実際に存在する求人票の嘘

求人票の記載内容と実際の労働条件に相違があることは、非常に重大な問題です。厚生労働省の調査によると、労働条件の相違に関する苦情は毎年何千件と寄せられていることがわかります。
本章では、求人票に見られる嘘について、給与、労働時間、休日・休暇……等々、さまざまな観点で取り上げます。いずれも他人事であれ、そうした悪徳企業のせいで自社が不当に疑われてしまうこともないとはいえません。
雇用形態に関する嘘
雇用形態に関する嘘でよくあるのが、正社員募集を謳いつつも契約社員やアルバイトとして雇うことや、“試用期間後は正社員”と明記しながら、そもそもそういった制度自体ない、あるいは一向に登用しないケースです。このような虚偽記載を、反論できるように巧妙に仕掛けてきます。
給与に関する嘘
基本給に賞与や残業代を含めて記載することは、労働基準法における賃金の明示義務に抵触します。しかしながら、これを意図的に行い、実態と乖離した給与額を表記する企業も決して珍しくありません。
手当に関する嘘
たとえば交通費の支給条件について上限額を明記せずに「支給」とだけ表記してしまうと全額と誤解を与えてしまう可能性があります。質が悪いのは、それをわかってそう記載する企業です。住宅手当や扶養手当についても、支給条件や金額の詳細を明確にしないケースがあれば、この類かもしれません。求人票に嘘を記載する企業の多くは、別に嘘はついていない状況を巧みに作ろうとします。
労働時間の目安に関する嘘
労働時間に関する嘘については、36協定の上限を超えるほどの長時間労働、残業が蔓延している実態がありながら、求人票では「残業月20時間程度」と記載するケースがよく見られます。こうした企業が労働基準監督署から是正勧告を受けるのは当然です。それでも高を括ってか、この手の嘘はなかなか減りません。
休日・休暇に関する嘘
法定の年次有給休暇を所定休日数に含めたり、祝日出勤の振替制度を明記せず「土日祝休み」と表記したりと、労働基準法における労働条件の明示義務に抵触する求人票もしばしば見受けられます。また、シフト制の職場で休日カレンダーが事前に決まっていないにもかかわらず、「月8日以上の休み」と固定的な表現が用いられるケースも同様です。
業務内容に関する嘘
業務内容の嘘もよく見られます。たとえば求人票ではルート営業中心と書かれていても実際は新規開拓ばかりであったり、Webサイト運用の担当者として入社したつもりが、紙媒体がメインだったりといった具合です。早期離職のリスクがあるにせよ、一時的にでも人を確保しようという魂胆が垣間見えます。
昇進に関する嘘
キャリアパスに関する嘘の記載も非常に多いように見受けられます。前述した登用制度の有無もそうですが、「将来の〇〇候補」という表現も一部ではよく使われている印象です。このような昇進に関して期待を抱かせるだけの真似は、(たとえ厳密には嘘と言い切れなくとも)特に実例が無ければやはり嘘であり、少なくとも不誠実に思えます。
なぜ求人票に嘘が蔓延るのか?

求人票における嘘の記載背景には、企業の採用活動が抱える構造的な問題があります。たとえば、人材確保の難化は企業を不適切な情報開示へと導く要因の一つといえるでしょう。さらにはこれを助長するように、罪悪感が薄れていく感覚も問題だと考えます。本章ではこれらを求人票に嘘が蔓延る理由と捉え、解説します。
人手が足りないから
人手不足が続く企業では、求人を出しても応募が集まらず、採用が難航することも少なくありません。特に労働環境が厳しい業界では、少しでも応募者を増やすためには、求人の見せ方を工夫するなど対策が必要です。しかし、これが行き過ぎるケースもしばしば見受けられます。慢性的な人手不足により現場の負担が大きくなり、採用担当者も余裕を失い、とにかく人を確保しようと焦ってしまうのでしょう。競合他社と比べて魅力的でなければといったプレッシャーもあり、結果、求人内容が現実と乖離してしまうわけです。
企業体質として不誠実が当たり前だから
実態を伴わない情報開示は、企業のコンプライアンス意識の欠如を表します。その背景にはもしかすると経営層の方針もあるかもしれません。短期的な利益や数値目標の達成を重視するあまり、採用部門に対して無理な採用目標を設定し、それが求人票における嘘の記載を助長しているケースも考えられます。また、求人票の虚偽記載に対する罰則などのリスクを甘く見ている可能性も否めません。こうした不誠実なやり方が当たり前のように浸透している場合、感覚が麻痺するのも致し方ないのでしょうか。それでも採用担当者には、このような企業体質を改善することが問われ、求められます。
求人票に嘘の情報を載せるのは違法か?

