バンド活動と日常生活の両立は楽じゃない! 「長髪不可」に悩まされ、さまざまなバイトを転々としたIZAMのアルバイト体験とは……?
東京都出身。ミュージシャン・俳優。自身がプロデュースする劇団・ベニバラ兎団主宰。
“カッパ巻き”を食べ続ける日々……。
俺はカッパかっ!
その次に働いたお寿司屋さんも強烈でした。寿司屋のおやじさんが独特の人だったんですよ。時給1000円で、まかないでお寿司が食べられるというのに惹かれたんですが、毎日、毎日、まかないが“カッパ巻き”だけなんです。どんだけ、僕にキュウリを食べさせるのかっていうくらい(笑)。「申し訳ないんですけど、カッパ巻き以外のお寿司を食べてみたいです」って言ったら、「オマエ! カッパ巻きの何がいけないんだ! カッパ巻きほど、寿司のシャリが分かるものはねーんだ」って大声を出されて(笑)。しばらく働いて、僕の誕生日が明日ってときに、女将さんが大将に誕生日だと話してくれたんです。そしたら大将が、「そうか、誕生日か。じゃー、美味いもの食べさせないとな!」って言ったから、当然期待しますよね? で、出てきたのが“玉子”と“かんぴょう巻き”でした。もう、がっかり(笑)。「今日だけはわがまま言わせてください」って大将に言ったら、「なにが食べたいんだ」と聞くので、「どうしてもトロを。何年も食べてないです」ってお願いしたら、「バカ野郎。トロなんて寿司じゃねぇー」と(笑)。今、思い出しても、おかしな大将でしたね。僕はあのバイトをして以来、お寿司屋さんで、“カッパ巻き”は一切食べなくなりました(笑)。
自分に合ったバイトが見つかる!
特徴から仕事を探す人の優しさにふれ、感謝し、感動した生涯最後のバイト。
その後は、渋谷のマクドナルドで深夜の清掃。長髪でもOKだし、ここでもまかないが出るのが魅力だったんですが、今度は毎日、“フィッシュバーガー”と“コーラ”と“ポテト”。なんで、僕がバイトするところは、毎日、同じまかない出てくるんだと(笑)。
「もう、飲食店はダメだ」と思って、選んだのが住んでいた家に近い酒屋さん。長髪だとダメかなと思って面接に行くと、店の人が、「おっ、バンドやってんの? いいね! 背も高いし、力もありそうだから、明日から来てよ!」って、履歴書も見ずに採用してくれて。仕事は大変でした。配達はビンビールのケースが多いんですが、3ケースくらいを、エレベーターのないアパートを駆け上がったり、駆け下りたりして、それが1日に80件くらい廻るんです。夏場は特に大変でしたね。
でも嬉しかったのが、そこのご主人と奥さんがご飯をたくさん出してくれたこと。「残ったら、家に持って帰りなよ」って帰りがけにパンを渡されたり。部屋に風呂がない話をしたら、店の裏にわざわざシャワーボックスを設置してくれて、なんていい人たちなんだって感動しました。バイト代はバンドに消えてましたね。その頃、家賃や電気・水道代はほとんど滞納状態。月に7本くらいライブをやってたんですが、急にライブが入ったときはバイトを休んで迷惑をかけましたね。一方で、知りあったお客さんがライブに来てくれるなど嬉しいこともありました。その酒屋さんが僕の生涯の最後のバイト経験なんですが、最後に一番いいバイトに出会えましたね。
自分に合ったバイトが見つかる!
特徴から仕事を探す歌舞伎町のゲームセンターに続いて……、 警察官ふたたび!
あっ、もうひとつ思い出しました(笑)。セルビデオ屋さんで働いたんですけど、ここでもまた事件があって……、泥棒が入ったんです。入店したお客さんがアダルトコーナーに行って、こっちはカウンターでカメラのモニターを見てたんですが、お客さんがズボンの中にビデオを入れたんです。モニターにはバッチリ映ってるし、録画もしてる。それでお客さんが帰ろうとしたときに、「お腹の中に入れたものをお返しいただくか、買っていただくかどちらかにしてください」って言ったら、「俺がなにしたっていうんだ!」キレだして、暴れはじめた。しょうがないので体の上から覆い被さって、ズボンの中を見たら、ビデオが1本じゃなくて6本入ってた(笑)。いつのまに6本も! って(笑)。「このビデオは、なんですか」と問いつめたら、その返事が、「家から持ってきた」(笑)。値札も付いてるのに……。歌舞伎町のゲームセンター以来、2度目でした。バイト中に警察官を呼んだのは。
自分に合ったバイトが見つかる!
特徴から仕事を探す若いウチはキツい仕事で、忍耐強さを学べ!
今は長髪でもまわりから白い目で見られることは少ないと思うんですけど、当時は社会のハミダシ者といってもいいくらいのイメージでした。僕も長髪じゃなければ、もっといいバイトができたと思うんですけどね(笑)。こうしてふりかえってみると、バイトって楽しかったなと思えるんですけど、いや、やっぱりおしぼりのバイトとお寿司屋さんの大将は強烈だったなぁ。一番楽しかったのは酒屋さん。いい人との触れ合いがあり、自分が自分らしく仕事ができたから。
今、役者を中心に仕事をしていて、そもそも芸能は波がある仕事なんですが、どんなときでもしっかりした自分でいられるのは、母親から厳しく育てられたこと、スポーツを続けていたこと、最終的にはバイト経験のおかげですね。バイトで、忍耐強さを学びました。若いうちは苦労したほうがいいと思います。苦労した分、その先になにか夢が広がるかもしれない。キツい仕事でも、あとからふりかえれば楽しかったなって思えますから。皆さん、頑張ってください!
