アルバイトを解雇する際は、法律に則ったしかるべき手順を踏まなければなりません。にもかかわらず、辞めさせたい時はすぐに解雇できるものだと誤認されている方がたまに見受けられます。実際は安易に解雇処分を下すと、訴訟沙汰に発展する可能性もあり、くれぐれも注意が必要です。そこで本記事では、やむを得ずアルバイトを解雇する場合について解説。妥当性のある理由や一連の流れ、トラブルへの備え方など、幅広い観点から言及します。

アルバイトの解雇について~妥当な理由、方法、流れを解説

  • 2023.01.18
  • 2023.01.18

アルバイトを解雇する際は、法律に則ったしかるべき手順を踏まなければなりません。にもかかわらず、辞めさせたい時はすぐに解雇できるものだと誤認されている方がたまに見受けられます。実際は安易に解雇処分を下すと、訴訟沙汰に発展する可能性もあり、くれぐれも注意が必要です。そこで本記事では、やむを得ずアルバイトを解雇する場合について解説。妥当性のある理由や一連の流れ、トラブルへの備え方など、幅広い観点から言及します。

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アルバイトの解雇には正当な理由が必要

アルバイトの解雇理由が正当か不当かを判断!

アルバイトやパートを解雇するには、大前提、正当な理由が必要です。それがなければ、法的に解雇は認められません。では、実際どのような理由であれば問題ないのでしょうか。以下、具体的に列挙します。

その従業員が就業規則の解雇事由に該当したため

自社の就業規則にあらかじめ記されてある解雇事由に該当すれば、よっぽどデタラメでない限り、正当性は認められます。裏を返せば、デタラメな場合は無効になる可能性が高いわけですが、その基準は社会通念に即したものがほとんどです。いずれにしても、解雇したい理由が就業規則に書かれているかどうかを、まずはきちんと確認しましょう。 

その従業員がバイトテロに及んだため

アルバイトの非常識な行動によって企業が大きな損害を被れば、その従業員は解雇に値する悪事を働いたといえます。SNSに自社の悪評を書き込むことや、とりわけ飲食店でよくみられる意図的に不衛生な振る舞いを動画に撮りインターネット上に晒す行為などはまさに最たる例です。いわゆるこうしたバイトテロの類は、ここ数年で増えていますが、それらはまさに、企業の価値を下げるものとして悪質だとみなされます。

▶関連記事:バイトテロとは?企業に与える影響や対策など事例交えて言及

その従業員が暴力・破損・不正行為に及んだため

執拗なハラスメントや暴力、高価な備品を破損するといった悪質な行為に及んだ従業員に対しては、解雇が認められます。また、会社の売り上げ報告を偽る(売り上げを個人の資産として持ち出す)といった不正に関しても同様の扱いです。そもそもこれらは、刑法上、名誉棄損罪、暴行罪、傷害罪などに当てはまります。実際のところ、従業員の動機や企業体制、環境を踏まえて最終的に判断されると思いますが、明らかに危険人物である場合は、むしろ解雇せざるを得ないでしょう。

経営不振に陥ったため(要件あり)

会社の経営不振による整理解雇も正当性が認められます。とはいえ、これを理由とする場合、従業員には非がなく、企業都合であることから、要件を満たさなければなりません。要件は次のとおりです。

整理解雇の必然性

経営が苦しいと一口にいっても、ピンキリです。仮に苦しくても現状の従業員を雇った状態で十分にやっていける場合、整理解雇の必要があるとは認められません。すなわち、必然性が求められます。

解雇回避のための最大限の努力

経営不振とはいえ、直ちに解雇へ踏み切ることは、原則認められません。ひとまず解雇を回避するための努力は必須です。経営の立て直しに向けたアクションはもちろん、対象のアルバイト従業員との対話を図るなど、できることを最大限行っていく必要があります。

対象者の選定基準における客観性

整理解雇の対象者を決める基準が曖昧であってはいけません。あくまで客観的、合理的で、なおかつ運用も公正であることが必要です。

解雇手続きの妥当性(を測るための相談)

つまるところ上記の要件とも重なりますが、大前提、労働者や組合と、解雇理由、基準、時期などについて話し合っていなければなりません。まさに解雇手続きの妥当性がそれらによって測られます。相談がないまま従業員を解雇した場合、アルバイト・パートであっても、それは不当解雇です(不当解雇については次項でくわしく解説)。結果、訴訟沙汰になることも決して珍しくありません。

不当解雇に該当するケース

不当解雇

雇用形態を問わず、すなわちアルバイトやパート従業員も、労働基準法やパートタイム労働法によって保護されています。そのため、彼・彼女らを正当な理由なく解雇すれば不当解雇として扱われます。では、具体的にどのようなケースが不当解雇に当てはまるのでしょう。以下、いくつか列挙します。

