最低賃金の引き上げは、労働者の生活向上を目指す一方で、企業経営に大きな影響を与えます。本記事では最低賃金引き上げの概要と、事業者・企業が直面するメリット・デメリット、影響、そしてしかるべき対応策についてくわしく言及。人材戦略の見直しも含めて幅広い視点から最低賃金引き上げの課題を紐解きます。

最低賃金の引き上げが事業者・企業に与える影響・デメリットは?その対策方法も解説

  • 2024.09.02
  • 2025.09.12

最低賃金の引き上げは、労働者の生活向上を目指す一方で、企業経営に大きな影響を与えます。本記事では最低賃金引き上げの概要と、事業者・企業が直面するメリット・デメリット、影響、そしてしかるべき対応策についてくわしく言及。人材戦略の見直しも含めて幅広い視点から最低賃金引き上げの課題を紐解きます。

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最低賃金とは?

積み木に書かれた賃上げの文字

最低賃金は、労働者の生活を守り、公正な労働条件を確保するために、法律によって定められた賃金の最低限度額です。これは、企業が労働者に支払わなければならない最低限の賃金水準を示すものであり、すべての労働者に適用されます。「労働者の生活の安定」「労働条件の改善」「事業の公正な競争の確保」「地域経済の健全な発展」などが主な目的です。

さて、最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。前者は、各都道府県で設定される最低賃金です。その地域で働く方すべてに適用されます。通常、地方最低賃金審議会で答申のやり取りを行い、10月に入って正式に改定されます(毎年、10月1日以降が発効日です)。

そして後者ですが、これは、特定の産業や職種に対して設定される最低賃金を指します。地域別最低賃金より高い水準で設定されることがほとんどです。

繰り返しお伝えしますが、使用者は、労働者すべてに対して最低賃金の額以上を支払う義務があります。正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、派遣社員など、すべての雇用形態が対象です。また、試用期間や研修中といった条件も問いません。仮に、最低賃金を下回った場合は、ペナルティを科されます。

いわずもがな、最低賃金の改定にはくれぐれも注意を払い、違反しないように気を付けましょう。

最低賃金引き上げの現状

賃金引き上げを小銭と葉っぱの芽が伸びる様子で表現

最低賃金引き上げについて、最新情報は下表のとおりです。

都道府県最低賃金額(円)     発効年月日    改定前の額(円)     引き上げ額(円)     
北海道1,07510月4日予定1,01065
青森1,02911月21日予定95376
岩手1,03112月1日予定95279
宮城1,03810月4日予定97365
秋田1,0313月31日予定95180
山形1,03212月23日予定95577
福島1,0331月1日予定95578
茨城1,07410月12日予定1,00569
栃木1,06810月1日予定1,00464
群馬1,0633月1日予定98578
埼玉1,14111月1日予定1,07863
千葉1,14010月3日予定1,07664
東京1,22610月3日予定1,16363
神奈川1,22510月4日予定1,16263
新潟1,05010月2日予定98565
富山1,06210月12日予定99864
石川1,05410月8日予定98470
福井1,05310月8日予定98469
山梨1,05212月1日予定98864
長野1,06110月3日予定99863
岐阜1,06510月18日予定1,00164
静岡1,09711月1日予定1,03463
愛知1,14010月18日予定1,07763
三重1,08711月21日予定1,02364
滋賀1,08010月5日予定1,01763
京都1,12211月21日予定1,05864
大阪1,17710月16日予定1,11463
兵庫1,11610月4日予定1,05264
奈良1,05111月16日予定98665
和歌山1,04511月1日予定98065
鳥取1,03010月4日予定95773
島根1,03311月17日予定96271
岡山1,04712月1日予定98265
広島1,08511月1日予定1,02065
山口1,04310月16日予定97964
徳島1,0461月1日予定98066
香川1,03610月18日予定97066
愛媛1,03312月1日予定95677
高知1,02312月1日予定95271
福岡1,05711月16日予定99265
佐賀1,03011月21日予定95674
長崎1,03112月1日予定95378
熊本1,0341月1日予定95282
大分1,0351月1日予定95481
宮崎1,02311月16日予定95271
鹿児島1,02611月1日予定95373
沖縄1,02312月1日予定95271
全国加重平均     1,1211,05566

なお、現状をよりくわしくチェックしたいなら、ぜひこちらの記事をお読みください。目安公表からの一連の流れをタイムリーに解説しています。

▶最新関連記事:いつからいくら引き上がる?2025年度の最低賃金(各地域、全国平均)

最低賃金引き上げによるデメリット

コストアップをコミカルに表現

最低賃金の引き上げは、先に挙げた主な目的(「労働者の生活の安定」「労働条件の改善」「事業の公正な競争の確保」「地域経済の健全な発展」など)のためとはいえ、企業やお店、施設にとっては少なからず頭を悩ますものです。具体的には次のデメリットが考えられます。

以下、それぞれ簡単に説明します。

人件費の増加

最低賃金を引き上げることは、いうまでもなく人件費の増加を意味します。人が足りないとそこかしこで嘆く声が大きくなっている昨今、たとえ採用につなげても、そこから先はこの賃金コストにどう対峙していくかの問題が出てくるわけです。商品価格への転嫁(引き上げ)やサービスへの影響など、コスト削減のために何かしら犠牲をも払う必要もあるでしょう。状況によっては、福利厚生(の縮小)にさえ手を掛けなければならなくなるかもしれません。

