待機児童問題が声高に叫ばれるようになって数年以上は経ちますが、少子高齢化の時代とはいえ、保育業界もまた、慢性的な人手不足が深刻です。この問題の解消に向けては当然、職場環境のテコ入れを検討する必要があるでしょう。その辺りの具体的な取り組みや今後の需要・動向も含めて本記事では、業界の課題に挙げられる保育士の人手不足についてくわしく解説します。

保育業界の課題「保育士の人手不足」について今後の動向考察交えて解説

  • 2023.03.15
  • 2024.08.06

待機児童問題が声高に叫ばれるようになって数年以上は経ちますが、少子高齢化の時代とはいえ、保育業界もまた、慢性的な人手不足が深刻です。この問題の解消に向けては当然、職場環境のテコ入れを検討する必要があるでしょう。その辺りの具体的な取り組みや今後の需要・動向も含めて本記事では、業界の課題に挙げられる保育士の人手不足についてくわしく解説します。

保育業界に該当する施設について

保育園児

一口に「保育業界」といっても、保育所・幼稚園・認定こども園など対象の職場はさまざまです。混同しないようにまずは、これらの主な保育施設について簡単に説明します。

認可保育園について

児童福祉法第39条において認可保育園は、 “日々保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする施設”と規定されています。そのうえで該当するのは、厚生労働省管轄のもと国が定めた設置基準をすべてクリアし、都道府県知事に認可されたところのみです。

具体的には、次のような施設が挙げられます。

それぞれの概要については、以下のとおりです。

保育所について

保育所とは一般的に“保育園”と呼ばれる場所です。保護者が就労中で面倒を見られない間、預けられます。0歳から小学校就学前の子どもたちが対象です。

なお、保育所は公立と私立で下記のような違いがあります。

公立保育所

自治体の方針のもと、市区町村によって運営が行われます。保育士は皆、地方公務員の方々です。利用者は保育施設と直接契約します。なお、市区町村側は公立保育所に対し、保護者への個人給付が保育費用として確実に使えるように(法定代理受領を行える)施設型給付の仕組みを整えています。

私立保育所

学校法人や社会福祉法人、民間企業が運営を行う保育所です。各施設によって方針が定められているため、保育・教育の内容はそれぞれに特色が存在します。また、利用料金の徴収を市区町村が行う点も公立保育所との違いです。加えて、運営に必要な費用も市区町村側が施設に対して支払います。

認定こども園について

認定こども園とは、保育と幼児教育を一体的に行う施設です。0歳から2歳であれば、保育を必要とする事由に当てはまれば入園できます。加えて3歳から小学校就学前の子ども(利用に事由は不要)が対象です。

認定こども園には主に「幼稚園型」「保育園型」「幼保連携型」といったスタイルがあります。それぞれの特徴は次のとおりです。

幼稚園型… 幼稚園の形態でありながら保育の時間が確保されています。  
保育園型… 一般的な保育園では受け入れ不可能な子どもたちを預けられます。 
幼保連携型…幼稚園と保育園、単一の施設として両方の役割を果たします。

幼稚園について

そもそも幼稚園とは、「幼児を保育し、適当な環境を与えてその心身の発達を助長すること」を目的とした、文部科学省が管轄する教育施設を指します。1日4時間を基準に、小学校に入る前の教育を行う機関という位置づけです。一般的には、満3才から入園できます。

地域型保育事業所について 

地域型保育事業は、2015年に「子ども・子育て支援新制度」として開始されています。原則、0~2歳児が対象です。主に都市部の待機児童対策や、人口が減少している地方の保育基盤維持のためなど、その地域特有のニーズに応えていきます。そのうえで事業所については、次のように分類されます。

以下、それぞれ簡単に説明します。

小規模保育園

定員は6人以上20人未満と、文字どおり小規模な保育園がこれに当たりますが、後述する家庭的保育園はさらに人数が絞られます。とはいえ、小規模保育園でも十分に(互いの距離の近さから)親近感を与えられる環境だといえるでしょう。

