近年の日本は高齢化社会ですが、健康寿命も長くなっており、定年後に働き続ける人も増加傾向にあります。
今回の記事では、再雇用制度について言及。基本的な仕組みやメリット・デメリット、再雇用の手続きの流れ、助成金などについてくわしく解説します。

再雇用制度とは?メリット、デメリット、給与や助成金の話など

2022.11.14

近年の日本は高齢化社会ですが、健康寿命も長くなっており、定年後に働き続ける人も増加傾向にあります。 今回の記事では、再雇用制度について言及。基本的な仕組みやメリット・デメリット、再雇用の手続きの流れ、助成金などについてくわしく解説します。

再雇用制度とは?

再雇用制度について

さて、再雇用制度とは、文字どおり一度退職した社員を再度雇用する制度のことです。定年退職や、たとえば育児や介護などを理由に一旦自己都合で退職した方々が、再び戻ってくるパターンが挙げられます。

定年退職した従業員を再雇用する場合は、定年延長とは異なり、あらためて労働契約のなかで退職後に働く期間を決めていく流れです。 

一方で、自己都合で退職した従業員の再雇用も近年は特に増えています。会社からすると、起業・独立や他社への転職で一度は離れたものの、会社へ戻ることを決断したかつての従業員を再び雇うわけです。キリンホールディングスの「キャリア・リターン制度」や楽天の「ジョブ・リターン」など、呼び名はさまざまですが、制度自体は広く浸透してきたといえます。

しかしながら、再雇用制度といえば、まだまだ定年退職後のケースを指すのが一般的です。本稿では主に定年退職した従業員の再雇用にフォーカスします。

高齢者の雇用に関する法律上の規定

いまや年齢問わず意欲のある人たちが働き続けられるよう、政府も法改正を進め、高齢者の労働力への期待がますます高まっている状況です。 その最たる例として企業には、高年齢者雇用安定法により従業員が希望すれば65歳まで雇用を継続する義務があります。しかし、そういった再雇用に関して従業員との間でトラブルに発展してしまうケースが後を絶たないのも事実です。

と、上記を踏まえ、高齢者の雇用に関する法律上の規定について紹介します。 

65歳までの雇用機会の確保

2013年の改正法において高年齢者雇用安定法では「60歳未満の定年」が禁止となりました。

そして改正法の際に定められたのが「高年齢者雇用確保措置」です。これは、厚生年金の支給開始年齢が引き上げられたことに伴い、年金と賃金の両方が発生しない時期に、労働者の生活を守るための対策として定められたものです。 

このことにより、企業側には従業員の65歳まで安定した雇用を確保するために、次の3つの措置のうち1つを実施することが義務づけられました。 

このうち多くの企業が取り入れている制度が「継続雇用制度」の1つである件の「再雇用制度」です。「再雇用制度」の対象者は、以前まで労使協定の基準によって限定することが可能でしたが、高年齢者雇用安定法の改正によって、平成25年度以降は希望するすべての従業員が対象へと変わっています。

70歳までの就業機会の確保

高齢者雇用確保措置は65歳までが適用範囲です。これによって、従業員が70歳になるまでの就業機会を確保するように企業努力が求められています。そして、別名「70歳就業法」や「70歳定年法」などと呼ばれることもあるこの改正法は、具体的に以下の5つのなかから、少なくとも1つを講じなければなりません。

  1. 70歳まで定年年齢の引上げ
  2. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 
  3. 定年制の廃止 
  4. 70歳まで継続的に従業員と業務委託契約を締結する制度の導入 
    1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業 
    2. 事業主が委託、出資する団体が実施する社会貢献事業   

上記の4と5は「創業支援等措置」とも呼ばれるものです。実施する際には計画書を作成して、労使間での同意を得る必要があります。つまり、労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは過半数のなかの代表者とのあいだで取り決めていくわけです。5つのうち、どの規約を採用するかも含めて十分に話し合い、従業員のニーズに応えていくようにしましょう。

