採用条件、採用基準を明確にすることの重要性

企業が人材を確保するうえでもっとも根源的なしかるべき準備は、端的に述べるならば「採用条件を決めて、それを採用基準として組織内に浸透させること」です。採用条件と採用基準が自然と連動していることが、一連の採用活動には欠かせないものと考えます。いわば設定する採用条件こそ採用基準です。これがなければ、採用業務に関して次のようなリスクが発生します。
- 採用担当者の判断や好みによって採用者が決まり、(採用の)公平性に欠ける
- 人事が理想とする人材、現場が求めている人材、そして採用者本人の間でミスマッチが発生する
- 求める人材へのアプローチがうまくいかず、採用までたどり着かない
- 退職者が増加する
上記の事態に陥ることがないよう、具体的には次の項目をあらかじめ洗い出しておくとよいでしょう。当然、そのまま採用条件、採用基準としても活用できます。
- 求める経歴
- 業務に必要な知識、スキル
- あれば望ましい保有資格
なお、かつてはこうした要素に加え、年齢・性別も同様に設定できました。しかし現在、それらは労働施策総合推進法ならびに男女雇用機会均等法によりご法度とされています。ただし例外もいくつかあり、たとえば定年による年齢の上限やキャリア形成を図る観点からの年齢の下限、法令の規定による年齢制限、警備・守護といった防犯の観点からの性別制限などは、必要に応じて求人広告にも掲載可能です(もちろん、今後施行される法への目配りは都度、欠かさないようにしましょう)。
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採用条件をスムーズに設定するコツ

採用条件をすんなりと決めていくには、相応の手順に沿うことが大切です。具体的には、以下のステップをおすすめします。
該当する部署へのヒアリング
まずは、採用を行う部署の責任者に、何名を迎え入れようとしているのか、任せたい業務は何かなどヒアリングしていきます。こうした基本的な情報はもちろん、より踏み込んだところでは、育成環境が整っているか否かや、適性と思われる性格、価値観について聞いてみるのもとよいでしょう。
求める人材の明確化
次に、ヒアリングした内容をもとにを人物像を膨らましていきます。いわゆるペルソナ設定です。そうやって求める人材がクリアになれば、満たすべき採用条件の方針はおのずと決まってきます。なお、ペルソナ設定後はあらためてヒアリングした部署と擦り合わせを行い、ズレなどあれば適宜修正を加えましょう。こうして徐々に、採用条件が定まっていきます。
▶関連記事:求める人材を明確化!求人募集での伝え方まで企業向けに解説
コンピテンシーモデルの作成
ヒアリング内容から求める人材を創り上げることに苦労される場合、コンピテンシーモデルの作成もおすすめです。
コンピテンシーとは、業績の高い方に共通して観察される行動・態度・思考パターン・判断基準などを意味します。ゆえにコンピテンシーモデルとは、共通して成果を出す方々の行動特性をモデル化したものです。 優秀な従業員の共通項を洗い出し、ヒアリング内容と照らし合わせることで、さらに解像度の高いペルソナができあがるかもしれません。もしくは、その共通項がそのまま採用条件として使えるケースも考えられます。
調査データの活用
有効求人倍率や求職者のお仕事探しにおける年間動向など採用市場での調査内容をうまく活用することで、採用条件が独りよがりなもの(企業都合に)に堕するパターンを回避してくれる期待が持てます。無論、競合他社の動きに関するリサーチも必須です。
このように社内のヒアリングから社外を見渡して得られた情報まで、一貫して十分なエビデンスを湛えたデータが揃えば、求人広告でも応募する側の目線や心情に寄り添った打ち出しができるものと考えます。採用条件もまた然り。求職者のインサイトをくすぐる絶妙なラインを引くのに大いに役立てられるでしょう。「応募者が集まらない」「集まっても求める人材がやってこない」といった悩みは、大抵、担当者の頭のなかだけで決めた内容で勝負していることに起因するケースが多々あります。したがって、周囲や市場の声を取り入れることは、採用条件を設定するうえでもっとも肝になる要素かもしれません。
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新卒と中途で変わる採用条件、採用基準