パフォーマンスの低下による解雇

その従業員をクビにするにあたって、理由をロジカルに説明できなかったり、(その解雇に対して)社会的相当性を欠いたりすると、不当解雇だといえます。 

「能力不足だから」「成績が良くないから」だけではまだ不十分です。ましてや労災や産前産後などやむを得ない事情があったにもかかわらず、単なるパフォーマンスだけで解雇に踏み切ることは到底認められないでしょう。すなわち不当解雇です。 

成果と解雇を結びつけるのであれば、具体的に(その従業員が)どの局面でどのような過失に至ったか、そしてそれは故意であったかなど細かく精査していく必要があります。さらには、企業側が状況を改善するために徹底して指導を行ったか否かも解雇するうえで争点になり得ます。

数回の遅刻、欠勤による解雇

数回の遅刻や欠勤だけで解雇に至るのは不当とみなされる可能性が高いといえます。実例を挙げると、とあるアナウンサーがラジオニュースの放送を2週(2回)にわたり、宿直室で寝過ごしたため見送ることになったことで解雇を言い渡されたケースはまさに典型。しかし、これは裁判所により不当解雇だと判断されます。ちなみに、この件の背景として、アナウンサー当人を起こす役割を持った担当者も実は寝過ごしていました。おそらくそうした事情も加味されたのでしょう。が、いずれにせよ、解雇処分は妥当でないとみなされたわけです。

契約期間の途中での解雇

契約期間の途中で解雇することは、原則、できないものとされています。とはいえ、期間満了後もスムーズに契約終了まで運べるかは、前項の正当な理由がなければ難しいでしょう。決して不当解雇ではないと説得できる材料(言い分)が必要です。

不正解雇で生じるリスク

不当解雇と判断された場合、当然、従業員に対しては復職や受給を認めなければなりません。加えて、企業側は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

アルバイトを解雇する方法やルール

アルバイトを解雇する方法やルール

本章では、アルバイトを解雇する方法やルールをお伝えします。次章の手続きや流れとセットで確認するとより理解は深まるでしょう。

30日以上前に解雇を予告する

アルバイトを解雇するためには予告が必要です。具体的には30日以上前に済ませなければなりません。手段は口頭でも可能です。が、後々トラブルが生じないためにも、文書で残すことをおすすめします。 

また、解雇理由の証明書を求められた場合は、企業側はすぐに対応してください。解雇理由が就業規則に該当するか否か、具体性や合理性を帯びているかなどが主な争点です。できれば事前に顧問弁護士に相談することが望ましいでしょう。

予告できない場合は解雇予告手当を支払う

解雇予告手当とは、会社が30日前に解雇を対象者に予告できなかった場合に、30日分の平均賃金を支払う制度です。正社員だけではなくパートやアルバイトに対しても適用されます。 

厳密には、30日から解雇日までの日数を差し引いた期間分を支払えばOKです。たとえば、15日前に(解雇の旨を)告げた場合は、15日分の平均賃金を支払えば、解雇できます。それゆえ、いうなれば、30日分の解雇予告手当を支払えば即刻解雇することも可能です。なお、解雇予告と解雇予告手当は組み合わせても構いません。 

前項では特に触れませんでしたが、仮に解雇予告手当を支払わなかった場合は不当解雇とみなされます。その際、科されるのは6ヶ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金です。また、当該従業員に対しては給与の支払いや復職対応を余儀なくされます。 

▶関連記事:解雇予告手当とは?計算方法や支払日、源泉徴収についてなど徹底解説

アルバイトの雇止め

雇止めは、期間を定めた労働契約を結んだ労働者に対して、契約を更新しないことです。定義上、解雇には当てはまりませんが、従業員にとって契約更新が期待されるような雇止めは、ほとんどのケースで解雇と同様の基準が設けられます。契約期間満了による雇止めは本来、違法ではありません。が、契約更新時の状況や理由次第で無効化されるケースもあるというわけです。 

雇止めの条件

基本的に契約満了時に行うことができます。期間を定めた労働契約が3回以上更新されている場合は、30日前に雇止めをする予告が必要です。また、以下のケースでも30日前に雇止めの予告をしなければなりません。

雇止めが認められないケース

アルバイトと結んだ契約期間が終了したからといって、企業は雇止めを自由に行えるわけではありません。特に、何度も契約が更新され、実質的に期間の定めのない契約と変わらないケース、すなわちバイトが雇用の継続を期待するような状況では、雇止めも簡単にはできないのです。 

このようなケースでは、社会通念と照合し認められる理由が無ければ更新を拒否できません。とりわけ雇入れ時に契約更新が前提であったなら、雇止めの理由が正当化され認められる可能性は低くなる傾向にあります。

