人がすぐ辞める職場が多いのは本当か?

離職者が多く人手不足に悩んでいるといった声は、どの職場からも聞こえてきますが、実際のところ、どうなのでしょうか。本章では厚生労働省が公表している雇用動向調査結果の概況をもとに、考察を述べていきます。
入職と離職の状況
令和5年上半期の調査では、パートタイム労働者の入職率は15.1%、離職率は13.5%でした。令和4年時の入職超過率が-0.5%だったことを考えると、この1年で大きくプラスに転じたといえそうです。この時期は新型コロナウイルス感染症が5類に移行したタイミングとも重なり、いよいよ経済が復調するだろうと見込んだ多くの企業がアルバイト雇用に力を入れたのがうかがえます。実際、入職者数は令和4年上半期の約475.8万人に対して令和5年上半期は約500.9万人でした。
他方、離職状況ですが、率で見ると推移はほぼ横ばいです。が、数で比べると、辞める人は増えています。具体的には令和4年上半期が約445.8万人に対して令和5年上半期は約451.0万人でした。したがって、人がすぐ辞める職場が多いことは容易に頷けるかと考えます。
未充足求人の状況
未充足求人とは、仕事があるにもかかわらず従事する人がいない状況を打開する(補充する)求人を指します。産業別でみると「宿泊業、飲食サービス業」(約33.6万人)、職業別では「サービス職業従事者」(約40.9万人)でもっとも多い結果でした。後者は介護職員や葬祭業従業員などが含まれます。いずれも深刻な人手不足で知られていますが、データがそれを如実に物語っています。
人がすぐ辞める職場の特徴

さて、実態を把握したところで、本題に入りましょう。人がすぐに辞めてしまう職場の特徴について取り上げます。ずばり、以下の状況下にある職場は危険です。
- 従業員同士のコミュニケーションがほぼない
- 怒鳴り声が頻繁に聞こえる
- 悪口・陰口が横行している
- 新入社員が毎朝早くから掃除を担当させられる
- 新入社員が研修もなく放置される
- オフィスが汚い
- 求人と実態が異なる
それぞれ、解説します。
従業員同士のコミュニケーションがほぼない
職場でのコミュニケーション不足は、入ったばかりの新人を一気に不安にさせます。ここから不平・不満の噴出、モチベーション低下にもつながります。こうした環境は、目に見えない形であっても、えてして従業員の孤立、チーム崩壊を招くため、離職者をどんどん生んでいきがちです。お互いの役割や責任を理解しないため、何か問題が起きたときには他責思考、そして企業に対しても不信感を抱くようになります。
怒鳴り声が頻繁に聞こえる
怒鳴り声が頻繁に聞こえる職場では心身は持たないでしょう。萎縮しっぱなしで終日過ごすのは苦痛の何物でもないはずです。それがわからず、ただ感情的に振る舞い続ける人が幅を利かせている職場で、人が定着するわけがありません。
悪口・陰口が横行している
同僚への悪口や陰口が横行している職場に居続けることは、精神衛生上よくありません。そのような場所で働くことになったなら、むしろ速やかな退職を推奨したいぐらいです(当の本人も辞めた方がよいことはわかっているはず)。遅かれ早かれ、ドロドロとした人間関係に疲れて(呆れて)辞めていく人が続出するのは、当然でしょう。
新入社員が毎朝早くから掃除を担当させられる
新入社員が毎朝早くから掃除を担当させられる職場があります。昔ながらの古い企業体質でしょう。が、さすがにそれが異常なのは、“いま”の人たちは皆わかっています。ネガティブな習慣がある職場からすぐ人が辞めるのは、いたって当たり前です。
新入社員が研修もなく放置される
新入社員が真っ当に研修を受けられずに放置される状況もしばしば見受けられます。適切なサポート無くして新入社員は育ちません。結果、スキルアップできる機会を他社に求めるのも無理はないでしょう。
オフィスが汚い
オフィスが汚いと、働き先を変えたくなる心理が早々に芽生えます。特にトイレや台所などの共有スペースが汚れていると、嫌悪感は募る一方です。業務効率にも響くでしょう。
求人と実態が異なる
新入社員からすると、求人広告に記載されている内容と実際の職場環境が異なれば、たちまち企業への信用が失せます。と、同時に早期離職を考える方も多いでしょう。
人がすぐ辞める職場で危惧すべき弊害

