LGBTQは国内約3〜10%との調査も。LGBTQを含めた全ての人たちにとって働きやすい職場づくりのために、企業が今日からできることを考えてみましょう。(執筆・監修者 認定特定非営利活動法人ReBit 代表理事 藥師実芳)

LGBTQ採用完全ガイド:LGBTQが安心して働ける企業のためにできることを徹底解説!

  • 2024.05.15
  • 2024.05.15

LGBTQは国内約3〜10%との調査も。LGBTQを含めた全ての人たちにとって働きやすい職場づくりのために、企業が今日からできることを考えてみましょう。(執筆・監修者 認定特定非営利活動法人ReBit 代表理事 藥師実芳)

【執筆・監修者】
認定特定非営利活動法人ReBit 代表理事 藥師実芳
LGBTQの教育・キャリア支援・福祉に取り組んでいる(くわしいプロフィールはこちら

なぜ今、LGBTQへの理解が重要なのか?

LGBTQとは?

LGBTQとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人)とクエスチョニング(性別をあえて決めない、または決められない人)の頭文字からなる言葉です。

LGBTQは約3〜10%いるとの国内調査(※1)もあり、比較的身近なマイノリティと言えますが、見た目だけではわかりません。また、職場で同僚にカミングアウトをしているLGBTQは4.8%(※2)との調査もあり、「カミングアウトしている人がいないから、いない」と決めつけることはできません。だからこそ、LGBTQの人たちがいることを前提に、誰もが安心して働ける職場づくりが求められています。

(※1) LGBTQの推計は様々な国内調査がある。「働き方と暮らしの多様性と共生」研究チーム(2019)「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」、日本労働組合総連合会(2016)「LGBTに関する職場の意識調査」ではLGBT等(性的マイノリティ)、株式会社LGBT総合研究所(2016)「LGBTに関する意識調査」、電通ダイバーシティ・ラボ(2018)「LGBT調査2018」、日高庸晴・三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」(2018)「多様な性と生活についてのアンケート調査」(有効回答数10,063)、岩手県高校教育研究会学校保健部会・いわて思春期研究会(2013)「高校生の生と性に関する調査」より。

(※2)電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2015」より引用

国内外のLGBTQの状況

LGBTQを取り巻く状況は、国や地域により異なります。性的指向(どの性別を恋愛の対象とするか/しないか)や性自認(どの性別を自認するか)を理由とした差別を禁止する法律がある国や、同性同士も婚姻ができる国がある一方で、LGBTQであることが死刑や禁固刑などの処罰の対象になる国もあります。

日本は、LGBTQは処罰の対象になりませんが、G7のなかで唯一、同性同士の婚姻や同等の権利を保証する法律がない国でもあります。一方で、国内でもさまざまな取り組みが進んでいます。同性パートナーを認知する「パートナーシップ制度」を施行する自治体は、2015年から年々増加しています。また、セクハラ指針、パワハラ防止法、LGBTQ理解増進法といった法制度により、企業のLGBTQへの取り組みが社会的にも求められています。

企業がLGBTQに取り組む意義

2017年に日本経済団体連合会が行なった調査では、42.1%の企業がLGBTQに関して何らかの取り組みを実施し、34.3%が検討中であると回答をしました(※)。なお、企業のLGBTQへの取り組みを評価・表彰するPRIDE指標は約400社が受賞し、LGBTQに取り組む企業は増加しています。

企業がLGBTQに取り組む意義は様々ありますが、大きくは2つに大別されます。1つが職場環境の整備やコンプライアンスなどの社内施策、もう1つがお客様対応やマーケティングなどの社外施策です。

(※)日本経済団体連合会(2017)「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」

職場環境の整備やコンプライアンスなどの社内施策

ここでは、LGBTQに対応するための社内施策について、人材活躍とコンプライアンスの両面から解説します。

人材活躍

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、働く方たち一人ひとりの創造性を最大化し、多様な価値観を認め合う職場環境づくりへとつながります。職場で LGBTQ に対して差別的な言動があるかどうかは勤続意欲やパフォーマンスに関わるという調査もあります。

