日本の正社員雇用において当たり前だった終身雇用制度は、いまや崩壊したとまでいわれています。「早晩なくなる」「このまま廃止に向かう」などの言説もそこかしこで見聞きする状況です。そもそも終身雇用制度とは何なのか。廃止されてしまうのか。今後見直すべき雇用の在り方も含めて、本記事でくわしく解説します。

終身雇用制度とは?崩壊そして廃止へと変わりゆく雇用の在り方を解説

  • 2025.02.12
  • 2025.02.12

日本の正社員雇用において当たり前だった終身雇用制度は、いまや崩壊したとまでいわれています。「早晩なくなる」「このまま廃止に向かう」などの言説もそこかしこで見聞きする状況です。そもそも終身雇用制度とは何なのか。廃止されてしまうのか。今後見直すべき雇用の在り方も含めて、本記事でくわしく解説します。

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終身雇用制度とは?

終身雇用に象徴的な年功序列を表現

まずは、終身雇用制度について基本的なことからお伝えします。終身雇用とは何なのか、制度として生まれた背景や崩壊の一途はどういう経緯があったのか。それぞれ簡単に説明します。

終身雇用とは?

終身雇用とは、企業が従業員を定年まで雇用し続ける日本特有の雇用慣行のことです。主に大企業で見られます。新卒一括採用や年功序列といった制度と結びつく点も象徴的です。

ジョブ型雇用との違い

その職務を遂行するのに必要な専門性を持った人材を採用するのがジョブ型雇用です。終身雇用が人に仕事をくっつける考え方に対して、ジョブ型雇用は仕事に人をくっつけます。基本、スキルや成果が評価の基準です。契約も職務単位で結ばれるため、人材の流動性が高いといえます。

長期雇用との違い

長期雇用は、比較的長期間雇うことを前提とするものの、それは終身雇用のように定年までを意味するわけではありません。つまり、従業員の定着を図りつつ、状況に応じて雇用調整も可能です。

終身雇用制度が生まれた背景

終身雇用制度は、日本の高度経済成長期(1950年代~1970年代)に大企業を中心に導入され、その後、定着していきます。とはいえ元を辿ると、戦前・戦中期の労働力確保が発端です。当時、工場労働者が高い賃金を求めて移動(転職)あるいは引き抜きが盛んに行われていました。戦時下の限られた労働力の配置に悩む政府はこれを問題視。結果、転職を制限し、長期雇用が強化されたのです。その後、企業側は人材育成と労使関係の安定化を図るために終身雇用制度を、日本の社会経済の変遷とともに形成・発展させていきます。

終身雇用制度の崩壊

冒頭でもお伝えしたように、近年、終身雇用制度は崩壊しつつあります。働く側の意識や行動も以前とは大きく変わり、転職が当たり前の時代です。他方、企業側も、経済情勢が変化していくなか、無条件に定年まで雇うことを見直す動きがそこかしこで起きています。

企業にとっての終身雇用制度のメリット

若手社員と握手するベテラン社員

終身雇用制度が企業に重用されるのは、当然そこにメリットがあるからでしょう。ざっと挙げると次のとおりです。

以下、それぞれ簡単に説明します。

人材の確保

終身雇用制度で長期雇用が前提であれば、育成こそ必要とはいえ頻繁に生じる採用活動の負担を減らせます。また、応募者も長期的なキャリアを見据えているはずです。そのため、モチベーションを持続できる方とのマッチングが図りやすいでしょう。

ノウハウの蓄積

終身雇用制度によって従業員が長期間、順調に成長すればその分、業務に関する知識や技術が社内に蓄積されることも期待できます。それは属人的なものではなく、再現性の確立です。組織全体の生産性やパフォーマンスの向上にもつながります。

組織文化の醸成

終身雇用制度は、長期間にわたり同じメンバーが働くことで企業の価値観や経営理念の浸透を促進します。また従業員同士の信頼関係が深まり、意思決定や業務の進め方に一貫性が生まれる点も相乗効果といえるでしょう。そうやって組織文化が醸成される点は大きなメリットだと考えます。

