毎年見直しが行われる最低賃金ですが、2022年は(10月より)30円~33円の引き上げが、中央最低賃金審議会で決まりました。昨年度を上回る(昨年度は28円)過去最高額です。今回は都道府県別の最低賃金引き上げ額や、最低賃金上昇によるメリット・デメリットをまとめました。

2022年10月から最低賃金の引き上げが決定!アップ額に加え、理由やメリット・デメリットも解説

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毎年見直しが行われる最低賃金ですが、2022年は(10月より)30円~33円の引き上げが、中央最低賃金審議会で決まりました。昨年度を上回る(昨年度は28円)過去最高額です。今回は都道府県別の最低賃金引き上げ額や、最低賃金上昇によるメリット・デメリットをまとめました。

最低賃金とは?なぜ引き上げるのか?

最低賃金とは

最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとするする最低限の時給のこと。
以下にも記載している通り、以前より全国平均1000円以上を目指すとされており、2022年6月7日に閣議決定された「骨太の方針」においても、改めてその方針が盛り込まれました。

「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、 「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す。 このような最低賃金の引き上げに向けて、中小企業、小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図る。

※出典:厚生労働省-働き方改革実行計画

最低賃金を引き上げる理由

1.働く人の生産性を増進させるため

政府としては⼀⼈当たりの⽣産性を上昇させるために、最低賃⾦を上げようとしております。とくに少⼦⾼齢化に伴い、労働⼈⼝が減ってきており、一人当たりの生産性向上は必要となります。「賃金が上がり生活が安定することで、労働者の⽣産性が上がる」という考え方です。

2.持続的な景気回復

最低賃⾦が上がれば⼀⼈当たりの収⼊が増えていき、消費が増える。結果的に景気が回復していくと政府は考えております。

※参考文献:厚生労働省-最低賃金制度の意義・役割について
※参考文献:中小企業庁-労働生産性の現状

都道府県別の最低賃金引き上げ額

2022年は、31円の引き上げがされる地域と、30円の引き上げがされる地域に分けられます。最低賃金を地域別に確認するときは、居住地(住んでいる地域)ではなく職場のある地域を基準に確認してください。

令和5年度(2023年度)の最低賃金引き上げについてはこちら

令和4年度都道府県別の最低賃金の引き上げ額

都道府県名改定額引上額改定前
北海道92031889
青 森85331822
岩 手85433821
宮 城88330853
秋 田85331822
山 形85432822
福 島85830828
茨 城91132879
栃 木91331882
群 馬89530865
埼 玉98731956
千 葉98431953
東 京1072311041
神奈川1071311040
新 潟89031859
富 山90831877
石 川89130861
福 井88830858
山 梨89832866
長 野90831877
岐 阜91030880
静 岡94431913
愛 知98631955
三 重93331902
滋 賀92731896
京 都96831937
大 阪102331992
兵 庫96032928
奈 良89630866
和歌山88930859
鳥 取85433821
島 根85733824
岡 山89230862
広 島93031899
山 口88831857
徳 島85531824
香 川87830848
愛 媛85332821
高 知85333820
福 岡90030870
佐 賀85332821
長 崎85332821
熊 本85332821
大 分85432822
宮 崎85332821
鹿児島85332821
沖 縄85333820
全国加重平均96131930

※厚生労働省発表の「令和4年度 地域別最低賃金 答申状況」をベースに、ディップ株式会社が作成

考えられる最低賃⾦が上がるメリット・デメリット

考えられるメリット

非正規雇用者と正規雇用者の賃金格差が圧縮される

企業は賃⾦原資によって賃⾦を割り振っています。ですので、最低賃⾦が上がると、⾮正規労働者の⼿取りが増えるでしょう。そうすれば、正社員と⾮正規の⽣涯賃⾦の格差を圧縮できると考えられます。年功序列賃⾦制度が敷かれない⾮正規社員にとっては⼤きなメリットといえます。

地域の経済が活性化する

最低賃⾦が上がると、⾮正規雇⽤者の⼿取りが増えます。派遣労働者やパート、フリーターといった⾮正規労働者が今よりも豊かになれば、「彼らが地元でお⾦を使う」と期待できます。お⾦が地域で潤沢に回るようになると、地域の経済が活性化するというメリットが⽣まれるでしょう。

※参考文献:厚生労働省-最低賃金水準に関する諸外国との比較

考えられるデメリット

失業者が増える

飲⾷チェーンやコンビニなどでは、「最低賃⾦が上がると、店側は⾮正規雇⽤者の⻑時間の雇⽤が出来なくなり失業者が増える」という意⾒もあります。これが、最低賃⾦が上がると考えられる⼤きなデメリットです。

非正規雇用者を多く雇っている企業への人件費増大

現在、最低賃⾦に関わってくる⾮正規雇⽤者を雇っている多くが飲⾷業・コンビニチェーン店などです。 最低賃⾦が上がると、確実に⼈件費も上がってしまい、中小・零細企業にとっては⼤打撃です。最低賃⾦が上がると、⼀部の業界に⼤きな影響を与えてしまう恐れがあります。

最低賃金違反を防ぐために求人の見直しが必要に

最低賃金の違反を防ぐためには、給与の部分だけではなく、「給与備考」のチェックも大切になります。①「研修・試用期間」給与がある②「高校生」給与がある③「-50円」など、ある条件下でマイナスになる給与がある

トラブル1:求人時に注意
「研修期間中の賃金を-50円していたら、最低賃金を割っていた」
研修・試用期間や高校生給与を設けている場合も最低賃金を守る必要があります。 そして「-50円」など、ある条件下でマイナスになる給与については、 求人原稿の給与備考欄などに記載し、面接時・採用後のトラブルを防ぎましょう!

トラブル2:既存スタッフ給与に注意
「最低賃金UPに合わせて新人の給与をUPしたら、給与差の少なさに不満が出たベテランスタッフが離職」
経験に応じて給与差を設けている場合は、既存の従業員たちと話し合うなど 大きな不満に繋がらないよう事前準備を行いましょう!

まとめ

2022年10月から最低賃金の引き上げが決定!過去最高の30円~33円UP。非正規雇用者を多く雇っている企業への人件費増大

最低賃⾦が上がると、主に⾮正規労働者にとっては⼿取りが増え、経済が活性化する可能性というメリットがあります。しかし一方で、最低賃⾦で雇⽤している⾮正規労働者が多い企業では、正社員の⼿取りが減り、また会社の⼈件費が⼤きく上がるという恐れも否めません。加えて、アルバイト・パートにまで広がってきている春闘の動きも決して見過ごすことができない状況です。
こうした趨勢を踏まえて、企業は今後、より生産性を向上させていくための業務フロー・人材配置が求められるでしょう。

▶2023年度はこちら:2023年度の最低賃金引き上げはいつから?額は?影響、対策もあわせて解説

▼参考リンク:厚生労働省『あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度』
労働市場のセーフティネットである最低賃金制度を紹介する厚生労働省の特設サイトです。

厚生労働省-あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度

※バナークリックで厚生労働省のサイトへ遷移します。


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