本記事では派遣雇用における禁止事項や契約違反について解説します。人事業務の担当者であれば採用の段階から確実におさえておきたい知識ばかりです。労働者派遣法が改正されていくなかで、最新の内容については意外と曖昧な方も少なくないかもしれません。この機会にあらためてご確認ください。

派遣雇用の違反事項~禁止業務や契約ルール、罰則、対策交えて解説~

  • 2023.07.05
  • 2023.08.16

本記事では派遣雇用における禁止事項や契約違反について解説します。人事業務の担当者であれば採用の段階から確実におさえておきたい知識ばかりです。労働者派遣法が改正されていくなかで、最新の内容については意外と曖昧な方も少なくないかもしれません。この機会にあらためてご確認ください。

禁止されている派遣業務とその理由

禁止されている派遣業務を表現

労働者派遣法では適用除外業務として、派遣禁止の仕事があります。以下、それらを具体的にピックアップ。理由もあわせて説明します。

建設業務

まずは、建設業務です。具体的には資材の運搬や建築物の組み立て、リフォームなど現場仕事(さらに細かく定義すると建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体作業およびその準備)が含まれます。 

派遣が禁止される理由はいくつか挙げられますが、大きなポイントでいうと場所や期間です。建設現場が固定されず発注先からの都合で転々とすることや、完了まで1年を超えるケースも珍しくない性質上、人材管理は極めて困難だとわかります。季節や天候などに工期が左右されることも当然、視野に入れなければなりません。また、閑散期の扱いもおそらく悩ましいものになるはずです。そうやって仕組み上、実行するには複雑な点を踏まえると、やはり禁止は頷けます。あるいは派遣に近い制度として「建設業務有料職業紹介事業」や「建設業務労働者就業機会確保事業」が存在している点も大きいかもしれません。これらがあることによって一般の派遣が必要なかったともいえそうです 

なお、建設業界であっても現場仕事に当たらない事務員、CADオペレーター、施工管理などの業務は派遣が認められています。

警備業務

警備業務は、会社、住宅、ショッピングモールなどの施設にて、事故やトラブルの未然防止が主なお仕事です。警備業法により業務の適正かつ厳正な遂行が求められていることや、職務だけでなく身分上の監督も行う必要性から、派遣においては禁止業務に指定されています。

港湾運送業務

港湾運送業務とは、貨物の積み込みや検量などを指します。建設業務同様、閑散期・繁忙期で仕事量に大きな差が生まれやすく、年間通して常に人材を確保すべきか否か悩む企業も多いようです。派遣については禁止業務として扱われます。この背景には、派遣法の制定以前から導入されている、(業務が特殊ゆえに)労働力の需給調整を行う「港湾労働者派遣制度」の存在が挙げられるでしょう。つまり現状、一般的な人材派遣サービスをわざわざ適用する必要はないと判断されているわけです。

医療関連業務

医療関連業務は、医師や看護師、臨床検査技師、放射線技師……等々、基本的にプロフェッショナルたちの連携によって、チーム体制で行われます。一方で、人材派遣サービスの特性には合わない懸念点が生じてしまうのも実状です。派遣の場合、労働者に通常期間の定めが設けられる点もそうですが、やはり勤務先との直接雇用ではないことから“チーム間の意思疎通”を十分に図れない部分が出てきます。そのため、基本的には禁止業務の対象です。 

ただし、産前産後休業や育児休業、介護休業を取得した者の代替としての派遣や、僻地のため医療関係に携わる者が少なく派遣の必要性がある場合などは、例外として認められています。

士業対象業務

士業は基本、資格保有者個人が業務を請け負うため、指揮命令を受けることがありません。したがって原則、派遣は禁止です。とはいえ公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士などでは一部、認められている業務もあります。

契約違反に当たる派遣行為や働かせ方

契約違反を示唆

続いては、違法に当たる契約や働かせ方を取り上げます。“知らなかった”なんてことが無いようにしっかり把握しておきましょう。

二重派遣

二重派遣とは、派遣先が派遣労働者を別の企業に派遣することです。たとえば、派遣元A社から派遣先B社へと送り出された労働者を、(派遣先B社が)新たにC社へ再派遣するなどあってはいけません。このとき労働者はC社の指揮命令で業務を行っている状態ですが、雇用責任の所在は有耶無耶と化します。それゆえ仮に労災に当たる事故が起きたときなどは、二重派遣がまかり通ってしまっている状況下ではA社、B社、C社間で揉めること必至でしょう。結果、労働者にさえ不利益が生じることも考えられます。

