甲欄とは?

源泉徴収票の甲欄とは、扶養控除等申告書を提出した従業員に対する給与支払いに使用される税区分です。扶養控除等申告書には従業員の扶養家族や配偶者、社会保険の情報が記載されます。それに基づき、雇用主は給与から控除する税額を計算するわけです。
具体的には、扶養家族の人数と社会保険料などの控除を差し引いた従業員の給与額を、国税庁が出している源泉徴収税額表の「甲欄」と照らし合わせます。
なお税法上、国内において給与の支給を受ける方は、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず、原則として扶養控除等申告書の提出が必須です。これは、所得税を支払う義務がない年収103万円以下のアルバイトやパートの方も該当します。
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源泉徴収税額決定までのプロセス
上述した内容についてあらためて整理します。源泉徴収税額を知る手順は端的に述べると次のとおりです。
- まずは従業員が申告した扶養家族の人数やそのほかの控除対象情報を確認します。
- 次に、給与から従業員が支払うべき社会保険料を差し引きます。
- 最後に税額表の甲欄を用いて源泉徴収税額を決定します。
いうなれば甲欄は、税務処理の基盤です。法的な義務を果たすことはもちろん、正しく理解し抜かりなく適用できるようにしましょう。
源泉徴収税額を確認しよう!
いくつか条件を用意し、国税庁が出している令和5年分の源泉徴収税額表を使って調べてみましょう。
【ケース①】 ・扶養家族1人 ・給与20万円(社会保険控除後) 月額表の「199,000円以上201,000円未満」で甲欄の扶養親族1人を見ます。源泉徴収されるのは毎月4,770 円です。 |
【ケース②】 ・扶養家族なし ・日給5,000円 日額表の「5,000円以上5,100円未満」で甲欄の扶養親族0人を見ます。その日に源泉徴収される額は100円です。 ※継続して2ヶ月を超えて給与を支払う場合、日額表の対象外です。 |
月額表と日額表
源泉徴収票の「月額表」と「日額表」は、文字どおり給与から源泉徴収する税額を示す表です。これらは、給与の支払い形態に応じて使い分けられます。 前者は、月給制で用いられるものです。イレギュラーなケースでは 10日あるいは半月ごとに支払う給与なども当てはまります。 他方、後者は日払いや短期間の契約で働く方々への給与が当たります。(日雇い賃金を除き)週ごとあるいは月の報酬を日割で支払う場合も対象です。
乙欄とは?

源泉徴収票の乙欄とは、従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない場合に適用される税区分です。提出がない分、控除を受けられず、乙欄に基づく税額は甲欄よりも高くなることが一般的です。もちろん、企業側が申告書の配布を怠っても発生します。また、兼業や副業が認められている状況下で、従業員が他の勤務先で申告書を提出している場合も、乙欄が使われることがあります。
乙欄の税額算出方法
税額の計算は、乙欄も甲欄同様です。社会保険料控除後の給与額を基に、源泉徴収税額表の該当する行と列を参照し抽出します。上述のとおり乙欄は税額が増える可能性があるため、年末調整を行う際には(過払い分の)還付への考慮が必要です。
乙欄の適用におけるチェックリスト
あらためて乙欄を適用する際に確認しておきたいことをまとめます。
- 申告書の提出状況
- 勤務先の数
- 過払い税金の有無
- 社会保険料と源泉徴収税額表
- 従業員への共有
前提として、税区分の適用を誤らないように細心の注意を払わなければなりません。また、従業員から受け取った申告書や乙欄適用の理由なども記録として残し、適切に管理することが求められます。
丙欄とは?

源泉徴収票の丙欄は基本的に日雇い賃金に対して適用される税区分です。日雇い労働者や短期アルバイトの方に支払われる給与に使われます。そして、これが存在するのは日額表のみです。
また、丙欄による源泉徴収が行われる場合、給与以外の所得が20万円以下であれば、確定申告が不要になることがあります(市民税の申告は必要です)。なお、源泉徴収は日額が2,900円以上で発生するものですが、丙欄の場合は9,300円以上が要件です。
丙欄の適用は雇用期間は原則2ヶ月以内です。契約期間が延長されたり、新たに雇用契約が結ばれたりすると、甲欄または乙欄を用いることになります。適宜、税区分の確認は怠らないようにしましょう。
年度の途中で区分が変わる場合

源泉徴収票の区分が変更される場合も想定しておかなければなりません。 甲欄、乙欄、丙欄が年度の途中で変わった場合、それぞれどのような手続きが必要になるのでしょうか。いくつか例を取り上げ、説明します。
乙欄から甲欄に変更される場合
まずは、従業員が年度途中で乙欄から甲欄に変更される際の取り扱いについてです。たとえば、勤務先が2社あるアルバイトの方で、メインはA社、空いた時間にB社で働いていたとしましょう。が、ひょんなことからA社を退職し、B社で正社員として働くことに。これはまさに、乙欄から甲欄に変更される場合に当たります。そう、以前はメインだったA社で甲欄、サブだったB社で乙欄が使われていたけれども、B社で正社員となったことで乙から甲に切り替わったという話です。そして、このケースでは乙欄分と甲欄分の給与を合算し(「乙欄+甲欄」)、年末調整を行います。加えて、前職(A社)から提出された源泉徴収票(甲欄)も年末調整の対象に含まれます。なお、このとき甲欄として在籍している会社(B社)の分は、甲・乙を分けて源泉徴収票を発行する必要はありません。
甲欄から乙欄に変更される場合
B社で正社員になり、日によってはフルタイムで勤務していたA社をパート勤務に変えた場合、すなわち税区分ではA社は甲欄から乙欄に移ります。A社から甲欄・乙欄それぞれの源泉徴収票を受け取り、さらにはB社の甲欄分も(源泉徴収の)対象です。
丙欄から甲欄or乙欄に変更される場合
スポット雇用を2ヶ月超えて続けた場合、その従業員は丙欄の対象から外れます。このとき年末調整の対象になるのは、その年に支払われたすべての給与です。したがって、丙欄で源泉徴収された分も含まれます。
甲欄、乙欄、丙欄を正しく理解しよう!

源泉徴収税額表の甲欄、乙欄、丙欄は、従業員の税額計算と年末調整において重要な役割を果たします。それぞれが適用される条件はもちろん、年度内で切り替わるケースも含めて理解を深めてもらえると幸いです。そしていざ対処する場合はぜひ、細心の注意を払ってください。
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