真面目な人の傾向
まずは真面目な人の傾向から紐解きましょう。彼・彼女たちの行動原理がわかれば、接し方にも気を配れるかもしれません。いくつか挙げるとしたら次のとおりです。
- 責任感が強い
- 完璧主義
- 他人への相談が苦手
- 見返りを求める
- 信念を貫く
以下、それぞれ簡単に説明します。
責任感が強い
責任感が強い彼・彼女たちは、自分が期待に応えられていないと感じたり、環境が自分の努力に見合わないと判断したりすると、「これ以上ここにいても迷惑をかけるだけだ」と思い詰めやすいように見受けられます。
完璧主義
真面目な人はその真面目さゆえに完璧主義に陥りがちです。仕事や役割に対してつい高い基準を設定するのもそうですが、周囲が求める以上の成果を出そうと努力するあまり、自分で自分を追い詰めることが多々見られます。その結果、「できない」や「不完全な状態」が彼・彼女たちにストレスを与え、それが積み重なると前述した責任感にもつながり自分の居場所を問うようになるわけです。
他人への相談が苦手
真面目な人は「これくらい自分で何とかしなければ」という意識が強すぎるせいか、孤立しがちです。結果、周囲に悩みを打ち明ける前に限界を迎えてしまい、それこそ突然の離職という形で表面化するケースも少なくありません。こうした状況を生まないためにはやはり、気軽に相談できる環境づくりを組織が意識的に行うことが大切です。
見返りを求める
真面目な人のなかには、理想の結果や感謝を過剰に期待する方も少なくありません。そのため周囲から努力が思ったほど評価されないとなると、失望感を抱く傾向にあります。見返りを求めすぎた結果、「こんなに頑張っているのに、ここでは報われない」と諦念を覚えれば、新たな環境に身を置こうとするのも容易に頷けるでしょう。
信念を貫く
真面目な人は、自身の価値観や基準に忠実であり、それを守り続けることに強いこだわりを持っています。この姿勢は尊敬に値する一方で、職場環境や組織の方針がその信念と大きく食い違った場合に強い葛藤を抱えることにもなりかねません。ゆえに納得いかない仕事を求められた場合、割り切ることができずストレスや不満を溜め込むわけです。
真面目な人ほど急に辞める理由
前述した傾向がすでに真面目な人が急に辞めることを示唆していますが、そこにつながる部分も含めて共通する理由はいくつかあります。主に次のとおりです。
- 業務過多
- ミスによる自信喪失
- 人間関係
- 自己評価と報酬のギャップ
- キャリアパスの実現
以下、それぞれ簡単に説明します。
業務過多
頼まれたことを断れなかったり、責任感から無理したりと真面目な人には、気づかないうちに仕事が集中しがちです。さらに、彼・彼女たちは「自分がやらなければ」と考えてしまうため、「他人に仕事を分担する」「助けを求める」こともしないまま、その業務に取り組みます。結果、こうした状況に耐えられず心身ともに疲弊することもしばしば。最終的に「これ以上は無理だ」とその職場を辞めようと決断される方は少なくありません。
ミスによる自信喪失
真面目な人ほど「自分のミスで周囲に迷惑をかけてしまった」と感じると、仕事を続けることが難しいとまで考えてしまいがちです。失敗してはいけないというプレッシャーを自分で課す人も多く、たとえ小さなミスでも自分を過度に責めてしまいます。「自分はこの職場にふさわしくない」と極端に思い込む方は決して少なくないでしょう。結果、誰にも相談せず突然辞めてしまうわけです。
人間関係
真面目な人ほど、「人との距離感」を保つことを苦手とし、また、周囲の反応を敏感に受け止めすぎるきらいがあります。職場での些細な言動や雰囲気の変化を「自分のせいかもしれない」と感じてしまうなどは最たる例でしょう。また、対立や誤解があった場合、自己完結的に「自分が悪い」「自分が辞めるのが一番いい」とも考えがちです。とはいえ相手に対しても我慢やストレスを溜めています。総じて人間関係の煩わしさにしんどくなり辞められる方がほとんどです。
自己評価と報酬のギャップ
先述した見返りを求めやすい傾向も手伝ってか、努力や成果に対してその報酬が自己評価とギャップがあったとき、モチベーションを失いがちです。これは金銭面だけでなく、感謝や承認といった部分でも同じように見受けられます。そこに物足りなさを覚えた場合、「こんなに努力しているのに報われない」といった強い虚しさから徐々に「ここで自分が頑張る意味はない」と結論づけてしまい、最終的には辞める選択に至るわけです。
キャリアパスの実現