コンプライアンス

2017 年に改正施行された厚生労働省「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(いわゆる、セクハラ指針)において、「被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となる」ことが明記され、防止対策が努力義務になりました。

また、2020 年に公布された厚生労働省「労働施策総合推進法」(いわゆる、改正パワハラ防止法)においては、労働者の性的指向・性自認を本人の了解を得ずに他の労働者に暴露すること(アウティング)もパワハラにあたることが示され、企業が方針の明確化や適切な対応体制の整備を行うことが防止措置として義務化されました。

さらに、2023年6月に施行されたLGBT理解増進法では、企業が雇用する労働者に対し、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字のことで、性的指向(好きになる性)/性自認(自分の心の性)のこと)の多様性に関する理解を深めるための情報の提供、研修の実施、普及啓発、就業環境に関する相談体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めるものと定められています。

お客様対応やマーケティングなどの社外施策

ここからは、LGBTQに対応するための社外施策について、社会的責任とお客さま対応の両面から解説します。

社会的責任

国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の「3.すべての人に健康と福祉を」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」をはじめ、いくつもの項目にLGBTQは関わっています。LGBTQ のテーマにどう取り組むかは、企業の社会的な責任でもあります。

お客さま対応

お客さまのうち一定数の方がLGBTQであるからこそ、サービス面においても排除や差別がないかを点検する必要があります。

携帯電話の家族向け割引サービスを同性パートナーにも適応したり、生命保険の受取人を同性パートナーも指定できるようにしたりするなど、LGBTQへの配慮がなされた取り組みが進んでいます。

LGBTQの就活や職場での困りごと

LGBTQの職場での困りごとを、4つの軸に大別し、さまざまな人たちの声と共に紹介します。

困りごと①:ハラスメントを受けやすい

4割超のLGBTQが「職場でSOGIに関する差別的言動が頻繁にある」と回答(※)し、職場でハラスメントを多く経験しています。職場でカミングアウトをしている場合、周囲の理解不足によりハラスメントを受けることも少なくありません。一方で、カミングアウトをしない場合も、LGBTQが職場で想定されていないことからアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)により、ハラスメントにつながることがあります。

(※)特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター(2019) 「niji VOICE 2019」

困りごと②:人事制度や福利厚生で想定されていない

福利厚生の中に同性パートナーや、法律上家族ではない家族の想定がされていない場合、LGBTQにとって働き続けることが困難となる場合があります。また、トランスジェンダーの人で性別適合手術(性別違和を持つ人が、性自認に身体の性を近づけるため、内外性器に対しておこなう手術。国内では戸籍上の性別変更の必要条件となっている)を希望する場合、手術に際し長期的な休暇が必要となる場合があります。この休暇が申請できなかったり、職場において性別移行のサポートがなかったりすると、性別移行のプロセスの中で退社せざるを得ないと判断し離職してしまう従業員が出ることがあります。

困りごと③:設備や習慣などの男女分け

特にトランスジェンダーの従業員にとっては、トイレ、更衣室、寮、宿泊研修等の部屋/ 風呂などのハード面や、服装、呼称、名前、役割などのソフト面におけるジェンダーの区分に、困難を覚えることは少なくありません。これらは個別の対応が必要になるからこそ、相談しやすい環境づくりが重要です。

困りごと④:就職・転職等の採用における困難

LGBTQ は就職活動の際も困難を経験しやすく、LGB 他の42.5%、トランスジェンダーの87.4%が、求職時にSOGI や性別違和に由来した困難を経験しているという調査もあります。

LGBTQ全般においてカミングアウトをしたら差別的な対応をされる、自身のセクシュアリティを明かすと選考にあたって不利になってしまうのではないかという不安から、経験や志望動機などを伝えられないという課題があります。

また、トランスジェンダーの場合は、履歴書やエントリーシートの性別欄や、男女別のスーツなども障壁となりやすいです。

しかしながら、95.9% の人が就労支援機関には「相談していない」という状況があります。相談しなかった理由としては、「どこに相談したらいいかわからなかった」「相談しても解決してもらえない」等が挙げられています。

