前提としておさえたい社員面談の基礎知識

社員面談は、組織と従業員が互いの期待や課題を共有し、より良い関係を築くための重要な時間です。ぜひとも積極的に取り組むことを推進します。しかしながら、まったく要領を得ないまま見切り発車で行ってしまうのは考えものです。本章では、前提としてまず、目的や実施頻度といった社員面談の基本に言及します。
社員面談の目的
社員面談の目的は多岐にわたりますが、主に以下のポイントが挙げられます。
- コミュニケーションの強化
- 従業員のモチベーション向上
- 問題の早期発見と解決
- パフォーマンスの評価とフィードバック
それぞれ解説します。
コミュニケーションの強化
社員面談は、主に管理職の方が従業員とオープンな対話を行う場です。これにより、うまくいけば相互の信頼関係が築かれ、ひいては部署全体の士気が上がることも期待できます。こうした狙いも視野に入れつつ、コミュニケーション強化を図ることが目的の一つです。
従業員のモチベーション向上
社員面談は従業員からのメッセージを直に受け取れる場であるため、彼・彼女らの意見や考えを理解しポジティブなフィードバックを行うことで、モチベーション喚起、向上にもつなげられます。とりわけ、キャリアパスに関する相談など従業員の成長支援に時間を使えると効果的です。
問題の早期発見と解決
従業員から日常の業務で感じるさまざまな問題や悩みを打ち明けてもらうのに、社員面談は格好の場です。彼・彼女らが抱えているモヤモヤをタイムリーに把握できれば、対応に後れを取らず、なおかつ適切な策を講じやすくなるでしょう。もちろん、従業員自身が課題解決に向けて自発的に取り組む機会にもなり、自己成長や職務遂行能力の向上にもつながります。
パフォーマンスの評価とフィードバック
社員面談は、従業員の業績や成果を正確に評価し、具体的かつ建設的なフィードバックを提供する重要な機会です。その場を通じて、従業員は自身の強みや改善点を理解し、次のステップに向けた具体的なアクションプランを立てることができます。
社員面談の一般的な実施頻度
社員面談の実施頻度は、結論から述べると、企業や組織の方針、規模、業種によって異なります。これは、各企業が抱える課題や目標、従業員の特性、業務の性質など内外問わずさまざまな要素によって最適な頻度が変わるためです。とはいえ、そのなかで設定されるのはほぼ次の4パターンに限られます。
- 年1回
- 半期ごと
- 四半期ごと
- 月1回
いわずもがな、頻度が変われば内容も変わります。 それぞれ具体的には以下のとおりです。
年1回
社員面談が年1回の頻度で行われる場合、実施時期は年度末や年度初めになることがほとんどです。内容は従業員の1年間の業績評価や次年度の目標設定が中心となります。一年を振り返る大きな区切りとして、長期的な視点からの評価やフィードバックが可能です。
半期ごと
社員面談が半年に1回のペースで行われる場合も、下期に関しては年間通しての総括が含まれます。そのうえで次の期に向けた目標設定を中心に話を進めることが一般的です。また、上期終わりの面談では、軌道修正を視野に入れることもしばしば。中長期的な視点で従業員をサポートあるいは指南できるのが望ましいでしょう。
四半期ごと
市況やプロジェクトの進捗を逐一確認したい場合、社員面談を頻繁に実施することは有効です。実際のところ、四半期ごとあるいは月一ペースで行う企業は少なくありません。特に変化が激しい業界では顕著な傾向にあります。そのなかで状況が変わろうとも「もう少し様子を見たい」「戦略を練る期間がほしい」といった意向がある企業には、3ヶ月スパン、すなわち年4回の設定がおすすめです。
月1回
月1回の社員面談は、従業員とのコミュニケーションを密に保てるため、業務の進捗や成果、改善が必要な点などをタイムリーに把握することができます。従業員にとっても、短期間で継続的にフィードバックを受けることは有益です。これにより、組織内での情報共有が円滑になれば、チームとしての一体感も強まるでしょう。ただし、月1回の頻度では、準備や実施自体に時間を要する分、ほかの業務に影響が出てくる可能性があります。また、一部の従業員にとっては頻繁なフィードバックがプレッシャーになりかねません。こうしたケースも考慮し、適切なバランスを見極めることが重要です。
社員面談の流れ