真面目な人ほど、自身のキャリアに対して明確な目標を持っている方が多く、その実現が難しいと感じたとき、環境を変える決断を早く下そうとします。なかには将来の展望があっても周囲に迷惑をかけまいと続ける方もいらっしゃいますが、結局は自分が望む成長ができないことの危機感が上回り、急であれ離職に踏み切るケースがほとんどです。
真面目な人が急に辞めるのは会社にも原因がある！
真面目な人が急に辞めることを、彼・彼女たちの性格に起因するものとだけ捉えては一向に解消を図れないでしょう。大事なのはそのうえで会社側に問題はないのかという視点です。いくつか考え得る原因を列挙します。
- コミュニケーションをうまく図れていないのでは？
- 要求レベルが高すぎるのでは？
- 評価体系の見直しが必要なのでは？
- 待遇改善が必要なのでは？
- 教育体制が整っていないのでは？
- スキルアップの機会を与えていないのでは？
以下、それぞれ簡単に説明します。
コミュニケーションをうまく図れていないのでは？
日常的にコミュニケーションが不足している場合、真面目な人ほど「自分の考えを聞いてもらえない」「ここでは理解されていない」と思うきらいがあるため、評価などフィードバックを行う際には特に不信感を抱かれがちです。些細な摩擦や行き違いでも顔にこそ出さないものの、内心で不満を持たれている可能性は大いにあります。その結果、突然辞められるのであれば、それはコミュニケーションが不十分だったといわざるを得ないでしょう。
要求レベルが高すぎるのでは？
真面目な人は、たとえ会社からの要求レベルが高すぎても無理をして応えようと動いてしまいます。また、真面目な人ほど「これくらいはできて当然だ」「もっと頑張れば何とかなる」と考えがちです。会社側はこれに気付かず、なまじっか彼・彼女たちができてしまったばっかりにむしろ要求レベルを上げることすらあります。真面目な人ほど自分の状況を冷静に見つめ直す余裕が持てずとりあえず課された仕事に取り組んでいくわけですが、心身が悲鳴を上げた頃にはもはや辞める選択肢しか残っていないことがほとんどです。
評価体系の見直しが必要なのでは？
真面目な人が急に辞めてしまう背景には、評価体系が本人の努力や成果を適切に反映していないことも大きく影響しているように感じます。真面目な人ほど、自分の働きが認められているかどうかを強く意識しますが、評価が不透明、不公平では「ここでは自分の価値を正当に評価してもらえない」と半ば投げやりな気持ちで新たな環境を求めることでしょう。日常的な小さな成果や縁の下の貢献が「当たり前」と見なされ見過ごされてしまうのもモチベーションにかかわります。こうした感情の機微にも目配りしながら評価体系を見直すことが大事です。
待遇改善が必要なのでは？
評価はそのまま待遇にもつながります。それゆえ報われない気持ちが強くなればなるほど辞める意思も固まっていくのではないでしょうか。特に、真面目な人は表立って不満を漏らさない傾向にあるため、周囲は彼・彼女らが待遇に対してどれだけ敏感かに気付きづらいと思われます。結果として「不満があるなら言ってほしかった」会社側に対して「言っても変わらない」と端から期待されない状況、すれ違いを生むわけです。
教育体制が整っていないのでは？
真面目な人ほど成長意欲が高いため、職場の教育体制が十分でない場合には幻滅されることでしょう。また、自己流で片付けることに（労力を必要以上に費やす無駄も含めて）不安を抱きやすいのも彼・彼女たちの特徴です。にもかかわらず会社側が無頓着なようだとそっぽを向かれるのも時間の問題だと考えます。会社が教育基盤を整えないまま「できて当然」とする風潮があるのならそれは完全に怠慢です。それがそのまま辞める原因につながります。
スキルアップの機会を与えていないのでは？
教育体制と同様にスキルアップの機会を社内外問わず設けてあげることは、真面目な人にとって実にありがたい福利厚生です。逆にこれがない場合は外部にそれを求めるしかありません。特に向上心の強い真面目な人ほど「別の環境で新しい挑戦をしたい」と考え、急であっても離職を選ぶことが多いのではないでしょうか。
真面目な人に限らず離職者が多い組織の特徴
ここまで真面目な人にフォーカスしながら、彼・彼女たちがなぜ辞めてしまうのかを述べてきましたが、少なからず普遍的な部分もあったはずです。というわけで本章では一旦、真面目な人に限定するのをやめ、とにかく離職者が多い組織にはどのような特徴があるのかをお伝えします。ざっと挙げると次のとおりです。
- 業務内容がグレー
- 閉鎖的な環境
- 公私混同が目立つ
- 常に人手不足
以下、それぞれ簡単に説明します。
業務内容がグレー