 なお近年は、世界的にも定年を延長する国が増えつつあります。日本においても、年金受給年齢が上がっているのをみると「70歳までの就業」が義務化される可能性は十分にあり得るでしょう。こうした情勢からも、今後の対応については早い段階で検討しておくことが必要です。 

再雇用制度を導入する企業のメリット・デメリット

再雇用制度を導入する企業のメリット・デメリット

企業が再雇用制度を導入する際には、メリットもあればデメリットもあります。 

以下、それぞれ説明します。

再雇用制度を導入するメリット

再雇用制度を導入する主なメリットは、スキルの資産やコストの抑制などいくつも挙げられます。これらは、自身の組織でも当てはめられるはずです。とりあえずは詳細を知り、うまく適用できるかシミュレーションしてみてください。

従業員が培った専門知識や技術などを活用できる

定年まで働いた従業員は、長年にわたって培った専門知識やスキル、経験などを十分に持っています。それらを有効活用することで企業側の利益につながるのは容易に想像できるでしょう。また、これまで築いてきた幅広い人脈を活かしてもらい、新たなビジネスが舞い込む期待も持てます。

担当者変更による顧客ばなれの防止

同じ従業員を再雇用することで、担当顧客との関係を良好なまま維持できます。顧客ばなれによる契約終了や顧客満足度の低下といったリスク回避は大きなメリットです。

採用・教育コストの削減

再雇用によって人材を新たに採用するコストを削れます。求人広告や選考フローにかかる手間暇、費用は決して軽視できません。人材の育成についても同様です。

人手不足の解消 

日本では、少子化に伴って若い世代の労働人口が年々減少しています。各企業は人材確保が難しくなっている一方で、高齢者の労働人口は増加傾向にあります。今後も若い世代の人材確保が難しい状況は続くと予想されますが、再雇用によって高齢者の従業員を手放せずにいれば、一旦は人手不足や採用難が解消できるでしょう。 

助成金を得られる

再雇用制度の導入によって、企業は助成金を受け取れます。主に挙げられるのは次の3種類です(くわしくは後述します)。

 助成金は、高年齢者が働きやすい職場づくりに尽力する企業の支援に一役も二役も買ってくれます

再雇用制度を導入するデメリット

再雇用制度の導入にあたっては、デメリットも存在します。具体的には、世代交代の遅れや評価制度の問題などです。これらをしっかりおさえたうえで検討する必要があります。

世代交代が滞る

高齢者の従業員が活躍することで「若い世代が育たない」「ポストが空かない」「新しい時代のアイデアが出にくい」などのデメリットが考えられます。それらに伴い、結果を出していち早く出世したいと考える若手社員の不満がどんどん溜まっていくかもしれません。そうなれば、最悪、次々と離職者を生み出しかねません。 

したがって、せっかくベテラン社員を再雇用するなら、彼・彼女らの知識やスキルを若手社員に伝える機会を設けるなど、人を育てられる環境をうまく整えることが大切です。 

人件費がかかる

再雇用制度では、希望者なら全員再雇用しなければならない決まりがあります。これは、(言い方は悪いですが)企業側にとって決して必要としない人材であっても面倒をみていく義務があることを意味します。そしてもちろん、人件費は嵩みます。かといって再雇用となった従業員の給与を大幅に減らせるかといったら難しいでしょう。そうした状況下では、契約内容の見直しや配置換えなどを柔軟に行うことが求められます。くれぐれも慎重に対応してください。

人事管理の煩雑化や評価制度を見直す必要性

再雇用制度の導入に際しては、法令を守りながら新たな雇用制度や勤務形態に対応することも必要です。結果、人事面で管理が煩雑化することも十分考えられます。とりわけ再雇用した従業員の仕事ぶりをどのように判断するかは肝になるといえるでしょう。評価制度の最適化を図るべく、既存の体制をしっかり見直していくことが大切です。

再雇用制度を導入する際の注意点

再雇用制度を導入する際の注意点

前述のデメリットを懸念しつつ、再雇用された従業員に対しても想定しておくべき注意点が存在します。たとえば、賃金や待遇について不満に感じるケースなどがそう。労働条件に関して企業との間に認識の相違があれば、たちまちトラブルを招き、場合によっては訴訟に発展することも少なくありません。 