なお、厚生労働省は『公正な採用選考の基本』にも、「LGBT 等性的マイノリティの方など特定の人を排除しないことが必要です」と記載しています。

人事担当者や面接官がLGBTQ について正しい理解をもつこと、採用説明会や採用サイトなどでもLGBTQやダイバーシティへの取り組みについて説明や掲載をすることが重要です。

LGBTQの人と働くために、今日から企業ができること

ここまで、働く意欲のあるLGBTQの人たちがどんな場面で困っているのかを解説してきました。こうした困りごとを企業側が解消するためにできることを具体的に紹介します。

企業としてできること

困りごとを解消し、LGBTQにとっても働きやすい職場づくりのためにできる5つのステップをご紹介します。自社の職場で取り組めることがあるか、ぜひご検討ください。

1. 方針を明文化する

会社として、LGBT 等の性的マイノリティに関する方針を明文化し、社内外に公開する。

 □行動規則等に性自認、性的指向、性表現に基づく差別をしないことを明記する

 □経営トップが社内外に方針を言及する

2. 支援体制を整える

性的指向や性自認に関するハラスメントや困りごとがあった際に、相談できる体制を構築する。

 □LGBTQに関する相談をできる窓口を設け、明示する(既存のハラスメント窓口等と併設も可能)

 □相談を受けやすい人(相談窓口担当者/ 人事等)への研修等を通じ理解を深め安全に相談できる体制の構築

3. 制度や対応を検討・明示する

人事制度の検討や、LGBTQの従業員/求職者たちへの対応について検討・明示する

 □家族を対象とした人事制度や福利厚生において、同性パートナーへの対応について検討・明示する

 □従業員が性別移行を希望する際の対応について検討・明示する

 □採用におけるLGBTQ への対応/ 配慮について検討・明示する

4. 社内理解を促進する

 □各階層へLGBTQ研修を実施する

 □イントラネットや社内報でLGBTQに関する情報を掲載し、啓発を行う

5. 理解を可視化する

 □社内にLGBTQアライ(理解者)コミュニティをつくる

 □研修受講者に6 色のレインボー(赤・橙・黄・緑・青・紫)ステッカーを配布する

 □LGBTQのイベント等へ参加する/ 協賛する

公正な採用選考のために企業ができること

応募者の3〜10%はLGBTQであると想定されます。そのため、どの応募者がLGBTQであっても安全かつフルポテンシャルで面接に臨め、公正な採用選考ができるよう、以下の取り組みが大切です。

1. 面接官の理解促進

● 採用に関わる面接官等に事前にLGBTQの研修等を行い、面接でなにがSOGIハラスメントになりうるか周知をしてください。

2. 情報提供/相談対応

● 説明会や採用説明会等で、LGBTQやダイバーシティに関する取り組みを情報提供してください。

● SOGIに限らず、採用選考において必要な対応配慮がある方が相談できる担当者もしくは窓口を開示するとともに、相談があっても採用選考に影響しないことを伝えてください。

● ご相談があった場合、法律上とは異なる名前(通称名)や性別(通称性)の利用を可能とする等、必要に応じた対応をしてください。

3. インクルーシブな設計

● エントリーシートの性別は必須項目としないでください。なお、項目も男女の二択ではなく「自由記載」とするなど、多様な性に対応できるようにしてください。

● 面接時の服装を自由にしたり、採用選考時には不要な男女分けをしたりしないことが望ましいです。

(例)男女で名札の色を分ける、男女同数で班を組ませる

同じ職場で働く個人としてできること

アライ(理解者・支援者)が身近にいることが、働きやすさにつながります。

アライであることを伝えるために、以下のようなことができます。

・「男なら家庭を持って一人前」「もっと女らしくしないと」など、男性/女性を前提としない。

・「早く結婚しなよ」「そのうち親になるんだから」など、誰もが結婚や子育てをすることを前提としない。

・赤・橙・黄・緑・青・紫の6色の虹は、LGBTQに理解があることの国際的な象徴とされています。6 色のレインボーアイテムを身につけたり、置いたりする。

・日常的に、LGBTQのニュースや話題について職場で肯定的に話す

・この記事を、職場等で肯定的に紹介する

・LGBTQの本などを読み、さらに理解を深める

 アライの存在は職場の心理的安全にも影響します。職場にアライがいないと回答した人のうち、職場の心理的安全が高いと回答した人は23.4%であるに対し、職場にアライがいると回答した人は職場の心理的安全が高いと回答した人は61.6%でした(※)。

