2023.06.20

【税理士監修】フリーターでも確定申告が必要?やり方・しないとどうなるのかを解説

【税理士監修】フリーターでも確定申告が必要?やり方・しないとどうなるのかを解説

アルバイトやパートなどで生計を立てるフリーターであっても、確定申告が必要な場合があります。確定申告が必要な人が確定申告を行なわなかった場合、本来納める税額以上の税金がかかったり、逆に余計に多くの税金を支払ってしまうことがあるため、注意が必要です。
ここでは、フリーターでもどのような場合だと確定申告が必要になるのか、また、確定申告をしない場合の罰則、確定申告の方法について解説します。

そもそも確定申告とは?

確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日まで)で得た所得を申告し、所得額と所得額に応じた所得税額を確定させる手続きのことです。確定した所得税は通常、翌年の3月15日までに納付します。

所得に応じた所得税の納税義務は、正社員やアルバイトなどの雇用形態に関係なく発生します。所得額にもよりますが、フリーターであっても所得の申告が必要になる場合があります。

一定額以上の給与所得があり、毎月の給与から所得税が天引きされている場合「源泉徴収されているから確定申告は必要ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、源泉徴収で引かれる所得税は源泉徴収税額表を使って求めますが、これは月収から年収を「推定」して計算されるため、本来納めるべき所得税額と誤差が生じている可能性があります。

この誤差をなくすために、年末調整または確定申告で1年間の正しい所得を申告しています。年末調整とは、従業員が納めるべき所得税を会社側で調整・申告する手続きのことで、年末調整が行なわれていれば、原則として従業員側で確定申告をする必要はありません。

ただし、一部の条件に当てはまる場合、年末調整をしているフリーターでも確定申告が必要になることを覚えておきましょう。

ちなみに、本来納めるべき所得税よりも多く天引きされている場合は、年末調整や確定申告を行なうことで納めすぎた税金の還付を受けられます。逆に少なかった場合は追加で納めることになります。

フリーターで確定申告が必要な人・必要ない人

フリーターで確定申告が必要な人・必要ない人

 

アルバイトやパートで生計を立てているフリーターのなかには、今まで確定申告をしたことがない方もいるのではないでしょうか。
勤務先で年末調整が行なわれているからといって、確定申告が不要になるとは限りません。

以下では、フリーターで確定申告が必要な人と、そうでない人について解説します。

必要な人

現在フリーターで次のいずれかに当てはまる人は、確定申告が必要です。

アルバイトやパートをかけ持ちしている人

アルバイトを2ヵ所以上かけ持ちしている場合、正しい所得を申告するために確定申告を行なう必要があります。年末調整では、ほかの勤務先の給与までまとめて申告することが基本的にできないためです。

ただし、すべての給与について源泉徴収されていて、メインの給与以外の給与が20万円以下の場合には確定申告の必要はありません。

また、アルバイトとは別に業務委託で得ている収入があり、収入から経費を差し引いた金額が20万円を超える場合には確定申告が必要となります。一般的に副業は「雑所得」として申告しますが、客観的に事業性があると判断できる場合には「事業所得」として申告します。

勤め先で年末調整されていない人

日雇いや短期のアルバイトなど、勤務期間によっては年末調整が行なわれないことがあります。勤務先で年末調整されていない人は、確定申告を行なってください。
会社によっては勤務期間に関わらず、アルバイトは年末調整を行なっていない場合もあるため、注意しましょう。

年内に退職した人

年末調整は毎年12月に行なわれますが、これより前に退職した場合、年末調整がされていませんので年内の所得を自分で確定申告する必要があります。
かけ持ちのアルバイトを退職した場合などは、退職した勤務先の所得を在職中の会社でまとめて年末調整してもらえるか確認しましょう。

必要ない人

現在フリーターで次のいずれかに当てはまる人は、確定申告をする必要はありません。

かけ持ちをしておらず年末調整されている人

一ヵ所でアルバイトをしており、年末調整がされている人なら確定申告は不要です。年末調整が近づくと会社から必要書類の提出を求められるため、期限までにそろえて提出してください。

かけ持ちの給与が年間20万円以下で年末調整されている人

かけ持ちしている場合でも、メインの給与以外の給与が年間20万円に届かないような収入に関しては、勤務先で源泉徴収されている場合に限り確定申告の必要はありません。
かけ持ちアルバイトの給与が毎月1万6千円程度かそれ以下で源泉徴収されていて、メインの勤務先で年末調整されているなら、確定申告は不要と覚えておきましょう。

1年間の収入が103万円以下の人

年間の給与収入が103万円に満たない場合、所得税の課税対象とならないため、確定申告は不要です。
ただし、年間の給与収入が103万円未満でも源泉徴収で所得税が引かれている場合があり、このケースでは確定申告することで、本来納める必要のない所得税を還付してもらえます。
アルバイトの給与が毎月8万6千円以上あり、年末調整されていない場合は、確定申告も視野に入れるとよいでしょう。

確定申告が必要なフリーターが確定申告をしないとどうなる?

