企業経営において、やむを得ず従業員との労働契約を終了させる必要が生じることがあります。そう、いわゆる「解雇」です。当然、労働者の生活に大きな影響を与える重大な決定であるため、法律によって厳しく規制されています。本記事では解雇通告に必要なこととして、基本概念、フロー、注意点、そして例外事項について言及。いずれも人材管理に不可欠な知識です。確実におさえておきましょう。

解雇通告に必要なことは?流れ・注意点について解説

  • 2024.10.23
  • 2024.10.23

企業経営において、やむを得ず従業員との労働契約を終了させる必要が生じることがあります。そう、いわゆる「解雇」です。当然、労働者の生活に大きな影響を与える重大な決定であるため、法律によって厳しく規制されています。本記事では解雇通告に必要なこととして、基本概念、フロー、注意点、そして例外事項について言及。いずれも人材管理に不可欠な知識です。確実におさえておきましょう。

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解雇通告とは?

便箋に入った解雇通知

解雇通告とは、雇用主が従業員との雇用関係を終了させる意思を正式に伝えるための文書や通知です。そこには、理由、発効日、退職金や未払い給与などの金銭に関する取り決め、会社の所有物の返却方法、そして退職後の制限事項などが含まれます。

解雇通告を行う際は、労働者の権利を保護し、解雇プロセスの透明性を確保するためにも労働基準法などの関連法規を遵守することが、極めて重要です。たとえば、30日前までに伝えるか、もしくは30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。また、労働者からの請求があった場合、解雇理由を明記した書面を提供しなければなりません。

まずは、こうした法的要件を不備なく満たすことが求められます。

解雇通告の流れ

解雇通知書

解雇通告は、主に次の流れで進めていきます。

以下、各手順について、それぞれ簡単に説明します。

評価の伝達・警告

解雇は、原則、すぐに決断を下すものではありません。検討している従業員に対しては、そうならざるを得ない理由に該当する評価を適切に伝達、もしくは警告から始めましょう。

こうした状況に至るのは、大方、従業員のパフォーマンスや素行に手を焼いてのことだと思われます。だからこそ、具体的なフィードバックを提供し、改善の機会を与えることが大切です。このプロセスを挟むことは、その後の解雇決定が合理的だと示す根拠にもなり得ます。

解雇の意思決定

前述したように猶予を与えてもなお状況が変わらなければ、おそらく解雇する意思を固めることになるでしょう。が、そうはいってもやはり、いきなり解雇を通告するわけにもいきません。したがって、改善の効果が一向に見られなくとも、まずは「退職勧告」を挟むなど、寄り添う姿勢を示すことが大事かと考えます(その方が、いく分、柔らかな印象になると思います)。いくらコノヤローと思っていても、解雇はその人のその後の人生に大きなマイナスになるはずです。ゆえに、本人自ら身を引くチャンス(依願退職など)は与えるべきでしょう。逆上を避ける意味でも、たとえばもっと向いている仕事があるのではないかとなだめるなど、形式的であれ親身の対応が大切です。

そのうえで、解雇を決めるのであれば、さらに正当性と法的な妥当性を慎重に検討する必要があります。労働法規や社内規定に基づき解雇の理由は明確に定義できるようにしましょう。もちろん、解雇のリスクや他の従業員への影響も考慮したいポイントです。繰り返しお伝えしますが、解雇以外の解決策が出てきそうならそれに越したことはありません。最後の最後まで模索するのも一つのやり方だと考えます。

解雇通告内容の準備

解雇を決定した後は、必要な情報を整理し、準備に取り掛かりましょう。たとえば、「解雇日」「未払い給与の支払い方法」「会社の所有物の返却手続き」「退職後の競業避止義務などの制限事項」も、通告に付随する内容に含まれます。どこまで詳細にまとめればよいのか曖昧であれば、法務部門や外部の専門家に相談できると安心でしょう。

解雇通告の実施

準備が整ったなら、いよいよ解雇通告を行います。できる限り対面が望ましいでしょう。解雇の理由やその背景を誠実かつ丁寧に説明することはもちろん、スタッフへの配慮も欠かせません。

なお、通告の内容は記録に残しましょう。後日、確認可能な状態にしておくことはトラブル防止のためにも必要です。それゆえ書面での通知も行えるとなおよいでしょう。

退職の手続き

解雇通告後は、退職に向けた手続きを進めます。健康保険や年金の手続き、ハローワークへの届出といった事務的な作業はもちろん、貸与物の回収や機密情報の管理、離職票の発行等々も、スピーディーかつ適切に行いましょう。

