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2024年度の最低賃金について

遡ること7月25日、厚生労働省の中央最低賃金審議会で、2024年度(令和6年度)の最低賃金ついて「目安に関する公益委員見解」等が公表されました。これは、6月25日に開催された同審議会(第68回)での諮問を受けての答申です。各地方最低賃金審議会での調査審議のうえ、あらためて答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定します。
※8月29日更新
8月29日に全都道府県で最低賃金の改定額が出揃いました。国が示した引き上げ額の目安(50円)を、なんと27県で上回っています。その結果、全国の加重平均は1055円。引き上げ額は51円です。とりわけ目を引くのは84円増になった徳島県でしょう。異例の大幅増加です。
以下、引き上げ額の目安として扱われる各都道府県のランク、そして上述の審議会(第69回)での具体的な改定額、さらには発効年月日も含めた最新情報について言及します(地域別最低賃金の改定状況は一覧表で明記します)。ぜひ、ご確認ください。
各都道府県に適用されるランク
各都道府県は、経済実態に応じA、B、Cの3つに分類されます。現在の内訳は、Aランクで6都府県、Bランクで28道府県、Cランクで13県です。具体的には下表をご参照ください。
ランク | 都道府県 |
---|---|
A | 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府 |
B | 北海道、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県 |
C | 青森県、岩手県、秋田県、山形県、鳥取県、高知県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
地域別最低賃金額改定の目安
7月24日、労使双方が参加した審議会で地域別最低賃金額の目安が決定。A、B、Cそれぞれ一律で50円のアップが提示されました。
※9月30日更新
その後、各地でそれ以上の額に引き上げられ、全国加重平均は51円アップの1,055円で決着。昨年度は43円だったため、今年度の引き上げ額は率にして、昨年度の約4.5%に対して約5.1%の上昇したことになります。目安制度が始まった昭和53年度以降でもっとも高い数値です。
(引き上げ額、時期など)最新情報を反映した一覧表
以下、2024年度の最低賃金についてまとめた一覧表です。各都道府県の最低賃金額、発効年月日、改定前の額、引き上げ額、引き上げ率をチェックできます。
※「地域別最低賃金の全国一覧 |厚生労働省」をベースに、ディップ株式会社が作成。
都道府県 | 最低賃金額(円) | 発効年月日 | 改定前の額(円) | 引き上げ額(円) | 引き上げ率(%) |
---|---|---|---|---|---|
北海道 | 1,010 | 24/10/1 | 960 | 50 | 5.2 |
青森 | 953 | 24/10/5 | 898 | 55 | 6.1 |
岩手 | 952 | 24/10/27 | 893 | 59 | 6.6 |
宮城 | 973 | 24/10/1 | 923 | 50 | 5.4 |
秋田 | 951 | 24/10/1 | 897 | 54 | 6.0 |
山形 | 955 | 24/10/19 | 900 | 55 | 6.1 |
福島 | 955 | 24/10/5 | 900 | 55 | 6.1 |
茨城 | 1,005 | 24/10/1 | 953 | 52 | 5.5 |
栃木 | 1,004 | 24/10/1 | 954 | 50 | 5.2 |
群馬 | 985 | 24/10/4 | 935 | 50 | 5.4 |
埼玉 | 1,078 | 24/10/1 | 1,028 | 50 | 4.9 |
千葉 | 1,076 | 24/10/1 | 1,026 | 50 | 4.9 |
東京 | 1,163 | 24/10/1 | 1,113 | 50 | 4.5 |
神奈川 | 1,162 | 24/10/1 | 1,112 | 50 | 4.5 |
新潟 | 985 | 24/10/1 | 931 | 54 | 5.8 |
富山 | 998 | 24/10/1 | 948 | 50 | 5.3 |
石川 | 984 | 24/10/5 | 933 | 51 | 5.5 |
福井 | 984 | 24/10/5 | 931 | 53 | 5.7 |
山梨 | 988 | 24/10/1 | 938 | 50 | 5.3 |
長野 | 998 | 24/10/1 | 948 | 50 | 5.3 |
岐阜 | 1,001 | 24/10/1 | 950 | 51 | 5.4 |
静岡 | 1,034 | 24/10/1 | 984 | 50 | 5.1 |
愛知 | 1,077 | 24/10/1 | 1,027 | 50 | 4.9 |
三重 | 1,023 | 24/10/1 | 973 | 50 | 5.1 |
滋賀 | 1,017 | 24/10/1 | 967 | 50 | 5.2 |
京都 | 1,058 | 24/10/1 | 1,008 | 50 | 5.0 |
大阪 | 1,114 | 24/10/1 | 1,064 | 50 | 4.7 |
兵庫 | 1,052 | 24/10/1 | 1,001 | 51 | 5.1 |
奈良 | 986 | 24/10/1 | 936 | 50 | 5.3 |
和歌山 | 980 | 24/10/1 | 929 | 51 | 5.5 |
鳥取 | 957 | 24/10/5 | 900 | 57 | 6.3 |
島根 | 962 | 24/10/12 | 904 | 58 | 6.4 |
岡山 | 982 | 24/10/2 | 932 | 50 | 5.4 |
広島 | 1,020 | 24/10/1 | 970 | 50 | 5.2 |
山口 | 979 | 24/10/1 | 928 | 51 | 5.5 |
徳島 | 980 | 24/11/1 | 896 | 84 | 9.4 |
香川 | 970 | 24/10/2 | 918 | 52 | 5.7 |
愛媛 | 956 | 24/10/13 | 897 | 59 | 6.6 |
高知 | 952 | 24/10/9 | 897 | 55 | 6.1 |
福岡 | 992 | 24/10/5 | 941 | 51 | 5.4 |
佐賀 | 956 | 24/10/17 | 900 | 56 | 6.2 |
長崎 | 953 | 24/10/12 | 898 | 55 | 6.1 |
熊本 | 952 | 24/10/5 | 898 | 54 | 6.0 |
大分 | 954 | 24/10/5 | 899 | 55 | 6.1 |
宮崎 | 952 | 24/10/5 | 897 | 55 | 6.1 |
鹿児島 | 953 | 24/10/5 | 897 | 56 | 6.2 |
沖縄 | 952 | 24/10/9 | 896 | 56 | 6.3 |
全国加重平均 | 1,055 | — | 1,004 | 51 | 5.1 |
最低賃金額を超えているか確認する方法

