人材市況を把握できる情報源

近年の人手不足が顕著な業界の動向を把握するには、信頼できる公的な情報源を利用する必要があります。そこで今回は主に「帝国データバンク」と「厚生労働省」のサイトを参照。求職者数、求人数の変遷はこれらのなかにある多くのデータで、ある程度傾向がみえるでしょう。職種についても幅広く多岐に渡るため、労働市場のなかでの立ち位置などを知るには申し分ないと考えます。
参照元の例①:人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)
参照元の例②:人手不足に対する企業の動向調査の詳細PDF(2024年1月)
参照元の例③:一般職業紹介状況(令和6年2月分)について
参照元の例④:一般職業紹介状況(令和6年2月分)について詳細PDF
人材が足りない業界ランキング

というわけで早速、人材が足りない業界をランキング形式でピックアップ(2024年の1月のデータです)。正社員と非正社員に分けてそれぞれ10位まで紹介します。両者の共通点、違いなどに目を向けるのもよいでしょう。各業界の採用スタンスに対する解像度がより高まるはずです。
正社員の人手不足が起きている業界ランキング
順位 | 業界 | 人手不足と感じている企業の割合 |
---|---|---|
1位 | 情報サービス | 77.0% |
2位 | 建設 | 69.2% |
3位 | 旅館・ホテル | 68.6% |
4位 | メンテナンス・警備・検査 | 68.4% |
5位 | リース・賃貸 | 66.7% |
6位 | 医療・福祉・保険衛生 | 66.2% |
7位 | 運輸・倉庫 | 65.3% |
8位 | 金融 | 65.2% |
9位 | 自動車・同部品小売 | 61.7% |
10位 | 飲食店 | 57.8% |
正社員の人手不足がもっとも顕著な業界は「情報サービス」でした。不足と感じている企業が77%も存在しているのは、さすがに深刻といわざるを得ません。この業界は、システムやソフトウェアを開発するエンジニアやデータサイエンティストなどの職種が該当します。新しいプロジェクトの立ち上げも含めて、高いスキルやキャリア十分の人材を求める傾向にあるため、どうしても人材獲得が難しくなりがちです。テクノロジーが進化すればするほど需要が高まります。他社との競争は今後も必至です。
そのほか「建設」の69.2%、「旅館・ホテル」の68.6%も、高い数値のため無視できません。前者は近年の都市開発やインフラ整備の急速な拡大に追いつけていない印象を覚えます。また、熟練した建設労働者がどんどん減っているのも要因に挙げられるでしょう。 ただでさえ若手が少ないなか、次々とリタイアされる方が出てくれば、当然、人材不足は避けられません。一方で後者も深刻です。激務のイメージが強いせいか、人がなかなか集まらないだけでなく、実際に過酷な労働環境だからか、離職率も高い傾向にあります。
非正社員の人手不足が起きている業界ランキング
順位 | 業界 | 人手不足と感じている企業の割合 |
---|---|---|
1位 | 飲食店 | 72.2% |
2位 | 人材派遣・紹介 | 62.0% |
3位 | 旅館・ホテル | 59.6% |
3位 | 各種商品小売 | 59.6% |
5位 | メンテナンス・警備・検査 | 52.0% |
6位 | 飲食料品小売 | 51.4% |
7位 | 金融 | 46.5% |
8位 | 教育サービス | 45.0% |
9位 | 情報サービス | 41.8% |
10位 | 運輸・倉庫 | 41.4% |
非正社員では、「飲食店」がもっとも人材不足を感じているようです。同業界は、学生やフリーターを中心に多くのアルバイトスタッフが働くイメージが定着しています。しかしながら、シフトを埋められず閉業に追いやられるお店があるのも確かです。明暗くっきり分かれる(正社員同様50%前後)と思いきや、72.2%という高さからは状況の深刻さが如実にわかります。
また、「人材派遣・紹介」の62.0%も考えさせられる数値です。実際に、契約更新せずにすぐ辞める派遣社員も多いように見受けられます。大量募集すればよいといった考えは、今の時代、通用しないのでしょう。定着率が低い企業の職場環境の見直しは必須です。
そして「旅館・ホテル」。こちらは正社員同様、非正社員においても3番目に人手不足です。先述したとおり、労働条件や環境が厳しいからでしょう。いわゆる業界体質が変わらない限り、“継続して働いてもらう”あるいは“新しく人が入る”のは、雇用形態問わず今後ますます難しくなっていくと考えます。
有効求人倍率から見る人手不足の職業

