企業の人事制度において、従業員の能力を適切に評価し報酬に反映させることは、人材の定着ひいては組織の成長において重要な課題です。本記事では、成果と役割を重視するミッショングレード制について、人事担当者が実務で活用できるよう、定義から導入方法、具体的な設定例までくわしく解説します。

ミッショングレード制とは?メリット・デメリット、導入手順、設定例も紹介

  • 2025.08.27
  • 2025.08.27

企業の人事制度において、従業員の能力を適切に評価し報酬に反映させることは、人材の定着ひいては組織の成長において重要な課題です。本記事では、成果と役割を重視するミッショングレード制について、人事担当者が実務で活用できるよう、定義から導入方法、具体的な設定例までくわしく解説します。

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ミッショングレード制とは?

ミッショングレード制は、従業員の担当する役割(ミッション)と成果に基づいて等級を設定し、評価・報酬を決定する人事制度です。これを適切に運用するには、従来の年功序列や勤続年数重視の制度とは異なり、実際に果たすべき役割の大きさや責任の重さ、達成した成果を評価する基準が必要です。本章ではまず、ミッショングレード制を導入するにあたって確実におさえておきたい基本的な内容から紐解いていきます。

評価・報酬の決め方

ミッショングレード制には報酬体系の設定や昇格・降格についての適切な判断が肝になります。ここを安易に決めてしまうと逆効果です。では、どう設定すればよいのでしょうか。以下、具体的に解説します。

賃金の決定

ミッショングレード制では、給与レンジ(上限・下限)を設定し、グレード内での等級に応じて実際の給与額を決定することが一般的です。同じ役職でも経験や能力、担当する役割の規模に応じて複数の等級に分けられます。たとえば、課長クラスのグレードを年収550-750万円に設定した場合、1等級は550-600万円、2等級は600-700万円、3等級は700-750万円といった具合です。このように段階的に設定され、昇格や成果に応じて等級が上がる仕組みは、多くの企業で見受けられます。

昇格・降格の決定

昇格・降格の決定は、現在の役割における成果と、より上位または下位の役割を担う能力の有無を総合的に評価して行われます。仮に昇格の場合は、現在の役割で継続的に高い成果を上げていることに加えて、より視座の高い役割に必要な能力やスキルが身に付きつつあるかなどが見極めるポイントになるでしょう。他方、降格についてもシビアに設定するなら、目標を大きく下回ることが連続する場合は検討した方がよいかもしれません。とはいえ、一方的な判断になるのは気を付けましょう。ある程度挽回できるチャンスは与えた方がよいと考えます。

混同しやすいそのほかの等級制度

ミッショングレード制と類似する人事制度として、アビリティグレード制やジョブグレード制が挙げられます。これらはそれぞれ異なる評価軸を持ち、企業の戦略や文化に応じて選択されるものです。以下、各制度の特徴をお伝えします。

アビリティグレード制とは

アビリティグレード制は、従業員の保有する能力(アビリティ)を主要な評価基準とする制度です。知識、技術、経験、資格など各項目に対するレベルを段階的に定義し、従業員が今どの位置にいるのかを測り、等級を決定します。ただし、潜在能力や将来性が感じられる場合は、それらが加点されるケースも珍しくありません。そうすることによって、長期的な人材育成の観点から、能力開発への投資意欲を高める効果が期待できます。

ジョブグレード制とは

ジョブグレード制は、職務(ジョブ)の内容や責任の重さに基づいて等級を設定する制度です。各職務の難易度、責任範囲、意思決定権限などを分析し、職務自体の価値によって序列を決定します。ただしこれを実施する際は、(職務内容が)明確で標準化されていることが大事です。そうでなければ、評価の公平性を担保することが難しくなります。

ミッショングレード制のメリット

ミッショングレード制を導入することで、企業は以下のようなメリットを得ることができます。

以下、それぞれ解説します。

役割や成果が明確

ミッショングレード制では、等級ごとに成果目標が定義されるため、従業員は自分に求められていることを明確に理解できます。やることがはっきりしているため、彼・彼女らは何を優先すべきか、どこに注力すべきかを自発的に判断できるでしょう。また、上司と部下の間での期待値にもずれが生じにくい側面があります。目指すゴールがわかりやすいゆえに、話も早く円滑なコミュニケーションが図れるはずです。