厚生労働省が最低賃金の対象として定めているのは、いわゆる所定内給与(基本給、諸手当)です。他方、具体的に次の賃金は除外されます(参照:最低賃金の対象となる賃金)。
- 結婚手当など臨時に支払われる賃金
- 賞与など1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 時間外割増賃金など所定労働時間を超える分の労働に対して支払われる賃金
- 深夜割増賃金など所定労働時間を超える分(午後10時から午前5時まで間)の労働に対して支払われる賃金
- 休日割増賃金など所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
- 精皆勤手当
- 通勤手当及び家族手当
上記を前提に、最低賃金額を超えているかどうかの確認は、時給だけならそのまま照らし合わせればよいのですが、たとえば日給や月給の場合は時間当たりの賃金を算出する必要があります。以下、各ケースでの確認方法です。
時給制のケース
時給制の場合は、額面どおり時間給と比べます。たとえば、東京都では、(50円引き上がった場合)設定する時給は1,163円以上でなければなりません。
日給制のケース
日給制では時間当たりの賃金を算出します。日給だけでなく手当がある場合も同様です。それぞれの額を合算したものと比較します。
仮に東京都で所定労働時間8時間の月20日間勤務する従業員に対して、日給8,000円(時間当たり1,000円)かつ職務手当月26,080円(時間当たり163円)を支払う場合、換算すると、丁度目安の最低賃金(1,163円)です。
月給制のケース
月給も時間当たりの賃金が対象です。たとえば、東京都で所定労働時間8時間の月20日間勤務する従業員の基本給が170,000円、職務手当が12,000円、職能手当が10,000円、精皆勤手当が10,000円だとしましょう。この場合、(最低賃金の対象ではないため)精皆勤手当を除く192,000円を時給に換算します。というわけで(160時間で割ると)算出される額は1,200円です。目安の最低賃金が仮にそのまま適用されても、それを上回っているため、問題ないことがいえます。
最低賃金額の引き上げによる影響

最低賃金の目安が過去最大の引き上げで決着したことについては、物価高などが理由に挙げられるでしょう。しかしながら、企業・店舗によっては、労務費を含む価格転嫁が十分に進んでいないところもあります。したがって、少なからず次のような不安を覚える経営者や店主の方も出てくるはずです。
- 人件費が嵩む
- 採用にコストをかけにくい
- 年収の壁によるシフト調整が起きやすい
- 正規雇用者のモチベーションが下がるかもしれない
- 総じて人手不足につながる恐れがある
以下、最低賃金額の引き上げによって懸念されるこれらの影響について説明します。
人件費が嵩む
時給が上がれば当然、その分の人件費は嵩みます。とりわけ、非正規社員を多く雇っている中小・零細企業にとっては大きなダメージでしょう。
採用にコストをかけにくい
本来、賃金アップは競合他社と差別化を図る有効な手段ですが、最低ライン(最低賃金)が上がれば、そう簡単には動けなくなるでしょう。人件費の負担が膨らみ続けるなかで、採用にコストを割くことに対しためらうのも無理はありません。が、ただでさえ採用難の時代。どうしても人員確保は必要です。したがって、何とかバランスを見てコストをかけていく必要があります。
年収の壁によるシフト調整が起きやすい
給与所得が特定の金額(扶養の範囲)を超えると、社会保険料や税金の負担が増え、手取り収入は下がってしまいます。俗にいう年収の壁です。これを避けるべく、働く時間の調整を行うアルバイト・パートの方々は実に多くいらっしゃいます。その結果、肝心な時に人手が足りなくなるお店や企業も少なくありません。最低賃金が上がれば労働時間を減らそうと、この傾向はさらに強まることが考えられます。
▶関連記事:年収の壁とは?助成金含めて対策、見直しがどうなるかなど解説
正規雇用者のモチベーションが下がるかもしれない
最低賃金の引き上げは、非正規雇用者と正規雇用者の所得格差を減らす取り組みの一つです。しかし、これが後者にとっては不平等に感じられる可能性も、まったく無いとはいい切れないでしょう。仮にその場合、特に何もフォローせずにいると、彼・彼女らはモチベーションが低下したまま、離職に発展することも考えられます。
総じて人手不足につながる恐れがある
上述した懸念材料は、人が採用できない、人が辞めてしまうことにつながるリスクを孕んでいます。これらをケアするには然るべき対策が必要です。くわしくは次章にて解説します。
最低賃金額の引き上げに際して企業・店舗が取り組みたいこと

