人事異動の内示は、組織の円滑な運営と従業員のキャリア発展に深くかかわることです。時期や方法、伝え方など、あらゆる観点で適切な判断が必要です。個人の事情に対する配慮や情報管理の徹底など、細やかな対応が求められる場面も増えています。そこで本記事では、人事異動の内示について掘り下げます。内示とは何か。定義や目的だけでなく対応に役立つ情報もご参照いただけますと幸いです。

人事異動の内示とは?用語の意味、辞令との違い、伝える際の注意点も解説

  • 2025.02.10
  • 2025.02.10

人事異動の内示は、組織の円滑な運営と従業員のキャリア発展に深くかかわることです。時期や方法、伝え方など、あらゆる観点で適切な判断が必要です。個人の事情に対する配慮や情報管理の徹底など、細やかな対応が求められる場面も増えています。そこで本記事では、人事異動の内示について掘り下げます。内示とは何か。定義や目的だけでなく対応に役立つ情報もご参照いただけますと幸いです。

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内示とは?

椅子と机と人事異動のブロック

まずは内示について基本概要を整理します。用語定義に加えて、混同しやすい“辞令”や“内々示”の意味も正しく把握しておきましょう。

内示全般の定義

内示とは、組織の意思決定を正式に実施する前に関係者へ伝達する手続きです。一般企業では人事部長や直属の上司が対象者に面談などを通じて行います。いざそれを受けて従業員の意向はどうなのか、また引き継ぎ期間(準備)なども加味して対応していく必要があります。

人事異動における内示の意味

人事異動における内示は、対象者が次のステップを受け入れることのいわば猶予です。そしてこれは企業側にも当てはまります。内示の場で従業員の反応を確認したなら、公布するまでのあいだ、サポート体制を整える必要も出てくるでしょう。

辞令との違い

内示と似て非なる言葉に“辞令”があります。これは、法的効力や伝達方法において異なる用語です。前者が異動前に意思確認を行ういわば非公式な手続きであるのに対して、後者すなわち辞令は、法的拘束力を持つ通知です。異動先の部署名や役職、発令日などが記載され、社内規定に従って一律に発行されます。

内々示とは?

内々示とは、内示以前の話です。主に管理職以上の異動や、組織改編に伴う大規模な人事異動の際に実施されます。内々示は対象者を厳選し、異動計画の微調整や組織全体への影響を慎重に確認するのが目的です。そのため、人事部門は内々示を受けた者に対して、情報管理の徹底と慎重な対応を求めます。内々示から内示までの期間は、組織の規模や異動の複雑さに応じて柔軟に設定されますが、一般的には数週間から1ヶ月程度です。

内示の目的や役割とは?

異動の準備をしている女性

内示を行うには当然、理由があります。その目的や役割を理解しなければ、単なるオペレーションになってしまうでしょう。ざっと挙げると次のとおりです。

以下、それぞれ補足します。

準備・調整期間の確保

内示はいわば猶予だと前述したように、実施までに準備や調整を要します。いわば、その期間を確保するために行われるわけです。たとえば、転勤を伴う人事異動などそれなりに時間が必要でしょう。実際に意思確認から長考されるケースもあります。双方十分に検討していく意味でも、内示を介すことが大事なのです。

職場内の円滑な引き継ぎ

内示から実際の異動までに業務の引き継ぎが発生することもあるでしょう。担当業務の棚卸し、業務マニュアルの作成、重要書類の整理……等々、円滑に進めるには、やはり内示の場での詳細な説明が欠かせません。これによって、生産性や業務効率を下げることなく人事異動が行われます。

従業員のモチベーション管理

仮に内示なしで異動通知を行った場合、従業員は突然のことに動揺を隠せないかもしれません。当然、モチベーションに左右することも考えられます。これを適切にコントロールするためにも内示があると捉えてよいでしょう。不安を徐々に軽減できるよう、前もって通達しておくわけです。