合理的に評価できる

ミッショングレード制では、従来の主観的な判断や人間関係に左右される評価をなるべく排除し、より客観的で公正な人事評価を実現するものです。実際、評価基準が明確に設定されていれば、評価者による判断のばらつきも最小限に抑えられるでしょう。また、定量的な成果指標と定性的な役割遂行度を組み合わせることで、多角的かつ包括的な評価も可能です。

人材育成がしやすい

各等級で求められる役割と能力が明確に定義されているため、従業員の現在のレベルと目指すべき次のレベルとの差が具体的に把握できます。これによって個人別の育成計画を策定し、必要なスキル向上や経験の積み上げを計画的に進めることも可能です。ゆえに、人材育成に適した制度であることがわかります。

従業員のモチベーションにつながる

頑張った分だけ正当に評価される仕組みは、大なり小なり従業員のモチベーション向上へとつながるでしょう。昇格基準も同様です。方向性が定まっているからこそ、従業員はぶれずに業務に取り組めます。キャリア形成への意欲もきっと高まるはずです。その結果、組織全体の成長に寄与する循環が生まれることも期待できます。

ミッショングレード制のデメリット

メリットばかりに目がいくのも注意が必要です。ミッショングレード制の導入には、デメリットも少なからずあります。ざっと挙げると次のとおりです。

以下、それぞれ解説します。

成果偏重になりやすい

ミッショングレード制によって従業員が目に見える成果のみを追求した場合、組織単位での業務改善や育成、チームワークの構築といった数値化しにくい部分が疎かになることが懸念されます。仮に協調よりも個人の成果を優先する文化が形成されたなら、いわずもがな褒められたものではありません。

役割の定義が曖昧だと途端に機能しなくなる

ミッショングレード制の成功は、各等級における役割定義の精度に大きく依存します。役割や責任範囲が曖昧な場合、従業員は何を期待されているのか理解できないこともあるでしょう。そうなると、従来の主観的な評価制度と変わらない状況が生まれ、制度導入の意味が失われてしまいます。定期的な役割定義の見直しと精緻化が不可欠です。

一部の従業員からは不満も出てくる

従来の年功序列文化に慣れ親しんだ従業員からは、新しい評価制度に対する抵抗や不満が生じる可能性があります。特に、勤続年数や年齢が高いにもかかわらず、成果や役割の観点から若手従業員より低い評価を受ける場合、この不安は的中するでしょう。地道に継続的に従事することで昇進や昇給を期待していた従業員もいるかもしれません。それが急に成果主義に取って代わられると、心理的なプレッシャーもさることながら、自身の行く末を案じ、離職を決断される方が続出することも考えられます。

ミッショングレード制の導入に必要なプロセス

ここまで述べてきたように、ミッショングレード制には一長一短あります。そのうえで導入を進める場合、しっかりと手順を踏むことが大事です。主なプロセスは次のとおり。

以下、実務的な観点から順に解説します。

目的、期待できる効果の確認

制度導入前に、なぜミッショングレード制を導入するのか、どのような課題を解決したいのかを明確にする必要があります。現在の人事制度の問題点を具体的に分析し、ミッショングレード制によって期待される改善効果を定量的・定性的に想定しましょう。

たとえば、優秀な人材の獲得や定着、組織単位でのパフォーマンス向上などが挙げられます。これらの目的を社内で共有し、経営陣から現場管理者まで一貫した理解を得ることが大切です。

等級数の決定や分類

続いて、組織の規模、業務の複雑さ、既存の職位体系を考慮して、適切な等級数を決定します。その際、一般ランクと管理職ランクに分けたうえで、それぞれ複数設定することが望ましいでしょう。なお、等級数が少ないと細かな差別化が、多すぎると運用が困難になりがちです。

