法定休日とは何か、人事担当者の方でも知識や理解が曖昧な方は意外と多くいらっしゃる印象です。よくあるのが、所定休日との混同。両者は割増賃金の計算方法が異なるなど、似て非なるものです(そもそも所定休日とは法定外休日のことです)。また、2023年4月から施行される法改正についてもしっかり理解しておく必要があります。本記事では、こうした注意事項を取り上げつつ、法定休日についてくわしく解説します。

法定休日とは?所定休日(法定外休日)との違いや法改正による変更点など解説

  • 2023.01.05
  • 2023.01.05

法定休日とは何か、人事担当者の方でも知識や理解が曖昧な方は意外と多くいらっしゃる印象です。よくあるのが、所定休日との混同。両者は割増賃金の計算方法が異なるなど、似て非なるものです(そもそも所定休日とは法定外休日のことです)。また、2023年4月から施行される法改正についてもしっかり理解しておく必要があります。本記事では、こうした注意事項を取り上げつつ、法定休日についてくわしく解説します。

法定休日の定義とは?所定休日はじめ他の休みとの違いを確認!

法定休日を示すカレンダー

従業員により良い環境で働いてもらうためには、労働基準法を理解し遵守することが必須です。とりわけ休日の扱いは、勝手に解釈したばっかりに、トラブルを招くことがよくあります。そう、ひと口に休日といっても、さまざまな種類があるのです。冒頭でも触れた法定休日と所定休日など、違うものとして区分される最たる例といえるでしょう。まずは混同しやすい各休日について、違いが識できるように説明します。

法定休日とは?

法定休日とは、労働基準法第35条によって規定された、労働者の必要最低限の休日です。雇用主は労働者に対して、少なくとも週に1日、4週間に4日以上、この法定休日を付与する必要があります。一方で、回数の条件さえ満たせば、どの曜日を休日に設定してもかまいません(法律上の問題はありません)。

所定休日とは? 

所定休日とは、雇用主が労働者に任意で与える休日です。労働基準法による規定がないことから、法定外休日とも呼ばれます。企業が所定休日を設ける理由はいたって単純です。それは、週の所定労働時間の上限を超えないよう調整を図るためです。法定休日だけでは、所定労働時間内に収まりません。ゆえに、所定休日を定めるわけです。日本の企業の多くが週休2日制を採用している実態には、こうした背景があるといえます。 

もちろん、所定休日を設けていない企業も存在します。たとえば、1日6時間勤務、週休1日の企業では、法定労働時間(1日8時間、週に40時間まで)と法定休日のどちらの要件も満たしているため、所定休日を設ける必要はないのです。 

なお、先述のとおり、法定休日か所定休日かによって企業が支払う割増賃金の計算方法は変わります。くわしくは後述しますが、この点も踏まえて、企業は法定休日と所定休日をしっかりと区別し管理しなければなりません。 

振替休日とは?

振替休日とは、あらかじめ定められていた休日に出勤する代わりに、別の出勤日を休みにすることです。 

(例)
日曜日(法定休日)を出勤日に設定している代わりに、次週の木曜日(出勤日)を振替休日とする 

振替休日は出勤日と休日を交換しているだけです。そのため、基本的に休日労働扱いにはならず、割増賃金の対象にも該当しません。しかし、例外は生まれます。休日を翌週に振り替えて休日出勤した週の総労働時間が40時間を超えた場合は、法的に時間外労働の対象です。超えた時間に対しては、割増賃金率が適用されます。 

代休とは?

代休とは、振替休日が定まらないなか休日に出勤した際の、代わりとなる休日を付与することです。 

(例) 
先週の日曜日(法定休日)に急遽従業員に出勤してもらったが、振替休日は決まっていないため、翌々週の水曜日(出勤日)に代休を取得するよう伝えた 

振替休日のように事前に休日と労働日を交換するわけではないため、代休の場合は休日労働扱いです。つまり、無条件に割増賃金が発生します。 

なお、法定休日に労働をしたあとに、代休を与えなかったとしても労働基準法に違反することにはなりません。振替休日も代休も、取得に関しては就業規則や労働協約などの規定(あるいは合意)に基づきます。

法定休日を特定することの重要性

法定休日を特定することの重要性をONとOFFで表現

法定休日を特定することは法律で義務づけられているわけではありません。しかし、曖昧な場合、それだけトラブルを招く可能性が高まるのも事実です。以下、事例を交えて特定することの大切さをお伝えします。 

法定休日を曖昧にしたせいで起きたトラブル事例

某外食チェーンでは、「労働基準法における管理監督者には該当しないため、時間外割増賃金および休日割増賃金を請求した店長」と「就業規則上では店長に対する休日が特定されていなかったため、割増賃金の算出が困難だと主張する企業」が対立し、裁判の結果、半ば強制的に法定休日を特定することに至りました。具体的には次のとおりです。 

「労働者には必ず毎週1回の休日を与える必要がある」 

「日曜日から土曜日までの暦週に1回も休日がない場合、土曜日を法定休日とみなすのが妥当」 

つまるところ、端から法定休日が共有されていれば、決して争う必要などなかったといえます。 

法定休日が特定されていない場合は?