人がすぐ辞めることで、職場には大なり小なり悪影響が及ぶものと思われます。具体的に危惧すべき弊害は次のとおりです。
- 従業員の健康障害
- 生産性の低下
- 採用コストの増加
- 企業イメージの悪化
- 連鎖退職
- 倒産・廃業
以下、それぞれ詳述します。
従業員の健康障害
職場のストレスが原因で従業員が心身の健康障害を抱えるケースが増えています。お察しのとおり、それが起きているのは大抵、人がすぐに辞める職場です。慢性的な疲労から重度の精神疾患まで、さまざまなケースを見聞きします。周りがどんどん辞めていくため、一人当たりの業務負担は嵩み続け、労働環境は一層厳しくなり、ついには倒れてしまう悪循環。これを食い止めるにはやはり、従業員の定着がカギを握ります。
生産性の低下
優秀な人材が挙って辞めてしまえば、そのノウハウを後続に伝えることができなくなります。生産性の低下は免れません。市場におけるポジションも下がり続けることが懸念されます。
採用コストの増加
従業員にすぐ辞められてしまうと、採用コストが嵩んでいきます。求人に手間も費用もかけていた場合、なおさら損失は大きいでしょう。利益が圧迫され続ければ、人を雇うにも躊躇せざるを得ません。人手不足は加速する一方です。
企業イメージの悪化
いうまでもなく、人がすぐに辞める職場に対するイメージはよくありません。いわゆる“ブラック企業”のレッテルを貼られることもしばしば。こうした評判は昨今、SNSですぐに広まります。人材獲得にも間違いなく影響します。
連鎖退職
従業員が一人退職すると周囲にそのしわ寄せがいき、その負担を嫌った従業員が職場を去り、周囲にそのしわ寄せがいき……。一人の退職を呼び水に、連鎖退職が起こる可能性もケアしなければなりません。次々と辞める人が出てくれば、上述した企業イメージにも傷がつき、そもそも後述するような経営上の問題にも発展します。
倒産・廃業
人がいなくなれば、業務を回せなくなります。経営困難によって廃業を余儀なくされるケースは当然考えられるでしょう。実際のところ、いわゆる人手不足倒産は年々増えています。
人がすぐ辞める職場になってしまう根本原因

人がすぐに辞める職場には、先述したような共通点、特徴が見られます。さらにはそれらを引き起こす根本原因が存在するのも確かです。具体的に考えられるのは次のとおりです。
- 劣悪な労働環境
- 理不尽な業務命令
- 不公平な人事考課
- 不透明なキャリアパス
- 未構築の組織デザイン
- 不十分な採用戦略
危惧すべき弊害を招かないように、これらはなるべく早い段階で潰しておく必要があるでしょう。以下、それぞれ詳述します。
劣悪な労働環境
劣悪な労働環境は、従業員の士気と生産性に直接的な影響を与えます。激務、薄給、非衛生、安全不備……等々の問題は一刻も早く改善に乗り出しましょう。
理不尽な業務命令
理不尽な業務命令が蔓延っているようでは、従順な方でもさすがにどこかのタイミングで我慢の限界を迎えるでしょう。当たり前のように無謀な指示、過度な要求ばかりしている上司によって離職者が続出するケースは多々見られます。まさに辞める人が多い原因です。
不公平な人事考課
不公平な人事考課によって不満と不信感が生まれているかもしれません。透明性の欠如や偏見が反映されていませんか。無意識、無自覚に偏った評価体系になっている可能性もあります。定期的に人事考課のあり方を見直すことが大事です。
不透明なキャリアパス
不透明なキャリアパスは、従業員に将来に対する不安を抱かせます。成長する機会が得られないと感じれば、自己実現の場を求めて転職を検討する方は思いのほか多いものです。
未構築の組織デザイン
組織内で明確な役割分担や責任の定義がない状態では、従業員は業務遂行において混乱や不安を感じざるを得ません。戸惑いが多い現場では、どうしたって長く勤めることは困難です。まずは、組織デザインの概念を持つことが必要でしょう。
▶関連記事:組織デザインとは?人事担当者が押さえるべきポイントを解説
不十分な採用戦略
適切なスキルセットや職場文化への適合性を考慮せずに行われる採用は、自社に合わない従業員を雇い入れる可能性があります。ミスマッチが起きれば、早期離職もやむを得ません。が、これは戦略が不十分ゆえに起きる失敗です。
人がすぐ辞める職場のなかで今やるべき対策