求人票における嘘の情報記載は、企業の採用活動において法的リスクを伴う問題です。本章では、求人票の虚偽記載に関する法的解釈と実務上の留意点について解説します。各企業の採用担当者は、これらの法的知識を踏まえた適切な求人票作成が必要です。
募集段階では重い罪に問われない
求人票における嘘の記載は、職業安定法上の「申し込みの勧誘」という法的位置づけにより、直ちに重大な法的責任を問われるものではありません。ただし、意図的な嘘の記載は違反の可能性があります。企業の信用問題に発展することは大いに考えられます。
採用担当者は、募集段階であっても労働条件の明示義務を意識し、実態に即した情報提供を心がけることが必要です。特に賃金や労働時間など、労働者の権利に直結する事項については、正確な記載が求められます。
指導及び助言はある
職業安定法における嘘の記載への対応は、企業の採用実務に影響を与える法的枠組みです。求人票の虚偽記載が発覚した場合、労働局による是正指導や助言指導の対象となり、改善命令に従わない場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という具体的な罰則が適用される可能性があります。 また、ハローワーク経由の求人では、嘘の記載が判明した場合、求人票の受理が拒否されるだけでなく、過去の求人実績も厳しく審査されます。採用担当者は、これらの行政指導の実態を理解し、適切な求人票を作成しないといけないことをしっかり念頭におくようにしましょう。
労働条件と見なされるケースもある
労働条件通知書が明示されていない場合や、内定時に求人票の内容を前提とした説明が行われた場合、実際の労働条件と異なる記載があれば「不利益変更」と判断される可能性があります。
企業側が「単なる募集要項」と主張しても、求職者が求人票の記載を信頼し雇用契約を結んでいれば、法的に認められる場合があるため注意が必要です。特に、賃金・労働時間・勤務地などの重要な条件について誤った情報を記載すると、後のトラブルにつながりやすく、企業にとっては大きなリスクを抱えることになります。 こうした事態を避けるためにも、求人票の作成時には実際の労働条件と一致する正確な情報を記載し、雇用契約の際には労働条件通知書を適切に交付することが求められます。
求人票に嘘の情報を載せるデメリット

求人票における嘘の記載は、企業の持続的な成長を阻害します。法的責任の追及は企業イメージを低下させ、当然ながら採用活動全体に深刻な影響を及ぼすことでしょう。採用担当者は、そうしたリスクを十分に理解する必要があります。以下、求人票に嘘の情報を載せるデメリットを取り上げます。
訴えられる
求人票に虚偽の情報を掲載すると、求職者から訴えられるリスクが伴います。特に、給与、雇用形態、勤務時間など重要な条件が実際と異なる場合、労働契約上の「詐欺」や「不法行為」として損害賠償を求められるかもしれません。仮に裁判に至った場合は、求人票の内容が契約の一部とみなされることがあり、賠償金の支払いなど罰則を受ける可能性が高いでしょう。実際、ハローワークの求人票に「雇用期間の定めなし」と記載されていたにもかかわらず、採用後に有期契約とされたケースで、裁判所は求人票の内容が労働契約の一部と認め、企業に対して損害賠償を命じた事例もあるようです。
信頼を失う
求人票における嘘の記載は、企業の社会的信用を大きく毀損するリスクを伴います。特に近年、SNSや口コミサイトの発達により、労働条件の相違に関する情報は瞬時に拡散され、「ブラック企業」というレッテルで企業イメージを損なうことが大いに考えられるでしょう。また、採用市場における信頼低下は、優秀な人材の応募機会を失うだけでなく、取引先や顧客からの信用も低下させます。採用担当者は、短期的な採用目標の達成に固執するあまり道を外すことがないように注意が必要です。
嘘だと思われやすい求人票の内容