たとえば、顧客に誤解を与えるような営業手法や内部的には問題があると分かっていても隠蔽しているような仕事が含まれる場合、真面目な人に限らず自身の役割に疑念を抱くことでしょう。モチベーションの低下、精神的ショックにもつながります。そうしたグレーな業務内容に耐えられず多くの離職者を生むのは至極当然です。
閉鎖的な環境
情報共有や意見交換が少ない閉鎖的な環境の職場では、属人的にならざるを得ない状況に陥りやすく、特に新人は不安が拭えないまま早々に退職を意識している方も少なくないように見受けられます。わからないことを聞くにしても、相談しづらい空気が纏っているため、（本当はそうでなくとも）自分でなんとかするしかないと自身で勝手に決めつけてしまうわけです。こうした事態を作ってしまう意味でも閉鎖的な環境には問題があると考えます。
公私混同が目立つ
公私混同が目立つ組織も離職者が多いように感じられます。特に、役職者を中心に力関係が上の方が私的な感情や都合を仕事に持ち込む場合に顕著です。たとえば、特定の従業員が優遇される職場などはまさに典型だといえます。また、上司の機嫌やプライベートに振り回されるのも部下からするとたまったものではありません。業務上の責任範囲も曖昧になりやすく、規律やルールが崩れていくなかで、とりわけ真面目に仕事をしている人ほどその混乱のしわ寄せを受けることが多いように見受けられます。結果、疲弊して次々と辞めていくのでしょう。
常に人手不足
常に人手不足の組織ほど、離職者が止まらない負のスパイラルを引き起こしがちです。それもそのはず、人が足りなければ従業員一人にかかる負担はどんどん嵩みます。辞めざるを得ない状況に追いやられるのも無理はありません。そうした方々が次々と出てきます。これはいわゆる連鎖退職です。職場全体の士気が下がるのをどこかで食い止めなければ、事業継続すら危ぶまれます。
真面目な人が辞める前に見られる兆候
真面目な人が急に辞めるのを回避するには、その兆候を見逃さないことが大事です。では具体的にどのような前兆があるのでしょう。ざっと挙げると次のとおりです。
- 疲労感が漂っている
- 早退・欠勤が増える
- 社内イベントに参加しなくなる
- 仕事の精度が落ちる
- 意見やアイデアを出さなくなる
- 不平・不満の声を漏らすようになる
以下、それぞれ簡単に説明します。
疲労感が漂っている
普段から責任感が強く頑張りすぎる人は、疲労が蓄積しやすく、心身にもそれが如実に表れます。たとえば、曇りがちの表情や口数が減ってきたことなどそれとなく注視すれば明らかに感じ取れるはずです。その段階ですでに彼・彼女たちには「辞める」選択肢が頭の中に浮かんでいるのかもしれません。
早退・欠勤が増える
真面目な人が早退や欠勤を繰り返すのは、普段、滅多に休まない彼・彼女たちだからこそ異変と察知できる要素だと考えます。心身の疲労やストレスが限界に達しているのか、はたまた転職活動に時間を割いているのか。いずれにしても、体調面のケアはいうまでもなく、辞める前兆と捉える意味でもフォローが必要かもしれません。
社内イベントに参加しなくなる
真面目な人ほど社内イベントには積極的に参加される方が多い印象です。裏を返せば、それが減るようだと注意した方がよいでしょう。自社に対する愛着が薄れたり、何か不満を持つようになったりと、離職につながる要素を抱えていることは大いに考えられます。
仕事の精度が落ちる
真面目な人がこれまでの丁寧な仕事ぶりとは打って変わって急にミスが増えたり、納期を守れなくなったりする場合、それは疲労、ストレス、さらにはモチベーションの低下が原因であることが考えられます。以前と比べて明らかに集中力が欠けるようなら一度心身の状況を確認する場を設けるべきでしょう。他方、「ここで一生懸命やり続けても意味がない」という感情が芽生えている可能性も否めません。特に、こっそりと資料整理などに時間を割いているようなら、まさに前兆として注意が必要です。
意見やアイデアを出さなくなる
真面目な人は、普段の業務でのやり取りにおいて気付いたら意見やアイデアをよく出してくれる方が多いように思います。しかしながら、彼・彼女らがミーティングやコミュニケーションの場でさえも急に傍観者のような態度に変わったなら注意が必要です。その変化は、離職を考え始めているのか、決意を固めたのか、いずれにしても、あまり積極的にかかわる必要がなくなった、もしくはかかわらない方が良いと判断される事情（つまりは辞める意向）を示唆しているように感じられます。
不平・不満の声を漏らすようになる
