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アルバイト・パートの時給を決める方法

アルバイトやパートタイムスタッフの時給を決める際には、いくつか留意すべきポイントがあります。ずばり、守るべきルール、相場、柔軟な調整です。したがって、時給を決める方法は、これらをうまく反映させることだといえます。以下、それぞれについての簡単な解説です。
守らなければならないルールの確認
時給設定においては守らなければならないルールがあります。一つは賃金支払いの5原則です。そしてもう一つ、最低賃金を下回ることも許されません。これらは労働者の権利を保護し、公正な労働環境を維持するための基本的なルールです。仮に違反してしまった場合は、罰則を受けることになります。当然、自社の評判にも悪影響を及ぼすでしょう。
なお、賃金支払いの5原則と最低賃金については、後の章でくわしく解説します。
比較が想定される相場の把握
適切な時給を決めるためには、労働市場の相場を把握することも大事です。具体的には、以下の調査を行うことをおすすめします。
- 競合他社の時給
- 近隣エリアの時給
- 労働市場全体の時給
これらをおさえておくことで、適切なラインが見え、客観的にも的外れの額を提示せずに済むでしょう。あるいは自社の待遇を魅力的に映すことにおいても大いに参考になるはずです。
なお、相場については、後の章でくわしく解説します。
好印象を与える柔軟な調整
時給設定にあたっては、広い視野が必要です。とりもなおさず、求職者や既存スタッフに対して好印象を与える工夫も求められます。たとえば、給与体系そのものを見直すのも一つです。諸々の手当をうまく組み込むことで見え方も変わってくるかもしれません。昇給制度も大事です。現時点からどれだけ上がっていくのか、未来に対する希望を提示してあげることで、求職者も既存スタッフも期待やモチベーションが変わってきます。
なお、こうした調整における具体的なコツについては、後の章でくわしく解説します。
時給を決める前に知っておくべき賃金支払いの5原則について

賃金支払いの5原則は、雇用主の法的義務であり、従業員の権利を保護するうえで欠かせません。具体的には次の5つが該当します。
- 通貨払い
- 直接払い
- 全額払い
- 月 1 回以上払い
- 一定期日払い
以下、それぞれ詳述します。
通貨払い
通貨払いの原則とは、賃金を現金(日本円)で支払わなければならないルールです。つまり、商品券やギフトカードでの支払いは認められません。仮想通貨も現時点では対象から外れています。
直接払い
直接払いの原則とは、賃金を労働者本人に直接支払わなければならないルールです。中間搾取を防ぎ、確実に労働者の手元に賃金が届くよう定められています。
他方、例外もあります。病気や事故で本人が受け取れないケースや、従業員が未成年の場合です。このとき、家族や後見人への支払いが認められます。
全額払い
全額払いの原則とは、賃金の全額を支払わなければならないルールです。雇用主が一方的に賃金の一部を控除してはいけません。ただし、以下の法定控除は認められています。
- 所得税や住民税などの税金
- 健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料
- 労使協定に基づく控除(組合費など)
一方で、次のケースにおけるルールも注意が必要です。
- 欠勤や遅刻による控除は、事前に労働契約で定められている場合にのみ可能。
- 会社の備品を壊したとしても、一方的に賃金から控除することは違法。
月1回以上払い
月1回以上払いの原則とは、賃金の支払い頻度を最低でも月1回以上にしなければならないルールです。「毎月25日の支払い」や「毎月15日と30日に分割して支払い」などが挙げられます。なお、賞与など、臨時的に支払われる賃金は、この原則の対象外です。また、給与計算の都合上、締め日と支払日にずれが生じても問題ありません。
一定期日払い
一定期日払いの原則とは、賃金の支払日を毎月決まった日に設定しなければならないルールです。前述した「毎月25日の支払い」や「毎月15日と30日に分割して支払い」などに加えて、「毎月第4金曜日」のように曜日指定で決めることもできます。なお、支払日が休日に当たる場合は、前営業日に支払うのが一般的です。
時給を決める前に確認すべき最低賃金について

最低賃金は、雇用主が労働者に対して支払うべき賃金の最低額を定めたものです。これは労働者の生活の安定を保ち、労働条件の向上を図るために設けられています。時給を設定する際には、必ず最低賃金を確認し、その額を下回らないよう気を付けましょう。本章では、(各都道府県で定められた)地域別最低賃金と(産業別に定められた)特定最低賃金について解説します。
地域別最低賃金
