手続き上、従業員の結婚報告で会社が確認すべきこと
従業員から結婚の報告を受けた際は、まずは下記の情報を確認してください。
- 入籍日
- 姓の変更
- 住所の変更
- 扶養の状況
- 今後の働き方
以下、それぞれ補足します。
入籍日
入籍日は、扶養手当や配偶者手当、健康保険の被扶養者追加など、各種福利厚生や社会保険の適用開始日に当たります。年末調整における配偶者控除の可否や税務上の扶養判定にも使われるため、把握しておくことは必要です。戸籍謄本や住民票などの公的書類で確認できれば、より安心でしょう。
姓の変更
従業員の姓も聞いておきましょう。変更される場合は、健康保険証、年金記録、給与振込口座、社内名簿、メールアドレス、名刺、……等々、漏れなく登録情報を更新する必要があります。他方、旧姓をそのまま通称として使用される職場も少なくありません。従業員の希望も聞き入れたうえで、社内ルールに基づき応しましょう。
住所の変更
結婚に際しては住所が変更されるケースも多いため、併せて確認しておきましょう。住所は、連絡先はもちろん、健康保険証や通勤経路(交通費)などにも関わる情報です。放置はトラブルの火種です。管理を怠ってしまうと、従業員にとっても不利益を被る可能性があります。
扶養の状況
結婚報告を受けた際は、配偶者が扶養に入るかどうかも確認しましょう。扶養の有無は、健康保険や厚生年金、企業によっては扶養手当の支給にも直結します。また、所得税の扶養控除や配偶者控除の対象となるかどうかも確認が必要です。これらは年末調整や住民税の算定に影響し、配偶者の年間所得や就労状況によって扱いが変わります。さらに、扶養に入るタイミングや申請書類の提出期限が決まっている場合があるため、速やかに必要書類(健康保険被扶養者異動届、扶養控除等申告書など)を案内し、配偶者の収入見込みや就業予定も含めて情報を収集できるとよいでしょう。
今後の働き方
結婚報告を受けた際には、今後の働き方についても確認しておいた方がよいかもしれません。環境が変われば、勤務時間や勤務形態に対する希望、キャリアプランを見直す動きが出てくることは往々にしてあります。だからこそ、あらためてそれらをヒアリングすることは大切です。従業員が安心して働ける組織作りの一環としても、そうしたコミュニケーションが必要だと考えます。
結婚に際して必要な社会保険、雇用保険の変更手続き
従業員の結婚に際して、社会保険、雇用保険の変更が必要な場合、具体的にどのように手続きを進めればよいのでしょうか。以下、それぞれ具体的にお伝えします。
結婚に伴う社会保険(健康保険、厚生年金保険)で必要な手続き
結婚により従業員本人や配偶者の氏名・住所・扶養状況が変わるケースでは、会社として、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格や扶養認定に関する届出を行う必要があります。たとえば配偶者が扶養に入るなら、被扶養者(異動)届、戸籍謄本、住民票、収入証明等を健康保険組合または協会けんぽへ提出します。厚生年金保険についても、配偶者が国民年金第3号被保険者となる場合は、第3号被保険者資格取得届を年金事務所に提出しなければなりません。こうした手続きは、組合等の規定にもよりますが、原則として事実発生日から5日以内に完了させることが求められます。
結婚に伴う雇用保険で必要な手続き
結婚に伴い雇用保険で会社が行うのは、主に本人情報(氏名など)の更新です。なお、雇用保険の「被保険者氏名変更届」は令和2年に廃止されています。現在は、資格喪失・転勤・各種給付の届出等の機会に併せて新氏名を記載し反映させる方式です(事業主経由でハローワークに変更の届出を行います)。
結婚に際して必要な書類や手当の変更手続き
従業員の結婚に際しては、下記書類の準備や手当の変更も必要です。
- 結婚届や住所変更届の配布
- 法定三帳簿や緊急連絡先名簿の更新
- 扶養控除等(異動)申告書の修正確認
- 通勤手当や家族手当などの見直し
以下、それぞれ解説します。
結婚届や住所変更届の配布
従業員から結婚の報告を受けたなら、会社指定の結婚届や住所変更届を配布し記入してもらいましょう。電子申請システムを導入している場合は、該当者にログイン方法や操作マニュアルも案内してください。記入例も添えてあげると親切かつ記載ミス防止にも有効です。提出期限や添付書類(例:婚姻届受理証明書、住民票)の有無もはっきりわかるように伝えましょう。これらを丁寧にサポートすることで、関連する保険証再交付や給与振込口座変更などの手続きは円滑に進むはずです。
法定三帳簿や緊急連絡先名簿の更新
氏名・住所・扶養情報などの変更があれば、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(※)の3つの法定帳簿の更新も必要です。労働者名簿は労働基準法第107条、賃金台帳は労働基準法第108条、出勤簿は労働基準法第109条および「労働時間の適正な把握のために 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でその旨は明記されています。仮に長期間放置した場合は、労働基準法第120条により30万円以下の罰金を科される恐れもあるため注意してください。
また、緊急連絡先名簿についても、防災・災害時の安否確認や緊急対応に支障が出ないよう住所や連絡先、続柄などの情報が変わった場合は速やかに更新しましょう。
(※)出勤簿はいわゆるタイムカードを指します。
扶養控除等(異動)申告書の修正確認
結婚に伴い、配偶者が新たに扶養に入る場合(扶養から外れる場合も同様)、源泉徴収や年末調整に直接関わるため、「扶養控除等(異動)申告書」の修正が必要です。対象の従業員には速やかな記入・提出を促し、提出後は記載内容を確認したうえで税務処理や給与計算に反映させます。
通勤手当や家族手当などの見直し
従業員が結婚すると、扶養状況や居住地の変化等々で各種手当の支給対象に当てはまるか否かを確認する必要も出てきます。最たる例は家族手当でしょう。条件を満たす場合は、遅滞なく適用させられるよう動いてください。また、転居も伴えば、通勤ルートが変わるため、交通費も再計算しなければなりません。
従業員の結婚に対して会社側が配慮できること
従業員の結婚は人事管理の見直しと隣り合わせです。さまざまな手続きが伴うなか、それらを正しく迅速に導く必要があります。と、そうした事務的な作業も大事ですが、一方で現行制度に対してもできる限り配慮したいところです。従業員エンゲージメントを高めるべく、仮に導入していなければ結婚休暇や祝い金制度などを検討してみるのも一つでしょう。新婚ならではの相談窓口があってもよいかもしれません。そのような従業員の働きやすさを後押しするユニークな取り組みは、採用活動にも生かせます。上記を踏まえて、従業員の結婚は、あらためて組織風土や体制について向き合う機会と捉えることもできそうです。
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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所
代表 荒武 慎一
同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。