従業員の態度、振る舞い、言動に規則を設けることは、適切な人事管理に不可欠です。まさに服務規程がそれに当たります。本記事ではそもそも服務規定とは何か、意味や目的、就業規則との違いといった基礎知識に加え、定めるべき具体的な項目、作成後から周知までの流れ、違反時の対応……等々、実践理解を促す内容まで幅広く取り上げ、解説します。

服務規程とは?意味や目的、定める内容、違反処置など具体的に解説

  • 2025.08.25
  • 2025.08.25

従業員の態度、振る舞い、言動に規則を設けることは、適切な人事管理に不可欠です。まさに服務規程がそれに当たります。本記事ではそもそも服務規定とは何か、意味や目的、就業規則との違いといった基礎知識に加え、定めるべき具体的な項目、作成後から周知までの流れ、違反時の対応……等々、実践理解を促す内容まで幅広く取り上げ、解説します。

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服務規程とは?

服務規程とは、企業や団体が従業員に求める勤務態度や行動基準、職務遂行上のルールなどを定めた社内規則です。就業規則の一部として位置づけられることが多く、勤務時間中の服装や言動、守秘義務、会社設備の利用方法、職場での禁止行為などが記載されます。服務規程を明確にすることで、理想的には職場秩序の維持、トラブル防止、公正な人事管理が実現可能です。本章ではまずそうした基本的な内容を整理します。

服務規程の意味

上述した定義のとおりですが、服務規程は、企業が従業員に求める行動基準や勤務態度を体系的にまとめた規律を意味します。勤務中のふるまいや遵守すべき倫理基準などが明文化されたそれは、自社の理念やフィロソフィーを体現するための一つの指針にもなるでしょう。

服務規程の目的

服務規程を作成する目的は大きく3つ。職場秩序の維持、トラブル防止、公正な人事管理です。明確なルールがあることで、個々の勝手な判断や言動を制御し、情報漏えいやハラスメントから従業員を守り、評価体系にも合理性が生まれます。いずれも理想とはいえ、あるとないとでは少なからず組織をまとめるうえで管理のしやすさが変わってくるはずです。

就業規則との違い

就業規則と服務規程には明確な違いがあります。就業規則は、労働条件や労働契約の基本事項を網羅的に定める規程です。労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者がいる事業場では作成・届出が義務付けられています。

これに対し服務規程は、就業規則の一部として扱われ、勤務態度や遵守事項など、日常業務での具体的な行動ルールに特化した細則です。したがって、就業規則が「働き方全般」を包括的に定める枠組みであるのに対し、服務規程はその中での具体的なふるまいやマナー、禁止行為を明文化する役割を担っているといえます。

服務規程に定める主な内容

服務規程に定める内容は、多岐にわたります。ざっと挙げると次のとおりです。

以下、それぞれ具体的に説明します。

勤怠に関するルール全般

勤怠に関するルールはなるべく広範囲で記載しましょう。労働者が安心して勤務できる環境を整えるための基本です。具体的には、始業・終業時刻や休憩時間の設定、遅刻・早退・欠勤時の報告手続き、休日・休暇の取得方法、時間外労働・休日労働の取り扱い……等々が当たります。

職務専念義務

職務専念義務は、勤務時間中は職務に集中し、私的な活動や利益相反行為を行わないことを定めたものです。無断欠勤や私用外出、業務に無関係なインターネット利用の禁止などが当てはまります。

秩序維持義務

秩序維持義務とは、職場の規律や秩序を乱さないための行動指針です。服務規程においては一般的に、上司の指示命令に従う、同僚との協調を図る、職場内外での迷惑行為を慎むといった行為が盛り込まれます。

誠実労働義務

誠実労働義務は、従業員が誠実かつ真摯に業務を遂行するために必要な規定です。虚偽報告や情報隠蔽、取引先との不正な癒着などの禁止が挙げられます。いずれも、自社の信用や健全さを担保するのに不可欠な取り決めです。

ハラスメント

近年、そこかしこでハラスメントの問題が明るみになっている背景も受けてか、これを防止しようと服務規程において厳格に設ける企業が増えてきている印象です。具体的にどのような行為がそれに当たるのかの明記はもちろん、相談窓口や再発防止の措置をどう整備するのかまで求められます。

一概にハラスメントといってもさまざまです。よくあるタイプについて、定義の一例を下表にてまとめます。

ハラスメントの例概要
パワーハラスメント職務上の地位や人間関係を背景に、業務の適正範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為
セクシャルハラスメント 性的な言動により、不快感や就業環境の悪化を招く行為
マタニティハラスメント妊娠・出産・育児休業等を理由とした不利益な取扱いや嫌がらせ
カスタマーハラスメント顧客や取引先からの暴言、過剰要求、業務妨害など
モラルハラスメント無視や陰口、人格否定などで精神的苦痛を与える行為

