければならないと思ったのです。

インタビュー風景

怒らないでうまくいけば一石二鳥

―そこで真剣に考えられたわけですね。

江見:一般的に、従業員にしっかり仕事をさせるためには、甘えを許さず厳しく当たるべきといった考え方があると思います。私もそう思ってやったわけですが、どうも人間関係がしっくりいかなくなったのです。厳しく注意すると「はい、わかりました」と言うものの、心の中では素直にそう思っていないという感じ。自分自身も誰かに注意されて「自分だって失敗してるクセに」と心の中で反発した経験があるから、何となくわかるんです。そして、空気がどことなく淀んでいくわけですね。

―一般的に、そういうシーンは多いでしょうね。

江見:そんなある日、自分はガミガミ言いたくないし、言わないほうがいいかもしれないと気づいたんですね。もしそれでうまくいくなら一石二鳥だと。けれども、もう一人の自分が「お前は怒るのが嫌だからそう言い訳しているだけだ」と言っているのです。それに対して、もう一人の自分が「いやいや、誰だって怒りたくはないし、人間関係を悪くしたいとは思わないだろう」と言い返している。つまり、葛藤が生じたのです。

―そこでまた深く考えられた。

江見:考えてみれば、人間は1日の中で、笑っているか、怒っているか、普通にしているかしかありません。その怒るという感情は本当に必要なのか?もし怒ることが合理的ならば仕方ないが、そうでなければ排除すべきではないのか?と思ったのです。

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まずは相手を全面的に受け容れる

―なるほど。そこで江見社長としては、どういう対応をされているのでしょうか?

江見:当社の企業理念は「ビジネスを通じ、相手の幸せが自らの喜びと感ずる境地を目指す」そして経営指針は、「感謝の気持ちに基づき衆知を集め、すべてを容認し、自他共に
正しく導く」というものです。そこで、こういうふうに話します。「遅刻しても、君が大好きだよ。自分だってミスするし。だから一緒にどうすればいいか考えよう。まず、君が遅刻ばかりするのは何か原因があってのことだろう。それは何かな?」という感じです。まずは相手を全面的に受け容れる。そうして人間関係を良好にしてから、対策を考えるのです。すると相手も「コンディションが悪いのを配慮してくれているな」と感じるものです。

―確かにそうですね。

江見:こういう話をすると、よく短絡的に「ぬるま湯にならないか?」「言うことを聞いてもらえなくなくなるのではないか?」と聞く人がいます。当社は真逆のつもりです。どこよりも厳しく、生産性を高めて業績を上げるために、論理的かつ合理的に“怒らない経営”をしています。「いや違う、怒らないと反省しない」「きつく言わないとナメられる」と主張する人と議論しても仕方ありません。重要なのは、結果を出すことです。当社は宅配寿司業界では唯一の東証一部上場企業です。どこよりも結果を出していると自負しています。

―“怒らない経営”の妥当性を何よりも雄弁に物語っていますね。

江見:企業理念についてよく社員に話していることがあります。「うちは学校でもお寺でもない、ビジネスをしている会社だから数字という結果が大事だ。理念は言葉として心地いいかもしれないが、お題目ではない。結果を出すためのフィルターだ。だから“怒らない経営”に徹している。そこをよく理解してほしい」と。また、7年前に上場する直前、IRの一環としてマスメディアへの露出を増やしたり、本を出版したことも相まって、社内に理念が浸透したと思います。

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現場に浸透する“怒らない経営”

―現場への浸透ぶりについてお教えください。

江見:あるアルバイトのデリバリースタッフは、土地勘がないエリアで当初はモタモタしていたのですが、先輩から「あそこならこういうルートで行くと早いよ」と教えてもらったり、店長から「慌てないで、安全運転が第一だから」と言われて嬉しかったと言っていました。早くお届けするのも大事ではありますが、それ以上に接客が大事なのです。不愛想な対応をしたら二度と注文してもらえませんから。きちんとした接客ができるような指導やカルチャーづくりとして、怒ったりすれば裏目に出ますよね。“怒らない経営”は現場にしっかり浸透していると自負しています。

―助け合うチームワークも重要ですね。

江見:そのとおりです。『銀のさら』では、毎年GinnoSaraAward(銀のさらアワード)という全国の店舗からアルバイト、店長が集結し成果発表・表彰を行うイベントがあります。チェーンを代表する優秀な店舗の活動発表や取り組みを聞いて、自分の店舗にも取り入れられる方法やアイデアを学ぶことを目的にしています。さらに、本部主催のキャンペーンで成果を残した店舗やアルバイトスタッフを壇上で表彰します。本人のモチベーションアップにつながるだけでなく、表彰される姿を見て「来年こそは!」と目標を持つアルバイトスタッフもたくさんいます。ここでも、怒るのではなく褒めることで伸ばそうというカルチャーをつくっているのです。

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イートイン店舗を出店、宅配とのシナジーを狙う

―やはり、人材がすべてですね。次に、今後の成長戦略について伺います。まずは、2019年7月、岐阜市内にイートイン店舗を出店されました。その狙いとはどういったことでしょうか?

江見:まず、数年前に路地裏にある既存の『銀のさら』の何店舗かの見栄えをちょっと良くして、オーダーテイクアウトを始めてみました。すると、認知度が高まったおかげでデリバリーが増えるというシナジーが認められたのです。そこで、次にイートインとのシナジーも測ってみようと、岐阜市内に400坪という大きな店を出しました。
岐阜市内に出したのは、それでうまくいかせられれば簡単に全国に展開できると思ったからです。実際にオープンしてみると、高齢の方を中心にお客様が入りました。さらに、デリバリー店よりも多くのお客様と接することができて楽しい、こっち(イートイン)でずっとやりたいというスタッフもいました。就業形態の選択肢が広がったメリットがあります。総合的に感触が良かったので、イートインだけの2号店を出す予定です。

―もう一つの柱ができるわけですね。

若いうちはいろいろ経験してみることが大事

―最後に、アルバイトを探している読者にメッセージをお願いいたします。

江見:私には大学生と中学生の息子がいるのですが、子供にも伝えたいことを言わせてもらいます。まず、人生は一度きりだから、人と同じことをやっても面白くないだろうということ。私がまさにそうで、高校時代、周囲は全員、東大や京大などに進学する中、私は唯一進学せずに渡米して寿司職人になりました。そこから紆余曲折した結果、今日があると思っています。だからこそ、いろいろ挑戦してみてください。若いうちはいろいろ経験してみることが大事だと思います。その点、当社は楽しく働きながら接客力やコミュニケーション力を身につけ、チームワークの大切さを学べる風土があると自信をもって言えます。
ぜひ多くの皆さんに銀のさらでアルバイト経験をしてみて頂きたいです!

―どうもありがとうございました。

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