社員面談を効果的に進めるためには、適切な流れを理解し、それに沿って準備と実施を行うことが重要です。従業員と管理職双方が互いの意見やフィードバックをスムーズに交換できれば、日常業務に支障をきたすことなく、なおかつ結果として組織全体の成長に寄与する期待が持てます。以下、具体的なプロセスです。
- 事前準備
- 面談開始
- 本題の話し合い
- フィードバックとアクションプラン
- 面談の締めくくり
各ステップについて解説します。
事前準備
社員面談の効果を最大化するためには、十分な事前準備が不可欠です。目的を明確にし、アジェンダを設定、関連資料を整えます。従業員に対しても自己評価とあわせて反省点や希望するキャリアパス、そのほか話し合いたい内容を整理しておくように伝えておきましょう。
面談開始
いざ社員面談開始。オープンなコミュニケーションができるようリラックスした雰囲気づくりを心掛けましょう。あらかじめ用意しておいた面談の目的やアジェンダの確認を行い、従業員に対して同じ認識を持たせることで、その後のスムーズな進行につながります。
本題の話し合い
アジェンダに基づき、業務や職場環境などについて深く話し合います。双方向のコミュニケーションを重視し、従業員の意見や感想をきちんと傾聴することが大切です。
フィードバックとアクションプラン
本題の話し合いからの延長として、従業員の実績や取り組みに対して評価を含めたフィードバックを行います。続けて今後の成長や業績向上のための具体的なアクションプランまで策定できるとよいでしょう。
面談の締めくくり
面談の最後には、お互いに曖昧な部分を残さないように、あらためて確認したいことなど、対話した内容のおさらい込みですり合わせます。認識に齟齬があっては次のタームに支障をきたしかねません。最後まで気を緩めることなくしっかり目の前の相手と向き合いましょう。
社員面談の要点、コツ

再三述べているように社員面談は、従業員の声に耳を傾け、互いの理解を深めるチャンスです。普段気づきにくい従業員一人ひとりの悩みや要望、企業の将来に対する期待、不安が、ここで初めて明らかになることも少なくありません。いずえにせようまくいく秘訣は、これも繰り返しお伝えしていますが双方向のコミュニケーションを大切にし、具体的なアクションにどれだけつなげられるかです。以下、社員面談で特に心掛けたい要点とコツを紹介します。
普段聞けない悩みの把握
従業員が普段口にしづらい悩みや不安を引き出すことも社員面談の大切な役割です。そのミッションを果たすためにも信頼関係の構築とオープンなコミュニケーションは欠かせません。安心して話せる環境を作ったうえで、質問はオープンエンデッド(回答者が自由に意見や感想を述べることができる形式)に保つことを意識してください。それはすなわち従業員を尊重することです。結果、本音を引き出しやすくなるでしょう。
企業ビジョンの共有と共感の獲得
企業の将来像を明示し、従業員の理解と共鳴を促すことは、社員面談において大事なポイントです。これにより、従業員は自身の役割と企業の目標をリンクさせ、一体感を持って働くことができるでしょう。もちろん、企業側の情報共有だけでなく従業員からの意見にも耳を傾け、理解と共感を示すことも大切です。そうやって結局は信頼関係を深めることが社員面談の肝であり醍醐味だと考えます。
効果的な時間配分
面談時間については、(大抵は)一人当たり約30分から1時間が目安とされていますが、内容により調整が必要です。アジェンダを明確に設定し、どのトピックに時間を割くか、あらかじめ念入りに確かめておきましょう。
承認と肯定
社員面談では、従業員の努力や成果を正当に評価し、承認と肯定の言葉を忘れずに伝えることが重要です。これにより従業員のモチベーションや自己肯定感の喚起につながるでしょう。とりわけ具体的かつポジティブなフィードバックは、従業員が自身の強みをより明確に理解する手助けにもなり得ます。さらには挑戦を後押しした結果、組織全体のイノベーションにさえ寄与することがあるかもしれません。
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社員面談での具体的な質問例