上述した事例からもわかるとおり、法定休日が特定されていない場合は割増賃金の算出が曖昧になりがちです。仮に特定せずとも、法定休日に対してある程度、共通認識を持てれば、トラブルも減っていくことでしょう。そうしたなか、行政当局の見解では、ずばり次のように述べています。 

「法定休日が特定されていない場合、暦週の後に来る休日が法定休日として判断される(通常1週間は日曜日から始まるとされるので土曜日が法定休日となる)」 

確かに、参考になる情報だといえます。いずれにせよ、(法定休日を)特定するに越したことはないはずです。 

法定休日を与えなかった場合は?

労働者に法定休日を与えなかった場合、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労働基準法119条1号)。  

法定休日を特定するか否かについては、各企業の判断に委ねられていますが、だからといって管理を怠ると、意図せず法に抵触することも起き得るかもしれません。したがって、やはり特定しておいた方が何かと安心でしょう。 

法定休日における割増賃金の計算方法

法定休日における割増賃金の計算方法

いうまでもなく、雇用主は労働者に対して、適正な賃金を支払う必要があります。とりわけ、労働基準法に定められている割増賃金については、きちんと理解しておきたいところです。 

以下、労働基準法37条に基づき、具体的な割増賃金の計算方法について説明します。

基礎賃金の算出 

割増賃金の計算には「基礎賃金(1時間あたりの賃金)」を用います。このとき、アルバイトやパートなど時給制で働いている従業員に対してはそのままの額(つまり時給額)が該当し、月給制の場合は1時間あたりの賃金を算出する必要があります。

【基礎賃金を算出する計算式】 
月給÷平均所定労働時間(1年間における1か月の平均所定労働時間)

月給に含める手当の基準は次のとおりです。 

続いて該当する主な手当です。 

反対に、月給に含まれない手当は、次のとおりです。 

該当する主な手当です。

適用される割増率について

労働基準法では、所定休日以外の労働と所定休日の労働時間を合算し、原則1日8時間、1週40時間を超えた場合に、「時間外労働」の割増率が適用されます。 

また、所定労働時間外の午後10時~午前5時に労働した場合には、「深夜労働」の割増率が適用されます。 

割増率についてはこちらの表のとおりです。 

タイプ内容割増率
法定時間外労働 時間外労働が月60時間以内 1.25倍 
法定時間外労働 時間外労働が月60時間を超過(した時間)
※中小企業も2023年4月1日から適用
1.5倍
休日労働 法定休日の労働  1.35倍 
深夜労働 午後10時~午前5時の間の労働 1.25倍 
深夜労働 所定休日労働かつ深夜労働 1.5倍 
深夜労働 法定休日労働かつ深夜労働 1.6倍 
割増率一覧表

割増賃金計算の具体例

割増賃金を算出する計算式は、次のとおりです。

割増賃金=1時間あたりの基礎賃金 × 法定時間外労働の時間数 × 割増率
(例)1日8時間勤務・土曜日:所定休日 日曜日:法定休日 
・1時間あたりの基礎賃金:1,800円 
・土曜日12~14時の労働 
・日曜日12~14時の労働 
※週の法定労働時間が40時間の場合 

所定休日に当たる土曜日に出勤したことで、2時間の時間外労働をしたことになります。 

この場合、時間外労働の割増率1.25倍が適用されます。 

そのため、土曜日に働いた分の割増賃金は、1,800円×2×1.25=4,500円です。 

また、法定休日の日曜日にも2時間働いています。この場合、労働の割増率1.35倍です。 

したがって、日曜日に働いた分の割増賃金は、 1,800円×2×1.35=4,860円と算出されます。

2023年4月から施行される法定休日に関する変更点

2023年4月から施行される法定休日に関する変更点

2023年4月から施行される法定休日の変更点とは、ずばり割増賃金に関してです。 

前項の割増率一覧表でも反映していますが、2023年4月1日から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、大企業だけでなく中小企業に対しても25%以上から50%以上へと引き上げられます。以下、詳細です。

中小企業に対する割増賃金率変更までの経緯

 遡ること2010年4月1日より、労働基準法の改正で60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率は25%以上から50%以上へと引き上げられます。が、これは、事業者に大きな影響を与えるものだと懸念され、結局、大企業のみの適用に留まりました。その後、中小企業に対しては猶予期間が続きます。そして、2018年の猶予措置廃止決定を経てついに、(中小企業に対しても)2023年4月1日からこの大きな変更が施行されることになったわけです。 

有給休暇の付与で代替可能

月60時間を超える時間外労働に対して、企業は50%割増しする賃金を支払う代わりに有給休暇を付与することも可能です。これを「代替休暇制度(だいたいきゅうかせいど)」といいます。

代替休暇制度は、通常の割増賃金との差額の支払いを免除するための制度です。そのため、(有給付与とは別に)時間外労働自体には、25%の割増分まで支払う必要があります。また、代替休暇の取得を選択する権利はあくまで従業員側のものです。つまり、企業側が労働者に(代替休暇の取得を)強制することはできません。 

法定休日とは何か、おさえておくべきポイントまとめ

法定休日とは何か、おさえておくべきポイントをチェック!

法定休日について、漠然としたままの知識で管理してしまうと、たちまち混乱やトラブルに見舞われかねません。これは、拙稿でお伝えしたように、つい一緒くたにしてしまいがちなその他の休日や法改定も含めた割増賃金の計算方法など、区別しておかなければならないポイントが多いからです。とにもかくにも、まずは一つずつ丁寧に理解していくことをおすすめします。 

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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所の代表を務める荒武慎一氏

アラタケ社会保険労務士事務所 

代表 荒武 慎一

同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。

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