私たちが生きていくうえで欠かせない食料を生産する農業。しかしながら“重労働”というイメージもあってか、昨今、人手不足の問題に直面しています。就農者の減少は、食料自給率の低下や荒廃農地の増加につながり、環境にも悪影響を及ぼしかねません。本記事では農業における人手不足の現状と原因を掘り下げ、その解決策をまとめました。

農業の人手不足について、直近データから原因、解決策まで解説

  • 2024.04.09
  • 2024.04.09

私たちが生きていくうえで欠かせない食料を生産する農業。しかしながら“重労働”というイメージもあってか、昨今、人手不足の問題に直面しています。就農者の減少は、食料自給率の低下や荒廃農地の増加につながり、環境にも悪影響を及ぼしかねません。本記事では農業における人手不足の現状と原因を掘り下げ、その解決策をまとめました。

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データでみる農業における人手不足の現状

農業の様子

まずは農業に従事する方々の数がどう推移しているか、最新データから紐解きましょう。人手不足の深刻さ、その需給ギャップの実態、そしてこれらがどのように農業の生産性に影響を及ぼしているかを説明します。

農業労働力の変遷

農林水産省の統計によると、2015年に175.7万人だった基幹的農業従事者数(ふだん仕事として主に自営農業に従事している者)は、2023年には116.4万人と約60万人も減っています。 また、平均年齢も2015年には67.1歳であったのに対し、2023年には68.7歳と上昇。新規就農者数も低下傾向にあり、2014年の約5.8万人から2022年は4.6万人ほどに減少しています。 

農業労働力の需給ギャップ

農林水産省が公表している令和3年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」資料によると、農林漁業分野の有効求人倍率は1.30倍です(出典:厚生労働省「職業安定業務統計」)。これは、全産業平均の1.01倍を大きく上回っています。つまり、人材の需要が供給を超えているわけです。このように、労働力不足は顕在化しています。また、基幹的農業従事者の年齢構成もまた深刻な問題です。具体的には、65歳以上が69.6%を占め、49歳以下は10.8%のみと、大幅な偏りがみられます(2020年2月1日時点)。60歳を超える労働者の引退が進めば、人手不足はさらに加速することでしょう。

生産性への影響

人手不足は農業の生産性に複数の面で影響を及ぼします。たとえば、植付けや収穫などの遅延です。タイミングが遅れてしまえば、作物の品質低下や収量減少を招く恐れがあるでしょう。また、十分な労働力が確保できない場合、生産効率の低下も避けられません。同じ量の作物を生産するにも無駄な時間とリソースが必要になってきます。

農業が人手不足を引き起こす主な原因

農業を営む人

前項のとおり人手不足が問題の農業ですが、その背景には複数の複雑な要因が存在します。具体的には次のとおりです。 

それぞれ詳述します。 

高齢化の進行と後継者不足

高齢化の進行は農業が人手不足を引き起こす大きな原因の1つです。農業の高齢化に関しては1970年代から指摘され、重労働である農作業を継続することが難しくなっています。また、後継者不足も高齢化と密接に関連しています。現役の農業従事者が退職する際に、彼らの後を継ぐ若い世代が不足しているのです。実際に、2020年農林業センサスによると、7割を超える経営体が後継者を確保できていないことが明らかになっています。農業従事者の高齢化により、農作業中の事故が増加していることも問題です。これらの状況は、農業分野における持続可能性と安全性に大きな影響を及ぼし、対策が急務とされています。

若者の農業離れ

若者の農業離れも、人手不足の一員です。さらに深掘りすると、若者が農業から離れる主な理由としては、就農に(初期、運用ともに)費用がかかる一方で、安定した収入が保証されないことが挙げられます。また、夏の暑さや冬の寒さといった環境下や、休日も不定期といった労働条件も、若者を農業から遠ざけているかもしれません。

農業に対する誤解

上述した収入面や労働条件については、極度に誤解されている可能性もあります。農業は収入が安定しない、労働集約的で過酷、時代遅れといったイメージを少なからず持っている方も少なくないでしょう。