真面目な人は普段から愚痴や不満を口にせず仕事に向き合っている方も多いでしょう。が、心の中で何らかの限界が近づいているときに思わずこぼれてしまう可能性も否めません。これは深刻なサインと受け取ってもよいでしょう。また、本人の中では職場に対する信頼感は薄れ、すでに離職を検討している状態かもしれません。その場合、仮にあからさまに好戦的な態度を取られても、くれぐれも感情的にならないよう、然るべき人が丁寧にフォローに回れるよう対応しましょう。
真面目な人が急に辞めないように企業（店舗）側ができること
真面目な人が急に辞めることの理由も原因も特徴も前兆も知り得たうえで、企業（店舗）側は果たしてどのような対策を講じればよいのでしょう。主にできることとして挙げられるのは次のとおりです。
- 定期的な1on1ミーティング
- 労働環境の見直し
- 労働条件の見直し
- 教育体制の見直し
- キャリアパス支援の見直し
- 組織風土の見直し
- 匿名での目安箱の設置
以下、それぞれ簡単に説明します。
定期的な1on1ミーティング
真面目な人は黙々と仕事をこなす方も多く、ゆえに内心何を考えているのかわからないこともあります。あるいは彼・彼女たちも自身が抱えている不安やジレンマであったり展望や理想のロードマップだったりを誰かに相談したいかもしれません。こうした何ともモヤモヤした部分をスッキリさせるためにもできれば会社側が定期的に1on1ミーティングを実施することが望ましいと考えます。決して業務のことだけでなく何気ない世間話であってもかまいません。日頃の葛藤や漠然としたストレスを吐き出す場として機能すれば、急な離職を回避する動きにもつなげられるでしょう。
労働環境の見直し
たとえば残業が極端に多い、休みが取りにくい職場など、そもそも労働環境に問題があるところはもってのほか。それ以外にも働き方に融通が利くか、快適に働けるかどうかもあらためて見直すことが大事です。真面目な人ほどトレンドや他の会社がどのようなことに取り組んでいるのかに敏感な方が多いように見受けられます。自社と比較されていることも想定できるはずです。したがって、フレックスタイム制やリモートワークの導入、オフィスの模様替えなど、これまでなかなか手を付けられていないことがあれば検討してみてもよいのではないでしょうか。
労働条件の見直し
労働条件もテコ入れの余地があれば、あらためて見直すことが必要です。特に給与や福利厚生は他社と比較されるのが当たり前と思っておいた方がよいでしょう。たとえば、真面目なアルバイトの方に時給据え置きでいつまでも働いてもらえるというのはさすがに厳しいと考えるべきです。その辺り、積極的に他社の動向にも目配りしながら調整を図っていくことが求められます。
教育体制の見直し
真面目な人に急に離職されてしまわないよう教育、フォローにも力を入れましょう。彼・彼女たちが自信を付け成長を実感できるようプログラムの組み立ても折に触れて見直せるとなおよいと考えます。また、実務だけでなく、メンタル面でのサポートも大事です。心身に支障をきたさないようにモチベーションを上げてもらえる体制づくりが求められます。
キャリアパス支援の見直し
真面目な人ほど中長期的な視点でのキャリア形成に不安を感じている方が多いように見受けられます。したがって、キャリアパスに対する支援を適宜見直していくことも大事です。状況に応じてスペシャリストかゼネラリストかといった方向性を選び直すこともあるでしょう。社員はたまた管理職への登用なども検討する場面が出てくるかもしれません。
組織風土の見直し
雰囲気や人間関係が良くない職場からは真面目な人に限らず、離職者が続出するのも無理はありません。業務内容がグレー、コミュニケーションが閉鎖的といった企業体質も当然問題視してしかるべきでしょう。そこまでネガティブなものでなくとも定期的に従業員にヒアリングするなどして課題を明確に洗い出すことが大事です。加えて、独自の取り組み、制度を取り入れるなどして自社の文化をリフレッシュするのも一つの手と考えます。いずれにしても組織風土に無頓着にならないよう気を付けましょう。
匿名での目安箱の設置
匿名で意見をポストする目安箱の設置によって、従業員が日頃抱えている不満の声を可視化できます。真面目な人ほど、普段感情をなかなか表には出せないものです。だからこそ、そこには彼・彼女らの思いがぎっしり詰まっているでしょう。会社側としては目を覆いたくなる現実が待ち構えているかもしれませんが、離職防止に重要な情報を知るきっかけになるはずです。
急な欠員ですぐにでも人材補充が必要になった場合
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真面目な人ほど急に辞めるリスクに対して、真面目に向き合おう！
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