LGBTQのためのバイト探しガイド - LGBTQが自分らしくバイトできるポイントとは

LGBTQのためのバイト探しガイド - LGBTQが自分らしくバイトできるポイントとは

「LGBTQに取り組む会社ってどう探したらいいの?」や「面接のときは、カミングアウトした方がいいの?」など、LGBTQがバイトを探すときのよくある疑問をいっしょに考えてみましょう。

【執筆・監修者】
認定特定非営利活動法人ReBit 代表理事 藥師実芳
LGBTQの教育・キャリア支援・福祉に取り組んでいる(くわしいプロフィールはこちら

LGBTQのバイト探しのQ&A

LGBTQがはじめてバイトを探すときに疑問に思いやすいことを、Q&A形式でまとめました。あなたらしい働き方を探すヒントになれたら嬉しいです。

LGBTQの人たちはどんな仕事をしていますか?

LGBTQとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人)とクエスチョニング(性別をあえて決めない、または決められない人)の頭文字からなる言葉です。LGBTQは約3~10%(注1)いるとの国内調査もあり、比較的身近なマイノリティと言えますが、見た目だけではわかりません。
LGBTQの人たちはどんな地域でも、どんな仕事でもしています。あなたの好きな仕事を選ぶことができます。

※注1
LGBTQの推計は様々な国内調査がある。「働き方と暮らしの多様性と共生」研究チーム(2019)「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」、日本労働組合総連合会(2016)「LGBTに関する職場の意識調査」ではLGBT等(性的マイノリティ)、株式会社LGBT総合研究所(2016)「LGBTに関する意識調査」、電通ダイバーシティ・ラボ(2018)「LGBT調査2018」、日高庸晴・三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」(2018)「多様な性と生活についてのアンケート調査」(有効回答数10,063)、岩手県高校教育研究会学校保健部会・いわて思春期研究会(2013)「高校生の生と性に関する調査」より。

面接のとき、カミングアウトをした方がいいですか?

採用時や働きはじめてからも、セクシュアリティ(性のあり方)を伝えるか伝えないか、伝えるとしてもどのタイミングでどの範囲の人に伝えるかは、あなたが決めていいことです。

【カミングアウトするかどうかの考え方の例】
  • 法律上の性別は女性で、性自認が男性。男性として働きたいので面接の時にカミングアウトした。
  • 同性パートナーを緊急連絡先に指定したので、上司にだけ伝えた。
  • 「彼氏いるの?」とバイト先の先輩で聞かれたから、「彼女います」と言った。
  • 同僚が「ホモネタ」で笑っていたので、この職場では言えないと思って伝えていない。
  • 職場でカミングアウトしたら、親や学校にも伝わっちゃうんじゃないかと不安で言っていない。
  • 別にバイト先でカミングアウトする必要性を感じない。

このように、それぞれの考え方や状況によってカミングアウトをする/しないかは、あなたが決めていいことです。また、するとしてもその範囲は人それぞれです。カミングアウトして自分らしく働けている人もいれば、カミングアウトしないで自分らしく働けている人もいます。

例えば人事担当者から「自認する性別で働きたいなら、職場にカミングアウトをしてください」や「混乱を招く恐れがあるので、同僚にはカミングアウトはしないでください」といったように、あなたの希望に反してカミングアウトをすること/しないことを勝手に決められるのは「カミングアウトの強要/制限」といって、ハラスメントにあたります。

面接はスーツじゃなきゃダメですか?

特にトランスジェンダーにとって、性自認と異なるスーツを着たり、メイクをしたり、髪型を変えたりすることはとてもしんどいですよね。

アルバイト面接の服装は、スーツでなく私服で問題ないことが多いです。また、就職活動のときも、私服やビジネスカジュアルもOKという企業が増えています。

そのため、「スーツを着ないといけないから、自分は就活ができないのでは」と心配せずとも、大丈夫です。
心配な場合は、事前に人事担当者などに相談するのもおすすめです。また、ポロシャツとチノパン、ジャケットとクロップドパンツなど、ビジネスカジュアルという選択肢もあります。また、私服の場合は、清潔感を大切にして、派手な色や柄、個性的なデザインや露出の多いものは避けるほうがよいでしょう。

法律上の性別とは異なる、自認する性別「で働くことはできますか?