その職業が人手不足かどうかを知るのに、有効求人倍率もまた一つの指標です。本章では、2024年の情報をもとに、人手不足が深刻な職業を探っていきます。
有効求人倍率とは?
有効求人倍率は、求職者数に対する求人数の割合を示す指標です。この倍率が1を超える場合、求職者よりも求人を出している企業の方が多いことを指します。逆に1未満の場合は、求職者が求人を上回るため、いわゆる買い手に当たる企業側にとっては好都合です。
この倍率は、厚生労働省が全国の公共職業安定所(ハローワーク)から提供されるデータを基に算出されます(「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」として公表されます)。
▶関連記事:有効求人倍率とは?推移や傾向、計算での求め方など簡単に解説
アルバイト・パート編
アルバイトやパートの有効求人倍率は、2024年5月時点では1.20倍でした。直近の流れでは下がりつつあるものの、依然、高い水準です。そうしたなか、主な職業で見ると介護サービスが前月比で、飲食物調理が前年比で、それぞれアップしています。どちらも年々、人手不足が問題視されている職業です。今後もそう大きくは傾向が変わらないかもしれません。
▶参照記事:最新!アルバイト・パートの有効求人倍率(エリア・職種別あり)
社員編
社員の有効求人倍率は、2024年5月時点では1.27倍でした。直近で見るとほぼ横ばいといってよいでしょう。アルバイト・パート以上に高い水準で推移しています。
主な職業では、介護サービスのアップが顕著です。前月比、前年比どちらも高くなっています。アルバイト・パート以上に、人手不足に困っていることがわかる結果です。そのほか、商品販売の職業も倍率上昇が目立ちます。
▶参照記事:最新!社員の有効求人倍率(エリア・職種別あり)
有効求人倍率が高い職業ランキング
2024年2月の、パートを含めた有効求人倍率の上位はこちらです。
順位 | 従事する職業 | 有効求人倍率 |
---|---|---|
1位 | 建設躯体工事従事者 | 9.04 |
2位 | 保安職業従事者 | 6.73 |
3位 | 土木作業従事者 | 6.14 |
4位 | 建築・土木・測量技術者 | 6.02 |
5位 | 建設従事者(建設躯体工事従事者を除く) | 4.83 |
同じく、2024年2月のパートを除いた有効求人倍率はこちらです。
順位 | 従事する職業 | 有効求人倍率 |
---|---|---|
1位 | 建設躯体工事従事者 | 9.75 |
2位 | 保安職業従事者 | 7.16 |
3位 | 建築・土木・測量技術者 | 7.09 |
4位 | 土木作業従事者 | 6.80 |
5位 | 採掘従事者 | 6.20 |
期間比較ではなく有効求人倍率の絶対数値でみると、パートを含む除くともに建設躯体工事従事者が1位です。双方のランキングでわかるように、パートもパート以外も傾向は似通っています。建設、建築、土木関係や、保安職業など専門的な技術を要する職業は、総じて人手不足に陥っていることがいえそうです。状況を打破するためには、欲しい人材に特化したサービスを利用するなど適切な求人媒体の選定が求められます。
人手不足問題に悩む業界・職種で起きていること

