DEI(多様性、公平性、包括性)の意味とは?推進するメリットやポイント・取り組みをわかりやすく解説

DEI(多様性、公平性、包括性)の意味とは?推進するメリットやポイント・取り組みをわかりやすく解説

アメリカで生まれて、近年では多くの企業で推進されているDEI。日本でもDEI推進の輪は広がりつつあります。
この記事では、DEIとはどのような考え方なのか、なぜ推進されているのか、どんなメリットがあるのか、を解説します。

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今注目されている取り組み、DEIとは?

DEI(ディー・イー・アイ)とは、「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」「Inclusion(インクルージョン、包括性)」の頭文字からなる略称です。
1960年代の公民権運動などをきっかけに、アメリカでダイバーシティが推進されはじめ、90年代には「企業の成長につながる」といった、ダイバーシティのポジティブな面が注目されるようになりました。

その後、インクルージョンという概念が加わり、最近ではエクイティを加えたDEIの概念が欧米で一般的になりました。

ここではD・E・I、それぞれの単語の意味を確認していきましょう。

 

Diversity(ダイバーシティ、多様性)

ダイバーシティとは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの表面的な要素に加え、文化、価値観や考え方などの深層的な要素も含む多様性のこと。

これらの多様性を取り入れることで、企業の成長や個人の幸せを同時に目指す考え方です。

Inclusion(インクルージョン、包括性)

DEIの語順では最後に来るインクルージョンですが、歴史的にはダイバーシティに次いで現れた概念です。直訳すると「包み込む」という意味を持っています。

DEIにおけるインクルージョンは、ビジネスの場で、多様な人材が組織に存在しているだけでなく、多種多様な価値観や考え方が認められ活かされている状態を目指す概念です。

Equity(エクイティ、公平性)

ダイバーシティ、インクルージョンの概念に近年新たに加えられたのが、エクイティという考え方です。

エクイティとは、あらゆる人々の待遇、アクセス、機会、昇進における公正性・公平性を担保することを目指す考え方です。その考え方にもとづいて、職場で公平な状態をつくるため、阻害する要因を積極的に取り除いたり、公正な状態になるように支援を行ったりする動きが増えています。

エクイティとイコールの違いは?

エクイティと似たような言葉に「イコール(平等)」があります。エクイティを考えるうえで重要なのは、あくまで公平を目指しているのであって、イコール(平等)を目指しているわけではないという点です。

全員に同じ支援を行っても(つまり平等にしても)、個々の差を埋めることはできません。個性を考慮した公平性が与えられて初めて、多様性のある組織が生まれるという考えが世界で広まっています。

DEIはなぜ必要?推進するメリット

「DEIは社員の働きやすさを向上させるだけで、企業には利益がないのでは」「DEIの推進は耳ざわりが良いけれど、働く私たちにとって本当にメリットがあるの?」などと考える方もいるかもしれません。

DEIの推進は、企業と働く人の双方に多くのメリットをもたらします。
では、具体的にどのような良いことがあるのでしょうか。
 

新しいアイディアが生まれる

DEIでは年齢・性別・人種・価値観の異なる、多様な人材の積極採用を推奨しています。以前はいなかった人材が企業に集まることで、発想が広がり、新しいアイディアが生まれやすくなるのです。

ビジネスはグローバル化し、文化や価値観が異なるさまざまな人のニーズにあった商品・サービスの展開が競われています。消費そのものも成熟し、以前のような「モノ」そのものでの差別化ではなく、「モノ」に付随するストーリーや体験が重視されるようになっています。

こうした潮流で企業が生き残るには、DEIによるアイディアの活性化が欠かせません。

新しいアイディアを生む力をつけられる

新しいアイディアが生まれることは、企業だけでなく個人(働く人)にもメリットがあります。発想の柔軟さや着眼点の豊富さは、DEIが浸透した組織に身をおくことで加速度的につちかわれます。

終身雇用は過去のものとなり、個人が自分の価値をアピールする時代がきています。アイディアを生む力はどんな職場でも重宝されますから、個人にとってもDEIは大きなメリットをもたらすと言えるでしょう。