解雇通告時の注意点

伝え方が相手に対して無配慮な様子

解雇通告を行う際には、法的要件を満たすだけでなく、人道的配慮や将来的なリスク管理の観点からも細心の注意を払う必要があります。それらは、企業の評判にも関わる問題です。以下、詳述します。

法的要件を順守する

解雇通告を行う際には、労働法や社内規定に基づいた法的要件を厳守することが不可欠です。これを怠ると、不当解雇として訴訟リスクが高まる可能性があります。

要点は、下表のとおりです。

要点概要
解雇理由の正当性解雇理由は、客観的かつ合理的であることが求められる。
解雇予告期間の遵守解雇通告は、原則30日前までに行うか、30日分(30日に不足する残日数分)の手当を支払う必要がある。
解雇禁止期間の確認育児休業中や病気療養中などは、解雇禁止期間として法律で定められている。
書面による理由の提示  従業員からの請求があれば、解雇理由を文書で明確に示す義務がある。
就業規則との整合性解雇の手続きは、就業規則や社内規定と一致していることが求められる。

伝え方に留意する

解雇通告は、内容だけでなく、その伝え方にも十分な配慮が必要です。まず、通告は他の従業員から離れたプライベートな空間で行いましょう。プライバシーの確保は絶対です。そのうえで、組織のスタンスとしてやむを得ない事情を明確に、そしてやわらかい語り口を心がけましょう。

組織内部での対応方針を定めておく

解雇通告は個別の事案に留まらず、組織全体に影響を与える可能性があります。そのため、組織内部での対応方針を事前に定めておくことが重要です。

これには、解雇通告を行う際の手順や責任者の明確化、関係部署との連携方法などが含まれます。さらに、解雇後のスタッフに対するサポートについても、体制構築は必須です。そうやって組織全体で一貫した方針を持てれば、解雇通告が公正かつ円滑に行われ、スタッフの不満や混乱を最小限に抑えることができるでしょう。

解雇通告の例外

漆喰の壁に書かれた対象/対象外の文字

すでにお伝えしているように、解雇通告は30日前までに行うか、そこに間に合わなければ30日に不足する残日数分の手当を支払う必要があります。他方、特定の状況下では例外が認められているのも事実です。

具体的には、原則、以下の期間中は解雇できません。

これは、「労働基準法第十九条(解雇制限)」で定められています。

なお、業務上の傷病は、労働災害や職業病を指します。また、産前産後の休業期間は、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と産後8週間です。

それでも解雇できる場合

上述の例外に対してもまた、適用しなくてよい(解雇通告できる)ケースがあります。それは、「天災事変その他やむを得ない事由により、事業の継続が不可能となった場合」と「労働者の責に帰すべき重大な事由があった場合」です。後者に関しては、厳密にいうと所轄の労働基準監督署長による除外認定がなければなりません。(認定に)該当する典型例を挙げると次のとおりです。

上記はいわずもがな問題行為ですが、即時解雇に踏み切るのではなく、まずは認定を受けるようにしましょう。

解雇通告のポイントまとめ

解雇通知書が入った封筒

解雇は労働者の生活に大きな影響を与える決定です。ゆえに常に最後の手段として慎重に検討されるべきものと考えます。可能な限り、配置転換や教育訓練など、他の選択肢を探れると望ましいでしょう。

それでも致し方なく解雇を行う際には、法的要件を満たすことはもちろん、対象スタッフの感情を刺激せずに対応できるよう努めてください。解雇通告はトラブルの火種になりがちです。相手をなだめるイメージで丁寧に説明することが求められます。それは、残された従業員に不信感を与えないためにも必要です。ひいては、自社のパブリックイメージを守ることにもつながります。

とにもかくにも、労働者が蔑ろにされていると感じさせないよう、配慮を怠らずに進めましょう。解雇通告一つをとっても、人材を大切にする意識が問われます。

なお、以下の関連記事でも述べているように、解雇通告には、整理解雇4要素(必然性、回避努力、選定基準、手続きの妥当性)が通説です。然るべき場面が訪れたなら、ぜひ照らし合わせてみてください。

▶関連記事:アルバイトの解雇について~妥当な理由、方法、流れを解説


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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所の代表を務める荒武慎一氏

アラタケ社会保険労務士事務所 

代表 荒武 慎一

同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。

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