社員面談の要点、コツをおさえたうえで、具体的にどのような質問が効果的か、例を挙げて説明します。状況に応じてうまく活用してみてください。
認識している課題を確認
「どのような課題や障壁を感じていますか?」
この質問は、従業員が日々の業務で直面している問題点や改善箇所を明らかにするためのものです。従業員がどの部分に焦点を当て、どのような価値観で仕事に取り組んでいるかは、一緒に仕事をするうえで大事にしたいところ。ゆえに理解は必須です。
加えて、従業員が自身の働きぶりをどれだけ自覚しているのか。認識のすり合わせも含めて共有することができれば、方針や目標設定もスムーズな進行に寄与するはずです。一方で、自己分析が不十分な場合は、上司やマネージャーの役割として、新しい視点を与えアドバイスを行い、従業員の成長をサポートしていく必要があります。
設定した目標の意図を確認
「この目標を選んだ背景や思考は何ですか?」
従業員が立てた目標の意図や動機を深堀りするための質問です。単に結果を求めるだけでなく、(適切か否かの判断も含め)そのプロセスを通じて、従業員は成長していきます。そのため、掲げる目標の背景はしっかり把握しておきましょう。
仮に目標達成が明らかに困難、あるいはその逆で簡単すぎる場合、実際に動いていくなかで従業員のモチベーション低下も危惧されます。ではなぜそのような目標を設定したのか。やはりそこを聞き出し、一人ひとりが持つ基準や価値観を知ることが重要です。うまく活用できれば、より効果的なガイダンスやサポートの提供にもつながります。
業務に対する満足度を確認
「仕事にやりがいを感じていますか?」
ストレートに仕事に対して充実感を得られているかを聞くことも大切です。そこでネガティブな回答があれば、当然相談に乗る必要があります。加えて、気持ちを前向きにしてもらうべく、何かしら手を打たなければなりません。咄嗟に提案できなくとも、彼・彼女らの意向や要望を丁寧にヒアリングし、後でサポートすることは忘れないようにしましょう。逆に、モチベーションが高い従業員に対しては、その熱意をさらに伸ばすための環境や機会を提供することが重要です。うまく作用すれば、チームの活力や成果に大きく寄与するかもしれません。
「チャレンジしたいことなどありますか?」
野心的な従業員は思いのほか多いものです。そこでこの質問をぶつけ、仮に要望が出てきた場合、できる限り後押ししてあげましょう。具体的には、研修やプロジェクトのアサインなどが挙げられます。
従業員の挑戦意欲は、組織にとって非常に価値のあるものです。社員面談を通じて、その気持ちを維持・育成できれば組織全体の発展にも寄与することでしょう。
「今後のキャリアについて具体的なビジョンがあれば教えてください」
従業員が持つ展望や希望は、その人のモチベーションや業績に直結する要素です。上司としてそれを理解し、適切に応えることで、彼・彼女らの満足度や生産性を向上させることが期待できます。また、そのビジョンは、組織にとっても将来的な戦略や人材配置の参考となる貴重な情報です。前項で述べたように野心を持った従業員は決して少なくありません。当日の面談の流れを踏まえて、この質問をうまく投げかけてみてください。
チームに対する意識の確認
「所属チーム(部署)での役割についてどう考えていますか?」
この質問は、従業員がチーム内での立ち位置や貢献度をどう認識しているかを探るためのものです。組織の一員として、協力や連携は不可欠な要素となります。特に新入社員やアルバイト・パートの方には、期待される役割や責任を明確にする意味で重要です。裏を返せば、従業員からのフィードバックを通じ、彼・彼女らの立場や考えを理解することで、より効果的なサポートや指導が行えるでしょう。
アルバイトに対しても社員面談を行うメリット

ここまで述べてきたとおり、社員面談は組織と従業員の成長につながる大事な取り組みです。と、これは、決して正社員だけに行うものではありません。アルバイトに対して実施することも有効です。そういえるいくつかのメリットを、以下紹介します。
フレッシュな意見の収集
アルバイトの立場で勤めていると、業務そして組織に対して何らかの俯瞰する視点が芽生えるものです。それらは、大抵、正社員のそれとは異なります。そのため、社員面談をアルバイトに実施した際、フレッシュな意見が飛び交うこともしばしば。なかには目から鱗の画期的なアイデアも珍しくありません。そもそもアルバイトに対して面談を行うこと自体、柔軟なスタンスですが、そこでさらに機転の利いた施策や戦術が生まれてきても、それはそれで決しておかしくはないのです(むしろよく耳にする話です)。
アルバイトの定着率向上
アルバイトの離職率が高い組織であれば、社員面談の導入によって改善を図れるかもしれません。というのも面談を通じて自身の成長とキャリアに焦点が当てられれば、スタッフはその職場での役割を認識することになるでしょう。そうなればおそらく、少なからずやりがいを持つもしくはモチベーションのアップが期待できるはずです。すなわち帰属意識が高まり、定着率向上にもつながることが考えらえます。
アルバイトのスキルアップ
アルバイトとの面談を通じて彼・彼女らのスキルアップを図ることも可能です。育成の方針をしっかり共有し、実際に計画を立てそれに向けて動けるのなら、スタッフも安心さらには自身のキャリアパスに希望を見出していくことでしょう。もちろん、正社員登用も視野に入れることができます。そうしたビジョンを共有することもアルバイトとの面談で可能です。実際うまくいけば、業務効率やサービスの品質向上、そして何より組織の飛躍・成長までもが見込めます。
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対アルバイトも含めて社員面談に注力することは大事

社員面談は、組織の発展と従業員の満足度を高めるための重要な手段です。従業員が抱える悩みや願望、そして彼らのキャリアに対する考えを理解することは、適切な対応や助言を行う基盤となります。そしてこの取り組みは、正社員だけでなくアルバイト・パートの方々に対しても有効です。アルバイトスタッフの考えや感じていることもまた、企業の道しるべの一つとして少なからず影響します。
社員面談では従業員一人ひとりの声を尊重することが大切です。それは組織の競争力向上をも促し、ひいては継続的な発展の基盤の構築にもつながります。
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