また、LGBTQに限らず、さまざまな違いが想定・受容され、誰にとっても心理的安全が高い状態で働ける職場が増えることを願っています。

(※)特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2018 調査より引用

LGBTQに関する企業お役立ち情報まとめ

行政等が作成しているLGBTQの取り組みや相談窓口の情報を記載します。ぜひ情報収集やさらなる理解などにお役立てください。

LGBTQに関する行政の取り組み

厚生労働省「性的マイノリティに関する理解増進に向けて~厚生労働省の取組~」

東京都「性的マイノリティに関する企業向けポータルサイト」

埼玉県「LGBTQに関する企業を対象とした取組について」

まとめ・LGBTQを含めたすべての人が働きやすい職場へ

LGBTQに限らず、誰もが違いをもっています。LGBTQの取り組みを通じて、職場での中で見落とされやすいさまざまな違いが尊重され、誰もが働きやすい職場になることを願っています。

LGBTQの方々を採用し、その方々が自分らしく活躍されることは、その企業の競争力を高めることにつながり、社会からの大きな支持が得られることでブランド価値も一層高まるでしょう。

私たちdipは、多様な個性や価値観を持つ人が自分らしく働ける社会の実現を目指し、そのためのサポートを行っています。

募集や採用、その後の定着支援についてお困りのことがあれば、ぜひdipの営業担当へご相談ください。


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【監修者の紹介】

認定特定非営利活動法人ReBit 

代表理事(社会福祉士/国家資格コンサルティング技能士2級) 

藥師実芳

神奈川出身、早稲田大学大学院教育学研究科修了。

自身もトランスジェンダーであることから、LGBTQを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会を目指し、20歳でReBitを設立。

行政/学校/企業等でLGBTQやダイバーシティに関する研修実施、LGBTQへキャリア支援提供、国内最大級のダイバーシティと就労に関するキャリアフォーラム”DIVERSITY CAREER FORUM”の開催等を行う。また、日本初となるLGBTQかつ精神・発達障害がある人たちを主対象とした障害福祉サービス”DIVERSITY CAREER CENTER”を設立。また、世田谷区、新宿をはじめ行政で検討委員を務め、山形大学、九州大学で非常勤講師を経験。

青少年版国民栄誉賞と言われる「人間力大賞」受賞、世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ世界の若手リーダー、グローバル・シェーパーズ・コミュニティ選出、オバマ財団が選ぶアジア・パシフィックのリーダー選出。共著に「LGBTってなんだろう?」「教育とLGBTIをつなぐ」「トランスジェンダーと職場環境ハンドブック」等がある。

認定NPO法人ReBitについて

2009年よりLGBTQの教育・キャリア支援・福祉に取り組む認定NPO 法人です。企業・行政・学校等でのLGBTQやダイバーシティ研修やコンサルテーション、教材作成等を行っています。LGBTQを含めた多様な人が自分らしく働くことを応援するため、ReBit では、キャリア支援に関連した下記のような取り組みも行っています。

企業担当者・就労支援者向けの研修実施

LGBTQ の支援もできる、担当者・支援者育成のための研修も行っています。

就労支援機関や企業へのコンサルテーション・アドバイジング

就労支援機関においてLGBTQ の相談者にも対応できる体制を整えたり、企業においてSOGI に関する相談も受けられるようにしたりするため、企画から実施までを伴走いたします。

なぜ今、企業でLGBT? | 認定NPO法人 ReBit

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