採用条件を設定する流れが大まかにわかったところで、以降、具体的にどのような採用基準を設けるとよいかお伝えします。
まずは、ざっくり新卒採用と中途採用に分けて紹介。それぞれの傾向の違いにも注目していただけると理解は深まるでしょう。
新卒採用の場合
新卒採用の場合、社会人経験がないことを考慮し、今後の育成を前提にした基準が妥当です。仮に経験や資格など中途採用と同じ物差しで求職者を測ろうとすると、おそらく募集要項の確認段階でそっぽを向かれる羽目になるでしょう。もちろん、これまで頑張ってきたことに自社での活躍を予見させる要素は含まれているとも考えます。が、ことさらそこに固執せず、基本はポテンシャル重視で、その人の姿勢や意識が垣間見える部分で最低限の基準を設けるようにしましょう。具体的には次のとおりです。
人間性:常識的であるか、協調性があるか、誠実か 価値観:何を理想とし何を優先しているか、大事にしている考えは何か、物事をどう捉えているか 主体性:自らの意志・判断をもとに責任を持って行動しているか コミュニケーション能力:年齢、性別、立場などを問わず、あらゆる属性の人と円滑に接することができるか 向上心:仕事への熱意はあるか、チャレンジ精神はあるか 好奇心:業界への興味はあるか、市場を取り巻く状況に思うところはあるか |
中途採用の場合
一方、中途採用の場合、キャリア採用といわれることもあるように、ある程度戦力として計算できる人物を求めるのが一般的です。加えて、懸念点になりやすい社風との相性も見極めていく必要があります。たとえ経験やスキルがあっても、職場になじめなければ活躍は程遠いでしょう。事実、有望株と期待された中途社員でも早期離職につながるケースは往々にしてあります。そのため、ある程度のキャリアやスキルのレベルを基準値と置きつつも、新卒採用同様、コミュニケーション能力や意欲の高さ、そして何より環境適応能力を十分に考慮した採用条件を設定するとよいでしょう。
経歴:募集している職種に精通した経験を持っているか 資格:業務に関連する資格を取得しているか スキル:業務に必要な能力を取得しているか コミュニケーション能力:年齢、性別、立場などを問わず、あらゆる属性の人と円滑に接することができるか 環境適応能力:経験だけにとらわれない柔軟な考え方を持てるか 人間性:常識的であるか、協調性があるか、誠実か 意欲:仕事に対して意欲はあるか、熱量は高いか 向上心:仕事への熱意はあるか、チャレンジ精神はあるか 好奇心:業界への興味はあるか、市場を取り巻く状況に思うところはあるか |
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アルバイトに対する採用条件、採用基準

アルバイト採用においても条件設定は重要です。特にアルバイトの場合、応募基準もまた比較的わかりやすく存在しています。したがって、これらをうまくかみ合わせていくことが、採用条件、採用基準を設けるには大切です。アルバイト応募に至る人が何を考えているのか、そのうえで企業側はどこまでその意向をくみ取り、採用活動につなげていけばよいのか。以下、それぞれの視点での考察です。
アルバイト応募でみられる思考ポイント
まずはアルバイト求人に応募する方々がどの項目を重視し、どういった基準で選んでいるのか、ここ数年みえてきている思考ポイントを説明します。
シフトの柔軟性
家事・育児を優先したい主婦(主夫)、時期によってはテストや就職活動といったイベントで大忙しの学生、そして複数のアルバイトを掛け持ちしているフリーター……。彼・彼女たちにとっては、働ける日時をいかに自由に調整できるか、すなわち柔軟なシフトが組めるかどうかが大事です。近年はこの点を重視する声が如実に増えています。
教育体制の整備
教育体制が整っていることは働きやすさに直結する要素として、無論、アルバイトにとっても気になるポイントです。マニュアル、研修期間、教育担当者などあらかじめで用意されていることがわかれば、大きな安心材料になるでしょう。逆にこれらが不明瞭であれば当然、心配になる方も出てくるはずです。いずれにせよ、教育体制が整備されているか否かは企業への信用度にもつながってくるため、非常に大事だといえます。
時給の妥当性
業務内容に対して給料が割に合うかどうかは多くの求職者が吟味するポイントです。そのため、時給はもちろん、仕事内容についても細かくチェックされると考えてよいでしょう。また、最近の傾向としては勤務場所も重視され、家からアルバイト先までの距離がいかに近いかが求められています。そしてこれは、そこで費やす所要時間も含めて時給が捉えられていることを意味します。いわゆるタイムパフォーマンス、そうタイパです。時給が高ければ募集してくるとは限りません。企業側はこうした世相にもしっかり目配りすることが必要です。
さらには、額面の時給だけでなく、今後アップしていく余地まで知りたがっている方は少なくありません。したがって、時給アップの有用性も理解したうえで、妥当なラインを調整していくことが望ましいでしょう。
▶関連記事:アルバイト・パートの昇給について時給アップの事例も交えて解説
アルバイト採用で設定したい最低限の条件、基準
アルバイト採用において最低限設けておきたい条件は次のとおりです。
人間性:態度、言葉づかいなど常識的であるか コミュニケーション能力:年齢、性別、立場などを問わず、あらゆる属性の人と円滑に接することができるか |
人間性とコミュニケーション能力。必須要件はずばりこの2点です。もちろん、スキルや経験などあれば望ましいとはいえ、多くを求めてしまったばかりに応募が集まらないことも考えられます。ゆえに最低限許容できる要素としては、ひとまず上記が基本です。そのうえで、時給や家までの距離、教育体制、シフトの調整可能範囲などを独自の基準で設けていけるとよいでしょう。
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採用条件を設ける際の注意点