法律上の性別とは異なる、自認する性別で働いている、トランスジェンダーの社会人はたくさんいます。法律上の性別を変えなくても、手術やホルモン投与をしなくても、自認する性別で働くことはできます。一方で、職場では法律上の性別で働いていて、プライベートの生活では自認する性別で生活している人もいます。一人ひとりが自分らしい暮らしを、自分で選択することができます。

また、あなたが法律上の性別とは異なる、自認する性別で働きたいことを伝えたり、相談したりするタイミングは以下などが考えられますが、あなたが安心できるタイミングを選ぶことができます。

【自認する性別で働きたいと職場に伝えるタイミングの例】
  • 事前に人事等に問い合わせる
  • (事前送付等の場合)履歴書に書いておく
  • 採用面接のときに伝える
  • 内定後に伝える
  • 働きはじめてから伝える

採用面接で伝えたら態度が変わった、内定後に伝えたら内定を断られた、働きはじめてから伝えたら待遇が変わったなどがもしもあったら、ハラスメントです。この記事で紹介する「LGBTQに関する相談窓口」 に相談してみてください。

働くLGBTQの人たちの話が聞きたいです。

働くLGBTQの人たちのインタビューを見られるサイトはたくさんあります。ぜひオンライン上で、実際に働くLGBTQの人たちの事例や声に触れてみましょう。

例えば、この記事を執筆・監修した認定NPO法人ReBitが運営する「diversity works」というサイトでは、LGBTQの社会人の記事を読むことができます。

認定NPO法人ReBit 「diversity works」

https://diversityworksjp.org/?dwtag=t2

バイトの同僚に、セクシュアリティを勝手に言いふらされました。どうしたらいい?

同意なしにあなたのセクシュアリティを勝手に言いふらすことは、「アウティング」といってハラスメントにあたります。困りごとやハラスメントがあった場合は、職場のLGBTQの相談窓口に相談したり、この記事で紹介する「LGBTQに関する相談窓口」に相談することができます。また、困りごとをあらかじめ避けられるよう、役立つ情報を得られる窓口等もあるので、ぜひ活用してみてください。

こんなことに困ったら

SOGIハラスメントを知ろう

性的指向(どの性別を恋愛の対象とするか/しないか。英語ではSexual Orientation)や、性自認(どの性別を自認するか。英語ではGender Identity)を理由としたハラスメントを「SOGI(ソジ)ハラスメント」と言います。以下は代表的なSOGIハラです。

「自分が悪いのかな」「我慢した方がいいのかな」と思わないで、ぜひ相談してみてください。

【代表的なSOGIハラスメントの例】
  • 「彼氏/彼女いるの?」と聞かれるなど、あたかもこの場にLGBTQの人はいないことが前提とされる。
  • 「女の子なんだからメイクしなよ」と、男らしい/女らしいとされる服装や格好を求められる。
  • 「オネエってキモいよね」などLGBTQの悪口を言ったり、笑いのネタにしたりする。
  • 「あの人、ゲイなんじゃない?」と噂される。
  • 「あの人、ゲイなんだって」と勝手に言いふらされる。(アウティング)
  • 「性自認が男性(女性)なので、男性(女性)として扱ってほしい」と伝えているのに、法律上の性別である女性(男性)として扱われる。
  • セクシュアリティを伝えたら、職場での待遇が変わったり、仕事内容を変えさせられたり、辞めさせられりした。

他にも、SOGIハラについて知りたい場合は、以下のサイトをご覧ください。

なくそう!SOGIハラ

http://sogihara.com

LGBTQと「働く」に関する相談ができる場所を知ろう

行政等の相談窓口や、本記事を執筆している認定NPO法人ReBitの情報を記載します。困ったときだけでなく、日常から情報収集のために相談窓口を使うこともできますので、ぜひ気軽に活用ください。

厚生労働省「性的マイノリティに関する理解増進に向けて~厚生労働省の取組~」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index_00007.html

大阪府「OSAKAしごとフィールド」

https://shigotofield.jp/lgbtq/

東京弁護士会「セクシュアル・マイノリティ電話法律相談」

https://www.toben.or.jp/know/iinkai/seibyoudou/news/post_26.html

認定NPO法人ReBit「LGBTQ個別キャリア相談」
無料・オンラインで、LGBTQの個別キャリア相談を実施しています。

https://rebitlgbt.org/news/8392

認定NPO法人ReBit「ダイバーシティキャリア」
LGBTQであることは、障害や病気ではありません。でも、うつなどの精神障害があったり、ADHDやASDなどの発達障害があったりするLGBTQの人たちもいます。そのように、LGBTQかつ障害や病気があるダブルマイノリティの人たちのための、就労移行支援事業所(福祉サービス)があります。

https://diversitycareer.org/lp/

LGBTQに取り組む企業って?

LGBTQも働きやすい職場づくりに向けて、取り組んでいる企業はたくさんあります。

LGBTQに取り組む企業ってどんなことをしているの?

LGBTQも働きやすい職場づくりのために、企業が取り組んでいることは主に以下の5つに大別されます。

  • 方針を明文化する
    会社として、LGBTQに関する方針を明文化し、社内外に公開しています。
  • 支援体制を整えている
    性的指向や性自認に関するハラスメントや困りごとがあった際に、相談できる体制を構築しています。
  • 制度や対応を検討・明示している
    人事制度の検討や、LGBTQの従業員/求職者たちへの対応について検討・明示しています。例えば、家族を対象とした人事制度や福利厚生を同性パートナーも使えるようにしたり、従業員が性別移行を希望する際の対応について検討・明示したりしています。
    また、企業によっては、採用の時のLGBTQ への対応/ 配慮を明示しているところもあります。
  • 社内理解を促進する:企業でのLGBTQ研修や啓発を行っています。
  • 理解を可視化する:社内にLGBTQアライ(理解者)のコミュニティをつくったり、会社のロゴをLGBTQの応援を示す6色のレインボー(赤・橙・黄・緑・青・紫)のステッカーを配布したり、LGBTQのイベント等へ出展したりしています。

LGBTQに取り組む企業、どう探したらいいの?