服装や身だしなみ

服装や身だしなみについても服務規程で定めることが望ましいと考えます。清潔感がない、格好がだらしない、不衛生といった印象は、従業員個人の問題ではなく組織全体に関わるものです。社内外問わず、影響します。

服務規定において明記される内容は、主に髪型、アクセサリー、香水、化粧……等々に関する禁止事項です。業種によっては制服や作業着の着用、ヘルメットや保護具の装着義務なども含まれます。

施設や備品の利用

施設や備品の利用についても、会社の資産を適正に管理する観点から服務規程に含めるのが一般的です。具体的には、「会議室やパソコン、電話、文具などは業務目的に限って使用すること」「破損や紛失が生じた際には、速やかに上長へ報告すること」といった内容が記されます。

秘密保持

会社の情報資産を守るために、秘密保持に関する内容は必ず服務規程に含めましょう。主に、資料やデータの管理方法、外部への持ち出し制限などが該当します。たとえば、業務で知り得たさまざまな情報を許可なく第三者へ開示しない、私的に利用しない、退職後もこの義務は継続する……等々です。杜撰な対応にならないよう、徹底したルール化が求められます。

個人情報保護

個人情報保護もまた、秘密保持同様、くれぐれも慎重に扱わなければならない項目です。氏名、住所、連絡先、生年月日、マイナンバー、契約情報……等々、特定の個人を識別できるものについてどう管理するか、細心の注意のうえ取り決めましょう。当然ながら、個人情報保護法に抵触する内容であってはなりません。

副業・兼業

副業・兼業に関しても、本業への支障や企業秘密の漏洩、競業避止義務違反を防ぐためには必要なことといえます。仮に承認を得られるようにする場合も、条件や違反時のペナルティなどは明記しましょう。なお、政府による副業・兼業の促進に関するガイドラインも参考になるはずです。

上記を踏まえて、労働時間の通算管理や安全配慮義務に留意し運用できれば望ましいと考えます。

SNSの利用

近年は、企業SNSでの炎上も度々見かけます。業務情報や社内事情の不用意な発信を防ぎ、企業の信用やブランド価値を守るためにも、服務規定に盛り込むことはもはや必然といえるでしょう。

勤務時間内の私的利用を制限するだけでなく、業務外であっても企業の名誉や信頼を損ないかねない投稿は禁止が必須。これを曖昧にすると、そのままリスクを抱えることになります。が、服務規程に定めてもなお、顧客情報や取引条件、未発表の商品・サービス情報、社内の人事・経営情報などの機密事項に無自覚に触れるケースはあるかもしれません。言語道断とはいえ、誹謗中傷や差別的発言も軽はずみに行う従業員も出てこないとは限りません。当たり前のことですが、きちんとルール化したうえで、定期的に研修を実施することも推奨します。

服務規程の内容を決めた後は?

服務規程の内容を策定したら、労働基準法に沿った手続きを行い、従業員への周知が必要です。以下、一連の流れについて具体的に解説します。

意見書の作成

服務規程は就業規則の一部として扱われるため、その新設や変更には労働基準法第90条に基づき、労働者の過半数代表(または労働組合)の意見聴取が必要です。そのうえで、結果を記した意見書(規程内容について労働者代表から意見を聴取したことを証明する書面)の作成が義務付けられています。

就業規則変更届の提出

就業規則の一部として服務規程を発効させるには、労働基準法第89条に基づき、就業規則変更届を所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。提出の際は、改訂後の就業規則全文(服務規程を含む)と、前述した意見書も添付しましょう。

必要に応じて使用ください。
主要様式ダウンロードコーナー (労働基準法等関係主要様式)

従業員への周知

労働基準法第106条で規定されているように就業規則の一部である服務規程もまた、全従業員に周知してようやく適用されるものです。その際、誰でも容易に閲覧できる状態で行わなければなりません。いくつか周知方法を下表にてまとめます。

周知方法概要・特徴
書面配布紙の文書を各従業員に直接配布する。
社内掲示板事業場の目に付きやすい場所に掲示する。
イントラネット掲載 社内ネットワーク上にデータを掲載する。※情報漏洩しないようアクセス制限も必要
備付け(事業場内)ファイルやバインダーで備え付ける。
クラウド文書管理外出先やリモートワークでもアクセス可能な状態にする。※閲覧履歴をログ情報として残すことも可能
社内ポータルサイト社内の統合情報サイトに掲載する。※必要に応じて通知機能や既読確認機能と連携

服務規程に違反した従業員への対処

服務規程に違反した場合の対処についても、明確にルールを定めましょう。本章では、一般的に適用される懲戒処分をいくつか挙げつつ、どういったケースでそれは妥当なのかを解説します。

主な懲戒処分

服務規程に違反した従業員に対する懲戒処分は、行為の性質や結果の重大性、過去の違反歴などを考慮し、段階的に行うのが原則です。ではその段階とはどのレベルに該当するのでしょうか。下表にて、主な種類と概要をまとめています。