内示が行われる主なケース

昇進と書かれたブロック

内示はさまざまなケースで行われます。ざっと挙げると次のとおりです。

以下、それぞれ補足します。

昇進・昇格

昇進・昇格の内示では、求められることや責任範囲を具体的に説明し、昇進後の業務イメージを明確に共有します。該当する役職によっては社内外で研修の案内も必要でしょう。そのほか給与や待遇の変更点も伝えます。内示の段階とはいえ、従業員のモチベーションアップ、成長意欲を喚起するにはもってこいの機会です。

降職・降格

降職・降格の内示は、対象者の尊厳と組織の信頼関係を維持する慎重な対応が必要です。面談では降格の理由を業績など客観的なデータに基づいて説明し、感情的な議論を避けましょう。なおかつモチベーションが極端に下がらないよう、再度這い上がれるチャンスや新たなキャリアパスの提示など、ポジティブな要素を必ず伝えられるようにしましょう。

解雇・免職

解雇・免職の内示は、従業員の生活に直結する重大な判断です。降職・降格以上に慎重な対応が求められます。理由も(これまでの指導・警告の記録を提示するなど)明確でなければなりません。ここをぼんやりさせてしまうとトラブルに発展することも大いに考えられます。また、退職までの期間における給与支払いや社会保険の扱い、退職金の算定方法など処遇に関することも同様です。再就職支援制度の案内や、引継ぎ期間中の業務範囲の確認など、くれぐれも感情を刺激せず建設的なやり取りを心がけてください。

転勤・転任

グローバル化や事業拡大に伴う戦略的な人材配置として、転勤・転任も内示を介して実施されることが一般的です。転居先の住環境や教育機関の情報、引越し費用の補助制度……等々、誤解なきよう丁寧に説明しましょう。その際、家族を含めた私的な事情も出てくるかもしれません。その場合は、必要に応じて赴任時期や勤務形態の調整も検討してください。

部署異動・配置転換

部署異動・配置転換の内示では、キャリア形成の機会として前向きに捉えてもらえるよう説明の仕方には工夫が必要です。たとえば、新たな部署での役割や期待することはなるべく具体的に伝えた方がよいと考えます。つまるところ、異動をプラスに感じてもらうことが求められます。

出向

出向の内示もまた、受ける側が不安を抱くような話です。出向先企業の事業内容や組織風土、期待される役割などを具体的に説明し、(出向の)目的を明確にしましょう。対象者からすると給与体系や福利厚生の変更点、出向期間中の評価方法など処遇面も気になるところです。加えて、キャリアパスもイメージが湧きづらくなるかもしれません。これらのモヤモヤを解消し、快く引き受けてもらえるよう伝え方には十分注意しましょう。

採用

採用でも内示は一般的です。たとえば新卒採用では、一緒に働きたい学生の早期確保のため選考期間中に内々示を実施し、その後正式な内定通知へと進みます。他方、中途採用では内定者の円滑な転職を実現するため、入社時期や条件の調整などを内示の際に行います。

内示を行うタイミング

転勤を積み木で表現

内示はタイミングも大事です。業務に支障をきたさないことはもちろん、従業員にも十分な準備期間を提供する必要があります。なお、適切なタイミングはいくつか挙げられます。ざっと次のとおりです。

以下、それぞれ補足します。

人事異動の1ヶ月前

内示は大抵、人事異動の1ヶ月前程度に行われるところが多いと思われます。これは、転居を伴う異動なども踏まえての期間でしょう。もちろん状況を考慮した場合はさらに前倒しで行われることもあります。

繁忙期の前後

内示が繁忙期と重なるのを意図的に避けるケースも多く見受けられます。そのため、あらかじめ部門ごとに業務サイクルや年間スケジュールを把握しておくと、タイミングが図りやすいでしょう。一般的には経理部門だと決算期、営業部門であれば四半期末の売上締め時期を避けるといった具合です。

