試用期間中は時給を検討する企業が知っておきたいこと

試用期間を設ける目的は、企業と従業員双方がお互いを理解したうえで長期的な雇用関係を築けるようにすることです。新入社員が不安にならないためにも基本的な知識はしっかりとおさえておかなければなりません。本章ではまず、試用期間のそもそもの定義や守るべき労働条件、そして、時給制の可否について解説します。
試用期間とは?
試用期間とは、正式な雇用契約を結ぶ前に企業が新入社員の適性を評価し、従業員が職場環境に適応できるかを見極めるための期間です。もちろん、これは働く側にとっても意味があります。本採用後、やっていけるかどうかを判断する貴重な時間です。企業によって区々ですが、通常は数週間から数ヶ月で設定されます。
試用期間中だからといって(本採用後と)業務内容が変わることは、基本的にはありません。しかし、この期間のみ雇用形態の扱いや待遇が異なるといったケースはみられます。
試用期間中の労働条件について
試用期間中だからといって、労働基準法に定められている労働者が持つ最低限の権利(労働時間や休憩時間、休日など)を蔑ろにしてはいけません。企業はこれらを尊重し、従業員に適用しなければならないです。 仮に試用期間と本採用後で労働条件が異なるときは、募集要項で明記する義務があります。
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ずばり、試用期間中は時給にできる?
結論、正社員で採用した従業員に対して、試用期間中、時給にすることは可能です。とはいえ、企業にとって一概に都合のよいことばかりではありません。以下、時給にするメリットとデメリットについて説明します。
時給にするメリット
月給制では、休みがちあるいは勤怠が安定しない従業員の給与計算は煩雑になりますが、時給であれば、働いた時間をそのまま掛けるだけで事足ります。このように人件費の管理がしやすくなる点はメリットだといえるでしょう。また、時給で運用することで月給制よりも支払う額を抑えられる可能性があります。
時給にするデメリット
正社員雇用であっても時給で働くことに対して、収入面に多少なりとも不安を抱く従業員もいるようです。特に、業務内容が本採用後も同じ場合は、企業に対して不信感さえ覚えるかもしれません。そうならないためにも、試用期間の時給設定が本採用後の月給と大きく差がつかないように調整することが必要です。そもそも、時給制だからといって月給制よりコストを抑えられるかというと、必ずしもそうではありません。たとえ抑えられたとしてもそれをメリットと捉えてよいかどうかは企業の解釈によりけりです。というのも上述のとおり、自社に対してネガティブな印象を抱かせてしまうと早期離職につながることや、Web上で悪評が拡散される恐れがあります。また、意図的に無駄な残業が増えるケースも考えられます。したがって、試用期間中を時給にするのであれば、従業員のモチベーションをうまくコントロールしつつ、なおかつ生産性向上に寄与できる仕組みづくりが不可欠です。
試用期間中なら最低賃金を下回っても大丈夫?

試用期間中であっても、最低賃金法の規定は適用されます。そのため、支払う額が各地で定められた最低賃金を下回ってはいけません。仮に給与が最低賃金未満の場合は、違法行為とみなされ、以下の罰則が課せられます。
事由 | 適用される法律 | 罰則 |
---|---|---|
地域別最低賃金額以上を支払わない場合 | 最低賃金法 | 50万円以下の罰金 |
特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合 | 労働基準法 | 30万円以下の罰金 |
試用期間は、あくまで従業員の適性を評価するための制度です。たとえ期待値にそぐわなくとも、最低賃金法に則った公正な報酬を支払う義務があることをくれぐれも認識しておくようにしましょう。もちろん知らなかったでは済まされませんが、軽んじることは言語道断です。法に抵触するのみならず、企業の信頼性やブランドイメージにも悪影響を及ぼす恐れがあります。
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その他、試用期間について気を付けること

給与制度以外にも、試用期間に関して企業が注意すべき点は少なくありません。とりわけ社会保険の加入義務や有給休暇の付与、試用期間中の解雇については、確実におさえておかなければならない知識です。以下、詳述します。トラブルを招かないよう、しっかりと理解しましょう。
社会保険の加入
「1週間あたりの所定労働時間が20時間以上」「賃金月額が88,000円以上」「学生でないこと」等々の条件を満たす従業員には、 試用期間、本採用関係なく社会保険への加入してもらわなければなりません。これは、従業員の福利厚生を保障することの証にもなります。
有給休暇の付与
労働基準法では、半年以上の継続勤務かつ所定労働日数の8割以上出勤した従業員には、年間10日の有給休暇を付与することが義務づけられています。試用期間も例外ではありません。試用期間を長く設定している場合は気を付けるようにしましょう。
試用期間中の解雇
試用期間中でも、一方的に解雇することはご法度です。どうしても解雇せざるを得ない状況に陥った場合は、その理由を明確にし、十分な説明を行わなければなりません。また、その理由自体も正当でなければトラブルの火種です。訴訟の原因にもなるケースは往々にしてあります。解雇についてはくれぐれも慎重な判断が大事です。これは正社員雇用に限らず、アルバイトを雇う際にも当てはまります。
▶関連記事:アルバイトの解雇について~妥当な理由、方法、流れを解説
時給はアリかナシか?試用期間を巡るトラブルを未然に防ぐために

試用期間中に時給で雇うこと自体は法的に問題ありません。しかしながら、それが原因で従業員のモチベーションが下がったり、不信感を持たれたりといった可能性があることだけは念頭におくべきでしょう。トラブルを招く恐れがあるのは、時給云々の話に限りません。社会保険の加入義務や有給休暇の付与、解雇の条件に対しても同様です。無頓着でいることは大きなリスクだと思ってください。また、前述したように正社員雇用だけでなくアルバイトを採用するときにも気を付けましょう。
▶関連記事:アルバイトの試用期間について給料や延長の設定、注意点など解説
試用期間を有効に活用することは、人材管理に対する正しい知識と適切な運用を意味します。ひいては、従業員との良好な雇用関係につながるものです。いずれにしても、(それは試用期間に限らず)給与設定はもちろん、労働条件全般に関する深い理解が求められます。
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