昇給の種類を知れば、(昇給を)柔軟に考えられる

昇給のやり方は決して一つに限りません。いくつか種類が存在します。それらを認識することで、給料を上げる・上げないの二元論ではなく細かなパターンから選択可能です。以下、具体的にピックアップします。
定期昇給
成果やスキルの成長などに応じて賃金を上げるのが定期昇給です。企業によって異なりますが、年に1~4回で実施されているように感じます。なかでも4月は新年度が始まることもあって、タイミングとしてポピュラーな印象です。査定自体は労働契約書に基づいて行われます。
自動昇給
定期昇給とは異なり、自動昇給は実績云々を問わず年齢や勤続年数などに応じてその名のとおり自動的に給与が上昇する仕組みです。成果やスキル向上の動機付けになりにくい一方で、従業員には変にプレッシャーを掛けずに済みます。それを居心地良く感じ、(是非はさておき)長く勤めてくれる方も見受けられるため、従業員の定着には一役買っているかもしれません。
ベースアップ
通称「ベア」と呼ばれる、基本給部分を一律で上げる方法です。定期昇給は個人が対象ですが、ベースアップは企業全体に対して実施されます。行われるきっかけやタイミングは主に、労働組合と企業の俗にいう春闘や、物価上昇など社会情勢の動きがみられる時です。
臨時昇給
定期昇給とは別のタイミングで実施するものです。業績が好調な時などに行われます。従業員の会社へのエンゲージメントやモチベーション向上につながりやすいタイプの昇給です。
普通昇給
対象分野や領域におけるスキルの向上、普段の業務を迅速かつ精度高く遂行できるようになった場合などに反映される昇給です。
特別昇給
プロジェクトや業務に対して、著しい成果あるいは格別の功労があった際に実施されるいわば褒賞のような扱いの昇給です。
アルバイト・パートに対して昇給なしは違法?

そもそもアルバイト・パートに対して昇給を行わないことは、違法なのでしょうか。カギを握るのは、就業規則にて取り決めがなされているか否かです。“昇給あり”にもかかわらず逸脱していれば違法ですが、そうでない場合、問題にはなりません。また、たとえ就業規則に昇給の取り決めがあったとしても「業績により決定する」「能力や功績により判断する」などのただし書きがあった場合、同じく違法ではないとみなされます。
ただし、就業規則には昇給に関する内容を記載しなければなりません。労働基準法施行規則第5条3項では、就業規則に“賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項”を記載することが定められています。ゆえに、無記載であれば、昇給を行う・行わない以前に違法です。
また、当然ながら使用者が労働者に支払う賃金額が国の定める最低限度を下回ってはいけません。
▶関連記事:2024年度の最低賃金(地域別、全国平均)決定!~引き上げ額は?いつから適用?~
アルバイト・パートの昇給を行うメリット・デメリット

昇給の種類や実施の有無における違法性などを踏まえたうえで、実際に取り組むにしても、あらかじめメリットやデメリットは認識しておきたいところです。それぞれいくつか挙げていきます。
昇給がもたらすメリット
あまねく雇用形態問わず、昇給を行うことで、企業にとって以下のメリットが期待できます。
- モチベーションアップ
- 離職防止
- 会社の成長
それぞれ簡単に説明します。
モチベーションアップ
時給が上がれば、その分モチベーションもアップし、さらに昇給を目指す方も多いのではないでしょうか。アルバイト・パートであっても業務に対して責任を持ち、生産性向上を意識した姿勢や動きがより強化されていくことは容易に考えられます。
離職防止
企業側としてはやはり、アルバイト・パートの方が簡単に離職することは望んでいないはずです。人手不足問題が叫ばれる昨今、もはや属性、雇用形態関係なく一人ひとりが貴重な戦力として扱われている傾向にあります。ゆえに、やはり退職を申し出る方がいれば、可能な限り引きとめたいのが本心でしょう。そうしたなか、少なからず給与に不満を持つ方に対して、シンプルに昇給は辞めることを思いとどまるよう、条件として差し出せる要素の一つです。結果、従業員を手放さずに済めば、不要な採用コストの削減にもつながります。
会社の成長
昇給によって、上記のとおりモチベーションアップや離職防止が実現できれば、組織崩壊を免れ、さらには団結力がいっそう高まっていくことにさえ寄与するでしょう。相乗的に企業人気にも火が付けば、良い評判・口コミなどを通じて、入社志望者が増えることも考えられます。当然、業績アップに結び付くはずです。まさに会社の成長。昇給によって得られるものは思いのほか大きいかもしれません。
昇給で懸念されるデメリット
メリットだけでなくデメリットの把握も大切です。とりわけ以下の要素は、まず念頭に置くようにしましょう。
- コストアップ
- 降給が困難
メリット同様、こちらもそれぞれ簡単に説明します。
コストアップ
いうまでもなく、昇給の規模によっては人件費が高くつくことになるため、安易に判断するのは憚れます。が、離職者の増加など、社内状況が悪循環に陥っている場合は思い切って取り組むことも大事だと考えます。
降給が困難
一度上げた時給は、下げることがなかなか困難です。仮に引き下げを行ってしまうと、メリットとは逆のこと、すなわち従業員のモチベーションや、離職につながるリスクが生じます。
アルバイト・パートの昇給に関する注意点