家庭的保育園

繰り返しますが、小規模保育園よりもさらに少人数で対応しているのが家庭的保育園です。数にして5人以内。家庭的保育者(保育ママ)1人につき最大3人まで預かることができます。事業所は自宅でも可能です。市区町村指定の研修を修了していれば、保育士の資格がなくても開設できます。

事業所内保育園

事業所のなかで設置されている保育園です。なお、地域の企業が共同で施設の整備費や運営費の助成を行うケース(企業主導型保育事業)もしばしば見受けられます。

居宅訪問型

地域型保育事業に関して、最後に居宅訪問型についても紹介します。保育施設がない地域のためのサービスです。加えて、障害や疾患を持つなど個別でのケアが必要な子どもたちも対象とされています。訪れるのは、指定の研修を修了した保育士もしくは同等の知識と経験があると認められた方です。

認可外の保育園や事業について

認可保育園以外にも保育園は存在します。いわゆる認可外保育園です。事業自体も含めてこのなかには、具体的に下記のものが含まれます。

以下、それぞれ補足・説明します。

認可外保育施設について

認可外保育施設は、認可外保育園とほぼ同義です。認可保育園ではない保育を目的とした施設が該当するわけですが、たとえば1日4時間以上で週5日、年間39週以上親と離れる幼児への教育施設なども含まれます。わかりやすいところで挙げるならば、次のような施設です。

一時預かり事業について

一時預かり事業とは、通院や仕事の事情などにより保育・養育が困難な家庭の子どもを、預かり面倒をみるサービスです。利用期間には制限があります。また、就学前の子どもが対象です。

病児保育事業について

病気の子どもに対して面倒をみるサービスが病児保育事業です。訪問・出張にも対応。相談対応も含めて支援が行われます。

ファミリーサポートセンターについて

ファミリーサポートセンター事業とは、子育てをお願いしたい方と支援したい方のマッチングサービスです。依頼側の観点で述べると、事情があって子どもを一時的に預けたいときや保育施設への送迎などに活用できます。支援する側にとっても同様に有益です。働ける場所を提供してもらえるため、価値のあるプラットフォームだといえます。

保育士の人手不足とその要因

保育士

多くの業界が人手不足問題に悩むなか、保育業界もまた例外ではありません。少子化とはいえニーズはいまだ健在です。しかし、人が足りない。結果、属人的になりやすく、一人の負担が膨れ上がる一方です。そうなると悪循環。辞める人が後を絶ちません。他方、こうした現状に陥っているのには、いくつかの根本的な要因が考えられます。本章では主に賃金の低さや人間関係などにフォーカス。なぜ保育士が定着しないのか、くわしく紐解いていきます。

低賃金に悩む保育士は少なくない! 

保育士の大半は、仕事量に対して給料が見合わないと感じているようです。子どもの命を預かるという重い責任が伴うのはもちろん、保護者への連絡、イベント運用など、細かい業務までみていくと多岐にわたります。さらに昨今は、グローバル社会。日本人だけでなく他の国の子どもとコミュニケーションを図る機会も増えてきている印象です 

そのうえで賃金に目を向けると、確かに割に合わないと感じる向きがあるのもうなずけます。厚生労働省が発表した資料「保育を取り巻く状況」(P53、54)によると、保育士の離職理由として約3割の人が給料が安いことを挙げ、再就職の条件にも給与面を重視される方が6割を超えるほどです。 

低賃金であれば、当然生活に直結しますが、それとは別に価値が不当に低く見積もられていると感じる方も多いといいます。保育士は国家資格であり専門性が高い職業であるにもかかわらず、“この報酬では「育児は誰にでもできる」と軽視されているのも同然だ”と不満を募らせた結果、離職を選択するとのことです。

給料は国の制度が影響?