ただし実際のところは、決してそういうことばかりではありません。高度な技術がどんどん出てきている近年は、むしろ先進的な分野(職業)に舵を切ったと解釈してもよいでしょう。コストを下げた分、収入に還元されているところもあります。しかし、この現代的な側面が十分に理解されず、特に若者にとっては都市部の職に比べて魅力に欠けると捉えられているのが実状なのかもしれません。結果、農業離れが加速している一因になっています。

育成機会が不十分

農業に関わる際に大きな障壁となるのが、育成機会が不十分である点です。農業は専門的な知識と技術を要します。ところが、十分な教育や訓練の機会が提供されていない現場も少なくありません。育成機会が不足しているとやはり、次世代の後継者を育成することは難しいと思われます。

報酬面、労働環境に対する不満

先述した若者の農業離れとも重なりますが、報酬面や労働条件に対する不満を理由に離職される方は一定数いらっしゃいます。天候や市場での価格変動、生産量の不確実性などの外部要因に収入が影響すれば、働く人たちが不安になることもあるでしょう。また、労働環境も離農の原因に挙げられます。暑さ、寒さが厳しい時期はどうしても身体的な負担が大きくなるかもしれません。辛い、過酷だと一度ネガティブな思考に陥ってしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しいように思います。結果、続けることを断念するわけです。

農業の人手不足に対する解決策

農業に勤しむ男性

ここまで現状と原因について取り上げてきましたが、本章ではそれらを解決するための対策を紹介します。もちろん、同じように効果が出せるとは限りませんが、少なからず参考になるはずです。ぜひ、臨機応変に活用ください。

スマート農業の導入

農業DX あるいはスマート農業の導入は、この分野での人手不足問題に活路を見出す解決策です。スマートフォンやパソコンを通じて農地やビニールハウスを遠隔で管理することで作業の自動化が可能となれば、労働力の必要性を大幅に削減できるかもしれません。また、この自動化により、熟練者でなくとも品質にバラつきが生まれにくくなります。したがって、以前よりも初心者(就農者)のハードルは下がることになるでしょう。

データ管理と分析の活用

近年は、圃場(ほじょう)の撮影やセンサーによる計測から得られるビッグデータを活用するといった効率的な栽培管理が進められています。ドローンや衛星からの生育データ・気象データをAIで解析し、作物の生育状況や病虫害の発生リスクを予測する技術も発展しています。データ管理によるアプローチによって、農業者の経験や勘に頼ることなく、データの傾向を分析し、対応策を練ることが可能です。逆にいえば、農業経験がない人も取っ付きやすくなるでしょう。 

一方で定着する従業員もまたデータで分析することができそうです。が、これについてはそう一筋縄でいくものではありません。一人ひとりとしっかり向き合い、採用・定着の基本から応用まで愚直に学んでいくことが何よりも、向き不向きをジャッジする軸の確立に役立つものと考えます。

人材育成の強化

限られた人材であれば、育成強化が不可欠です。持続可能な農業は、適切な人材育成を通じて実現できるでしょう。以下、主なアプローチを紹介します。

▶関連記事:人材育成とは?目的、課題、目標設計の方法など主要ポイントを解説

農業教育プログラムの充実

農業に関する専門知識と技術を習得する場を設け、それを充実させることで人材育成の強化につながります。こうした農業教育プログラムの一環としてバイオテクノロジーや先述したスマート農業などの現代技術に焦点を当ててもよいでしょう。こうした活動が拡散されれば人材定着だけでなく、(人気に火が付き)採用にも好影響を及ぼす期待が持てます。

実践的なインターンシップの提供

実際の農場や企業でのインターンシップを通じて、学生や新規参入者に実践的な経験を提供するのも有効です。職業として実際に農業を経験できれば、それが自身に適しているかどうかの大きな判断材料になり得ます。雇う側としてもミスマッチを避ける手段として役立つことでしょう。