プロジェクトの完了後

大きなプロジェクトの最中に内示を出すのもいささか憚られるかもしれません。混乱をきたさないよう無難なのは、それらの完了を待ってからでしょう。特に(そのプロジェクトの)リーダーが異動する場合は、後任者の引き継ぎに十分な時間を割けられるよう慎重にタイミングを図った方がよいと考えます。

月度、年度の切り替え時

月初めや年度初めのタイミングで内示を出す企業も多いでしょう。新年度の事業計画や予算策定と連動した人事異動を実現するため、厳密には年度末の1〜2ヶ月前といったところでしょうか。また、月次での異動については、月末の決算処理や業績報告などの定型業務の完了を考慮した方がよいと考えます。もちろん、企業によって区々です。内示から発令までの期間を柔軟に調整して進めましょう。

内示の伝え方とコツ

異動を伝える様子

内示は主に面談の場を設けて直接伝えるか、フォーマルな書面で通達する2パターンがあります。従業員がいざ内示を受けた際、彼・彼女らにいろいろと思うところは出てくるはずです。それは希望なのか不安なのか。対面での内示はこれを汲むことができる点で非常に有意義だと考えます。他方、内示対象者が多い場合は書面で伝える方が効率的です。とはいえ、オンラインも含めてちょっとしたことでも対話の時間を作れると望ましいでしょう(無理に対面にこだわる必要はありません)。

そして度々述べているように、内示はどう伝えるかが肝要です。組織の文化と従業員の立場・心情を最大限考慮しなければなりません。確実な意思疎通と従業員の心理的安定を実現するにはどうすればよいのか。以下、いくつかコツをご紹介します。

経営方針や戦略なども交えて異動の目的を伝える

内示は、組織戦略と従業員の成長機会を明確に関連付けて説明しましょう。このとき単なる企業側の都合や事情と思われないようにするのが大事です。ポジティブな内容なら、その従業員の異動によって組織に変革や効果が生まれる期待があることを伝え、ネガティブな場合でも今後の糧につながるストーリーをロジカルに組み立て諭すように話してください。

異動先で安心できる情報を伝える

内示の際に異動先の情報を伝えると思いますが、業務内容や求められる役割などに終始せず、安心できることを必ず含めるよう意識しましょう。「周りのメンバーは気さくで穏やかな人たちばかり」「残業はほとんどなさそう」「○○のようなスキルが身に付くと思う」……等々、何かポジティブな話を見つけ、伝えてください。

伝える際の手順やルールを明確にする

内示の際、担当者によって伝え方にバラツキが出ないよう、手順やルールはあらかじめ明確化しておくとよいでしょう。加えて、定期的に見直せるとなお望ましいと考えます。

内示の注意点

付箋に書かれたSafetyとRiskの文字

内示にあたってはコツと併せて注意点もおさえておきましょう。法的リスクやセキュリティリスクを回避することに加え、本人の意向も最大限尊重しなければなりません。以下、これらについて補足します。

人事異動に関する法律を把握しておく

あまねく人事業務がそうであるように、内示もまた法的根拠と制限事項を十分に理解したうえで、実施しなくてはなりません。人事異動に関する法律でいうと、たとえば労働契約法第3条は労働契約を“労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきもの”と規定しています。男女雇用機会均等法第6条が伝える“労働者の配置について、性別を理由に差別的な扱いをしてはならない”ことも当然ながら念頭におくべきルールです。育児・介護休業法第26条では労働者の配置について言及しています。“就業の場所の変更を伴う場合、当該労働者の子の養育や家族の介護の状況に配慮しなければならない”のです。

内示に際しては、これらの法令を遵守しつつ、就業規則や労働協約も併せて確認しましょう。特に配置転換や転勤命令の場合は、業務上の必要性と従業員への不利益を総合的に検討し、適切に判断しなくてはなりません。

情報を洩らさない

内示情報は機密性を以て(最重要事項として位置づけ)、厳格な情報管理を行いましょう。まず場所は、社外の会議室や個室など、他の従業員の目に触れにくい環境が適切です。また、内示に関わる資料や電子データは、アクセス権限を限定し、パスワード保護などセキュリティ対策を実施してください。内示を受けた従業員に対しても同様です。正式発令までの期間における情報管理の重要性を説明し、SNSなどでの情報発信も控えるよう要請し、漏洩防止を徹底しましょう。

