会社の備品を従業員に自腹で購入させることは違法なのか?
基本的に、労働者が使用者の指揮命令に従って事業を遂行するために要する費用に関しては、原則として、使用者が負担すべきです。ただし、会社の備品を自腹で購入させる行為は、契約書や就業規則に明記されていれば直ちに違法とはなりません。つまり、明示がない場合は賃金の実質的減額とみなされ、労働基準法違反となる可能性があります。
実際、労働基準法施行規則第5条第6項や労働基準法第89条第5項でも労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を明記する旨が言及されています。
仮に違反が発覚した場合は、労働基準監督署からの是正勧告や、従業員による未払い賃金の返還請求が考えられるでしょう。また、高額な備品の購入など悪質に映るケースはインターネット上で拡散されるかもしれません。そうなると企業イメージや採用活動に少なからず悪影響を及ぼすものと思われます。
いずれにしても、雇用契約書や就業規則に具体的な負担項目・金額・支払い方法を明記することは欠かせません。状況に応じて、労使協議も必要です。
備品の購入を給与から天引きすることは違法なのか?
備品代を給与から天引きすることは、法令または労使協定に基づかない限り違法です。これは、「賃金全額払いの原則」に該当します。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
引用元:労働基準法第24条
違反が発覚すれば、監督署から是正勧告や遡及支払い命令が出されることになるでしょう。天引きが必要な場合は、事前に労使協定を締結し、就業規則にも控除項目を明記するよう対応が必要です。
売れ残った在庫を自腹で買い取らせることは違法なのか?
売れ残った在庫を自腹で買い取らせることは、労働契約や就業規則に明確な定めがなく、かつ労働者が自由意思で同意していない場合、前述した「賃金全額払いの原則」に加え、「賠償予定の禁止」(労働基準法16条)に抵触する恐れがあります(後者については、売れ残りを買い取らせる行為が実質的にペナルティや負担の押し付けと見なされます)。その結果、行政指導や是正勧告の対象になるでしょう。実際、「ノルマ未達による自腹購入」は厚生労働省の指導事例でも不当とされています。例外的に適法となるのは、労働者が販売契約を結ぶ立場で完全に独立した事業者(委託販売等)の場合などですが、一般的な雇用契約においてはほぼ該当しません。
在庫処分は本来会社の経営判断で行うべきものであり、その負担を従業員に転嫁することは法的リスクが高い行為です。したがって、企業は販売促進や在庫削減を目的とする場合でも、任意性を確保し、強制や圧力を伴わない方法を選択する必要があります。
参照:労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点
健康診断の費用を自腹で負担させるのは違法なのか?
法定健康診断の費用を従業員に負担させることは、原則として違法です。労働安全衛生法第66条第1項では「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。」と明記されています。なお、厚生労働省のFAQでも、「労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、法により、事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に事業者が負担すべきものとされています。」としっかり書かれています。任意で受けるオプション検査や人間ドックなど例外こそありますが、基本、従業員に身銭を切らせるのはご法度です。
従業員に自腹を切らせる行為は果たして会社にとって得なのか?

上述したとおり、備品や在庫商品を従業員に買わせる、または給与から天引きするといった行為は、然るべき手続きや合意形成がなければ労働基準法や労働安全衛生法に抵触します。違法と見なされた場合は、是正勧告はもとより罰則や損害賠償請求を受ける羽目になるでしょう。
そもそも自腹負担がまかり通ったとしても、目の前のコスト削減にしかつながりません。それ以上に従業員の士気低下や離職、企業イメージの毀損を招くことの方が致命的な失態と考えます。法令遵守はもちろん、信頼を損なわないことが組織運営には必要です。会社としてどうあるべきか。そこには中長期的に賢明な判断が求められます。
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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所
代表 荒武 慎一
同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。