労働環境の改善

農業分野では特に課題に挙がっているのが労働環境の改善です。新規参入者を引き付けるためにも、一度整備を図ってみましょう。以下、具体的にお伝えします。

適正な報酬体系

適正な報酬体系は、人材定着と確保にダイレクトに影響を及ぼします。労働に見合った給与やインセンティブを設けるといったやり方で報酬体系を築けるとそのままモチベーションへとつながるでしょう。

労働条件の見直し

労働条件の見直しも有効な施策の一つです。具体的には労働時間・給与規定を含む明確な就業規則の設定や、法令遵守による社会保険や有給休暇の適用などが挙げられます。

とりわけテコ入れしたいのが長時間労働です。農業は季節や天気によって左右されるため、確かに、労働時間は不安定だといえます。それでもなお過剰な残業はご法度です。繁忙期と閑散期を考慮するなどして、適度なバランスを保てるように管理していきましょう。

柔軟な採用

たとえば、フルタイム働ける方だけを募集するのではなく、シフトをある程度融通が利くようにすることも人手不足解消には有効です。勤務時間を柔軟に設定できる「フレックスタイム制度」を導入してもよいでしょう。結果的に、「人手が欲しい雇う側」「自分らしく働きたい労働者」双方にとってメリットです。なお、こうした柔軟な採用については、以下の現象とも紐づきます。

働き方の多様化を推進

労働者のニーズやライフスタイル・能力にあわせて多様な働き方を認めましょう。農業とほかの職業、趣味を組み合わせた「半農半X」はまさにその最たる例です。これは、専業農家でも兼業農家でもありません。が、農業への参入を促すにはもってこい動機になり得ます。

パートタイムや季節雇用の促進

パートタイムや季節雇用を促進する企業も増えてきています。前者のように、短時間での勤務を可能にすることで家事を含めたプライベートとの両立に一役買えれば、働きやすさにつながるはずです。これは農業でも例外ではないと考えます。

また、季節性が色濃い農業だからこそ、繁忙期には多少の人件費は嵩んでも好条件を打ち出して採用に注力することが大事です。その分、(注力した際に採用がうまくいけば)閑散期は控えてもよいかもしれません。すなわち、季節雇用を取り入れることも柔軟な採用だといえます。

農業の人手不足問題は成功事例を通じて学ぶ

農業で使われたドローン技術

農業の人手不足問題に対処する方法としては、前述した解決策の実行同様に成功事例から学ぶことも有効です。以下、いくつか具体的に挙げます。

先進技術の活用

ロボット技術やAIなどの先進技術の活用が農業の人手不足を解消する一助になることがあります。収穫ロボットや作物の成長を監視するドローンの開発などはまさしくその典型です。具体的に述べると、(カメラとAIを用いた)トマトの自動収穫ロボットの利用です。これによって農業の経験がない人でも成熟したトマトをすぐに認識できるようになります。その結果、「農業=重労働」といったイメージも払しょく。むしろ、土壌管理や収穫等々の大変だった作業(あるいは精密な作業)さえも楽に思えるかもしれません。実際、そういった方々も見受けられます。

コミュニティ連携

コミュニティの連携も、農業の人材確保につながります。具体的には、地域の農業団体はたまた協同組合と一緒に作業を行うことや、地元の若者を農業に関わらせるプログラムの実施などです。こうした取り組みがあるからこそ、(地域に根差した)農業はいまなお発展しているのだといえます。これらに触発される方々が一定数いることを考えると、さらにコミュニティが広がれば、たちまち就農者も増えるのではないでしょうか。

貴重な農業人材を獲得・確保するために

貴重な農業人材

農業の人手不足は確かに深刻です。そうはいってもやはり、原因を探り、適切な対策を講じることで状況を打開する可能性はあります。もちろん、思うような結果に至らないケースも出てくるでしょう。が、採用難に打ち勝つためには積極的にアクションを起越すことが大事です。求職者に興味を持ってもらえるよう農業が湛える魅力を揃えたなら、求人広告で存分にアピールしていきましょう!


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