短期雇用契約について

契約書の前にまずは、そもそも短期雇用契約とは何か、その定義と該当する働き方について解説します。
▶関連記事:短期雇用契約とは?保険や契約書の内容、注意点等々くわしく解説
短期雇用契約の定義
短期雇用契約とは、文字どおり短期間で人を採用するにあたって雇用主が労働者と結ぶ契約を指します。あくまで目安とはいえ、長くても半年の期間で契約を結ぶところがほとんどです(それより長ければ“短期雇用”とは言い難いでしょう)。なお、労使間で認識に齟齬が無いよう契約書では雇用期間を明示しなければなりません。これは、法律(労働基準法第十五条)でも義務付けられています。
短期雇用契約に該当する働き方
短期雇用契約と一口にいっても、実は働き方が多様です。そのなかでアルバイト・パート、ギグワーク、業務委託についてまとめました。
働き方 | 特徴 | 具体例 |
---|---|---|
単発アルバイト | 短期間で集中して行われる業務が中心。 | イベントスタッフや配送業務など。 |
ギグワーク | 専門スキルを要するものから誰でもできる簡単な作業まで幅が広い。 | デザイン・ライティング、データ入力など。 |
業務委託 | フリーランスや副業人材が該当。ギグワークも含む。 | 上記ギグワーク同様。 そのほかフードデリバリー、プログラマーなど。 |
雇用契約書について

続いては、雇用契約書についてお伝えします。初歩的な話でも意外と曖昧に理解していることもあるかもしれません。下記の基本知識も同様です。しっかりと把握しておきましょう。
雇用契約書とは?
雇用契約書は、労働者と雇用主との間で交わされる契約を文書化したものです。労使双方の義務や権利を明確に形に残すことで、トラブルを未然に防ぐ役割を果たします。労働時間や賃金に関する条件などは最たる例でしょう。
単発アルバイトを雇う際も必要?
短期雇用の場合も労使双方が納得できる形で契約書をきちんと取り交わすことが求められます。雇用関係や条件に合意した旨の証明、保険・税務関連の確認などにつながる点を考えれば用意して損はないはずです。
労働条件通知書との違いは?
労働条件通知書と雇用契約書は、混同されがちですが異なる役割を持ちます。それぞれの違いは下表のとおりです。
項目 | 雇用契約書 | 労働条件通知書 |
---|---|---|
目的 | 労使双方が合意した条件を文書化し、契約内容を明示する。 | 雇用主が労働条件を一方的に通知する義務を果たすための文書。 |
法的拘束力 | 労使双方の署名・押印が必要。法的拘束力がある。 | 法的拘束力はないが、内容が適切であることが法的義務として求められる。 |
記載事項の制約 | 労使双方の合意に基づけば、労働条件の詳細は臨機応変に記載可能。 | 労働基準法で規定された最低限の事項のみを記載する。 |
短期雇用契約書に記載する項目

短期雇用においても契約書に記載する項目はいくつか義務付けられています。大きく分けると、絶対的明示事項と相対的明示事項です。以下、それぞれ言及します。
絶対的明示事項
絶対的明示事項は、次のとおりです。
- 労働契約期間
- 就業場所や業務内容
- 就業開始時間および終業時間
- 時間外労働の有無
- 休日や休暇および休憩時間
- 賃金の発生基準や計算方法、支払方法や時期に関する事項
- 退職に関する事項
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
2024年4月からのルール変更もあり、記載項目は決して少なくないといえます。
短期雇用で気を付けるなら、やはり契約開始日と終了日、更新条件の有無などでしょうか。労働時間や休憩時間に関する詳細も法(一例を挙げると、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を設けるなど)に抵触しないよう細心の注意を払いましょう。
相対的明示事項
相対的明示事項は、次のとおりです。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定、計算、支払いの方法、支払いの時期
- 労働者の費用負担が発生するもの(作業用品、食費など)
- 職業訓練に関するもの
- 安全・衛生に関するもの
- 災害補償、業務外の傷病扶助
- 休職に関する事項
- 賞与・各種手当(精勤手当、勤続手当、能率手当など)
- 表彰・制裁
これらは、法律上の義務こそないものの、記載することで雇用契約をより円滑に運用できる項目です。
たとえば、短期雇用では馴染みがない賞与や各種手当も労働者がかつて他社で経験していた場合、話は変わります。認識にズレがあればトラブルが起きる可能性は十分考えられるでしょう。
そのほか福利厚生に関すること、交通費の支給なども同様です。記載するに越したことはないでしょう。
社会保険の加入が適用される短期雇用契約書の内容