人材の獲得競争力が高まる・働きやすくなる

DEIを促進している企業は、就職先に選ばれやすいという報告があります。経済産業省が行った調査によれば、「ミレニアル世代が職場選びをする際に多様性・受容性の方針が重要か」という問いに対して女性の8割以上、男性の7割以上が重要であると回答しています※1

また、グローバル企業の経営者に行われた調査によると、多様性や受容性を重視した経営を行ったベネフィットとして「人材の獲得」を挙げた日本企業は8割以上でした※2

つまり、労働人口の減少が深刻な日本にとって、DEIは労働力確保にも有効な施策です。働き方は多様になり、転職する人が増えています。さまざまな価値観を尊重し、公平な職場環境を目指すDEIは、必要な人材を獲得するうえで大きな後押しになります。

 

※ミレニアル世代…一般的に、1981年~1990年代半ばごろに生まれ、インターネットなどの発展とともに成長した世代

※1・2 経済産業省「ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ

DEIで職場はもっと働きやすくなる

人材の獲得への優位性を高めようとDEIを推進する企業の姿勢は、働く人にとってもメリットがあります。

子育てや介護などの家庭の事情を抱えていたり、健康に不安があったり、そのほかさまざまな背景や個性を持っていたりしても、DEIの考え方が浸透していれば就職時にネガティブに受け止められるケースは少なくなります。個人がより働きやすく、生きやすい社会になっていくでしょう。

企業のブランディングへの貢献・ロイヤリティの向上

DEIの促進は、企業のブランディングにも貢献します。社員をはじめ、関わるすべての人の個性を尊重する企業である、という印象を社内外に与えることができるのです。

実際、たくさんの企業が自社のDEIの取り組みを広報する、専用のウェブページを公開しています。

採用の競争力向上だけでなく、投資・融資先、取引先、ひいては社会から魅力のある企業だと認知されるためにも、DEI推進を経営戦略に盛り込んだり、具体的な取り組みを社外に公表したりすることが一層重要になっています。

マーケティング戦略としてもDEIの重要度は増しています。Z世代がサービスを選ぶ基準の一つにDEIがあり、DEIを軸としたキャンペーンを積極的に展開する企業が海外で増えています。

 

※Z世代…一般的に、1990年代後半から2012年頃に生まれ、物心ついた頃にはすでに先端的なテクノロジーやデジタル技術に触れている世代

参考)Z世代の傾向と対策!消費行動の特徴とZ世代に刺さるマーケティング施策を解説|SPROCKET

 

NIKEの人種差別撤廃を促すメッセージ動画「For once, Don’t Do It | Nike」は大きな話題となりました。同社は過去にもDEIに関連する広告キャンペーンを実施しており、ブランディングにDEIが大きく寄与している事例といえます。

VUCA時代を乗り越えるために、よりどころとなるDEI

DEIを推進し、その取り組みや方針を広報することは、企業だけでなく働く人にとってもメリットがあります。

DEI推進の方針が職場で掲げられていれば、就労環境が良くなることへの期待や働くモチベーションが高まります。VUCA※と呼ばれる不確実な現代において、職場への安心や信頼を感じられるのは大きなメリットでしょう。

 

※VUCA…VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のこと。2010年代に変化が激しい世界情勢を表す言葉として広まった

DEIを推進するうえでのポイント

ここからは企業がDEIをどうやって推進すればよいか、そのポイントを紹介します。

企業向けの内容ですが、DEIを推進している・推進しようとしている職場を探していたり、職場のDEI推進度を知りたいと考えていたりする働く皆さまにとっても、企業を見る目を養うのに役に立つでしょう。

 

DEI推進を行うメリットの言語化とゴール設定からはじめる

DEI推進にあたって最初に行いたいのが、DEIの概念をなぜ自分の職場に取り込む必要があるか、どんなメリットがあるかを具体的に考えることです。

それらを言語化できたら、DEIが推進できている状態=ゴールを具体的に設定します。例えば外部機関が設定しているDEIの評価指標を基準に、定量的な目標を立てるのがよいでしょう。