確定申告が必要なフリーターが確定申告をしないとどうなる?

 

確定申告が必要な人が申告をしないことでプラスになることはありません。
納税義務があると知っていて確定申告をしなかった場合、本来納めるべき税額に加えて、追徴課税されてしまったり、法律上の罰則を受けたりする可能性があります。

本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税を徴収される

確定申告をしないでいると本来納める税金に加えて、確定申告を行なわなかったペナルティとしての「無申告加算税」、納税期限までに納税できなかったことによる「延滞税」が発生します。

無申告加算税

無申告加算税は、確定申告の期限内に確定申告を行なわなかった場合に課せられる税金です。無申告加算税の税率は、本来の納付税額や申告のタイミングに応じて以下のように異なります。

【無申告加算税の税率】

納付税額や申告のタイミング 税率
50万円までの部分 15%
50万円を超える部分 20%
税務署の調査前に自主的に期限後申告した場合 5%
確定申告期限から1ヵ月以内に自主的に申告した場合
(※納期限までに税額の全額が納付されていて、それ以前の5年間に無申告加算税等が課されたことがない場合)
0%

(参考:財務省「加算税の概要」)

ただし、期限から1ヵ月以内に自主的に申告し、納期限までに税額の全額が納付されていて、それ以前の5年間に無申告加算税等が課されたことがない場合には、期限後申告であっても無申告加算税は課されません。

例えば、本来の納付税額が20万円で、税務署調査で指摘された場合の無申告加算税額は、20万円×15%=3万円です。

延滞税

延滞税は、所得税の納期限の翌日から起算され、以下の税率が課せられます。

■延滞税の割合

期限 税率
納期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで (1)年7.3%又は(2)延滞税特例基準割合+1%の割合のいずれか低い割合
納期限の翌日から2ヵ月を経過した日から納付した日まで (1)年14.6%又は(2)延滞税特例基準割合+7.3%の割合のいずれか低い割合

延滞税の税率は2.4%~8.7%で、例えば令和4年分の納税額が20万円の人が、R5年5月1日に申告をして8月31日に支払った場合の延滞税は、

【20万円×2.4%×108日/365日】+【20万円×8.7%×61/365日】=1,420円+2,907円=4,327円=4,300円(100円未満切り捨て)

となります。

「ほ脱」として罰則を受ける可能性がある

ほ脱(逋脱)とは、脱税を意味します。
確定申告の必要があると知ったうえで故意に確定申告を行なわなかった場合、脱税犯として「5年以下の懲役または最大500万円以下の罰金、もしくは両方」が科せられます。
故意とは認められなかった場合でも「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられるため注意しましょう。

期限を過ぎてから必要性を知った場合でもきちんと申告しよう

確定申告の必要があると知りながら確定申告をしていないことが発覚すれば、ペナルティ以外に社会的な信用を失います。社会的な信用を失うと、以下のようなリスクがあることを知っておきましょう。

  • 住宅ローンやショッピングローンなどを組めなくなる
  • クレジットカードなどの審査に通りづらくなる
  • 社会保険料の減免が受けられなくなる

このようなリスクを避けるためにも、確定申告の必要があるとわかったときは、可能な限り早い段階で自主的に期限後申告を行ないましょう。期限後申告は、原則として5年間までさかのぼれます。

税務署からの指摘を受ける前に自主的に期限後申告を行なえば、無申告加算税の税率を抑えられ、ほ脱の罰則を科せられる心配もありません。

【フリーター向け】確定申告のやり方

確定申告は毎年規定の期間内に申告する必要があります。手続きの際は必要書類を漏れなくそろえ、不備のないよう準備を進めましょう。ここからは、確定申告が必要なフリーターの方へ向け、確定申告の方法を解説します。

確定申告の期間

確定申告の期間は、毎年2月15日~3月15日です。前年1年間の所得をこの期間に確定申告します。
添付書類や申告書類に不備などがあると再提出を求められる場合もあるため、期間に余裕をもって確定申告するようにしてください。