いざ採用条件や採用基準を設定する際、大なり小なり注意点は存在します。なかには法に抵触するものもあり、その場合、知らなかったでは済まされません。以下、確実におさえ、慎重に取り扱うようにしましょう。
労働条件の明記を忘れない
採用条件をそのまま労働条件として取り扱う場合、当然ながら募集要項にはしっかり明記することが必要です。これは労働基準法にて義務づけられています。
具体的な項目としては業務内容、就業場所、勤務時間、休日、休憩時間、契約期間などが挙げられます。
▶関連記事:労働条件の明示義務について、ルールの改正とあわせて解説
差別(と解釈される)項目には十分配慮する
明記すべき労働条件がある一方で、避けなければならない項目も存在します。以下、取り上げるものはいずれも差別と解釈される恐れがあるため、採用条件として設定する際には、十分に配慮しましょう。
【就職差別につながるおそれがある 14事項】 ①本籍や出身に関すること ※「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることは禁止されています。 ②家族に関すること ③住宅状況に関すること ④生活環境や家庭環境に関すること ⑤宗教に関すること ⑥支持政党に関すること ⑦人生観や生活信条に関すること ⑧尊敬する人物に関すること ⑨思想に関すること ➉労働組合や学生運動などの社会運動に関すること ⑪購読している新聞、雑誌、愛読書などに関すること ⑫身元調査を実施すること ※現住所までの略図を書かせることも禁止されています。 ⑬本人の適性や能力に関係ない事項を確認すること ⑭合理的・客観的に必要性が認められない健康診断を実施すること |
欲しい人材に社内で齟齬が起きないようにする
人事側が良いと思う方と実際に働く現場側で求められる人材が同じとは限りません。さらには、経営層の希望ともズレが生じている可能性があります。こうした状況に陥ってしまうのは、大抵、現場や経営陣の意見を聞かずに条件を定めてしまうことが原因です。たとえうまく応募者を集めて採用につながったとしても、入社後にギャップが発覚し何かしら困難が生じるケースは往々にして見受けられます。この場合、企業側だけでなく雇われる側も戸惑う結果になりかねません。したがって、採用条件を設定する時は、社内全体で認識を統一すべく、すり合わせの実施も必要でしょう。
短絡的にハードルを下げない
人材不足の昨今、採用条件を低く設定しすぎるのも問題です。一時的にでも人が入れば確かに現状の窮地からは脱することができるかもしれません。しかし、誰でもいいと短絡してしまうと(お気持ちはわからなくありませんが)、痛い目に遭う恐れもまた高い確率で考えられます。一人ひとりの仕事の負担軽減が目的だったにもかかわらず、ミスの頻出によって逆に作業量が増える羽目になったり、その気性の荒さから周りのメンバーと非建設的に争ったりと、こうした事態に陥ることは“百害あって一利なし”です。したがって、くれぐれも安易に採用のハードルを下げないよう気を付けましょう。
採用条件、採用基準は定期的な見直しも必要
一回で完璧な採用条件や採用基準を設けることは非常に困難です。むしろ不可能といっても過言ではないでしょう。そのため、検証や改善を重ねることはもはや必須といってもいいかもしれません。と、同時に設定した採用条件、採用基準が仮にうまくハマったとしても、毎度思いどおりにいくとは限らないことも肝に銘じておきましょう。市況、トレンドを都度、調査しながら臨機応変に取り組むことが大切です。
採用条件、採用基準の設定次第で求人結果は変わる!

雇用形態問わず、有意義な求人につなげるためにも採用条件の設定は大事です。求める人材が明確な分、目標に対する社内での意識も統一されやすくなるでしょう。とはいえ、拙稿で述べたように、担当者あるいは該当部署が独断で決めてしまうのは考えものです。組織の方針とぶれることや、入社された方にとっても不本意な状況を招いてしまい、結果的に後悔する羽目になりかねません。採用条件、そして採用基準が果たして適切かどうか。応募者の入社後も含めて、採用条件、採用基準の設定による求人結果への影響は、決して些細なものでありません。だからこそ闇雲あるいは安直に決めるのは避けたいところ。周囲を巻き込みながら慎重に練り上げ、折に触れ見直す機会も作ることが総合的に望ましいものと考えます。
なお、採用条件を設定し求人に注力されたい企業様には、ぜひdip(ディップ)が提供するサービスについてもご認識いただけますと幸いです。
アルバイト、パート、正社員、契約社員、派遣、専門領域で活躍するプロ人材……等々、求人したい雇用形態のバリエーションもさることながら、まさに、あらゆる採用条件、採用基準に応じて求職者とのマッチングを創出します。
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