アルバイトを解雇する際の手続き、流れ

アルバイトを解雇する際の手続き、流れ

前述した手段や方法を踏まえて、実際にアルバイトを解雇する流れを確認しましょう。以下、ステップごとに説明します。

退職勧奨

いきなり解雇するのではなく、まずは対象の従業員に退職を勧めるところからはじめます。いわゆる退職勧奨です。もちろんその時点で、アルバイトが自主的に辞める流れになった場合、わざわざ解雇することはありません。そうなれば、穏便かつ早急に事は済むでしょう。 

ただし、気を付けたいのは、退職勧奨はあくまで相談やお願いだということです。無論、従業員の意思も尊重しなければなりません。長期にわたり、従業員の意思に反して退職勧奨し続けのは、法令違反に当たります。威圧感を与えたり、大人数で面談を実施したり、命令口調で持ち掛けたりといった態度やスタンスでは、訴えられることも大いに考えられるでしょう。相手に対しては、理不尽な真似をせず、公平な立場でコミュニケーションを図りましょう。

解雇の検討

退職勧奨に応じない場合、それでも辞めてほしいのであれば解雇を検討しましょう。就業規則にある解雇事由と照らし合わせ、正当な理由を持ち得ているか確認します。 

普通解雇か、懲戒解雇か、理由を示す具体的な証拠はあるのか、不当解雇として扱われる可能性はないか……等々、懸念点も含めて細部まで入念に精査することを推奨します。

解雇予告(あるいは解雇予告手当)の検討

解雇予告や解雇予告手当については先に説明したとおりです。解雇までの日数など踏まえて状況に応じた処置が求められます。法に抵触しないよう気を付けましょう。

解雇予告通知書の作成

解雇予告を行う際は、解雇予告通知書の作成が必要です。一般的に書面には、次の内容を記載します。

その後、該当するアルバイト従業員と面談を行い、解雇理由などを伝えます。感情的にならないよう気を付けましょう。「納得いかない」「不服だ」といった意見や声もあるかもしれません。が、何より大事なのは質問含めて相手の要求に対峙する場合は、明瞭に答えることです。加えて、解雇後の(ハローワークでの)手続きなどの確認・案内も漏れずに行うよう注意してください。 

なお、解雇予告通知書は従業員からの受領印、そして控えも必要です。

解雇後の手続き

解雇後の手続きは大きく二つ。まずは、ハローワークに、雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書を解雇日の翌日から10日以内に提出することです。そうすると、ハローワークから離職票が送られてきます。これを、解雇したアルバイトにできるだけ早く送付します。 

もう一つの対応は、年金事務所に健康保険と厚生年金保険被保険者資格喪失届を解雇日の翌日から5日以内に提出することです。その後は、対象のアルバイト従業員に資格喪失証明書を送ります。 

さて、そうしたなか想定しておきたいのは、従業員から解雇理由証明書を請求されたり、労働組合から交渉を持ち掛けられたりすることです。ここで一番やってはいけないことは無視です。法律違反に当たり、トラブルを招く恐れがあります。解雇後の手続きまで、油断せず、直面する問題には真摯に向き合いましょう。

アルバイトの解雇に退職金は必要?

アルバイトの解雇に際する退職金

解雇したアルバイトに退職金を支払うかどうかは、法は関係なく、企業側で選択可能です。もちろん、就業規則に記している場合は懲戒解雇を除けばそれにしたがわなければなりませんが(※)、実際は、そうした規定を設ける企業はほとんど見受けられません。とはいえ、アルバイトやパートであっても、彼・彼女らに退職金を支給する企業も一部存在します。 

※懲戒解雇の場合、支払い無しか減額かの判断は、解雇理由に基づきます(明らかに反社会的な行為をした場合は、まったく支払われないのが当たり前でしょう)。 

そのほか、雇用保険に入っているアルバイトの場合は、加入期間が6ヶ月以上あれば、失業手当が発生します。この条件を満たしているアルバイトを解雇する際は、面談時にきちんと案内しましょう。 

さらには、整理解雇など会社都合で退職を余儀なくされた方の場合、「特定受給資格者」に該当すれば、自己都合退職よりも長く、失業給付金を渡すことになります。その際、企業側は解雇予告通知書などの提出が必要です。不備なく対応しましょう。

アルバイトを辞めさせたい方へ。解雇は慎重に検討すべし!

解雇通知を受けてうなだれるアルバイト従業員

アルバイトを解雇する際は、知っておくべきルールや流れにしたがわなければ、たちまちトラブルを引き起こすになるでしょう。解雇理由の妥当性や過度な退職勧奨は控えなければならないこと、さらには、雇止めであっても契約の更新状況によっては慎重な手続きが求められる点など、案外ないがしろにされがちですが、重要なマナーです。 

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