短期雇用契約で目配り必至なのが、社会保険の加入条件を満たすか否かです。契約書にも当然かかわります。社会保険の加入条件は、労働者の契約期間や労働時間、就業形態によって異なります。思いのほか複雑といえるかもしれません。たとえば、契約期間が2ヶ月以上継続する見込みがある方や、労働時間が通常の従業員の4分の3以上である場合には健康保険や厚生年金の被保険者として取り扱われます。また、労災保険に関していうと短期雇用を含めたすべての労働者が適用対象です。契約書にはなるべくその旨を記載することが望ましいでしょう。
とりわけ、契約更新が見込まれる場合は契約書記載とあわせて要注意です。仮に「更新する場合がある」と記載されている場合、実際に更新されない場合でも社会保険の加入条件は維持されます。これは、勤務開始後に契約の更新が見込まれなくなったとしても、「契約期間の途中で厚生年金・健康保険の被保険者資格は喪失しない」と取り扱われるためです。
短期雇用契約書の交付方法

雇用契約書は、取り交わす際は書面で作成し、労働者に交付することが一般的です。これは短期雇用でも変わりません。労働条件通知書の役割を兼ね、労働基準法で定められた記載事項を網羅し、書面交付により、労使双方が条件を明確に共有します。
また、労働者側の承認を得られれば、電子メールやSNSを利用して交付することも可能です。昨今は特に、コスト削減や効率化の面で重用されています。ただしこの場合、PDFやWord形式など、印刷可能なファイル形式で提供することが条件です。
短期雇用契約書が無効になる場合

労働基準法や労働組合法に違反する内容が含まれる場合、短期であれ雇用契約書は無効です(労働基準法第十三条)。たとえば、最低賃金を下回る給与設定や法定労働時間を超える労働を義務付ける内容が該当します。
また、先述したように労働基準法第十五条では労働条件の明示が義務付けられているため、契約書に労働時間や賃金、休暇などの必須事項が記載されていない場合は効力が発生しないかもしれません。同様に、労働組合法第十六条に基づき、労働者に不当な圧力をかけて契約を締結させた場合も、契約は無効です。
そのほか、契約書が形式的に適切でも実際の労働条件と契約内容に乖離があれば、妥当と見なされないでしょう。
つまるところ、法令に準拠した内容を正確に記載しなければ、雇用期間問わず、雇用契約書として成り立たないわけです。
短期雇用契約書のひな形(テンプレート)について