求人票作成の際、意図せず嘘だと疑念を抱かれてしまうことがあります。特に給与や業務内容、残業に関する記載は、あまりに条件が良すぎると応募者から不信感を持たれやすいでしょう。本章では、求人票に書かれていることでよくある嘘だと思われやすい内容についていくつか紹介します。
モデル年収例が高すぎる
“入社2年目で年収○○万円”“未経験でも年収○○万円”などの表記で相場を大きく超えている求人を見かけることがあります。こうしたモデル年収を果たしてそのまま額面どおりポジティブに受け取る方はどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。もしも情報がそれだけの場合、インセンティブ頼みの給与体系や厳しいノルマが課される前提の話ではと警戒されるかもしれません。また、求人にその事実が明記されていないにもかかわらず実際にはごく一部の社員しか該当しないといった口コミが転職サイトなどに書かれていれば、不信感を招きます。いわゆる誇大広告と見なされ、応募を躊躇う向きが出てくるのも当然です。
誰でもできる業務だと謳われている
求人に“未経験でも簡単”“誰でもできる”といった表現が使われている場合、一見ハードルが低そうに思えますが、実は単純作業の繰り返しで精神的に大変なことも少なくありません。また、確かに誰でもできる業務であっても、膨大な量をこなさなければならない過酷な労働環境だったというケースも往々にして見受けられます。実際、過去にそうした現場で働いていた方もいらっしゃるでしょう。そうした苦い経験から警戒されることも多い謳い文句だといえます。
残業なしと書かれている
求人に“残業なし”と明記されていれば、「えっ本当?」と懐疑的になる向きは一定数存在します。それは実際のところ、各業務を定時内に終わらせることが難しいケースもあるからです。あくまで残業するかしないかは個人のタスク管理の問題といったスタンスが暗黙の了解のように根付いている企業、もしくは帰りづらい雰囲気を醸し出している職場は確かに少なくありません。こうした背景を知る求職者にとって“残業なし”という表記は、たとえ嘘でなくとも、話半分に捉えられるでしょう。
求人票の内容が嘘と思われないためのコツ

前述したように意図せず求人票の内容が嘘と思われてしまうことを避けるには、どうすればよいのでしょうか。ざっとコツを挙げると次のとおりです。
- 不確定要素ははじき出す
- 求人票に対する問い合わせ窓口を用意する
- 動画を使ってリアルな現場を伝える
- プロにサポートを依頼する
以下、それぞれ補足します。
不確定要素ははじき出す
求人票の内容が嘘と思われないためには、不確定要素を事前に洗い出し、削除または具体化することが大事です。たとえば、「平均月収○○万円」と書くと、給与の幅や条件が不明瞭で誤解を招きやすいため、「昨年度の社員○名の月収実績」や「基本給○万円+業績に応じた手当あり(詳細は面談時に説明)」など、収入の仕組みを明確に示してあげるとよいでしょう。また、「頑張り次第で収入アップ」といった表現も、「経験や成果に応じた昇給制度あり(過去○年で昇給実績○件)」と具体的な実績とセットで記載することで、求職者により正確なイメージを伝えられます。総じて信頼される求人票に共通するのは、誇張せず、内容に明確な根拠があることです。不確定要素をはじき出した後にも説得力を持たせられるよう推敲することが肝になります。
求人票に対する問い合わせ窓口を用意する
求人票の内容が嘘と思われないためには、求職者が直接質問できる問い合わせ窓口を設けることも効果的です。求人情報だけでは伝わりにくい業務内容や給与の詳細について容易に確認できる場があれば不安や疑念を軽減できます。その際、問い合わせ先を明記し、“応募前の質問歓迎”などの文言を加えるとよいでしょう。また、よくある質問とその回答をまとめたFAQページや、チャットボットなどを用いるケースも最近はよく見られますが、直接聞けた方が安心できる向きも多いはずです。したがって、それらを用意することも有効ですが、窓口があるとさらに望ましいと考えます。
動画を使ってリアルな現場を伝える
求人票の内容が嘘と思われないためには、動画を活用し、職場環境や従業員が働く様子を伝えることも効果的です。映像は多くの情報をリアルに与えます。ただし過度な演出は厳禁です。あくまで自然体に業務の実態を伝えることが、信頼へとつながります。
プロにサポートを依頼する
求人票の内容が嘘と思われないためには、採用や人事のプロにサポートを依頼することも一つの手として有効です。原稿作成の経験が豊富な方々に任せられれば、誤解を招きやすい表現に加え、法令遵守においても安心でしょう。求人・採用全般に精通している彼・彼女たちは、虚偽記載、誇大広告についても当然わかっています。したがって、求人サービスを利用する際も、この点(担当者がプロフェッショナルか否か)を意識して選定できるとよいと考えます。
求人票はこねくり回さず、サービス一つで解決できることも!

企業の採用ニーズが多様化する昨今、そもそも求人票をこねくり回しただけでは人材獲得が難しいことも確かです。本章では、求人票作成の悩みも解消しつつ、効果が期待できるdipの求人サービスをいくつかご紹介します。これらがきっと採用課題を解決に導いてくれるでしょう。
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