アルバイトの研修期間とは?

アルバイトは学生、主婦(主夫)、フリーターなど多岐にわたる層が活躍しています。といっても即戦力人材として採用していなければ、彼・彼女たちが業務に慣れるまでは多かれ少なかれ時間を要すのが一般的です。ゆえに研修期間があれば、雇う側も雇われる側も両者、ひとまず安心でしょう。こうした背景など含めて以下、研修期間の大まかな概要について解説します。
研修期間の役割
アルバイトの研修期間に法的な義務はありません。実際、研修期間を挟まずにすぐ現場で働いてもらうケース、企業も多く存在します。とはいえ、右も左もわからない方に業務を任せるのは少なからずリスクを伴うでしょう。したがって、技能を身に着けていく時間を研修期間として設けるわけです。これは企業と従業員が相性を確認するための期間としても有効です。
研修期間の長さ
研修期間の長さは一概に決まっていません。2週間~3ヶ月、あるいは6ヶ月以上と企業によってまちまちです。なかには実働時間単位で設定するパターンも見られます。
試用期間との違い
混同されやすいのが試用期間です。研修期間の場合、仕事の基礎や必要な技術・知識を学ぶ時間に当てられます。他方、試用期間は本採用前の文字どおりお試し期間です。勤務態度や能力を評価し、正式に採用するかどうかを判断していく時間だといえます。 つまり、両者は目的が異なるわけです。試用期間が新人の適正を見極めることに対して、研修期間は教育です。
なお、試用期間についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
▶関連記事:アルバイトの試用期間について給料や延長の設定、注意点など解説
研修期間中のアルバイトに対する妥当な給料

続いては研修期間の給料について説明します。アルバイトを教育する期間ということを名目に給与含む待遇面全般において、研修期間後と差をつける企業は少なくありません。と、その是非の前にまず、法律上はどうなのか知っておきたいところです。そのうえで相場についても把握しましょう。
時給設定について
前述のとおり、研修期間中のアルバイトは業務の全容を把握していないため、研修後の時給よりも低く設定することは珍しくありません。加えて、法的にも問題ない対応です。ただし研修中といえど会社都合で(その新人の)時間を拘束しています。その時点で勤務扱いです。そのため支払いの義務が生じます。また、研修期間中であっても最低賃金を下回ってしまうのはご法度です。
研修期間中に辞められた場合
新人アルバイトが研修期間中に辞めた場合でも、在籍していた分の給料は支払わなければなりません。法的には正式な雇用関係が成立しているとみなされます。つまり、労働基準法の適用対象です。
業務委託で雇用した場合
研修期間中のアルバイトと「業務委託契約」を結んでいる場合は、打って変わって支払い義務が発生しないこともあります。が、業務委託契約はすでにスキルが備わっている人(個人事業主など)と結ぶことがほとんどです。そのため、そもそもアルバイト募集の際にこの契約を結ぶのは極めて稀だと考えます(このシチュエーション自体が脱法である可能性も高いといえます)。
▶関連記事:業務委託とアルバイトの違いは?各メリット・デメリット交えて解説
研修期間中のアルバイトを会社都合でクビにできる?

