労働者派遣法で定められている派遣社員にやらせてはいけない業務

労働者派遣法では、冒頭でお伝えしたとおり派遣社員にやらせてはいけない業務が定められています。ざっと挙げましょう。
- 湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関係業務
- 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務
- 公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務
- 建築士事務所の管理建築士の業務
以下、それぞれの内容を説明します。
参考資料①:労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・
参考資料②:派遣法Q&A
▶関連記事:労働者派遣法とは?改正の歴史を通じて内容をわかりやすく解説
港湾運送業務
港湾運送業務は文字どおり港湾において貨物の受け渡しなどを行う仕事です。
さらに細かく紐解くと主に「船内荷役」「はしけ運送」「沿岸荷役」「いかだ運送」「検数業務」「鑑定業務」「検量業務」などが含まれます。その内容は主に次のとおりです。
船内荷役…船舶において貨物の積み込み、取り卸しを行います。
はしけ運送…「はしけ」と呼ばれる小型の船舶を使用し、港内や指定された区間で貨物を輸送します。
沿岸荷役…船舶やはしけで運ばれた貨物を、上屋や荷捌き場へ搬入・搬出します(荷捌きを行い保管します)。
いかだ運送…木材を筏(いかだ)に組んで水上で運搬します。
検数業務…積み込みや陸揚げを行った貨物の個数を計算し、受け渡しの証明を行います。
鑑定業務…貨物の積み付けに関する証明や調査、鑑定を行います。
検量業務…貨物の容積や重量を計算し、その証明を行います。
これらは労働者派遣法により派遣労働の適用除外業務のため、派遣労働者に従事させることはできません。
建設業務
労働者派遣法では建設業務も派遣が禁止されています。具体的には、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体、またはこれらの準備作業に直接従事する業務です。一方で建設現場であっても、現場事務所での事務員、CADオペレーター、施工管理業務(工程管理・品質管理・安全管理など)など直接、建設作業に従事しない業務については労働者派遣事業の対象に含まれます。
警備業務
事務所、興行場、駐車場、遊園地といった施設で事故の発生を警戒し防止する警備業務もまた、派遣社員にやらせてはいけません。これは、警備員が警備会社の指揮命令のもとで業務を行うよう求められるため(警備の依頼主に指揮命令権はないため)です。つまり、派遣の形態からは外れます。なお、具体的には、施設内の巡回や監視、出入り口での手荷物検査、混雑場所での人や車両の誘導、運搬中の貴重品の監視……等々が含まれます。
医療関係業務
医療関係業務(病院や診療所、助産所、介護医療院、介護老人保健施設、医療を受ける者の居宅などにおける業務)も派遣は禁止です。ただし例外もあります。以下、当てはまる職業と例外についてそれぞれ取り上げます。
派遣禁止が該当する医療関係業務
派遣社員にやらせてはいけない医療関係の職業(業務)は次のとおりです。
- 医師(医業)
- 歯科医師(歯科医業)
- 薬剤師(調剤の業務)
- 看護師・准看護師(療養上の世話、診療の補助)
- 保健師(保健指導)
- 助産師(助産、保健指導)
- 栄養士(傷病者の療養のための栄養指導)
- 診療放射線技師(放射線を人体に照射する業務)
- 歯科衛生士(歯科衛生士法第2条第1項に規定する業務) 歯科技工士(歯科技工の業務)
いずれも患者の生命や健康に直接関わるため、派遣労働者の従事が禁止されています。
派遣が認められる条件
方や、医療関係業務であってもいくつか例外的に派遣が認められています。まずは、「紹介予定派遣」です。派遣期間終了後に派遣先での直接雇用を前提としているこの形態であれば、派遣事業として契約が結べます。
▶関連記事:紹介予定派遣社員を雇うには?辞める理由や正社員登用のポイントも解説
そのほか「産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した労働者の代替業務」「離島や過疎地域など、医療提供体制が脆弱な地域での医師業務」「都道府県の医療対策協議会が必要と認めた場所での医師業務」も、医療提供体制の維持や人材確保の観点から例外措置が設けられています。
弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務
弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士といった専門職は、依頼者から直接業務を委託され、独立した立場で業務を遂行することが求められます。そのため、他者の指揮命令の下で働く派遣労働の形態には当てはまりません。
公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務
同じく士業では公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士も原則、派遣労働者として従事させることは禁止です。ただし、それぞれ以下の条件を満たす場合は、例外が適用されることがあります。
公認会計士法第2条第1項に規定される業務(監査証明業務など)を行わないこと。
派遣先の税理士や税理士法人の補助業務であること。
相談業務(コンサルティング)に従事すること。
派遣先が他の社会保険労務士法人や開業している社会保険労務士であること。
建築士事務所の管理建築士の業務
建築士事務所の管理建築士は、建築士法に基づき、各事務所に専任で配置されます。この要件があるため、他者の指揮命令の下で働く派遣労働の対象には該当しません。つまり、派遣社員を従事させてはいけないわけです。
適用除外業務以外で派遣社員にやらせてはいけないこと

適用除外業務以外にも、派遣社員を雇うにあたって禁止されていることはあります。主に次のとおりです。
- 契約書に記載がない業務
- 二重派遣
- 日雇い派遣
- 事前面接や履歴書の提出
以下、補足します。これらについてもしっかり理解しておくようにしましょう。
契約書に記載がない業務
派遣元と派遣先の間で締結される労働者派遣契約書には、派遣社員が従事する業務内容を具体的に記載することが求められています。そのため、契約書に明記されていない業務を派遣社員に依頼すること(たとえば、経理業務で契約している派遣社員に対して接客業務を依頼するなど)は契約違反です。また、契約書に記載のない部署への異動や、他部署の業務を一時的に手伝わせることも認められていません。さらに、契約書に記載のない出張や残業、接待を指示することも禁止されています。
二重派遣
二重派遣とは、派遣元から派遣された労働者を受け入れた派遣先が、その労働者をさらに別の企業に派遣し、別の企業の指揮命令の下で働かせる行為を指します。これは、職業安定法第44条で禁止されている労働者供給事業に該当し、違法です。
▶関連記事:二重派遣とは何かわかりやすく解説!禁止理由や罰則、防止策にも言及
日雇い派遣
日雇い派遣は「派遣期間が31日未満」「週の労働時間が20時間未満」と定義されているように大まかにいうと短期で雇用する派遣雇用を指します。これは、2012年に施行された労働者派遣法の改正により原則、禁止されています。一方で例外もあり、専ソフトウェア開発やセールスエンジニアの営業、金融商品の営業などがそれに当たります。
▶関連記事:日雇い派遣とは?メリット・デメリットや利用する際の注意点も解説
事前面接や履歴書の提出
派遣社員を雇用する際に、派遣先が事前面接を行ったり、履歴書の提出を求めたりすることは、禁止されています。これは、派遣先が派遣労働者を選別・特定することを防ぐためのものです。
派遣社員にやらせてはいけない業務をやらせた場合の罰則

派遣禁止業務で指定されている業務を派遣社員に行わせた場合、派遣元は、労働者派遣法第59条に基づき、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。また、派遣先も是正指導や企業名の公表などの行政処分を受けることが考えられます。 そのほか、たとえば二重派遣再派遣を行った企業は職業安定法第64条に基づき、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられるかもしれません。二重派遣であることを知りながらその労働者を受け入れた企業も同様です。
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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所
代表 荒武 慎一
同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。