繰り返しお伝えしているように(短期の人材を採用するにしても)雇用契約書の作成は、労使間のトラブル防止や効率的な人材管理に不可欠です。しかし、一から作成するのは時間と労力がかかります。そのため、ひな形(テンプレート)を活用したい(活用している)企業も多いでしょう。確かにそれであれば効率よく作成できます。が、その一方でリスクも無視できません。以下、配布状況と利用する際の注意点について解説します。
民間企業が配布
雇用契約書は、民間企業がひな形を無料で配布していることも少なくありません。具体的には、ビジネス文書のテンプレートサイトや人事・労務管理ソフトウェアを提供する企業のサイト、社会保険労務士事務所のブログあるいは資料ダウンロードページ……等々です。多くの場合、Word形式やExcel形式で提供されています。法律や労務管理の専門家が監修しているものについては、信頼性に足る分、安心して使えるでしょう。
なお、労働条件通知書については厚生労働省が配布しています。
参照:労働条件通知書
利用時の注意点
ひな形を利用する際、大きく二つの注意点があります。雇用形態、そして勤務形態です。これらに関する記載が適切であるかどうかしっかり確認しましょう。
雇用形態に注意
短期の契約といっても雇用形態は一つではありません。単発のアルバイトと3ヶ月の派遣ではやはり、社会保険の適用や就業規則の扱いは異なります。また業種によっては、安全管理や資格要件に関する特別な記載が求められることもあるでしょう。したがって、ひな形を選択する際はこれらを加味して、適宜、内容を調整することが必要です。
勤務形態に注意
勤務形態もまた、短期の点では共通するとはいえ、フルタイムかスキマ時間かなど契約内容はさまざまです。休日も然り。企業によって異なればテンプレートとして使う際には調整が必要でしょう。
短期雇用契約書を取り交わすことが多い主なお仕事

短期雇用契約は、さまざまな場面で活用されています。繁忙期に対応する際や、プロジェクトベースの業務で柔軟に人材が必要なケースなどが一般的です。本章では、短期雇用契約を結ぶことが多い主な仕事についていくつか取り上げます。
事務作業全般
データ入力、書類整理、電話対応など、いわゆる事務作業と呼ばれるものは一時的な業務量の増加に対応するために短期雇用がしばしば活用されます。特に、決算期や税務申告期など、特定の時期には需要が高まる傾向にあります。
クリエイティブ関連業務
デザイン、コーディング、ライティング等々、クリエイティブ関連のお仕事を依頼する場合にも短期雇用契約を結ぶケースは多く見られます。特にプロジェクトベースの仕事などにおいて顕著です。必要な期間だけ人材を確保し、人件費をなるべく節約する狙いがうかがえます。
配送系業務
物流業界では、繁忙期あるいは特定のキャンペーン期間中に限定して配送ドライバーや倉庫内作業員などを雇うことがあります。短期ゆえに安全麺や労働時間の調整が疎かになりがちですが、必要な免許や資格の確認を忘れないことも含めて、しっかりと管理することが求められます。
代行系業務
家事や秘書、運転……等々、代行系の業務は、クライアントのニーズに応じて柔軟に人員を配置することが肝要です。そのため、短期雇用で対応する企業も少なくありません。
気を付けたいのは個人情報の取り扱いや守秘義務に関する規定です。また、業務の性質上、不定期あるいは変則的な働き方になりがちなため、労使双方、あらかじめ明確に共有しておく必要があります。つまるところ、契約書のなかで明記することが重要です。
専門職(資格を要する士業など)
公認会計士、税理士、社会保険労務士といった資格を要する専門職の方々と短期雇用契約を結ぶことも非常によく見られるケースです。専門職ゆえに条件など契約書に盛り込む要素は多いかもしれません。
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短期雇用契約書の作成を習得すればスポットワーカーの採用も安心!

短期で人材を採用するうえで雇用契約書の作成を侮ってはいけません。むしろ短期だからこそ、雇用主そして労働者も不安を抱きやすいと考えます。それを払拭すべく、契約内容の明確化は非常に重要です。労働期間はもちろん、労働時間、賃金など必要項目はもれなく記載し、社会保険の加入条件も正しく理解しておきましょう。
トラブル、法的なリスクを回避しつつ、自社でテンプレートを確立できれば作業の効率化にもつながるはずです。前述したスポットワーカーを今はまだ活用していないとしても、この先は検討する局面が出てくるかもしれません。そうした世相の変化にも備えるべく、短期においても雇用契約書の作成ノウハウはしっかりと身に付けておくことが大切です。
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【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所
代表 荒武 慎一
同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。