いざ昇給を決める際は、企業側が気を付けることはもちろん、アルバイト・パート側に促すべき注意事項にもしっかり目配りしておく必要があります。以下、主なポイントです。
年収103万円の壁
主に家計を担う労働者に扶養された家族の年間給与収入が103万円以下ならば所得税は掛からず、つまり扶養者の税金が軽減されることになります。が、裏を返せば、103万円を超過してしまうと、この制度のルールから外れしまうわけです。したがって、アルバイト・パートの方(被扶養者)を昇給させる際は、この点を認識しているか否か確認しておいた方がよいでしょう。もちろん、掛け持ちで働いている場合は、合計した収入が数字として扱われます。
▶関連記事:税法上の扶養とは?条件や手続き、社会保険上の扶養との違いなど解説
年収106万円の壁
2022年10月の改正により、従業員数101人以上500人未満の事業所では、年収106万円(月額8.8万円)を超えた方は社会保険に加入しなければならなくなりました。なお予定では、2024年10月以降その対象は従業員数51人以上の事業所にまで広がります。
年収130万円の壁
年収が130万円を超えた場合、勤務先や雇用条件問わず、社会保険の扶養から外れます。つまり、(年収130万円を超えた)すべての人が、社会保険に加入しなければなりません。
昇給・降給に関するルールの明確化
就業規則では昇給に関する内容を曖昧にしてはいけないことは先にお伝えしたとおりです。加えて、降給についてもはっきりとルールを決めておくようにしましょう。たとえば、責任がそう重くないからといって正社員でない方がなりふり構わない勤務態度や勤怠状況であった場合、やはりしかるべき処置が必要です。そこでいわゆる懲戒処分として一時的でも給料を減らすことは真っ当な行為であり、実際に行使することもできます。だからこそ、事前に共有しておくことは不可欠です。これによって、従業員の意識や姿勢をある程度コントロールしながら、降給に対して不安を抱かずに働いてもらうことができます。
アルバイト・パートの時給アップに関する事例

ベースアップとは別に、これから入る人たちに向けても会社として時給をアップすることは、中長期的かつ広い視野で捉えたときにプラスに作用するものです。以下、広告費を減らしつつ応募数が増えたケースを紹介します。求人サービスの影響も多大にあるとはいえ、昇給がもたらすアドバンテージに求職者がポジティブに反応した結果です。エリアでの相場をもとに高めに設定したとのことで採用活動が加速したといいます。
▶時給アップを実施し、提案・サービス含めて応募数増加に寄与
一方で時給アップによって応募者は確保できても、面接の設定に手間がかかるなどして他社に奪われたケースもあったようです。
▶時給アップだけでなく、求人原稿の工夫や応募者対応も大事!
採用活動を成功させるためには、やはり業務全体への目配りが必要であり、相応の対処が求められます。上記の事例では、採用オペレーションをフェーズごとに最適化した結果、求める人材からの応募を獲得し、なおかつ取り逃がさないよう応募者対応も迅速に遂行できた模様です。すなわち、求人サービスとの掛け合わせが功を奏しています。昇給制度の導入や時給アップだけでは人手不足問題が解消されないとお悩みの事業主様、人事担当者様はぜひ、 dip(ディップ)が提供するサービスをご活用ください。
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アルバイト・パートの昇給に関するポイントまとめ

アルバイト・パートに対する昇給について、必ずしも行わなくても構わないとはいえ、モチベーションアップや離職防止に一定の効力を発揮するのは確かだと考えます。世相を鑑みても、従業員の会社満足度を下げないためには昇給など待遇面の改善は多くの企業に求められているところです。拙稿で述べたデメリット、注意点も念頭に置きながら、昇給がもたらす会社への良い影響を今一度、吟味してみてはいかがでしょう。
もちろん、どの種類の昇給であっても、実施している旨をアピールすることは採用活動にもプラスに作用します。そうしたなか、 dip(ディップ)のサービスを活用することで、求人原稿をどう工夫していくかなど含めて最善策を講じることが可能です。
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