多様性推進度が可視化される「新・ダイバーシティ経営企業100選」「D&Iアワード」や女性活躍度が測れる「なでしこ銘柄」などがあります。

「なぜDEIを推進するのか」「目指すゴールは何か」が決まったら、次のようなステップでDEIの推進を行いましょう。

ステップ①:経営層がDEIを率先して推進する

【ステップ①のアクション】

  • ・経営ビジョンにDEIの推進を盛り込む
  • ・DEIの考え方・取り組みを会社に浸透させるための働きかけを行う

まずは経営方針や経営計画などに、なぜDEIを推進するのか、どんなゴールを目指すのかを盛り込み、社内外に公表します。

経営層が自らDEIに関するメッセージを発信したり、社内でDEIに関する意見交換の場を設けたりして、経営層がDEI推進に本気で取り組んでいることが伝わるようなアクションをとりましょう。

ダイバーシティ経営を推進している経済産業省の「改訂版ダイバーシティ経営診断ツール」や、パナソニックなどをはじめとするDEIに取り組む各社の方針が参考になりそうです。

ステップ②:DEIのゴール達成のための人事管理制度の整備

【ステップ②のアクション】

  • ・勤務環境や体制の整備
  • ・能力開発支援施策の整備
  • ・評価、報酬制度の整備

多様性を尊重し、公正を担保するためのさまざまな人事制度が整備されて初めて、DEI推進が具体的に動き出します。外部機関の指標や他社の取り組みを参考に、人事制度を見直しましょう。

例えば働き方改革やジェンダーの公平性の確保、年齢や国籍、障害の有無にとらわれない人材が活躍できる環境の整備などが、DEI推進の一環として広く行われています。

以下のような取り組みをしている企業もあります。

【DEI推進のための人事管理制度整備の取り組み例】

  • ・女性雇用推進にあわせて、小学校就学直前まで取得可能な通算2年間の育児休業制度などのワーク・ライフ・マネジメント支援を整備している
  • ・介護や学校行事で利用できるファミリーサポート休暇を導入している
  • ・同性パートナーの処遇に関する就業規則の改定し、同性パートナーも異性パートナーと同様の福利厚生を受けられる制度へと改めた

ステップ③:現場管理職のDEIに紐づいた取り組みの実施

【ステップ③のアクション】

  • ・(DEIにかかわる)経営戦略と個々の業務を紐づけた業務指示
  • ・キャリアの希望にマッチした、メンバーへの業務付与
  • ・多様な人材が活躍できる職場づくり

経営層の意思や人事制度が整っても、実際に働く現場でDEIが理解されず、浸透しない状態となるのは避けなければなりません。

現場リーダーの管理職は、メンバーとの日々の関わりの中でDEIに即したアクションをとる必要があります。

以下のような取り組みをしている企業もあります。

【DEI推進のための現場管理職の取り組み例】

  • ・メンバーの家庭と仕事の両立支援・指導をテーマにした管理職向けの必須研修を受講している
  • ・障がい者雇用を促進する職場で、安心して障がい者に働いてもらうため、管理職に障がい者雇用の専門資格である第2号ジョブコーチ資格取得を推奨。3年以上の実務経験を積んだ複数名管理職が働いている
  • ・管理職が「自分や自部門の考え方とは違う意見にも耳を傾け、多様な価値観を認めながらリードしていく」といったダイバーシティマネジメントを行う

参考)新・ダイバーシティ経営企業100選|経済産業省

まとめ

DEIとは何なのか、DEIを推進するとどんなメリットがあるのか、どうやってDEIを推進すればよいのかを紹介してきました。

「女性の管理職比率を高める施策」「外国人と共生する社会」「LGBTQ+」といった断片的なイメージはあっても、DEIの取り組みがなぜ重要なのかが腹落ちせず、表面的に受け止めてきた方も多いのではないでしょうか。

DEIは、生産性を向上させ、新しいアイディアを生み出し、さまざまな人が活躍できるようになる社会をつくるための重要な概念です。

少しずつ、DEIという考え方と取り組みへの理解を深めていきましょう。

各企業における、さまざまなDEIの取り組みもどんどん紹介してまいります。ぜひ特集ページをご覧ください。


 

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