地域別最低賃金は都道府県ごとに定められ、毎年10月頃に改定されます。2024年8月現在の情報として、目安額、発行年月日については下表のとおりです。
参照:厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について」
都道府県 | 最低賃金額※目安 | 発効年月日※目安 |
---|---|---|
北海道 | 1,010 | 24/10/1 |
青森 | 948 | 24/10/1 |
岩手 | 943 | 24/10/1 |
宮城 | 973 | 24/10/1 |
秋田 | 947 | 24/10/1 |
山形 | 950 | 24/10/1 |
福島 | 950 | 24/10/1 |
茨城 | 1,003 | 24/10/1 |
栃木 | 1,004 | 24/10/1 |
群馬 | 985 | 24/10/1 |
埼玉 | 1,078 | 24/10/1 |
千葉 | 1,076 | 24/10/1 |
東京 | 1,163 | 24/10/1 |
神奈川 | 1,162 | 24/10/1 |
新潟 | 981 | 24/10/1 |
富山 | 998 | 24/10/1 |
石川 | 983 | 24/10/1 |
福井 | 981 | 24/10/1 |
山梨 | 988 | 24/10/1 |
長野 | 998 | 24/10/1 |
岐阜 | 1,000 | 24/10/1 |
静岡 | 1,034 | 24/10/1 |
愛知 | 1,077 | 24/10/1 |
三重 | 1,023 | 24/10/1 |
滋賀 | 1,017 | 24/10/1 |
京都 | 1,058 | 24/10/1 |
大阪 | 1,114 | 24/10/1 |
兵庫 | 1,051 | 24/10/1 |
奈良 | 986 | 24/10/1 |
和歌山 | 979 | 24/10/1 |
鳥取 | 950 | 24/10/1 |
島根 | 954 | 24/10/1 |
岡山 | 982 | 24/10/1 |
広島 | 1,020 | 24/10/1 |
山口 | 978 | 24/10/1 |
徳島 | 946 | 24/10/1 |
香川 | 968 | 24/10/1 |
愛媛 | 947 | 24/10/1 |
高知 | 947 | 24/10/1 |
福岡 | 991 | 24/10/1 |
佐賀 | 950 | 24/10/1 |
長崎 | 948 | 24/10/1 |
熊本 | 948 | 24/10/1 |
大分 | 949 | 24/10/1 |
宮崎 | 947 | 24/10/1 |
鹿児島 | 947 | 24/10/1 |
沖縄 | 946 | 24/10/1 |
最低賃金は年々上昇傾向にあります。2023年度は全国平均で43円上昇しました。2024年の引き上げ額は、目下一律50円で話が進んでいます。
▶関連記事:2024年度の最低賃金(地域別、全国平均)~引き上げ額は?いつから適用?~
特定最低賃金
特定最低賃金は、特定の産業や職種に適用される最低賃金です。一般的に地域別最低賃金よりも高くなります。特別最低賃金の主な特徴は次のとおりです。
- 特定の産業や職種に限定して適用される。
- 都道府県単位で設定され、全国一律ではない。
- 労使の代表者による審議会で決定される。
- 原則として毎年見直しが行われる。
特定最低賃金が適用される主な産業は次のとおりです。
- 製造業(電機、自動車、鉄鋼など)
- 小売業(百貨店、スーパーなど)
- その他特定の産業(新聞、出版など)
下表にて、2023年度の特定最低賃金についていくつか例を紹介します。
都道府県 | 産業 | 最低賃金額 |
---|---|---|
北海道 | 処理牛乳・乳飲料、乳製品、糖類製造業 | 996円 |
東京都 | はん用機械器具、生産用機械器具製造業 | 832円 |
愛知県 | 輸送用機械器具製造業 | 1,028円 |
大阪府 | 鉄鋼業 | 1,066円 |
広島県 | 船舶製造・修理業,舶用機関製造業 | 1,030円 |
愛媛県 | パルプ、紙製造業 | 1,006円 |
福岡県 | 百貨店、総合スーパー | 945円 |
なお、特定最低賃金と地域別最低賃金の両方が適用される場合は、より高い方が適用されます。
時給を決める際の参考になる相場の調査について

適切な時給を決めるプロセスにおいて、労働市場の実態を把握することは欠かせません。本章では、推奨する「競合他社の時給」「近隣エリアの時給」「労働市場全体の時給」の調査方法に加え、職種別、エリア別、全国で見るアルバイトの平均時給についてもピックアップします。
▶関連記事:【企業向け】アルバイトの時給ってどれぐらい?平均時給をチェック!