人がすぐに辞めてしまう職場は課題が山盛りですが、早速改善を図れることもいくつかあります。具体的には次のとおりです。
- 採用要件の見直し
- 求人媒体の見直し
- 求人サービスのプラン見直し
- 採用戦略・手法の見直し
- 積極的な求人
これらは、今やるべき対策といってもよいでしょう。以下、それぞれ詳述します。
採用要件の見直し
採用要件が明確でない場合、応募の段階でミスマッチが多く発生しがちです。それでも曖昧なまま進めてしまうと、たとえ採用までこぎ着けたところで入社された後に“合わない”ことが発覚し、結果、早期離職につながりかねません。これを回避するにはやはり、最初の段階、つまり採用要件の見直しが不可欠です。長期的に活躍してもらうには、どのような人材を求めるべきか、しっかり精査しましょう。
求人媒体の見直し
求人を掲載する媒体の選定も、定着につながる人材を獲得するのに重要です。求人媒体には、それぞれ特性や強みがあります。それを知らずしてただ何とはなしに選んだサービスに掲載していても、欲しい人材と出会えない可能性は高いでしょう。それでも妥協して採用することはできますが、入社された後早々に違和感を覚えるはずです(それは求職者にとってもそうかもしれません)。
と、逆にいえば、求人媒体の選定次第では状況を好転させることが期待できます。現状、離職率の高さが悩ましいのであれば、これを機に各媒体を比較してみてもよいでしょう。
▶関連記事:求人・採用媒体(サイト)を比較!主要メディア、サービスについて
求人サービスのプラン見直し
今利用している求人サービスのままで、プランを見直すことも打開策として有効に作用するかもしれません。ここでも大事なのは、自社のニーズを明確にし、プランの内容を把握しておくことです。たとえば、dipのサービスを例に挙げると、『バイトルPRO』の料金プランは成果報酬型など豊富なバリエーションが用意されています。
▶料金プランが豊富なサービス:【企業向け/公式】バイトルPRO(プロ) – 掲載料金例あり!
採用戦略・手法の見直し
採用戦略と手法を抜本的に見直すことも、人材定着率のアップにつながるかもしれません。たとえば、リファラル採用では、自社の従業員が信頼できる候補者を推薦してくれるため「長く活躍してもらえるのではないか」と、おのずと期待が高まります。
▶関連記事:リファラル採用とは?報酬の決め方や違法性、トラブル回避策など解説
積極的な求人
とにかく積極的に求人活動を行うのも大事な戦術の一つです。媒体やチャネルを横断し、接点を多く作り、そこから欲しい人材にアプローチしていくやり方は、泥臭くも結果につながる期待は十分に持てます。ともすれば、“年中求人しているから人が辞めていく会社なんだ”と思われてしまう可能性もありますが、採用目的、ターゲットが明確であれば、ブレずに前に進めるはずです。
人がすぐ辞める職場を変えていくための対策

