今回は、税法上の扶養に関して解説します。条件や手続きについても言及。知識が漠然とされている方はぜひ、参考にしてみてください。

税法上の扶養とは?条件や手続き、社会保険上の扶養についても解説

2022.11.15

今回は、税法上の扶養に関して解説します。条件や手続きについても言及。知識が漠然とされている方はぜひ、参考にしてみてください。

扶養とは

扶養を示唆するイメージ

扶養とは何でしょう?

おそらく多くの方が年末調整や確定申告の季節になるとよく耳にすると思います。いうまでもなく、企業の人事担当者であれば深く理解してなければなりません。とはいえ、現在、勉強中の方の場合、曖昧に把握していることも少なくないでしょう。そもそも扶養にはいくつか種類が存在します。大きくは本記事が主題に置いた「税法上の扶養」と健康保険上や社会保険上の扶養です。 くわしくは後述しますが、それらは若干定義が異なります。

税法上の扶養対象者・扶養控除額について

税法上の扶養対象者

まずは、税法上の扶養に関する基礎知識とあわせて、扶養控除の対象者や金額について説明します。

税法上の扶養とは 

税法上の扶養とは、家計を支える納税者の配偶者・子ども・親などが、(納税者)の所得から一控除を受けられる定金額が控除される制度です。 

控除を受けられるいわゆる被扶養者は所得税や住民税が免除されます。

なお、 被扶養者でなければ、当然、所得税などの納税義務が生じます。

税法上の扶養対象者

税法上の扶養対象者になるための条件は、次のとおりです。

これらの条件を満たしている人が、被扶養者になることができます。 

税法上の扶養対象者の相関図

扶養控除額はどのくらい? 

被扶養者になることで、扶養者の税金の一部が免除されます。この控除される税金の額を「扶養控除額」といいます。扶養控除額は、被扶養者の年齢や条件によって、金額が変わるものです。 いくつか例を挙げましょう。

◆一般の控除対象扶養親族 
その年の12月31日に16歳以上の親族…38万円 
◆特定扶養親族 
その年の12月31日に70歳以上の親族…63万円 
◆老人扶養親族 
同居老親=扶養者または配偶者の直系尊属(両親・祖父母など)…58万円 
※病気での入院は対象ですが、老人ホームなどへ入所している場合は対象外です。 
同居老親以外…48万円 

税法上の扶養に入る手続き方法 

税法上の扶養に入るには、納税者である扶養者が、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要があります。 この書類は、国税庁のホームページや勤務先の担当部署に取り寄せてもらうことで入手きます。 

ここで気を付けたいのは、その年の最初の給与支払いの前日までに提出しなければならない点です。扶養控除を受けたい人は、くれぐれも期限に注意しましょう。

税法上の扶養である配偶者控除における103万円の壁

税法上の扶養である配偶者控除における103万円の壁

配偶者が働く際に、しばしば見聞きするのが「103万円の壁」です。103万という数字はもちろん、扶養対象者になるための給与収入上限額を指しています。以下、税法上における「103万円の壁」と、配偶者が受けられる控除についてご紹介します。

103万円の壁とは

繰り返しお伝えしますが、扶養控除を受けるには、1年間の給与収入に制限があります。そしてそれが103万円です。年間103万円以上の給与収入を得てしまうと、所得税の納税義務が発生するうえ、扶養控除や配偶者控除が受けられなくなってしまいます。 

それを理由に、103万円を超えないように働く人も少なくありません。まさにこのボーダーラインを「103万円の壁」と呼んでいるわけです。

金額が103万円である理由

なぜ、扶養控除の算出基準は、103万円なのでしょうか。 

所得税は、1年間に得た収入から控除額を差し引き、残りの金額に決められた税率を掛けることで算出されます。控除については次のとおりです。

お察しでしょうか。そう、基礎控除48万円と給与所得控除55万円を足し算すると103万円です。つまり、それ以下だと非課税に当たります。 

なお、補足ですが、給与所得控除はアルバイトやパートなど報酬を給与として受け取っている人に限ります。フリーランスや自営業などの場合、基礎控除のみが控除に当たるため、扶養対象の上限額は年間48万円です。

配偶者控除と配偶者特別控除の違い

扶養者が配偶者を被扶養者とする場合には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2種類が存在します。それぞれの違いは、以下のとおりです。

配偶者控除とは

「配偶者控除」とは、所得税法上の控除対象配偶者がいる納税者の所得から一定の金額を控除する制度です。配偶者控除を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。

配偶者特別控除とは 

配偶者に合計48万円を超える年間所得、もしくは年間103万円を超える給与収入がある場合、配偶者控除は受けられません。しかし、その場合でも、納税者の収入が1,220万円以下かつ配偶者の収入が201万6,000円未満であれば話は変わります。一定額の所得控除を受けることが可能です。 そしてこの制度こそ「配偶者特別控除」といわれます。