競合他社の時給
競合他社の時給を調査することは、同じ業界内の適切な水準を知るうえで必要です。下表にて、いくつかの調査方法をまとめています。
調査方法 | 内容 |
---|---|
求人サイトの活用 | 求人情報サイトで競合他社の求人広告を確認する |
業界団体の調査 | 業界団体が実施する賃金調査を参照する |
従業員からの情報 | 入社時の面接や日常のコミュニケーションを通じて、競合他社の時給情報を収集する |
ミステリーショッパー | 競合店に実際に応募して面接を受け、提示される時給を確認する(ただし、倫理的な配慮が必要) |
なお、アルバイト・パートに対する職種別の平均時給を、『バイトル』はじめdipが提供するサービスに掲載されたデータから抽出すると次のとおりです。
職種 | 2024年6月の平均時給 |
---|---|
事務的職業 | 1,299円 |
専門的職業 | 1,804円 |
飲食の職業 | 1,142円 |
販売の職業 | 1,181円 |
サービスの職業 | 1,304円 |
運搬・清掃・包装等の職業 | 1,219円 |
建設の職業 | 1,374円 |
製造・技能の職業 | 1,295円 |
教育の職業 | 1,509円 |
近隣エリアの時給
時給について近隣エリアの相場を知ることは、人材獲得に大いに役立つでしょう。他業種であれ、比較する求職者は多くいらっしゃいます。ここで魅力的な額を提示できると、興味・関心をぐっと引き寄せられるかもしれません。
下表にて、いくつかの調査方法をまとめています。
調査方法 | 内容 |
---|---|
現地調査 | 近隣の店舗や事業所の求人情報を直接確認する |
地域の求人情報誌 | 地域密着型の求人情報誌やフリーペーパーを活用する |
ハローワーク | 地域のハローワークで公開されている求人情報を確認する |
地域の商工会議所 | 地域の賃金調査結果を入手する |
なお、アルバイト・パートに対するエリア別の平均時給を、『バイトル』はじめdipが提供するサービスに掲載されたデータから抽出すると次のとおりです。
エリア | 2024年6月の平均時給 |
---|---|
関東 | 1,431円 |
東海 | 1,203円 |
関西 | 1,290円 |
九州 | 1,397円 |
労働市場全体の時給
当然、労働市場全体の相場を把握することも大事です。今後の傾向を占う意味でも、全体像はしっかりおさえる必要があります。その際、平均値だけでなく、中央値や分布まで確認できると望ましいでしょう。
下表にて、いくつかの調査方法をまとめています。
調査方法 | 内容 |
---|---|
政府統計 | 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」などの公的統計を活用する |
民間調査会社のレポート | 大手人材会社が発表する賃金調査レポートを参照する |
業界紙・経済誌 | 専門誌や経済誌の賃金動向に関する記事を定期的にチェックする |
労働組合の調査 | 産業別労働組合が実施する賃金調査結果を確認する |
なお、アルバイト・パートに対する全国の平均時給(推移)を、『バイトル』はじめdipが提供するサービスに掲載されたデータから抽出すると次のとおりです。
年/月 | 全国の平均時給 |
---|---|
2024年6月 | 1,345円 |
2024年5月 | 1,333円 |
2024年4月 | 1,359円 |
2024年3月 | 1,368円 |
2024年2月 | 1,375円 |
2024年1月 | 1,386円 |
時給設定とセットで見直したい制度

適切な時給設定が必要な理由は、当然、人材確保にかかわるからです。自社の経営状況を考慮する一方で、「求職者に魅力的だと思わせる」「既存スタッフが今以上にやる気を出してくれる」といった期待も捨てがたいゆえに高水準を提示されるケースもあるでしょう。が、それでもなお、他社求人に引けを取ることは考えられます。そもそも、時給を高くすること自体がそう容易くはありません。だからこそ、二の矢、三の矢でほかの取り組みとセットで打ち出す必要があります。
さて、本章で取り上げるのは次の三つです。
- 昇給制度の見直し
- 手当制度の見直し
- 評価制度の見直し