保育士の給与が低い理由には、国の制度が影響しています。保育事業は、国の補助金により成り立っているため、仕組み上、限られた財源から保育士の給与を支払わなければなりません。そうなると当然、金額にも上限が生まれます。

ただし、国もこの問題を把握し、最近は基本給とボーナスのほかに、「処遇改善加算」といった給付金を設けるようになっています(くわしくは後述する取り組みの章のなかで説明します)。

やはり人間関係が一番大事!

保育士の離職理由の第一位は、ずばり人間関係です。 

特に次のような環境であれば要注意。遅かれ早かれ、多くの保育士がその場を去ることになるでしょう。

特に男性保育士の定着が難しい! 

“保育士”という職業名ですが、遡ればかつての呼称は“保母さん”でした。が、今なお保育士に対しては女性のイメージが根強く残っています。これは、実際に男性保育士がなかなか定着しないからでしょう。 

2020年代という新たなディケイドに突入しても、その年の4月時点では、男性保育士の登録者数は8万2,330人と全体のわずか5%程度でした。また、厚生労働省は令和元年の統計調査で男性保育士の平均勤続年数は6.2年、女性は7.9年と発表しています。シンプルに男女で差があるのがわかる結果です。

離職の理由は、やはり賃金の低さでしょうか。もしくは女性優位のイメージが男性自身にあるのかもしれません。

保育士の人手不足を解決するための取り組み

保育の様子

前述のとおり、保育業界は人手不足問題を抱えています。しかし、それでも要因が明白な分、課題として改善のアプローチは可能です。実際にさまざまな取り組みが行われています。以下ピックアップする具体的な対策は、その最たる例といえるでしょう。

環境整備

無論、保育士に限らず、職員・従業員に長く勤務し続けてもらうには、相応の環境を整えることが大切です。「オンボーディングや管理者研修を実施する」「メンター制度を作る」「一人ひとりの性格を把握する場を設ける(診断する)」「チームワークを強化する」などのいわば当たり前の体制を構築することで、少なくとも以前よりは風通しの良い職場に変わるものと考えます。そのうえで労働環境についてはチェックリストを用意し、定期的に見直せる状況が生まれるとよいでしょう。

保育士と保育所をつなげるサービスの活用

慢性的な人手不足を補うために、いわゆるマッチングを支援する場を介して、積極的に人材確保に努める保育施設も少なくありません。たとえば、保育士を養成する大学や専門学校なども活用できる一つのプラットフォームです。同様に求人広告の掲載も当然、有効かと考えます。そこで推奨したいサービスが「バイトルPRO」です。ターゲットやコンセプトを明確にして訴求していくため、コンスタントに応募が期待できます。保育業界で活躍できる資格・スキルを身に付けた人材にもきっと出会えるはずです。

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保育士確保プランの奨励

「保育士確保プラン」とは、厚生労働省が2015年1月に発表した保育士増員計画です。 具体的には、次のような対策を行っています。

国のこうした動きをうまくPRとして活用できれば、求職者の動向にも変化がみられるかもしれません。

給与水準改善対策

前項に引き続き、国の取り組みを紹介します。何かと取り沙汰されている保育士の給与問題ですが、その水準を改善しようと行われたのが、処遇改善等加算です。IとⅡ、それぞれ説明します。

参照元:施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算IIについて

処遇改善等加算Ⅰ

「処遇改善等加算」の制度は2015年に導入されています。まずはIについての内容です。

項目内容
基礎分職員一人あたりの平均経験年数に応じて、給与に2~12%上乗せされる項目です。
なお、施設の平均勤続年数は、「対象職員の勤続年数の合計÷対象職員数」で算出されます。 
賃金改善要件分賃金改善計画と実績報告によって加算が決まります。
その割合は、平均経験年数が11年以上なら一律7%、11年未満なら一律6%です。
キャリアパス要件分保育施設で勤務する方々へ賃金体系と勤務条件を設定したのち、
研修の実施を行うことで加算されます。あわせて保育所内での周知も条件です。
仮に満たされない場合、賃金改善要件分から2%減額されます。