各等級の定義

次に、各等級において期待される役割、責任、権限、成果目標を具体的かつ詳細に定義します。役割定義には、主な業務内容、意思決定範囲、管理対象、外部との関係性、求められる専門知識・スキルなどを含めるとよいでしょう。現場の実態を正確に反映させることが大事です。そのため、各部門の管理者や現場のキーパーソンへのヒアリングは欠かせません。また、定義の一貫性を保つことも管理するうえで大切です。たとえば、等級ごとに記述形式がバラバラにならないようにすることなど、細かな配慮が求められます。

報酬の決定や評価基準の設定

等級定義が済んだなら、それぞれに対応する給与レンジの設定、成果に応じた報酬変動の仕組みを構築しましょう。その際、同業他社や同規模の企業がどうしているかも把握できるとよいでしょう。そのうえで、定量的指標(売上、利益、効率性など)と定性的指標(リーダーシップ、協調性、改善提案など)をバランス良く組み合わせることが肝要です。さらには、評価項目ごとに重み付けを行い、総合評価の算出方法まで明確化することが望ましいと考えます。

役割定義書への反映

一とおり、決定事項が揃ったなら、役割定義書として従業員が参照しやすい形に反映、整備することも必要です。等級名、対象職位、主要な役割・責任、期待される成果、必要なスキル・知識、昇格要件などを体系的に記載してください。

また、定義書は定期的に見直しましょう。事業環境の変化や組織の成長に応じて更新は必須です。ただし、くれぐれも従業員が混乱しないよう気を付けなければなりません。

社内での周知

最終ステップとして社内周知も徹底しましょう。新たな制度を導入するにあたって、全従業員に対して説明会を開催するのも一つのやり方です。制度の目的、内容、導入スケジュール、個人への影響などをくわしく説明したうえで、まずはテスト的に運用してもよいでしょう。定期的に座学を中心とした研修の実施も効果的です。

ミッショングレード制の具体的な設定例

「実際にミッショングレード制を導入する際、どのように等級を設定すればよいのか分からない」という企業担当者の声をよく耳にします。そこで参考例として、中堅IT企業を想定した5段階の等級構成で、各等級の役割定義と給与レンジを表にまとめました。

等級役職名役割定義年収レンジ(万円)
M1アシスタント定型業務の正確な遂行
基本的なスキル習得
先輩社員の指導を受けながらの業務推進
チームへの積極的な参加と貢献
250-350
M2スタッフ担当業務の自律的な遂行
後輩指導への参画
改善提案の実施
品質とスピードの両立
顧客対応への参加
350-450
M3シニアスタッフプロジェクトリーダーとしての小規模チーム運営
専門分野での高度な知識・スキルの発揮
顧客との直接的な関係構築、新人育成の責任者
450-600
M4マネージャー部門目標の設定と達成責任
10-20名程度のチーム管理
予算管理と収益責任
経営方針の現場への浸透
他部門との調整
600-800
M5統括マネージャー複数部門の統括
事業戦略の策定と実行
経営陣との協議参加
全社的な課題解決のリーダーシップ
組織変革の推進
800-1000

この設定例では、各等級で求められる役割の複雑さと責任の重さが段階的に増加され、それに応じて給与レンジも上昇しています。同一等級内でも成果により150-200万円程度の給与差が設けられている点も特徴です。典型的なインセンティブの一例といえるでしょう。

ミッショングレード制の導入後に大切なこと

Next Stageと書かれた道標(矢印)

ミッショングレード制は導入して終わりではなく、継続的な運用改善と従業員への支援が成功の鍵です。制度を形だけ整えても、適切な運用ができなければ期待した効果は得られません。

導入後に重要なのは、制度の運用状況を定期的に監視し、想定した効果が得られているかを客観的に検証することです。従業員満足度の調査、離職率の推移、業績指標の変化などを通じて制度の有効性を測定し、問題があれば等級定義や評価基準の調整を行いましょう。また、評価者のスキル向上を継続的に支援し、公正で一貫性のある評価が実施されるよう研修や指導を継続することもおすすめです。

つまるところ、組織全体が共に成長していける環境づくりに継続的に取り組むことで、ミッショングレード制の真の価値は発揮されるのです。


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