雇い入れ時健康診断とは

冒頭でも述べたとおり、新たに従業員を雇い入れる際、雇用者である事業主には健康診断の実施が義務付けられています。本章ではまず、雇い入れ時健康診断とは何か基本的なポイントを解説。労働安全衛生規則における定義や実施のタイミング、対象者、加えて例外規定まで順を追って解説します。
労働安全衛生規則での定義
労働安全衛生規則は、職場における労働者の健康と安全を確保するための法律です。そのなかでは、雇い入れ時健康診断に関する規定も含まれ、前述したように事業者が労働者を雇い入れる際には健康診断を実施しなければならないことが明確に定められています。
行われるタイミング
雇い入れ時健康診断は、従業員を正式に雇用する前、または雇用開始直後の実施が一般的です。採用内定の後か、実際に業務を開始するまでの期間に行ってもらえるとスムーズですが、入社後にずれる場合は遅くとも1ヶ月以内の対応が望ましいでしょう。
対象者
雇い入れ時健康診断の対象は、1年以上の勤続が見込まれ、かつ週30時間以上(通常の労働者が週に働く所定の時間に対して 4分の3以上)の労働が見込まれる方です。アルバイト・パートも含まれます。なお、(当該事業場において同種の業務に従事する)通常の労働者の所定労働時間数に対し、4分の3未満でも概ね2 分の1 以上である方に対しては、健康診断の実施が推奨されています。
イレギュラーのケース
労働安全衛生規則第四十三条では例外も記載されています。それは、雇い入れ前の3ヶ月以内に医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出できる場合です。このケースでは当該項目について再度の実施は不要とされています。もちろん、証明書に記載のない(証明できない)項目については再度受診しなければなりません。
雇い入れ時健康診断の検査項目

労働安全衛生規則第四十三条に記載されている雇い入れ時健康診断で必須の検査項目は次のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
以下、いくつか補足します。
まず聴力検査は、1,000ヘルツ(Hz)と4,000ヘルツ(Hz)の音が聞こえるかどうかの確認です。
貧血検査は、血色素量及び赤血球数を調べます。
肝機能検査の測定項目は、GOT(血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ)、GPT(血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ)、γ-GTP(ガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ)です。
血中脂質検査は、LDLコレステロール(低比重リポ蛋たん白コレステロール)、HDLコレステロール(高比重リポ蛋たん白コレステロール)、血清トリグリセライドの量を測ります。
尿検査は、尿中の糖及び蛋たん白の有無を確認します。
業種、職種によっては項目の追加が望ましいケースもあるかもしれません。自社の状況に合わせて把握しておきましょう。
なお、上記は厚生労働省が配布しているリーフレット「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~」も参照させていただいています。健康診断の種類、そして項目、さらには健康診断実施後に事業者が取り組まなければならないことについても詳細がわかりやすくまとめてあります。
雇い入れ時健康診断の費用について

さて、いよいよ本題です。雇い入れ時健康診断の実施にあたって費用はどこが負担するのか、また検査項目の追加を希望された場合はどう扱えばよいのか、助成金は活用できるのか、さらに相場はどれぐらいなのか。以下、それぞれ解説します。
原則、会社が負担
雇い入れ時健康診断の費用は、事業者に義務を課している以上、原則として会社が持ちます。そうはいっても負担を減らす方法が無いわけではありません。提携医療機関や健康保険組合の補助を利用することで多少なりとも軽減が可能です。くわしくは、次章「▼雇い入れ時健康診断の費用を抑えるには?」をご確認ください。
社員が検査項目を増やした場合
従業員の希望により法定外の検査項目(腫瘍マーカー、エコー検査など)を追加する場合は本人負担が一般的です。異常の所見があり再検査を行う際も同様ですが、これについては、就業上の措置を決定するために再検査や精密検査の受診を勧奨する企業も見られ、そうなると費用を会社側が持つことも少なくありません。
助成金の活用について
法定外の健康診断(「人間ドック」「生活習慣病予防健診」など)に対しては、国や自治体が設けている助成金制度を活用できることもありますが、法定内でおさまる場合は、原則として助成金の活用はできないと認識しておいた方がよいでしょう。
費用の相場
健康診断の負担費用について相場を調べるとき、インターネット上では たとえば“10,000円~15,000円程度”といった情報などが見られますが、これらはあくまで参考値であり、実際は医療機関、施設によって異なります。診断項目が同じでも、各所の料金設定によって変わってくるわけです。したがって、相場に対する先入観を持たず、比較していくのがよいでしょう。
雇い入れ時健康診断の費用を抑えるには?