LGBTQに取り組む企業の探し方は、いろいろあります。
例えば以下のような方法で探すとよいでしょう。

  • 「企業名 LGBT」や「企業名 ダイバーシティ」でネット検索
    LGBTQやダイバーシティ(多様性)に関する取り組みをしている場合、それを企業のホームページ等に掲載していることもあります。そのため、働きたい会社がLGBTQの取り組みをしているか知りたい場合は、ネット検索をすることもおすすめです。
  • PRIDE指標をみる
    企業のLGBTQへの取り組みを評価・表彰する「PRIDE指標」は2023年度は約400社が受賞しています。公式サイトから、取得をしている企業の一覧や、各社の取り組みについて見ることができます。
    ※参考:work with Pride『PRIDE指標2023 認定企業・団体一覧』(閲覧日:2025/06/25)

    「PRIDE指標」公式サイト

    https://workwithpride.jp
  • バイトルで探す
    バイトルを運営するdipは、LGBTQを含むマイノリティの方々が自分らしく働ける社会をつくるため、DEI(あらゆる人の多様性が認められ、多様性が生かされ、待遇などの公平性を担保するという考え方)を積極的に推進しています。バイトルに求人情報を掲載している企業に対しても、DEIの観点をもった人材活用を勧めています。

さまざまな個性を持つ方々が不安なく仕事探しができるよう、以下のような機能を準備しています。

dip DEIプロジェクト 企業事例やインタビュー記事はこちらから

まとめ・「LGBTQだから」ではなく「あなただから」。自分らしい働くを探そう。

この記事を書いている私自身も、トランスジェンダーです。初めてのバイトのときはとっても不安でしたし、女性物の制服がどうしても辛くてバイトを辞めたこともあります。そんななかで「トランスジェンダーだから、自分らしく働けないのでは」と心配になったこともあります。

でも、LGBTQも安全に・安心して働ける職場づくりに取り組む企業はどんどん増えています。また、あなたの就活や働くことを応援したり伴走したりするさまざまな支援機関も増えています。

「LGBTQだから」ではなく、「あなただから」こそ、あなたが自分らしい「働く」を見つけられることを願っています。ぜひ、どうしようと悩んだり、困ったことがあったらReBitの無料キャリア相談をご活用ください。

【免責事項】本記事で提供する情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の状況に対する法的な助言や専門的な判断を提供するものではありません。

記事執筆・監修
藥師実芳

藥師実芳

認定特定非営利活動法人ReBit
代表理事(社会福祉士/国家資格コンサルティング技能士2級)

神奈川出身、早稲田大学大学院教育学研究科修了。
自身もトランスジェンダーであることから、LGBTQを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会を目指し、20歳でReBitを設立。
行政/学校/企業等でLGBTQやダイバーシティに関する研修実施、LGBTQへキャリア支援提供、国内最大級のダイバーシティと就労に関するキャリアフォーラム”DIVERSITY CAREER FORUM”の開催等を行う。また、日本初となるLGBTQかつ精神・発達障害がある人たちを主対象とした障害福祉サービス”DIVERSITY CAREER CENTER”を設立。また、世田谷区、新宿をはじめ行政で検討委員を務め、山形大学、九州大学で非常勤講師を経験。
青少年版国民栄誉賞と言われる「人間力大賞」受賞、世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ世界の若手リーダー、グローバル・シェーパーズ・コミュニティ選出、オバマ財団が選ぶアジア・パシフィックのリーダー選出。共著に「LGBTってなんだろう?」「教育とLGBTIをつなぐ」「トランスジェンダーと職場環境ハンドブック」等がある。

認定NPO法人ReBitについて
2009年よりLGBTQの教育・キャリア支援・福祉に取り組む認定NPO法人です。企業・行政・学校等でのLGBTQやダイバーシティ研修やコンサルテーション、教材作成等を行っています。LGBTQを含めた多様な人が自分らしく働くことを応援するため、ReBitでは、キャリア支援に関連した下記のような取り組みも行っています。

認定NPO法人ReBit「LGBTQ個別キャリア相談」
無料・オンラインで、LGBTQの個別キャリア相談を実施しています。
https://rebitlgbt.org/news/8392

認定NPO法人ReBit「ダイバーシティキャリア」
LGBTQであることは、障害や病気ではありません。でも、うつなどの精神障害があったり、ADHDやASDなどの発達障害があったりするLGBTQの人たちもいます。そのように、LGBTQかつ障害や病気があるダブルマイノリティの人たちのための、就労移行支援事業所(福祉サービス)があります。
https://diversitycareer.org/lp/

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