人手不足に陥っている業界・職種では、実際のところどのような問題が起きているのでしょうか?大きくは次の3つが挙げられます。
- 労働環境の悪化
- 離職者の増加
- 人手不足倒産
以下、それぞれ詳述します。
労働環境の悪化
人手不足の職場では、どの従業員も業務過多になりがちです。そうなるとやはり、ミスやトラブル、サービスの品質低下などを招きやすいでしょう。また、残業時間の増加やうまく休めないことで心身に支障をきたすスタッフも出てくるはずです。実際にそうしたケースは珍しくないといえます。したがって、労働環境を悪化させないためにも、人手不足を回避する必要があるのです。
離職者の増加
前述の労働環境の悪化によって、さらには連鎖退職を引き起こします。実際に、次々と離職者が出てくる組織も珍しくありません。周りが辞めるたびに業務が増えるのもそうですが、何よりこのままここに居てはいけないといった防衛反応が働くのでしょう。どんどんと人が辞めていくまさに負のスパイラルが生じます。
人手不足倒産
人材が確保できずに事業継続が困難になるケースもあります。そう俗にいう「人手不足倒産」です。帝国データバンクの調査によると、2024年上半期(1-6月)には182件もの人手不足倒産が発生。年間として、過去最多を大幅に上回るペースのようです。人手不足による企業経営への影響が、一段と深刻化していることがわかります。
人手不足に悩む業界・職種で人材を獲得するには?

人手不足に直面している業界や職種において、果たして打つ手はあるのでしょうか。本章では、そのアンサーとしていくつか人材獲得のヒントを紹介します。具体的には次のとおりです。
- 多様な人材にアプローチする
- 組織デザインに注力する
- 人事制度を見直す
以下、それぞれ詳述します。
多様な人材にアプローチする
人手不足解消のための一つの手として、人材要件の見直しからはじめることをおすすめします。特定の属性や条件に固執してしまうと、どうしてもリーチできる数が限定されるため、募集段階で苦労されるケースも少なくありません。ゆえにシニアや外国人なども含めて多様な人材にアプローチすることが状況を打開するには有効かと考えます。そう、いわゆるダイバーシティ採用です。うまくいけば、人手不足解消だけでなく、組織に新たな視点やアイデアをもたらしてくれることまで期待できます。
組織デザインに注力する
組織デザインとは、個々の従業員のポテンシャルやスキルを最大限に生かすための取り組みです。これによって、適材適所の人事が図られ、一人ひとりが活躍できる職場に生まれ変わる期待が持てます。そうなると当然、定着率向上にもつながるはずです。
また、組織デザインは採用活動においても有効に作用します。組織における立ち位置や求められる役割が明確であれば(募集要項でしっかりと打ち出すことが大事!)、働くイメージも喚起されやすいでしょう。求職者も安心して応募できるのでないかと考えます。
人事制度を見直す
人事制度が無機質なものであったり、公平性に欠けたりするとどうしても不平・不満が起きてしまいます。離職者が増えるのも当然です。だからこそ、従業員のモチベーションを上げるためにも定期的に見直していく必要があります。人事制度がしっかりとしていれば、求人のアピールポイントにもなるでしょう。すぐには反響や効果を実感できなくとも、愚直に試行錯誤していくことが大切です。
人手不足の解消を図るには人材市況の理解が必須!

というわけで、人手不足の職業をランキング形式で紹介し、加えてその影響や改善策までお伝えしました。今日の人材市況には、正直厳しい印象を覚えます。求人倍率の推移や人手不足倒産のニュースを目の当たりにすればなおさらです。とはいえ、企業側でできることもあります。たとえ市況データが思いのほか残酷な現実を突き付けてきても、それは捉え方次第では貴重なヒントです(つまり市況の理解は必須です)。また、これまで手を付けてこなかった施策や導入していないサービスがあれば、それらを取り入れることで状況は変えられるかもしれません。改善の余地、可能性は大いに広がっています。もちろん、一朝一夕で解決が図れるほど簡単な問題ではありませんが、今からでもコツコツと取り組んでいけば、きっと相応の結果が付いてくるでしょう。
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