確定申告の準備

確定申告に必要な書類をそろえ、確定申告書を作成します。フリーターが確定申告する際に必要な書類には、以下のようなものがあります。

確定申告書

確定申告書は手書きの作成も可能ですが、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」からならオンライン上で書類作成ができ、プリントアウトやオンライン提出も可能です。利用の際は、事前に利用登録を済ませておきましょう。

(参考:国税庁「確定申告書等作成コーナー」)

源泉徴収票

年間の給与総額や、源泉徴収された所得税が記載された書類です。毎月の給与から源泉徴収されている場合、勤務先で発行してもらえます。
即日発行が難しい書類のため、確定申告の予定があれば早めに発行を依頼してください。

所得控除のための書類

病院で医療費を支払ったり、保険などに加入していたりする場合、証明書を提出することで所得から控除され、所得税が安くなります。該当する方は、前もって以下のような書類をそろえておきます。

  • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
  • 国民健康保険料の支払い総額が記載された書類
  • 地震保険料の控除証明書
  • 病院にかかった際の領収書や明細書
  • 生命保険料控除証明書

本人確認ができる書類

確定申告の際は、マイナンバーカードをはじめとした本人確認書類が必要です。マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバーが確認できる書類と身元確認ができる書類を1種類ずつ用意します。

マイナンバーが確認できる書類 マイナンバー通知カード、マイナンバーを記載した住民票の写し など
身元確認書類 運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポート、在留カード など

確定申告の方法

必要書類をそろえ、確定申告の準備が整ったら、確定申告期間内にすべての書類を任意の方法で提出します。

確定申告の提出方法には「インターネット(e-Tax)」「税務署に持参し提出」「郵送」の3つがあります。ご自身の都合にあった方法を選んでください。

確定申告の流れ

「税務署に持参・郵送して提出」「インターネット(e-Tax)」の2つの方法で確定申告する際の流れを解説します。

税務署に持参・郵送する場合

【持参する場合】

  1. 住んでいる地域を管轄する税務署へ、確定申告書類一式を持参する
  2. 窓口で確定申告書類一式を提出する

税務署窓口の開庁時間は、通常、平日8:30から17:00です。確定申告期間は税務署窓口の混雑が予想されるため、時間に余裕をもって出かけてください。
提出が時間外になってしまう場合は、時間外収集箱に投函して提出することも可能です。

【郵送する場合】

  1. 確定申告書類一式を封筒にまとめる
  2. 住んでいる地域を管轄する税務署へ、1.でまとめたものを郵送する

郵送の際は第一種郵便(定役郵便、定形外郵便、レターパックなど)で送ると、消印日を提出日として扱ってもらえます。提出期限を過ぎないよう余裕をもって発送してください。
収受印のある確定申告書の控えが欲しい場合は、必要金額分の切手を貼った返信用封筒、そして複写により作成またはボールペンで記載した申告書の控えも同封します。
因みに、申告書は「信書」に該当することから「郵便物」または「信書便物」として送付する必要があり、宅急便などでは送れません。

インターネット(e-Tax)で行なう場合

e-Tax(イータックス)とは、24時間、オンライン上で税申告ができる国税電子申告・納税システムのことです。国税庁ホームページで作成した確定申告書類をインターネットで提出する方法は、以下のとおりです。

  1. 国税庁ホームページの指示に沿って、利用者識別番号と電子証明書を取得する
  2. 「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成する
  3. 申告データを送信する
  4. 送信データの審査結果に誤りがないか確認する

(参考:e-Tax「ご利用の流れ」)

e-Taxで確定申告をする場合、必ず事前に利用登録を済ませ、提出期限より早めの提出を心がけましょう。データ提出の際は通信環境が安定していることを確認し、送信処理に不具合が起きないように注意します。

まとめ:納税は国民の義務です。しっかり調べて正しい確定申告をおこないましょう!

アルバイトやパートをしているフリーターでも、確定申告が必要な場合があります。特に、かけ持ちをしている方や勤務先で年末調整がされていない方は、確定申告の必要がないかよく確認してください。
確定申告は申告期限を過ぎていてもさかのぼって申告が可能です。無申告でいることのリスクを減らすためにも、確定申告の必要があるフリーターの方は、忘れずに確定申告を行なってください。

「現在の勤務先より、もっと自分にあったアルバイトを探したい」という方は、ぜひバイトルの仕事情報をチェックしてください!

 
記事監修
増田 浩美

増田 浩美

増田浩美税理士事務所所長

女性ならではのきめ細やかな視点を強みに、企業から個人まで幅広い税務のサポートを行う。
ホームページ:http://www.zeimukaikei.jp/

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