企業にとっての終身雇用制度のデメリット

人件費をジオラマで表現

メリットがある一方で、終身雇用制度に依存することはデメリットも考えられます。主に次のとおりです。

以下、それぞれ簡単に説明します。

人件費の固定化と増大

終身雇用制度では固定化する人件費が嵩む一方であるため、経営環境の変化に柔軟に対応することが難しいといえるでしょう。年功序列の給与体系がまさにその典型です。若手の採用や投資に充てる余力が圧迫される問題も生じます。

新人のモチベーション低下

終身雇用制度では年功序列の色が強くなりがちです。そのため、新人のモチベーション低下は十分に考えられます。かつてはまだ割り切る方も多かったかもしれません(あるいは我慢が美学になっていたかもしれません)。が、現代は特にこうした環境下では、意欲の高い若手ほど転職し、そもそもこうした組織風土では働けないと端から応募しない向きもあるように思われます。

成果に対するモチベーションの低下

終身雇用制度により成果以上に年功序列の仕組みが強い環境では、「頑張っても変わらない」と投げやりになる社員が出てきてもおかしくありません。そうした向上心の欠如が組織全体のパフォーマンスに影響することも、当然考えられます。

価値観やスキルの停滞

価値観やスキルの停滞も終身雇用制度で生じやすい問題です。新卒一括採用の弊害もあってか新しい風(人材やそれに伴う文化・考え方など)が社内に吹き込むことなく、多様性を重んじる時代の流れにそぐわないようにも見て取れます。従業員に対しても長く同じ場所に居ればいるほど学習意欲が低下するものです。結果、彼・彼女たちのスキルが鈍っていくことも組織にとっては大きなデメリットだと考えます。

終身雇用制度が廃止へと向かう理由

慣れないパソコンで作業するシニア人材

終身雇用制度が廃止へと向かう機運は年々高まっているように見受けられます。前述したデメリットを憂いている企業が増えてきたこともそう。もはや崩壊しているとの声も多くあるほどです。本章では、この終身雇用制度が廃止へと向かっている理由をより深く掘り下げます。ざっと挙げると次のとおりです。

いずれも到底無視できるものではないでしょう。

経済環境の変化

経済環境の変化が業績にも影響すれば、ひいては人件費にも手を掛ける必要が出てきます。長期的な雇用を保証することは、そうした調整を難しくする意味で企業からすると非常に悩ましい問題です。景気の低迷や物価高、そこに加えて人件費を抱え続けることにリスクを感じれば、人を雇うにも終身雇用制度に固執せず、もう少し柔軟な形を模索したいところでしょう。

少子高齢化

少子高齢化によって終身雇用制度が成り立たなくなることは十分に考えられます。若手の採用もさることながら、高齢社員の比率が増えることで、年功序列型の賃金体系も維持が難しくなるはずです。

労働市場の流動化

いまや転職は当たり前。即戦力を求めて中途採用に注力する企業も増えてきています。もはや終身雇用で人材を確保していく必要性さえ薄れてきている印象です。スキルアップや待遇改善が環境を変えることで叶う昨今、終身雇用制度を頑なに続けるのは企業ブランドとしても負のイメージが付きまとうかもしれません。それほど労働市場の流動化が進んでいます。

働き方の多様化

リモートワーク、副業・兼業、フリーランスといった働き方が広く普及し、終身雇用に頼らずともキャリアを築く人が増えてきたように思います。その結果、従来の雇用モデルに縛られず、人員確保を柔軟に行う企業も少なくありません。なお近年は、無駄なコストをかけず、さらに急に人が必要になっても対応できるようスポットワーカーを積極的に募集する向きも見られます。

▶関連記事:スポットワーカーとは?採用するメリットや懸念点、平均時給などくわしく解説

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テクノロジーの進化

AIや自動化技術の発展、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、終身雇用を前提としなくとも労働力をカバーできるようにもなってきました。また、長年勤めた社員のスキルが陳腐化する一方で、データ分析やプログラミング、サイバーセキュリティなど、上述したテクノロジーに対応できる専門人材のニーズは高まっています。彼・彼女たちをスポット的に、あるいはキャリア採用で確保する方が効率的と捉える向きもあるほどです。