処分の種類概要
勧告文書や口頭で注意を行い、今後の改善を促す。比較的軽い処分で、再発防止が目的。
譴責(けんせき)始末書の提出を求め、行為の反省と記録の残存を図る。
減給一定割合または一定額を賃金から差し引く。労働基準法第91条により減額幅は制限あり。
出勤停止一定期間の出勤を禁止し、その間の賃金は不支給。重大な秩序違反などで適用。
降格職務等級や役職を下げ、職務権限や給与を引き下げる。
論旨(ゆし)解雇退職届の提出を勧め、提出がなければ懲戒解雇とする。本人の名誉保持や円満解決を意図する。
懲戒解雇最も重い処分で、使用者が一方的に労働契約を破棄する。重大な規律違反や背信行為が対象。

懲戒処分が妥当なケース

労働契約法第15条に基づき、懲戒処分は、違反の程度に応じた相当性と、公正な手続きが求められます。そのため、事実調査や証拠の確保、労働者への説明(弁明機会の付与)は必ず行いましょう。記録や証拠を残しておくことも重要です。過剰または恣意的と見なされれば、その処分は無効とされます

上記踏まえて、懲戒処分が妥当とされるのは、職場秩序や業務運営に重大な支障を及ぼし、改善の見込みが乏しい場合です。下表にて代表的なケースと該当行為をまとめています。

ケース該当行為
繰り返しの無断欠勤・遅刻  事前連絡や正当な理由がない欠勤・遅刻を繰り返し、業務運営や周囲の負担を増大させる行為。
顧客情報や営業秘密の漏洩職務上知り得た機密情報を外部に提供し、企業の信用や取引関係に損害を与える行為。
暴力・暴言職場内外での暴力行為や侮辱的発言により、就業環境を悪化させる行為。
業務上横領・背任行為会社の資金や物品を私的に流用・着服し、財産的損害を与える行為。
会社資産の不正使用許可なく会社の設備や物品を私的利用し、業務効率や資産価値を損なう行為。

服務規程に相応しい人材を確保するには?

自社の服務規程に違反する従業員を生まないよう、採用から意識的に取り組むことも大事です。具体的には、求人原稿での訴求内容や人材要件に適った求人サービスの選定が肝になります。以下、それぞれ解説します。

求人内容の工夫

求人内容は書き方ひとつで、集まる数や層、定着率までも変わってくるといっても過言ではありません。服務規程に合った人材を集めるためにも、工夫を凝らすことが必要です。仮にリモートワークの頻度や服装のルール、Wワークの許否など曖昧にしてしまったなら、たとえ採用までこぎつけてもミスマッチになりやすいことが考えられます。かといって、服務規程の要点をただかみ砕いて盛り込むだけでは母集団形成に苦労するでしょう。したがって、自社の服務規定がむしろ魅力的に映るにはどうすればよいか視点を切り替えることも大切です。とはいえ、誰もがそれができるわけではありません。ゆえに、求人サービスを利用する際、伝える内容や原稿作成のサポートについても確認しておけるとよいでしょう。プロが織りなす訴求や惹句が自社求人を明確かつワクワクさせるものに昇華してくれるはずです。

ペルソナに合った求人サービスの利用

服務規程の運用に適応できる人材を効率的に確保するなら、そもそも求める人物像(ペルソナ)を明確に設計することが大事です。

▶関連記事:採用ペルソナの作り方をテンプレートに使える具体例も交えて解説

しかしながら、それはあくまで戦略の段階。その先の戦術としてはやはり、どの手法や媒体を選択するかが問われます。たとえば、高度な専門性や業界経験が必要なら特化型求人サイトがおすすめです。dipが提供しているサービスだと『バイトルPRO』がまさにそう。即戦力人材の獲得が見込めます。また、第二新卒をターゲットにするなら、『バイトルNEXT』でしょうか。動画での打ち出しも蓄積されたノウハウもあり、効果的に訴求できると思われます。そのほかほしい人材に直接声をかけるならダイレクトソーシングでアプローチするのも一つの手です。一長一短あるとはいえ、少なからず自社の服務規程に合った方との接点強化につながる期待は持てます。

従業員が守るべき服務規程は従業員を守るためのもの

ルールと書かれた本で服務規程を表現

服務規程は、企業が一方的に従業員を縛るためのルールではなく、職場の秩序や安全を守り、従業員が安心して働く環境を確保するためのものです。そのうえで、作成から運用までの過程には法的手続きや周知が必要です。違反時においても懲戒処分は適正な基準を踏まえて行われなければなりません。

そうやって、労使双方が価値観と行動指針を共有することは、信頼関係の構築につながります。ぜひ、服務規程を有意義に活用してください。


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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所の代表を務める荒武慎一氏

アラタケ社会保険労務士事務所 

代表 荒武 慎一

同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。

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