処遇改善等加算Ⅱ

続いて処遇改善等加算Ⅱについてです。これは保育士のキャリアアップを促進します。というのも従来は「園長」や「主任」程度しかなかった役職に「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」といった肩書を追加したのです。もちろん、それらには補助金額として手当が付与されます。

役職補助金額要件
副主任保育士月額40,000円 経験年数概ね7年以上 
職務分野別リーダーを経験 
マネジメント+3つ以上の分野の研修を修了 
副主任保育士としての発令 
専門リーダー 月額40,000円経験年数概ね7年以上 
職務分野別リーダーを経験 
4つ以上の分野の研修を修了 
専門リーダーとしての発令 
職務分野別リーダー月額5,000円経験年数概ね3年以上 
担当する職務分野(※)の研修を修了 
修了した研修分野に係る職務分野別リーダーとしての発令
※職務分野は次のとおり
・乳児保育  
・幼児教育 
・障害児保育  
・食育・アレルギー 
・保健衛生・安全対策 
・保護者支援・子育て支援 

保育業界の今後の動向や需要について

保育施設で遊ぶ児童

ここまで主に保育業界の現状について述べてきました。一転、本章では今後を展望します。国の支援計画や保育士の需要。決してネガティブなことばかりではありません。ポジティブな周辺要素にも目を向け、人材を確保していくよう努めましょう。

女性就業率と保育所利用率の上昇

厚生労働省が発表している資料「保育を取り巻く状況について」によると(※1)、女性就業率と児童の保育所利用率は年々増加傾向にあります。同時にそこには相関もみられるわけです。確実に保育士の需要が高いことを示唆しています。 実際に、一時保育、病児保育、障害児保育のニーズが高いことも資料では明示されています。(※2)

※1.女性就業率と保育所利用率についてはP12~14を参照 
※2. 一時保育、病児保育、障害児保育のニーズについては、P43~46を参照

新子育て安心プラン

待機児童の解消を目指すべく厚生労働省は、女性の就業率の上昇を踏まえて、2020年12月に「新子育て安心プラン」を取りまとめました。これは、2021年度~2024年度末までに約14万人の保育の受け皿を用意するための計画です。 

具体的に内容をピックアップすると、自治体へ支給する施設整備費用の補助率アップや、保育コンシェルジュの拡充、巡回バスの送迎……等々が挙げられます。とりわけ幼稚園の空きスペースも含めた施設の増加、アメニティ強化、中小企業への育児休暇取得による助成事業などは、少なからず影響を及ぼしそうです。いずれにせよ、これらに伴い保育補助者や短時間勤務が可能な保育士の雇用を活発化させなければならないでしょう。件のプランを成功させるためにも、保育士一人あたりの負担を減らすことは不可欠な要件です。

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有効求人倍率は高水準の見通し

厚生労働省が発表している資料「保育を取り巻く状況について」(P50、51)では、保育士の有効求人倍率が全職種平均よりも高い水準で推移していることを伝えています。そう、各地で保育士が求められているのです。そして勿体ないことに資格を持ちながらも保育士の職を選ばない方も数多くいらっしゃいます。この状況を打開するためにも、現状そして今後は国の施策もうまく取り込むなどして、高まる保育士需要と人手不足問題に対峙する必要があるでしょう。

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保育業界の課題について学び、考えることは多い

元気に遊ぶ児童

保育士は、たとえ少子高齢化時代が加速するとしても、現状の傾向から推察するにまだまだ需要が高い職業です。しかしながら、保育業界の人材確保は依然難しいといえます。この人手不足問題を深掘りする過程において、まず低賃金や人間関係の煩わしさといった課題から目を背けることはできません。加えてモチベーション。たとえば復帰しやすい環境構築は重要なカギを握るでしょう。いずれにせよ、保育業界は、学び、考えることが多いとあたらめて感じる次第です。 

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