派遣に関する知識が曖昧な企業の人事担当者の方に向けて、本記事では「二重派遣」を取り上げます。知らずに及べば法に抵触してしまう禁止行為です。罰則や防止策も交えてわかりやすく解説します。

二重派遣とは何かわかりやすく解説!禁止理由や罰則、防止策にも言及

  • 2023.06.02
  • 2024.11.26

派遣に関する知識が曖昧な企業の人事担当者の方に向けて、本記事では「二重派遣」を取り上げます。知らずに及べば法に抵触してしまう禁止行為です。罰則や防止策も交えてわかりやすく解説します。

二重派遣とは?

人材派遣を行う会社の担当者

そもそも派遣とは何か、あらためてその仕組みを述べると、派遣会社と雇用関係を結んでいる人材に、自社(派遣先)で働いてもらうサービスです。※詳細な定義は、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)で確認できます。

▶関連記事:労働者派遣法とは?改正の歴史を通じて内容をわかりやすく解説

業務内容は派遣先の企業が指示する一方で、給与の支払いや福利厚生に関しては派遣会社が行います。

そのうえで二重派遣とは何を指すのでしょうか。

二重派遣とは、ずばり、派遣先が派遣労働者を別の企業に派遣することです。と、冒頭で触れたとおりこれは違法行為に当たります。また、そのほかのパターンでは偽装請負も二重派遣です。以下、補足説明します。

派遣先が派遣労働者を別の企業に派遣

上述のとおり、派遣会社から送り出された派遣労働者を別の企業に派遣することは、二重派遣とみなされます。派遣労働者が第二の派遣先の指揮命令のもと業務を行う状況は、まさに典型的な二重派遣の構図です。

通常の派遣と二重派遣の違いがよくわかる図

偽装請負

派遣業務における指揮命令権は派遣先にあります。他方、請負の場合、指揮命令権があるのは労働契約を結んだ会社です。

仮に派遣会社をA社、第一の派遣先をB社、第二の派遣先をC社としましょう。C社の指揮命令で派遣労働者を働かせることは、再三お伝えしているとおり二重派遣に該当します。一方でB社がC社から請負で受注した仕事を派遣労働者に任せることは、形式上契約が成立します。しかし実態として、ここでもC社が業務に関する指揮命令を行っているのであれば(派遣労働者がC社の指示で業務に従事しているのなら)それは偽装請負です。そしてこれもまた、二重派遣とみなされます。

一見、請負契約のようでもその実、発注者が労働者に指揮命令しているのが偽装請負です。派遣事業許可に代表される条件や規制が不要な分、請負契約はその性質を悪用されることも珍しくなく、度々問題視されています。


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二重派遣を巡る具体的な罰則、禁止理由など

二重派遣が禁止であることを表現

繰り返しお伝えしているとおり、二重派遣は法律で禁止されています。以下、法律上ではどのように規定されているか、罰則とあわせて具体的に説明します。

法律上での言及

二重派遣は、職業安定法の第44条に抵触する行為です。

何人も、次条(第45条)に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

二重派遣は上記の労働者供給事業行為に該当します。なぜなら、派遣先と派遣労働者の間には雇用関係が認められないからです(この場合、両者の間にあるのは指揮命令関係)。 

また、労働基準法第6条で規定されている中間搾取の排除にも該当します。

何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

これは企業と労働者の間に入り、いわゆるピンハネを行うことの禁止を意味します。なお、派遣会社と派遣労働者の場合は両者が雇用関係にあるため、上記の法には抵触しません。

罰則について

二重派遣を行った派遣先は、職業安定法第64条により、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます。このとき、第二の派遣先も同様に処罰されますが、二重派遣だったことを知らずに受け入れていた場合に限っては非該当です。また、労働者も対象外とみなされます。

中間搾取の排除に該当する場合は、労働基準法第118条により、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。この罰則は再派遣を行った派遣先のみが対象です。

