いよいよ大学卒業が近づいてきて、就職活動をしたんですけど、まったく上手くいかなかったんです。それで慌てて漫画を描き始めました。大学生になってからはさっぱり遠ざかってしまったけど、高校生の頃にはよく漫画を描いていたんです。でも、「就職がうまくいかないから漫画家になる」っていうこの選択も普通じゃないですよね。私は自分の事を普通の常識人だと思ってますけど、やっぱり少しだけ、調子ハズレな所があるっていうか(笑)。
それで、漫画を書いて投稿したわけですけど、大学を卒業した直後くらいに『ヤングマガジン』(講談社)という雑誌で、一番いい「ギャグ大賞」を頂いて、デビューもすぐに決まりました。「これで私はマンガ家として安泰だろう」と思ったんですよ。
でも、マンガって連載になって単行本が発売されないと、全然お金が入らないんですよね。特にギャグマンガというものは、一回に掲載されるページが少ないから、たとえ連載を持っていても食べていけるかどうか分からない。月刊だったら、まず食べられないですね。でも、当時の私はそういう事にしばらく気が付かなくて、半年くらいたってようやく漫画だけじゃ食べられない事に気が付いて、それで塾講師のアルバイトを始めたんです。
週3回、現代文とか古文を中学生に教えていました。昼間はマンガを描いたり図書館に行ったりして過ごしてましたね。お金もなかったし、大学時代の友人と遊ぶといっても、自分のコンプレックスを刺激されちゃうだけなんで、会いたいと思いませんでしたね。
かといって、塾に働きに行っても中学生相手じゃツマんないんですよね(笑)。まったく刺激にならない。生まれて初めて「生活のために働く」って感じでした。
私は、人にえらそうに説教したり、しゃべったりするのがけっこう好きな方なんですけど、塾の先生は面白いと思った事が一度もありません。最初は好きそうに思えたんですけどね。やってみて分かったけど、自分に興味のないことを教えたり話したりするのがイヤなんですね。自分の興味ある事、例えば人生論であったり恋愛観であったり、そういう話をするのは好きだし、向いてると思うんですけど、「国語を教えてくれ」っていわれるとダメなんですよねえ。そんなツマンナイこと教えたくないっていう(笑)。だから塾講師は本当に私に向いてませんでした。大学卒業してから2、3年はやっているんですけどね。
その後、マンガだけで食べていけるようになったのは「だめんず・うぉ~か~」が始まったくらいでした。 |