研修期間中は、アルバイトの勤務態度や能力に問題が判明し手に負えないこともあるかもしれません。最悪、そのまま雇用を継続するのが難しいケースも考えられます。では、そのとき容易に解雇することはできるのでしょうか。
合理的な理由があるかどうか
研修期間中であっても、アルバイトと正式な雇用関係にあれば、簡単には解雇できません。労働契約法第16条では、合理的な理由がなければ解雇は認められないと記されています。が、裏を返せば合理的な理由さえあれば、解雇は可能です。具体的には、次のような状況が該当します。
- 明らかな能力不足
- 欠勤、遅刻、早退が多い
- 協調性が著しく欠如している
- 健康面に問題がある
- 経歴を詐称していた
解雇に必要な準備
まず、従業員との面談を通じて解雇理由や時期を明確に述べることが重要です。この際、感情的な対立を避けるために、冷静かつ具体的な事実を基に説明することを心がけましょう。次に解雇の意向を正式に伝えるべく「解雇予告通知書」を作成し、従業員に渡します。この記録は、後々のトラブルを防ぐために大事です。
また、労働基準法では14日以上の雇用期間がある従業員に対して解雇予告を30日前に行う必要があります(これを守らない場合、解雇予告手当を支払う義務が生じます)。一方、14日以内の雇用期間での解雇には、この手続きは不要です。といっても前述した合理的な理由が必須であることは変わりません。
▶関連記事:解雇予告手当とは?計算方法や支払日、源泉徴収についてなど徹底解説
極力、解雇は避けたい!
従業員をクビにすることは企業にとって少なからずリスクを伴います。できることなら解雇に至らず解決したいところです。たとえ法に基づいていたとしても、不当解雇だと訴訟を起こされるリスクはゼロではありません。また、労務上のトラブルのみならず自社に対する内部からの評価や信頼にも影響を及ぼす可能性があります。したがって、安易に解雇に踏み切らず、たとえば、研修期間を延長するなど改善の機会を提供してみてはいかがでしょう。あるいは、話し合いを重ね自己都合退職を検討してもらうのも一つの手です。前者の場合、就業規則に研修期間が延長する可能性を明記しておくこと、そのうえで従業員の同意を得られるよう進める必要があります。一方、後者は決していがみ合いなどが生じないために、相手を尊重した物言いで接することが肝要です。
▶関連記事:アルバイトを解雇するには?妥当な理由、方法、流れについて解説
研修期間のための準備、注意点

研修期間は、新しく入るアルバイトが仕事内容を理解し、業務へとスムーズに取り組むための重要な期間です。したがって企業側は、研修前から準備が欠かせません。具体的に意識しておきたいのは次の4点です。
- 採用選考時点で研修の存在や意義を共有する
- 期間や待遇をありのままに伝える
- 研修カリキュラムと目標を明確にする
- 研修後のフォロー体制を整えておく
以下、それぞれについてです。
採用選考時点で研修の存在や意義を共有する
採用選考の段階から研修の存在や意義を共有しておくことで、アルバイトの方もまた心の準備ができ、モチベーションも高まる期待が持てるでしょう。研修自体に対して意欲や取り組む姿勢も変わってくるかもしれません。逆に、あらかじめ伝えられていない場合は、「寝耳に水」といった状況になることも考えられます。よくわからないまま進めることのないよう注意したいところです。
期間や待遇をありのままに伝える
期間や待遇についても、事前にしっかりと認識してもらう必要があります。いうなれば少なからず不安になり得るものはすべて取り除かなければなりません。こと期間、待遇は曖昧にされるとモヤモヤした感情が生まれます。これを回避すべく福利厚生やたとえば社会保険の加入についても同様です。はっきりと伝えるようにしてください。
研修カリキュラムと目標を明確にする
当然、研修内容やその目的も明確にして伝えなければなりません。従業員自身が何を学び、どのようなスキルや知識を身につけるべきかを理解できなければ、うまく業務は回らないでしょう。具体的なカリキュラムやスケジュールを示し、目標設定も協力して行うことで成長につながるはずです。(次項で述懐する内容とも重なりますが)ゆえに定期的なフィードバックは必須。進捗確認やヘルプ・サポートの効率化を図るうえでも役立ちます。
研修後のフォロー体制を整えておく
研修終了後も、アルバイトに対するケアは必要です。たとえばメンター制度の導入は有効かと考えます。研修期間を経てもなお疑問点や不安な部分はでてくるものです。だからこそ研修後にもフォローアップできる体制を整えておかなければなりません。
アルバイトの研修期間についてのポイントまとめ

アルバイトの研修期間は、職場環境や仕事内容を深く学んでもらう意味で非常に大切です。企業側としては、この期間を通じて新人が業務の基本をしっかりと掴めるよう動かなければなりません。あわせて待遇や雇用継続についても法の知識と状況判断が必要です。拙稿でもお伝えしたようにトラブルが生じないよう細心の注意を払いましょう。
いずれにしても研修期間は、企業の方針によって異なるため試行錯誤は欠かせないものと考えます。一方で独自のやり方を打ち出すにしても核となる部分、すなわち目指す先は一緒です。アルバイトの成長と企業の発展両方に向けて、研修期間を最大限生かしてください。
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