2023.11.10

【税理士監修】扶養控除の金額とは?配偶者控除や扶養控除のメリットについて解説【税金Q&A】

扶養控除の金額とは?
配偶者控除や扶養控除のメリットについて解説
扶養控除の金額とは?配偶者控除や扶養控除のメリットについて解説

バイチュー 学生や配偶者がパート・アルバイトで働く際などに、「年収◯◯万円を超えると扶養から外れる」と聞いたことはないでしょうか。この「扶養から外れる」とは、税金や社会保険に関わる扶養控除が受けられなくなるという意味です。
納税者にとって、配偶者や家族(扶養親族)の年収が扶養控除のボーダーラインを超えると、税金や社会保険料の負担が増え、世帯全体の手取りが減ってしまうという状況になりかねません。
ここでは、扶養控除が受けられる金額のボーダーラインや扶養控除のメリットのほか、扶養控除と配偶者控除の違いなどについて解説します。

2023年(令和5年)9月27日「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表されました。
パート・アルバイトで働く方が「年収の壁」を意識せずに働けるようにするために、当面の対応として、以下に対する対策が行われるとのことです。
  • 年収106万円または年収130万円を超えて働くことで、親または配偶者の扶養から外れて社会保険に加入することとなり、結果的に手取り額が減少すること

参考:厚生労働省「いわゆる「年収の壁」への対応

扶養控除とは?

扶養控除とは、家族を養っている方の納税負担を軽くするための制度です。子供や親、親族を養っている方は、そうでない方に比べて生活費が多くかかります。そのため、養っている扶養親族の数に応じて、税金の負担を軽くする仕組みが扶養控除です。
扶養控除には、住民税と所得税に関わる「税法上の扶養」と、健康保険や年金といった「社会保険上の扶養」の2種類があります。

税法上の扶養控除の基準金額は年収103万円以下

税法上の扶養とは、扶養される子供や親、親族の年収が103万円(合計所得48万円+給与所得控除55万円)以下の場合が対象になります。扶養に入ることで、所得税や住民税の負担が軽減されます。なお、2020年施行の税制改正により、合計所得の金額が38万円から48万円へ、給与所得控除が65万円から55万円へ、それぞれ変更されました。ただし、合計額は変わらないため、年収103万円以下という要件に変わりはありません。
なお、パートやアルバイトで納税者の扶養に入っている配偶者は、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」という、扶養控除とは別の制度が適用されます。

税法上の扶養について、さらにくわしく知りたい方はこちらの記事もおすすめします。
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社会保険上の扶養控除の基準金額は年収130万円未満

社会保険上の扶養とは、会社員(または公務員)である扶養者の健康保険や厚生年金保険といった、社会保険の扶養に入る場合を指します。なお、厚生年金に加入できるのは配偶者のみ。年収が130万円未満で、被保険者の年収を上回らないことが条件となります。
ただし、配偶者がパートやアルバイトとして働いており、月8万8000円以上(年収約106万円以上)で、社会保険の適用条件を満たす企業に勤務している場合、勤務先企業の健康保険と厚生年金への加入義務が発生します。

【2022年10月 条件変更】社会保険の適用条件

  • ・従業員の人数が101人以上である
  • ・月収が8万8000円以上である
  • 2か月以上の雇用見込みがある
  • ・週20時間以上働いている
  • ・特定の学校に通っていない(学生ではない)
 

参考:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト

※2022年10月、社会保険の適用拡大により、太字箇所を変更いたしました。

 

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扶養控除を受けるための要件とは?

扶養控除とは、納税義務者に所得税上の控除対象となる扶養家族がいる場合、扶養家族の人数に応じて一定の金額の所得控除が受けられる制度です。
扶養控除を受けられる控除対象扶養親族は、その年の12月31日の時点で、下記の要件のすべてにあてはまる人のことをいいます。

・納税者の配偶者以外の親族で、納税者と生計を一緒にしている人
親族(※)と生計を一緒にしていれば、扶養の対象です。納税者との同居が原則ですが、単身赴任中の父親や、自宅を離れて大学に通う子供へ仕送りをしている場合なども扶養親族に含まれますので、その子供は扶養の対象となります。
※親族とは、6親等内の血族および3親等内の姻族、里子、市区町村長から養護を委託された老人のこと。

・年間の合計所得金額が48万円以下、給与のみの場合は給与収入が103万円以下の人
年間の合計所得金額が48万円以下、給与のみなら給与収入が103万円以下の場合は、扶養の対象です。2020年から所得金額が38万円から48万円に引き上げられましたが、給与収入が103万円以下という金額には変更ありません。

・青色申告者の事業専従者や白色申告者の事業専従者でない人
事業所得のある個人事業主などで、青色申告を行っている納税者である事業主から、「青色事業専従者給与」として給与を受け取っていた場合や白色申告の事業専従者として専従者控除を受けている場合、配偶者控除や扶養控除を受けることはできません。

・ほかの人の扶養親族、または控除対象配偶者になっていない人
ほかの人の扶養親族や配偶者である人が、二重に扶養控除の対象になることはできません。

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扶養控除額の金額は扶養親族の年齢によって異なる

扶養控除が適用されるのは、その年の12月31日時点の年齢が16歳以上の扶養親族です。それ未満の子供は児童手当の対象となり、扶養控除は受けられません。

扶養控除額は、扶養親族の年齢によって異なり、38万~63万円です。なお、16歳以上であれば年齢に制限はありません。具体的には、扶養される親族が16歳以上18歳以下、23歳以上69歳以下の場合は38万円、特定扶養親族である19歳以上23歳未満の場合は63万円です。

70歳以上の親族は同居か別居(※)かで控除額が変わり、納税者または配偶者の直系尊属(父母・祖父母など)で同居していれば控除額は58万円、同居以外は48万円となります。

※病気の治療のために長期入院をしている場合は「同居」に該当しますが、老人ホームなどに入所している場合は「同居以外」として扱われます。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(※1) 38万円
特定扶養親族(※2) 63万円
老人扶養親族(※3) 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等(※4) 58万円
※1 「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
※2 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
※3 老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
※4 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人をいいます。


参考:国税庁 No.1180 扶養控除

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扶養控除を受けるメリットとは?