こうしたリスクを回避するためにも、再雇用制度については、しっかりと理解しましょう。

再雇用制度の労働条件

現在、高年齢者雇用安定法によって、企業は希望者全員に対して65歳までの雇用機会を与えることが義務づけられています。これに該当する定年後に再雇用された従業員は「再雇用社員」あるいは「嘱託社員」「シニア社員」などと呼ばれ、正社員と区別されることがほとんどです。

他方、把握すべき前提を述べると、高齢者雇用安定法では、定年後と定年前の労働条件を同じに設定することが義務づけられているわけではありません。再雇用従業員の給与額や業務内容、勤務日数などの労働条件については、そのほかの正社員と異なるものであっても問題ないとされています。

ただし、企業が完全に自由に労働条件を決めてよいわけではありません。パートタイム有期雇用労働法第8条では、正社員と有期雇用社員とのあいだで不合理な待遇差をつけることが禁止されています。この点もまた注意が必要です。

再雇用制度の契約期間

再雇用でよくあるケースは、1年契約のフルタイム有期雇用契約です。と、注意したいこととして、有期雇用契約が通算で5年を超えて繰り返し更新される場合は、従業員の申し込みがあれば期間の定めのない雇用契約に変えられる「無期転換ルール」が適用されます(労働契約法第18条)。

このルールが成立すれば、当然、従業員に対して雇用期間満了を理由に契約を終了させることはできません。

再雇用制度の給与・賃金

再雇用制度では、正社員から契約社員・嘱託社員などに雇用形態を変えて再契約できます。非正規雇用に変わることにより、必然的に給与・賃金は下がりますが、一般的には、定年退職時の50%〜70%程度となるケースが多いようです。 

どのみち給与・賃金は下がってしまうわけですが、これは、業務内容が定年前と同じであっても、体力や気力の減退などの理由によって業務の効率が下がることを前提としているからです。ただし今後は、正社員と比べて業務内容や業務量、責任が同じものであれば同一賃金が必要になります。そう、同一労働同一賃金のルールです。こうした世相、情報にも目配りしながら、給与・賃金は設定しましょう。仮に著しく低い場合は、労働契約法に抵触する恐れもあります。

再雇用制度における各種手当

正社員に支給されている各種手当を、再雇用社員に対して理に敵わず与えない行為は違法です。通勤手当や精勤手当などは再雇用社員であっても支給する必要があります。

ただし、住宅手当や家族手当は、高齢者の場合、住宅ローンの支払いが終わっていることや、扶養家族がいない場合が多いため、条件によっては必ずしも与えなくてはならないものともいえません。

いずれにしても、再雇用社員に対する手当に対しては、違法性がないか細かくチェックすることが大切です。

再雇用で必要な社会保険

再雇用社員の場合も、原則として「健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険」に加入しなければなりません。

ただし、就業日数や就業時間を減らした場合は、加入対象外になることもあります。

定年から再雇用までの手続きの流れ

定年から再雇用までの手続きの流れ

再雇用に関する手続きは、法律の解釈も複雑でトラブルも増えているため、関係者とのコミュニケーションを密に取りながら進める必要があります。 

流れについては、以下のとおりです。 

対象者へ再雇用の通知

従業員が定年退職を迎える1年前を目安に、対象者へ再雇用制度の話を通達します。その後、再雇用においての就業ルールについても説明し、今後のキャリアのことを検討してもらいます。 

なお、トラブル回避のためにも、再雇用に関する通知は個別に行うようにしましょう。

再雇用への意思確認

対象者に再雇用を希望するか否かの意思確認を行います。希望する場合は「再雇用希望申出書」を提出してもらうことが必要です。このフローによって従業員の意思を明確化できます。 

他方、本人が再雇用を希望せず定年退職する場合は、念のために「再雇用辞退申出書」を提出してもらうことをおすすめします。

対象者との面談・雇用条件の確認

対象者への意思確認が済めば、個別に面談を行い、再雇用に関する条件を確認していきます。対象者が希望する働き方を細かくヒアリングし、くれぐれも企業側と認識の相違がないようにしておきましょう。