人がすぐに辞める職場を変えていくには、前章で挙げた採用戦略のなかで取り組むことと、本章で取り上げるような自社に対するテコ入れが必要です。
後者の対策については、次のとおりです。
- オフィス環境の整備
- ハラスメント防止の徹底
- メンタルヘルスケアの強化
- リーダーシップ研修の実施
- チームビルディングの促進
- 定期的なフィードバック面談
- 公正で透明な評価制度の導入
- キャリアパスの明確化
以下、それぞれ詳述します。
オフィス環境の整備
オフィス環境の整備によって清潔かつ整理整頓された職場に生まれ変われば、日々の業務効率や従業員のモチベーション向上につながります。オフィスの汚さを理由に転職を考える向きが一定数いることを考えると、必須の対策といえるでしょう。
ハラスメント防止の徹底
ハラスメント防止は絶対です。昨今、特に敏感になる従業員も増えてきていますが(ゆえに離職者が増えていることも考えられる)、それ以前に皆が安全で安心できる環境づくりは、企業の命題といっても過言ではありません。管理職だけでなく、全従業員にその意識を根付かせられるよう、定期的に全社研修を実施するなど徹底的に取り組む必要があります。
メンタルヘルスケアの強化
職場でのメンタルヘルスケアの強化も、ストレス社会に晒される現代には不可欠です。企業ができることとして、具体的にはカウンセリングサービスやストレス管理ワークショップなどの実施が挙げられます。 これらは、離職者を減らす取り組みとしても有効です。
リーダーシップ研修の実施
リーダーシップ研修は、管理職やチームリーダーに必要な指導力を養うために重要です。研修を通じて、リーダー達はコミュニケーションスキル、問題解決能力、従業員のモチベーション向上に関する技術を習得します。得られたそれらをうまく活用できれば、離職防止にもきっとつながるはずです。
チームビルディングの促進
チームビルディングの促進によって従業員が互いを意識するようになれば、辞める兆候が見られた従業員に対しても即座にフォローができるかもしれません。相談がしやすく風通しの良い職場は、雰囲気も自然と明るくなります。離職者が多い暗澹たる職場のそれとは正反対です。
定期的なフィードバック面談
定期的なフィードバック面談は、上司と部下双方のコミュニケーションを促進し、信頼関係を築くのに効果的です。そのなかでメンバーの悩める姿を察知し、適切なアドバイスができれば、離職に傾いていたところを元に戻せるかもしれません。もちろん、実務上の改善点や成果のフィードバックを行い、モチベーションアップにつなげる場にしてもよいでしょう。
公正で透明な評価制度の導入
評価基準の不透明さを理由に離れていく従業員も少なくありません。ゆえにここにもテコ入れは必要です。従業員間の不公平感を減らし、客観的に見ても納得できる評価体系の構築は、そう簡単なものではありません。そのため、新制度を導入後も定期的に見直す必要があります。
キャリアパスの明確化
キャリアパスの明確化は、従業員が自己成長の目標を持ち、長期的に働き続けるモチベーションになり得ます。明確な進路が示されると、従業員は自身の将来を具体的に計画し、職場での役割により一層の意義を感じるようになるのです。そうなると、少なからず離職率低下にも寄与するのではないかと考えます。
人がすぐ辞める職場の特徴に当てはまらないために

人がすぐに辞めてしまう職場は、年々増えていることはデータからもうかがえます。だからこそ、今はまだ人手不足の問題が深刻ではないオフィスや店舗でも、この先、重々気を付けなければなりません。人がすぐに辞めてしまう職場には特徴やそうなる根本原因があります。ちょっとでも当てはまるのであれば、なるべく早い段階で対策を講じるべきでしょう。そのときは、あらためて拙稿を参考にしていただけますと幸いです。
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