二重派遣が禁止されている理由

二重派遣はなぜ禁止されているのか。具体的には次の理由が挙げられます。

いずれも労働者からすると不安でしかありません。ゆえに禁止は必然だといえるでしょう。以下、それぞれについて補足します。

責任の所在が曖昧

二重派遣がまかり通ってしまうと、たちまち責任の所在は不明瞭になってしまいます。たとえば派遣労働者が業務中にケガをしたとき、本来、派遣会社に労災保険を申請し、派遣先の責任者がその状況を証明する流れですが、二重派遣が行われていた場合、派遣先同士で責任を擦り付けることなどあるかもしれません。そのほかトラブルが起きた際、そうすんなりとはいかなくなることは容易に想像できます。

支払いが曖昧

前項の内容とも重なりますが、派遣会社への支払いを巡っては派遣先同士が揉めるリスクも考えられます。いざこざの挙句、果たして派遣労働者に適切な賃金が支払われるのかどうかも甚だ疑問です。結局損をするのは労働者なのかもしれません。

仲介手数料が嵩む

派遣は「派遣先→派遣会社→派遣労働者」の流れで報酬・賃金が支払われる仕組みです。当然、二重派遣の場合は、そこに再派遣先が加わります。つまり、「再派遣先→派遣先→派遣会社→派遣労働者」のように介在する業者が増える分、仲介手数料がさらに発生することになるわけです。その結果、いうまでもなく、派遣労働者の取り分は減ってしまいます。

労働条件が曖昧

二重派遣によって、労働者の希望とかけ離れた環境に再派遣されてしまうことも危惧されます。いうなればガチャ要素が強まるわけです。労働者がそうした曖昧な条件で勤務せざるを得ない状況が跋扈すれば、当然、社会問題になりかねません。


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二重派遣に対するケア、防止策

二重派遣に対するリスクヘッジを表現

意図せず二重派遣が発覚した場合に限っては先述のとおり法的に例外とみなされます。しかし、トラブルが生じることには違いありません。そうならないよう、あらためてどのポイントをケアし、どう防止策を講じればよいかお伝えします。

雇用関係を確認

派遣元A社と雇用契約を結ぶ派遣労働者が、A社と直接派遣契約を結んでいるB社に派遣されている構図こそが正常です。そう、あくまでも派遣労働者は派遣会社に属します。つまり、雇用関係が成り立つのはこの両者であって、裏を返せば給与の支払いを派遣先が行うなどは断じてご法度です。 

派遣労働者と派遣会社、派遣会社と派遣先、それぞれ重複することなく雇用契約が結ばれているか、慎重にチェックする必要があります。たとえば、雇用証明書や健康保険証と照らし合わせるのもよいでしょう。

指揮命令を確認

指揮命令は派遣先が行わなければなりません。しかし現実問題、派遣会社の人間が勝手な判断で派遣労働者に対し業務を指示することもあり得ます。そこでカギを握るのが、派遣会社と派遣先が締結している「労働者派遣個別契約書」です。もちろん、確認してほしいのは指揮命令者の欄。ここに記されているのが派遣先でなかったり、不明瞭だったりする場合は、二重派遣の可能性を疑いましょう。特に派遣先は、派遣労働者が誰の指揮命令で働く契約になっているか、事前の確認が鉄則です。

派遣労働者への理解促進

指揮命令権が他社に移り、いつの間にか二重派遣に陥る場合もあります。こうした事態の回避には、業務委託契約、委任契約、準委任契約、請負契約などさまざまな種類があるなかでそれら全般を派遣労働者に理解してもらうことが大切です。とりわけ指揮命令者、就業場所、業務内容が契約したものと齟齬がないかのチェックは必須。決して蔑ろにせず、注意喚起してください。


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二重派遣は違法!正しく理解し採用にもつなげよう

人材派遣を行う人事担当者

偽装請負を含めた二重派遣は、派遣労働者の保護と派遣事業の適正な遂行を理由に、禁止される行為です。違反すれば、職業安定法や労働基準法によって罰せられます。人材派遣を活用するなら当然、防止策も視野に入れて把握しておくことが不可欠です。派遣先、派遣会社、派遣労働者、三者の関係を正しく理解し人手不足問題の解消につなげてください。

▶関連記事:派遣雇用の違反事項~禁止業務や契約ルール、罰則、対策交えて解説~

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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所の代表を務める荒武慎一氏

アラタケ社会保険労務士事務所 

代表 荒武 慎一

同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。

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