偽装請負

あらためて、二重派遣はれっきとした禁止行為です。しかし、その抜け道として請負が悪用されることがあります。いわば合法的に二重派遣を成り立たせようとするのが、偽装請負です。 

上述の通り、派遣労働者がC社の指揮命令のもとで働くのは二重派遣ですが、B社がC社から請負で受注した仕事を派遣労働者に任せるのであれば、たちまち問題でなくなります。 なぜなら、この場合、B社に指揮命令権があるからです。 

が、そうはいってもやはり、実態としてC社が指揮命令を行っていれば、それは紛うことなく偽装請負であり二重派遣に当たります。もちろん、違法です。 

▶関連記事:二重派遣とは何かわかりやすく解説!禁止理由や罰則、防止策にも言及

契約外の業務や部署異動

いわずもがな、契約書と異なる内容で労働者を従事させてはいけません。派遣先での業務やどの部署で働くかなど、記載されているそれらは絶対です。お茶くみや掃除といった雑務であっても気を付ける必要があります。契約書に書かれていない業務であれば、トラブル回避のためにも安易にお願いしない方がよいでしょう。


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原則、契約違反でも例外が認められるケース

契約事項を引き立たせる画像

労働者派遣法には細かい定めが多数あります。そのなかでつい見落とされがちなのが通常契約違反に当たるものの例外が適用されるケースです。具体的な条件含めて、以下、列挙します。

中途解約を可能にする条件

原則、派遣先は労働者との派遣契約を途中で解除できません。というのも、派遣元との労働契約は残るためです。が、倒産する可能性などやむを得ない事情もあるでしょう。このとき、中途解約の条件として(派遣元と派遣先は)一定の措置を講じなければなりません。

具体的には「派遣先が講ずべき措置に関する指針」のなかで次のように定められています。

それぞれ以下のとおりです。

派遣元へ事前に申し入れる

派遣先が労働者派遣契約を中途解約するには、あらかじめ相当の猶予期間をもって申し入れ、合意を得る必要があります。

派遣元に中途解約の理由を明示する

派遣労働者の要望に応じるべく、説明責任のある派遣元に派遣先は中途解約の理由を回答する義務があります。

派遣労働者の新たな就業先を確保する

派遣労働者に対して派遣先は派遣元と連携して自社関連会社での就業を斡旋するなど、雇用の維持を図らなければなりません。

派遣元に損害賠償を支払う

新たな就業機会を確保できない場合、派遣元は派遣労働者との契約を切るのに解雇予告手当を支払う必要があります。このとき、派遣先の申し入れが解雇前の30日より遅れると、その間の賃金相当額が派遣元への賠償金として科されます。

日雇い派遣が認められる条件

雇用期間が30日以内の日雇い派遣は基本、禁止です。が、これもまた例外があります。具体的には次の条件に該当する方々です。

また、専門的な知識が必要な以下の26業種も日雇い派遣が認められています。

  1. ソフトウェア開発
  2. 機械設計
  3. 放送機器等操作
  4. 放送番組等演出
  5. 事務用機器操作
  6. 翻訳・通訳・速記
  7. 秘書
  8. ファイリング
  9. 調査
  10. 財務処理
  11. 取引文書作成
  12. デモンストレーション
  13. 添乗
  14. 建築物清掃
  15. 建築設備運転点検 、整備
  16. 案内・受付、駐車場管理等
  17. 研究開発
  18. 事業の実施体制等の企画・立案
  19. 書籍等の制作・編集
  20. 広告デザイン
  21. インテリアコーディネーター
  22. アナウンサー
  23. OAインストラクション
  24. テレマーケティングの営業
  25. セールスエンジニアリングの営業 、金融商品の営業
  26. 放送番組等における大道具・小道具スタッフ

契約書記載外の内容が認められる条件

すでにお伝えしているとおり、派遣労働者を契約書の定めにない業務に従事させることは禁止です。出張、残業、飲み会、接待も契約書記載外であれば原則、認められません。

ただし、どうしてもやむを得ず契約書の内容を見直す必要が出てきた場合は、派遣元・派遣先・派遣社員の三者間での合意があれば、変更可能です。


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派遣法に違反した場合の罰則規定

派遣法違反を表現

1986年の制定から企業の要請を受けて規制緩和に進んだ労働者派遣法は、2012年から派遣社員を守る法律へと変わり、幾度も改正を重ねてきました。現在、企業に求められることは明らかに増えています。以下、よくある違反事項と罰則規定です。 

