有期雇用とは?
有期雇用とは、企業と労働者があらかじめ期間を定めて締結する労働契約を指します。契約期間は、たとえば3ヶ月、6ヶ月、1年などさまざまです。満了時には原則として契約も終了します。更新がある場合でも、その都度、双方の合意が必要です。
代表的な雇用形態は、契約社員、派遣社員、嘱託社員、臨時職員などが挙げられます。しかしながら、これらの肩書き=有期雇用とは限りません。実際に期間の定めがあるかどうかは、契約内容でも変わってきます。
なお、有期があれば無期も存在するわけですが、後者、すなわち無期雇用は文字どおり、契約期間に定めはありません。定年制度を設けている場合はその年齢に達するまで雇用が継続されるのが一般的です。
有期雇用契約を結ぶにあたって注意したいルール
有期雇用契約を締結する際には、労働者の保護を目的とした法の規定に基づく必要があります。それは主に労働基準法、労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法などです。当然ながら、そのルールを企業は遵守しなければなりません。以下、具体的に紹介します。
募集の際は有期契約社員を明示する
求人募集を行う際には、有期雇用であることを明確に示さなければなりません。これは、職業安定法第5条の3に基づく規定であり、求職者が自身の雇用形態を正確に理解し、適切な判断を下すための重要な情報です。したがって、掲載する求人情報には、無期雇用と誤認されないよう、有期であることをはっきりと表記しましょう。
締結時は労働条件を明示する
労働契約を締結する際には、労働条件を明確に書面で明示することが労働基準法第15条により義務付けられています。記憶に新しいところでは2024年の法改正も要注意です。以下、追加された明示事項を列挙します。
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
なお、これらが必要になった背景も併せて知っておくとよいでしょう。たとえば、更新上限の有無とその内容の明示は、契約更新時の条件設定に対して労働者が同意を余儀なくされることがないよう牽制する意味が含まれています。また、無期転換申込機会の明示は、無期労働契約への転換に対する認知度の低さゆえに追加されたといっても過言ではありません。
▶関連記事:労働条件の明示義務について、ルールの改正とあわせて解説
雇用契約期間の上限は原則3年間
労働基準法第14条により、有期労働契約の期間は原則3年が上限とされています。これは、労働者の雇用の安定を図るとともに、長期間の拘束を防ぐための規定です。ただし、高度の専門的な知識、技術または経験を有する労働者との契約や満60歳を超える高齢者との間では、5年まで引き上がります。
なお、高度の専門的な知識、技術または経験を有する労働者について、具体的な対象は下表のとおりです。
分類 | 対象者・資格 |
---|---|
学術系 | 博士の学位を有する者 |
会計・法務系 | 公認会計士、弁護士、税理士、弁理士、社会保険労務士 |
医療系 | 医師、歯科医師、獣医師、薬剤師 |
建築・技術系 | 一級建築士、技術士、不動産鑑定士 |
IT系専門職 | システムアナリスト、システムエンジニア |
契約期間途中の解雇は原則禁止
やむを得ない事由がある場合を除き、有期労働契約の期間中に企業が労働者を解雇することは、労働契約法第17条により、禁止されています。これは、契約期間中の労働者の生活の安定を図るための規定です。
なお、上述した“やむを得ない事由”は、無期雇用労働者の解雇における「客観的に合理的な理由」よりも厳格な基準が用いられます(たとえば、労働者の重大な債務不履行や経営状況の著しい悪化……等々が該当します)。
雇い止めは客観的に妥当な理由が必要
有期労働契約の更新を拒否する「雇い止め」は、労働契約法第19条により、社会通念上相当であると認められない場合は無効です。これもまた、有期雇用労働者の雇用の安定を図るために規定されています。それゆえ、企業が雇い止めを行う際には、合理的な理由を客観的に示す必要があり、当然ながら労働者に対しても十分な説明を行わなければなりません。また、雇い止めの予告についても、労働基準法第20条に基づく適切な手続きが必要です。
契約期間はできる限り長くするよう努める
契約を1回以上更新し、かつ雇用開始から1年を超えて継続している有期契約労働者との契約を更新する場合、有期労働契約の締結、更新、雇止め、等に関する基準第4号(平成15年10月22日厚労省告示第357号)により、契約期間はできる限り長期化する努力義務が課せられます。この規定もまた、労働者の雇用の安定を図る趣旨で設けられているものです。
一定の条件下では無期雇用転換の希望を受け入れなければならない