再雇用の決定・各種手続き

互いの合意のもと再雇用が決定したなら、新たな雇用契約書の手続きを行います。その場合、一旦は定年退職の扱いとなるため「定年退職届」の提出が必要です。こうした書類の取り交わしと同時に、企業側は退職金の支払い準備や社会保険、雇用保険、労災保険の手続きも進めていくことになります。

高齢者の雇用に利用できる助成金・給付金

高齢者の雇用に利用できる助成金・給付金

すでにお伝えしたとおり、高齢者の再雇用促進のために国はさまざまな助成金や給付金で支援活動を行っています。裏を返せば、企業側はこれらを活用することで再雇用に関する課題をスムーズに解決できるわけです。 

以下、高齢者の雇用に利用できる主な助成金・給付金について取り上げます。

特定求職者雇用開発助成金

厚生労働省が指定する、高齢者を含む雇用が困難と思われる対象を一定の条件のもと雇った場合に受けて取れる助成金です。対象者は多岐に渡りますが、主なコースについて言及します。

特定就職困難者コース

特定就職困難者コースは、高齢者や障碍者などの就職困難者を、ハローワークや民間の職業紹介事業者の紹介により、再雇用する従業員として雇い入れる場合に支給される助成金です。企業がこの制度を利用することで、就職が困難な方の雇用機会を増やし、雇用の安定が図れます。 

原則、正社員や無期雇用として扱いつつ有期雇用であっても、自動更新(本人が希望すれば更新する、または更新条件なし)であれば対象に含まれます。

生涯現役コース

生涯現役コースは「雇用された日の年齢が満65歳以上」「雇用された日に雇用保険の被保険者」であることが受け取れる条件です。なお、後者に関しては、失業あるいは1週間の所定労働時間が20時間未満であれば対象外になる可能性があるため気を付けましょう。

65歳超雇用推進助成金

65歳超雇用推進助成金は、定年に当たる年齢を65歳以上に引き上げることや高齢者の雇用管理制度を整備するといった取り組みを実施した事業主に対して支払われる助成金です。 

こちらの助成金には、以下の3つのコースがあります。

65歳超継続雇用促進コース 

労働協約または就業規則により「定年制の廃止」「65歳以上への定年引き上げ」「希望者全員を66歳以上まで雇用する継続雇用制度の導入」「他社による継続雇用制度の導入」のいずれかを実施した場合に支給されます。

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

2019年4月1日から受付を開始したコースです。高齢者の雇用管理制度の整備などを行う事業主が受給できます。

高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上かつ定年未満の有期契約労働者を、無期雇用労働者に転換した事業主に対して支給される助成金です。

高年齢労働者処遇改善促進助成金

高年齢労働者処遇改善促進助成金は、2021年4月から新たに設けられた助成金です。賃金に関する規定の増額改定など60~64歳までの労働者の処遇改善に取り組む事業主が支給の対象に当たります。ちなみに満たすべき要件は次のとおりです。 

高年齢雇用継続給付金

高年齢雇用継続給付金は、従業員の60歳到達時点と比べて、再雇用後の賃金が75%未満になった場合に雇用保険から支給される給付金です。 

こちらの給付金を受け取るためには、以下の受給要件を満たす必要があります。 

なお、高年齢雇用継続給付金についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。今後廃止される理由やその経緯についてわかりやすく解説しています。

高年齢雇用継続給付金が廃止!なぜ?段階的縮小の背景を概要交えて解説

再雇用制度についてのポイントまとめ

再雇用制度についてのポイントまとめ

高齢化が進み、定年後も働く人が増えています。高齢者を再雇用することで、長年培った専門的なスキルや知識、経験を有効に活用できるため、企業にとっても大きなプラスとなるでしょう。そして、優秀で働く意欲のある高齢者は少なからずいらっしゃいます。 

高齢者を雇用することで、条件によっては助成金や補助金も受け取れます。これらを踏まえて、再雇用に対して積極的に取り組んでみてもよいかもしれません。 

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