前章でお伝えした最低賃金引き上げによって懸念される影響に対して、企業・店舗は何をすればよいのでしょうか。推奨したい具体的なアクションは次のとおりです。
- 競合他社に先駆けて動く
- 残業させない仕組みを作る
- 従業員の育成を強化する
以下、それぞれ詳述します。
競合他社に先駆けて動く
ほとんどの都道府県では(徳島県は異例の11月ですが)、10月になれば最低賃金の引き上げは適用されます。大事なのは、それまでにいかに動くかです。
競合他社が時給を引き上げるタイミングで昇給しても横並びになるだけで、優位に事は運べません。時給アップは今のうちに検討しましょう。と、あわせて早い段階から求人に注力しておくことが望ましいと考えます(9月以降は人材獲得競争が激化すると思われます)。
残業させない仕組みを作る
残業代の支払いが多い場合は、従業員の労働時間を短縮できるよう工夫を凝らすことも大事です。そのためには職務分掌を確立し、一人ひとりの業務に対して効率化を図る必要があります。また、組織全体で定時退社を促すことも、極めてシンプルとはいえ大切な意識付けです。
残業させない仕組みが作れれば、それは企業風土としても強みになり得ます。求人の訴求ポイントに使えるなど、採用コストを捻出するだけではないメリットまでもが期待できるでしょう。
▶関連記事:職務分掌とは?規程作成に至る手順までわかりやすく解説
従業員の育成を強化する
従業員を賃金アップに見合う人材に育てていくことも大事な取り組みです。この機会に各々のスキルも引き上げて生産性アップを図りましょう。具体的には、定期的な研修の実施、資格取得の支援やスキルに基づいた人事考課制度の構築といった環境整備が挙げられます。
▶関連記事:人材育成とは?目的、課題、目標設計の方法など主要ポイントを解説
要注意!思い違いで最低賃金が下回ってしまうケース

地域別最低賃金を下回った場合、最低賃金法第40条の定めによりペナルティとして50万円以下の罰金に処せられることがあります(参照:最低賃金法の違反の罰則について)。当然、遵守は必須。そのうえで、特に気を付けるべきは、問題ないと思い違いしていたばかりに下回るケースです。以下、典型例をピックアップします。
出来高払いでも最低賃金は適用される
出来高払いだからといって、最低賃金のルールに該当しないといったことはありません。(総労働時間数で割った)時間当たりの額が最低賃金を下回っていたなら、それは違反です。
試用期間中でも最低賃金は適用される
試用期間も最低賃金法に則った公正な報酬を支払う義務があります。当然、知らなかったでは済むはずもなく、守られなければ違反です。
▶関連記事:試用期間中は正社員雇用でも時給にできる?最低賃金法は適用される?
最低賃金の引き上げを組織変革のチャンスにしたい!

最低賃金引き上げの前哨戦ともいえる先の春闘では、定期昇給分を含めて平均賃上げ率が5.1%だったと発表されました。33年ぶりに5%を超えたこのニュースは記憶に新しいところです。2024年度の指針も例にもれず、この流れを汲むことになります。
▶関連記事:春闘とは?賃上げ率や非正規社員への対応などわかりやすく解説
実際、(低賃金で働くアルバイト・パートの方々が)物価高が続く苦しい状況下で生活水準を下げずに暮らすには、最低賃金の引き上げがやはり必要になってきます。一方で、年々そのアップ幅が大きいことについては、企業やお店側からすると頭が痛いでしょう。おそらくこの傾向は、今後も続くと見られます。当然、人件費の負担は避けられません。採用活動に注力するのも心理的ハードルは上がります。とはいえ、動かないのは悪手です。ややもすれば深刻な人手不足に陥ります。
ではどうすればよいのか。 大切にしたいのは考え方の転換、そして動くタイミングです。生産性の向上や価格転嫁も含めて、まずは他社よりも早くアクションを起こすことが求められます。求人は先取りが肝要です。加えて、働き方の改善や育成強化を図るにもよい機会でしょう。
このように最低賃金の引き上げは、ポジティブに捉えることも可能です。もちろん、うまくいけば組織としての成長が見込めます。
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