健康診断の実施で負担する費用を少しでも軽くしたいなら、以下の方法を取るとよいでしょう。
- 提携医療機関を利用する
- 健康保険組合の補助を利用する
- 医療機関を見直す
では、それぞれ解説します。
提携医療機関を利用する
企業が特定の医療機関と提携を結ぶことで、通常よりも割安な料金で健康診断を実施できるかもしれません。特に複数人を一括で受診させる場合や、年に複数回健診を依頼する場合は、単価交渉もしやすく有効かと思われます。そのほか提携先を利用することによってスケジュールやメニューなども柔軟に調整してもらえる期待が持てるでしょう。
健康保険組合の補助を利用する
加入している健康保険組合の補助を利用することも、健康診断で負担する費用を抑える一つの方法だと考えます。もちろん、内容は組合によって異なりますが、対象年齢や受診機関といった条件を満たせば、法定外の健診も一部は割安で受診してもらうことができるはずです。
医療機関を見直す
先述したように、医療機関によって料金設定は区々です。当然ながら、今よりも安いところに頼めばひとまず費用負担は減らせます。また、団体割引なども比較するうえではポイントになるでしょう。とはいえ、安さに固執すると利便性や検査の精度などを犠牲にする恐れもあるため、総合的な視点で病院を選ぶことをおすすめします。
その他、雇い入れ時健康診断に関するよくある質問

最後に、雇い入れ時健康診断に関するよくある質問にお答えします。
内定者に対しての案内や費用の精算はどうすればよいか?
雇い入れ時健康診断は、労働者が就業する前に実施する必要があるため、入社予定者に対し、内定段階で健診の案内を行うのが一般的です。通知の際には、受診時期や必要な検査項目、受診場所、提出期限、費用負担の扱いを明示した書面を用意するとスムーズです。費用については、会社が指定する医療機関での受診であれば企業負担とし、本人が自己手配した場合は一度立替払いとして後日精算するなどの運用がよく見られます。
定期健康診断で代用可能か?
定期健康診断と雇い入れ時健康診断は、目的や実施要件が異なるため、通常は代用することはできません。労働安全衛生法では、雇い入れ時健康診断は新たに雇用される従業員の健康状態を確認するために必要とされ、特定の検査項目が義務付けられています。一方、定期健康診断はすでに雇用されている従業員に対して文字どおり定期的に行われるもので、雇用者の健康状態の維持や労働環境の改善が目的です。ただし、例外があります。拙稿にてイレギュラーのケースとして紹介しましたが、前職で3ヶ月以内に健康診断を受け、内容に不足が無ければその結果を示した書類で以て代用は可能です。
雇い入れ時健康診断の結果で採用を取り消せるのか?
健康診断の結果を理由に採用を取り消すことは、基本的に認められません。企業が採用取り消しを行う場合、合理的な理由が必要とされ、その判断が恣意的でないことが求められるためです。ただし、採用を決めた時点で知りえなかった健康上の問題が発覚し、それを理由として採用を取り消すことが、社会通念上妥当であると認められる場合に関しては、その限りではありません。だからといって一方的に施行してしまうと、法的なトラブルに発展するリスクも懸念されます。したがって、話がこじれそうなら、労働関連の法律にくわしい専門家への相談も必要でしょう。
費用負担が気になるなら採用サービスから見直そう!

雇い入れ時健康診断の費用に限らず、採用全体にかかるコストの調整は人事担当者にとって頭を悩ます問題の一つでしょう。やはり費用負担が気になることに対して根本解決するのであれば、採用サービスの見直しから始めた方がよいと考えます。健康診断費用は、採用活動における一部の支出に過ぎません。求人広告の掲載、選考対応、内定者フォロー……等々、採用1人あたりにかかってくるコストは決して馬鹿にならないものです。こうした採用業務全体の負担を軽減するためにも、効率的な母集団形成や歩留まりの改善を視野に入れた採用サービスの選定が重要なのです。 なお、dipが提供する『バイトル』をはじめとした採用支援サービスは、職種や雇用形態などそれぞれに得意分野を持っています。一方で共通するのは担当者が一気通貫でサポートする点です。無駄のない最適なプランの選定や運用ノウハウが共有されるため安心してお任せできます。採用コストの最適化に取り組みたい企業様は、ぜひご利用の程、検討ください。
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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所
代表 荒武 慎一
同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。