たとえば、納税者の収入が900万円以下で配偶者の給与収入が150万円以下の場合、配偶者特別控除額は配偶者控除と同額の38万円です。

参考:配偶者控除 | 国税庁

以後、納税者の年収と配偶者の所得に応じて段階的に控除額が減少します。なお、201万円を超えると控除は0円です。

税法上の扶養では、民法で婚姻関係があると認められていない内縁関係の配偶者、すなわち事実婚の状態でいると、パートナーは、扶養対象者になることはできません。婚姻届を提出している場合のみ、配偶者控除ならびに配偶者特別控除を受けられます。

健康保険上の被扶養者について

年間収入が130万円未満

ここまで税法上の扶養について言及してきましたが、冒頭で触れたとおり、扶養には「健康保険上の扶養」もあります。以下、税法上の扶養者との違いも含めてお伝えします。

健康保険上の被扶養者とは

保険上で契約者は「被保険者」と呼ばれます。 

社会保険における扶養では、それに伴い、主に生計を支えている扶養者が「被保険者」、そしてその被保険者に扶養される家族こそ、被扶養者です。対象者は同じでも細かい定義が異なることがわかります。

健康保険上の被扶養者に該当する人 

以下のいずれかに該当した場合、健康保険上の被扶養者に該当します。※後期高齢者医療制度の被保険者を除く

税法上の扶養は「所得金額が一定以下の、生計を一にする親族」であったのに対し、健康保険上の扶養は「主に被保険者により生計を維持している者」であることが大きな違いです。 

また、税法上とは異なり、内縁関係の配偶者(事実婚の配偶者)であっても健康保険上では被扶養者として扱うことができます。 

被扶養者の範囲図

健康保険上の被扶養者の対象条件

健康保険上の被扶養者になることもまた、収入条件があります。具体的には次のとおりです。

税法上の扶養は「1月1日~12月31日の収入」で判断されますが、健康保険上では「扶養家族になる日から将来に向かう1年間の収入」が基準です。 

たとえば下記のケースでは、税法上の扶養には該当しないため所得税の支払いが必要です。

配偶者が6月30日に退職(以後は働かず収入は0円) 
給与収入が130万円以上 

一方で健康保険上の扶養には退職日の翌日から入れます。人事担当者なら、従業員から「仕事を辞めた家族を扶養にしたい」との申し出があった場合に備えて、この日程の違いは確実に知っておきましょう。

社会保険上の扶養について

社会保険上の扶養について

 広い意味で社会保険とは、健康、老後、介護、失業、労働災害などのリスクに備えるための制度です。被扶養者は、社会保険上でも被保険者の扶養に入ることができます。社会保険上の扶養についての詳細は以下のとおりです。

社会保険上の扶養とは 

社会保険上の扶養とは、生計を担う加入者が、収入がなく一人では生計が立てられない人に代わって社会保険に加入することです。俗に家族や親族を経済的に援助することを指します。 

健康保険同様、社会保険に加入し生計を支えている扶養者は「被保険者」と呼ばれ、扶養される側が「被扶養者」です。なお、被扶養者になると、社会保険を支払う必要がありません。

社会保険上の扶養対象

社会保険上では、下記のいずれかの条件を満たしている人を、被扶養者にすることができます。※後期高齢者医療制度の被保険者を除く

社会保険上の扶養対象は、収入面も含めて健康保険上とほぼ同じ条件です。たとえば内縁関係(事実婚)であっても配偶者として扱われます。他方、特筆すべきは、養子縁組を行った子どもも社会保険上では被扶養者です。さらに直接の血のつながりがない養父・養母に対しても、養子縁組を行ったことで直系尊属とみなされることから、被扶養者の対象に含まれます。

税法上の扶養についておさえておきたいポイントまとめ

税法上の扶養がもたらすメリット

扶養には税法上だけでなく健康保険上、社会保険上とそれぞれ異なるタイプがあることがおわかりかと思います。企業の人事担当者は各扶養の違いを理解し、働く側の希望に沿った勤務条件を提示することが求められています。従業員のメリットをしっかり考えてあげるためにも、こうした細かな規定はしっかり把握しておきましょう。 

なお、2022年10月に、パート・アルバイトの社会保険加入条件が変わりました。これにより、被扶養者の動きが活発化する傾向にあります。 

そういうわけで、求人広告の掲載はじめ採用活動に注力するならディップのサービスをこの機会にぜひご検討ください。 たとえば「扶養から外れるこのタイミングで正社員になりたい」といった求職者向けにぴったりのサービスならバイトルNEXTがおすすめです。ユーザーの半数以上が20~30代を占めるなか、扶養対象者も少なくありません。ちなみに、アルバイト情報サイトとして圧倒的な利用者数を誇る「バイトル」とは無料で連動しています。利用者が多い分、扶養範囲内での転職希望者ともマッチングできる期待は大いに持てるでしょう。

【監修者の紹介】

アラタケ社会保険労務士事務所の代表を務める荒武慎一氏

アラタケ社会保険労務士事務所 

代表 荒武 慎一

同志社大学卒業後、富士ゼロックス株式会社を経て、平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。平成30年すばるコンサルティング株式会社取締役エグゼクティブコンサルタントに就任。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金を分かりやすく解説することで高い評価を得ている。社会保険労務士、中小企業診断士。

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