雇用数の縮小

最低賃金の引き上げによって人件費が嵩むのであれば、採用活動を控えざるを得ないことにもなりかねません。限られた予算で運営している企業では、よっぽど欲しい人材でもない限り、やはり積極的な求人は躊躇してしまうはずです。結果、雇用数は縮小し、人手不足に追いやられるリスクも高まるわけですが、それは理解しつつもジレンマに悩まされる組織は、思いのほか多いと考えます。

給与体系の綻び

最低賃金の引き上げは、時に組織文化をぐらつかせるほど、ドタバタを生む恐れがあります。というのも、最低賃金の引き上げは、うまく管理できないと給与体系のバランスを崩すことにもなりかねません。仕事に精を出しその頑張りで昇給をつかみ取った方もいれば、法律上、自動的にそうなるケースもあります。これを安易に一緒くたにしてしまうと、公正さは失われるでしょう。そうなると当然、モチベーションやチームワークに支障をきたすことが懸念されます。こうした賃金に対する不満が高まり離職者が増えていくのは、当然、起き得るリスクです。

最低賃金引き上げによるメリット

やる気を出す女性スタッフ

最低賃金の引き上げによってデメリットが生じる一方で、メリットがあることも確かです。つい、ネガティブな要素ばかりに目がいきがちですが、メリットまでしっかり把握できると動き方も変わってくるでしょう。具体的には次のとおりです。

以下、それぞれ簡単に説明します。

離職率の低下

待遇面を理由に離職する人は思いのほか多いものです。ゆえに最低賃金の引き上げがこれを回避することは、当然あり得ます。賃金アップは従業員にとって多少なりとも喜ばしいことです。辞めることを検討していたなかで“まだ頑張れる”と、前向きになってもらえるかもしれません。

生産性の向上

賃金アップは、前述のとおり、仕事(職場)に対して少なからず前向きな気持ちをもたらすものです。そうなると、大なり小なりパフォーマンスにも良い影響を及ぼすことでしょう。業務効率にも同様の期待が持てます。結果的に、最低賃金の引き上げは、生産性向上に一役買うわけです。

企業評価を一新するチャンス

最低賃金の引き上げは必ず行わなければならないものですが、そうなると、待遇面で競合他社と横並びになることも少なくありません。ここで思い切って差をつけることで、自社に対する求職者の印象をよくできるかもしれません。あるいは、改定額がわかったタイミングで先に賃上げを実施するのも有効です。いずれしても、世の中の変化を機に企業評価が一新されることは往々にしてあります。そのチャンスをメリットと捉えることは、十分可能です。

最低賃金引き上げによる会社への影響

MONEYの文字とオフィスビルでお金と会社を表現

前述したデメリット、そしてメリットからもわかるように、最低賃金の引き上げは、企業に対して大なり小なり影響を及ぼします。あらためて整理しましょう。

賃金の引き上げにより人件費が増えるため、特に中小企業や人手が多く必要な業界では、コスト負担が大きくなります。利益を減らすのか、商品の値段を上げるのか、はたまた、残業を禁止にするのか、正社員雇用を減らすのか……等々、対応にはいくつもの選択肢が浮上してくるでしょう。一方で、マイナスの影響ばかりではありません。従業員の生活が少しでも豊かになれば、感謝そして安心感を持って長く働いてくれる可能性もあります。端から悲観的にならず、引き上げが実施されることを前提にどういったアクションを講じていくべきかしっかり考えていく方が、つまるところ建設的です。続けて次章にて、その辺りをもう少し具体的にお伝えします。

最低賃金引き上げで会社がすべきこととは?

人材育成に励む人事部のメンバー

最低賃金の引き上げに際して、ただルールを守るだけでなく、会社としてすべきことをしっかりと把握しておく必要があります。そのうえでまず大事なのは、コスト全体の見直しです。人件費が増えることで利益率の圧迫が懸念されますが、だからといって従業員の削減や(比較的支給額の多いスタッフの賃金を下げるなど)給与体系の調整は避けるべきです。これらは生産性や一人ひとりのモチベーションに支障をきたす恐れがあります。ゆえに取り組むべきは、無駄な支出の削減や経費の最適化です。これは業務効率の改善も含まれます。業務フローを変えるだけでコスト削減につながれば、人件費が増えた分もカバー可能です。

また、働き方も見直せる余地があるかもしれません。柔軟な勤務形態はまさにその典型です。時短勤務のニーズは少なからずあり、そうした声に応えつつ人員配置をうまく行えれば、最低賃金が上がっても、そう人件費は嵩まず、かつ費用対効果も高水準を維持できるでしょう。

さらには、最低賃金の引き上げを契機に、キャリア育成に注力することも重要です。スキルアップの機会を提供し、従業員が成長できる環境を整えることで、長期的には、彼・彼女らが自社の中核を支えてくれる期待が持てます。結果として、最低賃金の引き上げが企業の未来に向けた投資となるのです。

このように、最低賃金の引き上げを、単にコストが増えるだけと捉えるのではなく、従業員のスキル向上や働きやすい環境づくりを進める好機とし、会社全体の基盤を強化していく方へと舵を切れるのが望ましいでしょう。

最低賃金の引き上げがもたらすものはデメリットだけではない!

笑顔の従業員

最低賃金の引き上げは、一見すると企業にとって負担が増えるだけのように思われますが、拙稿でお伝えしたように、捉え方次第ではメリットへ転化することも可能です。

待遇改善も含めて、従業員が働きやすい環境を整えるにはよいタイミングだと考えます。この機会を有意義に活用できたなら、モチベーションそして生産性が上がることも期待できるでしょう。スキルアップを支援するなど、本格的に育成に注力することも大事です。最低賃金の引き上げは、人が辞めない組織づくりのきっかけになり得ます。ぜひ、デメリットを払しょくできるよう意識、行動をアップデートしてみてください。


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