▶関連記事:労働者派遣法とは?改正の歴史を通じて内容をわかりやすく解説

違反内容罰則規定
公衆衛生上あるいは公衆道徳上有害な業務への派遣1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金(第58条)
就業条件を派遣労働者に説明しなかった場合(第34条)30万円以下の罰金(第61条)
3年を超えて同じ派遣先に継続して派遣させた場合(第35条の3)30万円以下の罰金(第61条)
必要な報告をしなかった、あるいは虚偽の報告をした場合(第50条)30万円以下の罰金(第61条)
違反申告した派遣労働者に対して解雇、そのほか不利益な取り扱いをした場合(第49条の2)6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金

派遣労働者に対し就業条件を明示しない

派遣元は派遣労働者へ就業条件を説明する義務があります。これを怠ると、規定により30万円以下の罰金が科されます。

3年を超えて同じ職場に派遣させる

同じ職場・部署で派遣スタッフとして働ける期間は最長3年までです。この通称3年ルールを守らなければ、30万円以下の罰金が科されます。とはいえ、期間制限日を迎える1ヶ月前までに、派遣先の過半数労働組合に意見聴取を行えば、結果次第では最大で+3年の延長も可能です。また、同条件での延長に縛られなければ、派遣労働者は3年経った後もその職場に勤めることはできます。具体的には、派遣先による直接雇用や派遣元が無期雇用派遣契約を結ぶといったケースです。

▶関連記事:派遣の抵触日とは?リセットルールや延長手続きなど交えて解説

違反申告した派遣労働者に不利益な取り扱いをする

派遣労働者は、勤め先が法律違反か否かについてハローワークに相談(通報)可能です。仮に違反が認められたとき、その事実は厚生労働大臣のもとにも届きます。が、(派遣先及び派遣元は)これを不服とし、申告した派遣労働者に対して解雇やその他の不利益な取り扱いをするのはご法度です。6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されます。

労使協定を報告しない

労使協定とは、労働者と事業主の間で取り決める協定です。労働基準法第36条で定められ、労働組合または代表者が賃金や処遇に関して取り決めます 

この労使協定を締結した場合は、毎年6月30日までに労働基準監督署へ書面の複写を事業報告書と一緒に提出しなくてはなりません。忘れる、あるいは虚偽の報告をした場合、罰則の対象です。30万円以下の罰金が科されます。

派遣法に違反しないための対処法

対処法のイメージ

違反内容、罰則規定を理解したからといって決して油断できません。意図せず労働者派遣法に抵触してしまうケースもあります。無用なトラブルを回避するためにも対策を立てておくことは大切です。以下、いくつかピックアップします。

二重派遣への対策

派遣先が知る由もないなかで指揮命令権が他社に移り、いつの間にか二重派遣の構造が生まれていることがあります。そうした事態を防ぐためには、派遣労働者本人への定期的なヒアリングが必要です。具体的には「指揮命令者は誰か」「契約書どおりの業務内容か」「契約書どおりの就業場所か」などはマストで確認しておきましょう。

3年ルールへの対策

繰り返しますが、派遣元は派遣労働者を同じ派遣先へ3年超えて派遣することはできません。3年の月日をしっかり管理したうえで、部署異動や雇用形態の変更など、適宜対策を講じるようにしましょう。

苦情処理体制の整備

2021年の派遣法改正により、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、誠実かつ主体的に(派遣労働者の)苦情対応を行うことが義務付けられています。したがって、窓口の担当者選定、スムーズな対応方法の確立、派遣元との連携など、諸々体制を整えることが必須です。加えて、日頃から派遣労働者と密にコミュニケーションを図ることも大事だと考えます。

派遣人事に携わるなら違反行為に注意しよう

派遣会社の人事担当者

派遣を巡る禁止事項(対象業務含む)、違反行為は思いのほか多く、そして煩雑です。だからこそ、一つひとつ確実に認識しておく必要があります。派遣社員を採用する立場であればなおさらです。知識を増やし理解を深め、違反のない盤石な体制を築けたなら、求職者に対しても安心感を与えることにつながり、結果、応募状況にも寄与する期待が持てるでしょう。


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