本人の状況や意向に配慮する

内示の際、対象となる従業員の個人的な事情を総合的に考慮することが必要です。育児や介護の有無、配偶者の就業状況、持病の治療状況など、従業員の生活基盤に関わる要素を事前に確認します。また、従業員のキャリアプランと異動内容の整合性を検証し、必要に応じて職務内容の調整や段階的な移行を検討します。そのほか内示面談では従業員の率直な意見や不安を丁寧に聞き取り、可能な範囲でそれらをクリアにしてください。このような個別対応を通じて、従業員の納得感を高めることもまた、人事業務の一環です。

内示を断られた場合の対応

断る動作

人事部門は内示を断られた際、組織のニーズと従業員の意向の調整を図る必要があります。従業員との会話を通して、双方にとって最適な解決策を見出すことが重要です。以下、いくつか対応について取り上げます。これらの段階的なアプローチにより、円滑な合意形成を目指しましょう。

理由を丁寧にヒアリングする

まずは内示を断られた理由を確認しましょう。何が異動を躊躇させるのか、本音の部分を把握していきます。とはいえ、いきなり本題に入り一方的に説得するのではなく、丁寧に紐解くイメージでヒアリングしていく姿勢が大切です。また、家庭環境や健康上の理由などプライベートな事情については察知できた時点で深くは詮索せず、従業員の立場に立って調整できる部分を探りましょう。

異動による本人のベネフィットを伝える

部署異動などで従業員が漠然と不安を覚えているようなら、それがベネフィットにつながることを伝えてください。具体的には、「新たな知識や経験を得られれば将来のキャリアも明るい」といったようなストーリーの構築です。うまく共感を促すことができれば異動を前向きに捉えてくれるようになるかもしれません。

条件を調整する

条件面で折り合いがつけられそうなら、最大限譲歩できる部分は調整を図りましょう。ただし、他の従業員との公平性が崩れるようなら注意が必要です。待遇面ではなく、業務に関するサポートや働き方に融通を利かすといったことが現実的な落としどころになると思われます。

一旦、保留して考える時間を与える

異動の受け入れを即断即決で迫ることは避けましょう。すぐに返事をもらえないようなら1週間程度は待ってあげてください。承諾に向けて背中を押すのなら、異動先の上司と面談機会を設けてあげてもよいかもしれません。出向先の職場体験なども同様です。そうやって積極的に提案しましょう。何より大切なのは従業員が納得感を持って決断することです。それを支援するためにも一旦、保留して考える時間を与えるのが大事だと考えます。

会社としての最終判断を明確にする

従業員との対話や調整を経た後、組織としては最終判断を下さなければなりません。あらためて異動の必要性や組織戦略上の位置づけを説明し、決定に至った経緯を論理的に示します。仮に異動を見送る場合は、代替案や今後のキャリアパスも併せて提示してあげられるとよいでしょう。

人事異動の内示に関するポイントまとめ

人事業務をジオラマ上で表現

最後に拙稿でお伝えしてきた内容を端的にまとめます。

人事異動における内示は、組織の戦略的な人材配置と従業員のキャリア発展を結ぶ重要な手続きです。適切な実施により、円滑な業務移行と従業員の心理的安定の両立が図れますが、現実はうまくいかないことも少なくありません。たとえばタイミング。これは、プロジェクトの完了時期や繁忙期を考慮しつつ、従業員に十分な準備期間を提供できるよう設定できるとよいでしょう。また、書面での通達でも構いませんが、なるべく顔を合わせて伝えることをおすすめします。そして意思疎通と同じく大事なのが法令遵守と情報管理の徹底です。従業員のプライベートの事情やキャリアプランにも配慮は欠かせません。これらのポイントを踏まえ、組織と従業員双方が納得できる内示にしてください。


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