将来の人材不足を見据えた「接点を増やす」ための導入

dipとはバイトルでお取引が始まったんですよね。
そうですね。まずその経緯を説明すると、学生のアルバイトを必要としていました。といっても、単に「労働力として」というより、利用者様の話し相手として相性が非常に良いんですね。学生の方々の明るさや元気さは利用者様の気持ちを明るくしてくれる存在でもありました。そこで、若年層の集客に強いdipさんにお願いしたんです。
他社サービス含め、そもそもスポットバイトル導入を検討したのはどのような理由からでしたか?
人手に困っていたかというと、実はそうではないんですよ。重視しているのは将来を見据えた展望で、今後どんどん人口も労働者人口も減っていくなか、採用もどんどん難しくなるわけですよね。そのときに接点を持っている人を一人でも多くしておく必要があります。広告費をどれだけ使えるかと考えたとき、大手企業のような予算はありません。それに対して、スポットバイトであれば当施設としては認知拡大の機会になりますし、ワーカーさんとしても時給をもらえる。スポットバイトを“広告費”と捉える考え方は合理的だと感じたんです。
スポットバイトルはどのような経緯で導入にいたったのでしょうか?
採用ターゲットは基本的にバイトルと同じです。とくに、夕方の時間帯で学生さんを採用したいなと思っていたのですが、ここ数年でスポットバイトのサービスが注目されてきましたよね。当社も試行的に複数社へ登録しながら活用方法を探ったのですが、スポットバイトと介護現場の相性には課題を感じました。というのも、介護の現場では利用者様とスタッフとの密接な関係が不可欠なため、単発のアルバイトの方にはお任せしにくいんです。その点、dipさんのスポットバイトルならバイトルとの連動性があるので、レギュラー勤務や正社員雇用へのステップにもなり得ると考え、導入を決めました。
「どこからが介護なのか」切り分けは現在も試行錯誤
スポットバイトル導入にあたり、どのような障壁がありましたか?
正直、苦労は多くありましたよ…というより、今もなお試行錯誤を続けています。というのも、ワーカーさんに仕事をお願いするとき「どこからが(資格を必要とする)介護なのか」という線引きが非常に難しいんです。我々は「体に触れること、動きをサポートすること」を介護と考えており、その基準にあわせて無資格者の仕事を切り分けています。衣類の整理や利用者様とのお話などはわかりやすいですが、ではご飯や飲み物などの配膳はどうか…。利用者様によって介護度も食事も違うので、体に触れないとはいえ安全に関わる話ですよね。こうした線引きについて、現在も議論を重ねています。
スポットバイトルに対しては認知拡大のほか、どのような効果を期待していましたか?
スポットバイトルを使うにあたって、もう一つ生まれた効果は「外の世界の人たちが当施設や介護業界をどう見ているか」を知る機会になったことです。実際に働いてみた感想を聞くことで、自分たちの強みや課題に気づくことができる。これは施設運営やマーケティング面だけでなく、スタッフにとって大きなモチベーションにもなりますよ。施設全体としても、外部の目を入れることで良い緊張感をもたらされるんです。なおアルバイトの確保という意味でも、無資格者だけでなく介護福祉士の資格を持った人からの応募も思ったより多かったですね。
閉鎖的な業界に風穴を スポットバイトルの可能性に期待

スポットバイトルでの採用事例を教えてください。
福祉系の専門学生が応募してくれたことがありましたね。その方には、夕食後に利用者様の話し相手になっていただきました。働いてみてどう感じるのか心配になりましたが、思いのほか楽しそうにしてくれていましたね。学生さんのご家族でも同じことが起こるわけですから、将来のことを考えるきっかけにもなってくれるとうれしいですね。また、フレッシュな方たちの持つパワーはすごいですよ。僕らが一生懸命に励ますよりも、孫世代の人は「いるだけ」で利用者様に元気を与えてくれますからね(笑)。
あらためて、スポットバイトルを導入して良かった部分は何でしょうか?
やはり外部の目が入り、業界の外の人からみたお話が聞けることです。当施設の特徴だけでなく市場のニーズ把握にも非常に役立っています。介護業界は閉鎖的になりがちのため、スポットバイトルのような新しいサービスをきっかけに、多くの人に知ってもらえたらと思っています。介護は誰にとっても身近に起こり得るもの。私たち自身も、介護業界の閉鎖性を少しでも変えていきたいと考えています。

取材協力:平和台介護老人保健施設アバンセ
東京都練馬区にある介護老人保健施設。2000年10月開設。地域や家族との結びつきを重視した総合的な介護サービスを提供している。