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終身雇用制度の廃止で懸念される影響

アイコンが描かれたブロックと人材不足と書かれたブロック

前項で取り上げた理由からも終身雇用制度が廃止へと向かうのは必然のようにも思えます。しかしながら、完全には廃止されないだろうとの向きがあるのも確かです。デメリット然り、やはり廃止によって悪影響が懸念されます。ずばり次のとおりです。

以下、それぞれ簡単に説明します。

人材確保の難化

終身雇用制度の廃止と引き換えに戦力となる人材を効率よく獲得できるかといったら、当然保証できるものではありません。特に、労働力人口の減少や転職の一般化に伴い、企業間の人材獲得競争は激化しています。そのため、求職者をいかに引きつけるかこれまで以上に工夫が必要です。難易度が高くなるのもうなずけます。

人材育成の難化

終身雇用の場合、新入社員の成長は長い目で見ることができます。育成に時間をかけることも、いわば必要なコストです。しかし、これを廃止し雇用が流動的になれば、育つ前に離職される可能性もあります。また、スケジュールを含めて研修プログラムの組み立てにも手こずるかもしれません。

文化形成の難化

終身雇用を廃止しキャリア採用が中心になったとき、組織文化の形成やそれを根付かせることが難しくなってくるでしょう。多様な人材の混淆が企業独自の風土を生むこともありますが、確立させていくには労力、そして皆の協力(一人ひとりの意識)が不可欠だと考えます。

終身雇用制度の崩壊・廃止で見直すべき雇用の在り方

ダイバーシティを表現

終身雇用制度が無効化したとき、メリットを手放すことや懸念される影響に組織が振り回されないよう、雇用の在り方を見直す必要があります。そのうえで以下、推奨したい取り組みを紹介します。

多様な人材の獲得

新卒一括採用からの終身雇用を見直し、多様な人材の獲得に動くことはこれからの時代、ますます求められると思われます。年齢、性別、国籍などに囚われない、いわゆるダイバーシティ採用によって、変化する市場環境や顧客ニーズに対応できる組織が作られていくはずです。

▶関連記事:ダイバーシティ採用とは?企業の取り組み事例やアンケート調査の結果も交えて解説

成果に見合った評価

終身雇用制度を無くすのであれば、評価体系も刷新が求められます。年功序列や勤続年数が長いほど昇進・昇給の機会が増えるような仕組みは、それ自体もはや旧態依然としたものです。これを引き継ぐことなく、個々の成果やスキルに応じた(公平な)評価にシフトチェンジしましょう。

積極的なキャリアアップ支援

終身雇用制度では、企業が時間をかけて従業員を育成するのが一般的でしたが、雇用の流動化が進むと、従業員自身が市場価値を高められるような支援が求められます。具体的には、社内研修の充実、資格取得支援、外部講座の受講補助などを整備し、自律的なキャリア形成を後押しする仕組みを取り入れることが必要です。そのようなキャリアアップ支援の強化によって、従業員のモチベーション向上、ひいては定着にもつながりやすくなるため、図らずも成長した人材(優秀な人材)を長期で雇用することも実現可能です。

終身雇用制度が廃止せずとも雇用に対する考え方は変化が必然!

雇用について考える人事部所属の女性のイメージ

「終身雇用制度はすでに崩壊している、いずれは廃止に向かう」「いやいや、まだまだ終身雇用制度を活用する価値は高い」など、さまざまな声や意見は現状、そしてこれからも飛び交うものと思われます。が、いずれにしても雇用に対する考え方の変化は避けられないでしょう。労働市場の流動化やテクノロジーの進化、働き方の多様化などは今後さらに目まぐるしい展開が予想されます。終身雇用が続くかどうかに関係なく、働き方、育成方法、評価体系を柔軟に適応させることは、もはや必然事項です。


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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所の代表を務める荒武慎一氏

アラタケ社会保険労務士事務所 

代表 荒武 慎一

同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。

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