扶養控除のメリットは、第一に税金の負担が軽くなることです。例えば、親の扶養に入って子供がアルバイトをしている場合、年収が103万円以下であれば、子供側は所得税が発生しません。また、扶養する親側も、扶養控除の分、住民税や所得税が安く済むというメリットがあります。
さらに、健康保険の被扶養者にもなるため、保険料を払わなくても扶養者の健康保険に加入することができます。

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扶養控除を受けるためのボーダーライン

扶養控除を受けるには、扶養される側の働き方が大きく関係します。扶養親族の年収が103万円を少しでもオーバーすると、扶養控除は受けられません。

扶養親族がアルバイトをする場合:103万~130万円

生活費などのためにアルバイトをする学生の場合、勤労学生控除が受けられます。勤労学生控除が適用されれば、年収が103万円を超えても130万円までは所得税がかかりません。ただし、103万円を超えた時点で扶養控除は受けられなくなるため、その学生を養っている扶養者は税金が上がり、手取り額が減ることになります。

子供が103万~130万円のあいだでアルバイトをして勤労学生控除を受けるか、103万円以下に抑えて扶養控除を受けるか、どちらがいいかを家族で考えておく必要があるでしょう。

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両親が共働きの場合:収入が高いほうで受ける

扶養控除は重複して適用することはできません。そのため、共働きの夫婦が子供の扶養控除を受ける場合、扶養控除は父親と母親のどちらか一方にしか適用されません。
この場合は、収入が高いほうが扶養控除を受けると、税金の負担軽減効果は高くなります。所得税は、所得が高いほど税率も高くなるからです。

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扶養控除を受けるために必要な手続きとは?

扶養控除を受けるためには、会社員は勤務先で年末調整を行います。しかし、年末調整を受けられない方は、確定申告で手続きを行います。

会社員の場合は年末調整

会社員として働いている方は、毎年12月頃に行う年末調整で、会社の指示に従い「扶養控除等(異動)申告書」を記入して提出します。
ただし、会社員でも給与総額が2000万円以上、2カ所以上から給与を受けているといった方は、確定申告の手続きをしなければなりません。

年末調整しない場合等は確定申告

個人事業主などは、確定申告の際に扶養控除の申請を行います。確定申告書は、第一表と第二表からなっており、確定申告書第二表の「配偶者や親族に関する事項」の欄に必要事項を記入し、第一表の「所得から差し引かれる金額」の扶養控除欄に、扶養控除額の合計額を記載しましょう。

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配偶者控除(特別配偶者控除)の変更点とは?

扶養控除の対象となる扶養親族には、配偶者は含まれません。たとえば、パートやアルバイトで働く妻が夫の扶養に入る場合は、配偶者控除または配偶者特別控除が適用されます。
なお、2018年に行われた税制改正により、配偶者控除および配偶者特別控除は、下記のように変更されました。

・38万円の控除を受けられる年収が103万円以下から150万円以下に拡充
正社員の夫の合計所得金額に制限はなく、パートで働いている妻の収入が年収103万円以下(給与所得48万円+給与所得控除が55万円)であれば、夫は配偶者控除(38万円)を受けることができました。
しかし、2018年の改正により、正社員の夫の合計所得金額が900万円以下であれば、妻の1年の給与収入が103万円を超えても150万円以下の場合、夫は配偶者控除と同じ満額(38万円)の配偶者特別控除を受けることができるようになったのです。

・配偶者特別控除を受けるための年収上限が141万円未満から201万6000円未満へ変更
パートやアルバイトの収入が上がって配偶者控除を受けられなくなったとしても、急に税金が上がらないように配偶者特別控除が設けられています。この配偶者特別控除も、これまで141万円未満だった上限が、201万6000円未満まで拡大され、控除額は38万円から段階的に減少していくことになりました。

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扶養控除の仕組みを知って、世帯の手取り金額がマイナスになるのを防ごう

税金や社会保険に関わる扶養控除は、手取り金額に大きく影響します。控除の条件や金額を知らずに年収がオーバーしてしまうと、扶養者である親や配偶者の税金負担が増えてしまうおそれがあるのです。
パートやアルバイトをするときには、いくらまで働くのがいいのか、年収上限をしっかりと把握しておきましょう。

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記事監修
増田 浩美

増田 浩美

増田浩美税理士事務所所長

女性ならではのきめ細やかな視点を強みに、企業から個人まで幅広い税務のサポートを行う。
ホームページ:http://www.zeimukaikei.jp/

※2020年10月に記載した記事です。
※2022年10月、社会保険の適用拡大により、本記事を加筆・変更いたしました。
※2022年11月、税理士が監修のうえ、本記事を修正・変更いたしました。
※2023年11月、税理士が監修のうえ、本記事に追記をおこないました。

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