以下、それぞれ詳述します。
昇給制度の見直し
求職者、そして既存スタッフの多くは、昇給の度合いについても気にされています。たとえ時給が高水準でも、先々に希望を見出せなければ、長く働こうといった意欲は高まらないでしょう。逆にいうと、時給でインパクトを残せなくとも昇給制度で訴求できれば、期待感を生み出せるかもしれません。
では、具体的にどのようなポイントを見直せばよいのでしょうか。
まずは頻度です。大体、年1~4回で昇給の機会を設ける企業がほとんどだと考えます。数が多ければ多いほど、魅力的に映るはずです。
次に、昇給させる基準ですが、業績やスキルアップといった評価指標を明確に定め、それを周知することで、既存スタッフに対しても、もやっとした気持ちを抱かせずに済むでしょう。その際、全員一律の昇給額、率にするのか、個々の評価に応じて行うのかも、はっきりさせておきたいところです。
上限も曖昧にせず、自社の支払い能力を超えないよう注意しましょう。
▶関連記事:アルバイト・パートの昇給について時給アップの事例も交えて解説
手当制度の見直し
時給だけでなく手当制度も魅力だとわかれば、自社に対してぐっと興味を引き寄せられるかもしれません。
主な手当の種類と見直しポイントは下表のとおりです。
手当の種類 | 見直しポイントの例 |
---|---|
職務手当 | ・特定の職務や役職に応じて支給する ・責任の重さや必要なスキルに応じて金額を設定する ・定期的に職務内容を見直し、手当額を調整する |
資格手当 | ・業務に関連する資格の取得を奨励する ・資格のレベルや重要度に応じて金額を設定する ・重視する資格やスキルセットを見直す |
勤務地手当 | ・物価の高い地域や遠隔地での勤務に対して支給する ・定期的に各地域の生活コストを調査し、金額を見直す |
残業手当 | ・法定の割増賃金率を遵守しつつ、適切な金額を設定する |
通勤手当 | ・定額制や上限設定から実費支給に変更する |
いざ見直す際は、過度な残業の抑制やリモートワークに伴う状況の変化にも目配りし、慎重に対応していきましょう。
評価制度の見直し
評価制度そのものを明確に、あるいは刷新することも効果的です。納得感のいく評価体系を多くの方が望んでいます。時給を決める際にも、評価に応じてどこまでレンジを広げられるかは確認しておきたいところです。
具体的なポイントは、下表にてまとめています。
設定項目 | 内容 |
---|---|
評価軸 | 業績評価: 数値目標の達成度など、客観的に測定可能な項目 能力評価: スキルや知識の習得度、問題解決能力など 態度評価: チームワーク、積極性、顧客対応力など |
評価方法 | 絶対評価: あらかじめ設定された基準に照らして評価する 相対評価: ほかの従業員との比較で評価する 360度評価: 上司、同僚、部下、顧客などの観点で多角的に評価する |
評価頻度 | 年1回: 年度末に総合的な評価を実施 半年に1回: 半期ごとに振り返りを実施 四半期ごと: 短期的なスパンで目標に対する進捗の確認とあわせて実施 |
フィードバック方法 | 面談形式: 評価者と被評価者が直接対話する 文書形式: 評価結果を文書で通知する オンラインツール: 専用のシステムを使用して評価とフィードバックを行う |
評価制度を見直すにあたっては、いわば時給(昇給も含む)に対する価値観、スタンスが問われます。もちろん、評価する側もその審美眼を肥やしていかなければなりません。
時給の決め方についてポイントまとめ

アルバイトやパートの時給は、安易に決められるものではありません。それは、法律に抵触するリスクだけでなく、応募数にも影響してくるからです。
賃金支払いの5原則と最低賃金は厳守が必須。加えて、求職者や既存スタッフに受け入れられるにはどうすればよいのかまで考える必要があります。もちろん、臨機応変に調整することも大事です。労働市場、法律、自社の経営状況……等々、変化に対して敏感でいられるべく、各方面への目配りは怠らないようにしましょう。
というわけで、拙稿でお伝えしてきたいくつかの視点や方法を、ぜひ時給設定に役立てていただけますと幸いです。
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