無期転換ルールにより、同一の使用者との間で有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、労働者は無期労働契約への転換申し込みができます。そして企業はこれを拒否することはできません。しかしながら、上述した2024年の法改正でも触れていますが、それを知らない方も一定数いらっしゃいます。したがって、無期転換申込権が発生する際には、必ずその旨をはっきりと伝えましょう。加えて、無期転換後の労働条件(賃金、労働時間、就業場所、業務内容など)も同様に明示が必要です。
労働条件が不合理であってはならない
パートタイム・有期雇用労働法第8条により、有期雇用労働者の労働条件は、無期雇用労働者との間で不合理な相違があってはなりません。これは、同一労働同一賃金の原則に基づく、有期雇用労働者の待遇改善を図るための規定です。
不合理な相違があるかどうかは、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して判断されます。企業は、有期雇用労働者と無期雇用労働者の待遇を比較し、まさしく不合理な相違がないことを確認しましょう。なお、労働者から説明を求められた場合には、待遇の相違の内容や理由について、説明の義務が生じます。
有期雇用に際して必要な締結以外の主な対応
有期雇用に際して、契約締結以外でも頭を悩ますことは出てくるかもしれません。とりわけ就業規則の整備や社会保険の加入は、安易に怠ると労働者との間でたちまちトラブルを招いたり、法的リスクが生じたりと、痛い目に遭いかねません。以下、それぞれ補足します。
就業規則の整備
労働者の労働条件や服務規律などを定めた就業規則は、いわずもがな、有期雇用労働者にも適用されます。なお、労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
下表は主な項目、そして具体的な内容(取り決め事項)です。トラブル回避のためにも明確に規定しましょう。
項目 | 具体的な内容 |
---|---|
契約期間に関する事項 | 契約期間の設定方法、期間の上限、更新時の期間決定基準 |
契約の更新に関する事項 | 更新の判断基準、更新手続きの流れ、更新の可否を決定する要因 |
雇い止めの基準 | 雇い止めを行う場合の具体的な判断基準、予告期間、手続き方法 |
有期雇用労働者特有の労働条件 | 賃金体系、労働時間、休暇制度、福利厚生などの特別な取り扱い |
社会保険の加入
有期雇用労働者も、一定の要件を満たせば社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が義務付けられます。2025年8月現在、要件は下表のとおりです。また、これまでもそうであったように今後も適用範囲の拡大が予定されています。
項目 | 加入要件 |
---|---|
労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 |
賃金 | 月額賃金が8.8万円以上 |
雇用期間 | 2ヶ月を超える雇用の見込みがある |
学生除外 | 学生でない |
企業規模 | 常時51人以上の従業員を雇用している |
なお、企業の従業員数が50人以下であっても、法人の役員報酬を受け取っている場合や、特定適用事業所(任意適用・グループ適用)に該当する企業では、社会保険の加入対象となることがあります。また、雇用期間が2ヶ月以内でも、契約更新が予定されているなど実質的に長期雇用とみなされる場合は、契約開始時点から加入が必要です。
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有期雇用に対する正しい理解が働きやすさにつながる!
有期雇用は、企業と労働者の双方にとって有効な雇用形態である一方、大なり小なり法的ルールや実務的な配慮が求められます。実際、誤解や曖昧な運用がトラブルを招くことも少なくありません。だからこそ、契約時の明示義務や社会保険の適用範囲、無期転換ルールといった基本を正しく理解し、適切に対応していくことが重要です。有期雇用を取り巻く制度を正しく捉えることは、労働者の安心と定着、そして企業の健全な成長を支える土台になります。今一度、自社の運用を見直し、働きやすい環境づくりに生かしていきましょう。
▶関連記事:期間の定めのある労働契約(有期労働契約)とは?無期雇用との違いや新ルール(2024年)など解説
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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所
代表 荒武 慎一
同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。