マルシェ株式会社の “ココだけ”トップインタビュー

現場からの提案で生まれたブランドをみんなで次の柱に育てていく

加藤 洋嗣氏

社長略歴

加藤 洋嗣氏
大阪市に生まれる。1996年、新卒でマルシェに入社。以来、八剣伝の事業に一貫して関わり、スーパーバイザー、直営店店長、マネジャーを経て、2011年4月に関西八剣伝統括次長、2014年4月に執行役員、2015年6月に代表取締役社長に就任する。

■マルシェ株式会社 ■本社/大阪市阿倍野区阪南町2-20-14 ■設立/1972(昭和47)年9月8日 ■従業員数/1340名 ■事業内容/「酔虎伝」「八剣伝」「居心伝」「焼そばセンター」「炭火焼鳥ハッケン酒場」「餃子食堂マルケン」「八剣食堂」「BarVida」「樂待庵」、その他飲食店を直営店もしくは加盟店としてチェーン展開。

学生時代のアルバイトで、初めて調理場を任されて、生焼けのサンマを出してしまったお客様に励まされた言葉がきっかけとなって飲食業を志した加藤氏。マルシェに入社後は、一貫して八剣伝事業に携わってきた。お客様に喜んでいただくためには「思い」に加えて「技術」も必要だと語る加藤氏は、エルダー制度を取り入れるなど人材の育成に力を注ぎ、酔虎伝・八剣伝・居心伝に続く、新たなブランド開発に取り組んでいる。

インタビュアー

インタビュアー

ディップ株式会社 ビジネスソリューション事業部 事業部長 佐賀野淳
同社 採用コンサルタント 小林 真理子

思いに技術が伴って初めてお客様に喜んでもらえる

―私も関西出身なので、マルシェさんというと、酔虎伝や八剣伝といったイメージが強くあります。しかし、実は数多くの多様なブランドを持っておられます。その背景にはどのようなお考えがあるのでしょうか。

加藤:ブランドの数はもともと多いのです。それは1業態よりも、2業態、2業態よりも3業態あった方が、経営的にリスクを回避しやすくなるからです。また、店舗には大型店、中型店、小型店があり、大型・中型店は会社組織で行うブランドを、小型店は起業を目指す個人の方に向けたブランドを用意しています。

―若い人たちに働く場所としての御社の魅力を伝えるために取り組まれていることは。

加藤:今、若い人たちには飲食業の面白さが伝わりづらくなっていると感じています。飲食業の魅力は、当社の経営理念にある通り、お客様にとっての「心の診療所」となり、飲食の機会と場所を提供することで、お客様や地域社会の明日の活力となることにあります。そして、お客様に喜んでいただくためには「活気」や「真心」などの「思い」もとても大切ですが、それだけではお客様の役に立つことはできません。やはりおいしい「味」を提供する「技術」も必要で、その技術を身につけられるような現場の環境づくりに力を入れています。

―「焼そばセンター」や「餃子食堂マルケン」、「炭火焼鳥ハッケン酒場」など専門店を積極的に出店しているのは、そのためですか。

加藤:その通りです。当社が手掛けてきた総合居酒屋では、揚げ物、焼き物から刺身まで幅広い技術が必要で、自分の技術で品物を作ってお客様に喜んでいただけるようになるには時間がかかります。しかし「焼そばセンター」や「餃子食堂マルケン」、「炭火焼鳥ハッケン酒場」などの専門店ならば、一つの品物を作る技術を短い時間でしっかりと身につけることができます。だから、自分の技術で作った食事でお客様に喜んでいただくという醍醐味を味わうことができるのです。

―飲食業で働く喜びを実感できる、そんなブランドをこれからの核にしていくということですね。

加藤:そうです。私は学生時代、ある炉端焼き屋でアルバイトしており、まだ新人の時に、たまたま調理場を任されて、初めてサンマを焼いてお出ししました。しかし、そのサンマは生焼けだったのです。お客様からは「お兄ちゃん、次はきちんと焼いてや」と言われました。後日、そのお客様がまた来店されて、サンマを注文されたのです。私が焼いてお出しすると「ちゃんと焼けている、旨かったで」と言ってくれたのです。その言葉を聞いて心の底から「あー嬉しい」と感じて、飲食の醍醐味や楽しさを知ったのです。この出来事があって、私は飲食業を志すことになりました。そんな喜びを若い人にも感じてほしい。思いに技術が伴って初めてお客様に喜んでもらえる。だから私たちは今、そんな飲食業の面白さを若い人たちが体験できるブランドづくりに取り組んでいるのです。 加藤 洋嗣氏

現場がやった方がいいと思うことは、とにかく、すぐにやる

―2015年に社長となられて会社に変化はありましたか。

加藤:私はこれまで現場を中心に仕事をしてきました。だから、スピードを重視したいと思っています。現場がやった方がいいと思うことは、とにかく、すぐにやる。現場が良いと思ったことは提案ができて、すぐに行動できるように心がけてきました。

―権限移譲も進めておられる。

加藤:当社はシンプルな組織で、30代後半から40代前半の部門長が直接現場を束ねています。良い意味での分権が行われており、その部門長がこうした方が良いのではないかという提案に対しては、実行可否の意志決定もスピーディーに行っています。今こうしたことが少しずつ経営に生かされ始めていると感じています。

―加藤社長も社員が提案しやすい、話しやすい雰囲気を作っておられるように感じます。

加藤:「心の診療所」が会社の経営理念ならば、私の活動方針というか、コンセプトは「明るく、厳しく」です。厳しく現場を見て、決定して、明るく活動していく。それが明るい結果になれば、なおさら良いことだと思います。厳しさと明るさをきちんと示しながら、仕事をやっていこうとみんなに話しています。 加藤 洋嗣氏

日本一のユニークな外食FC事業本部になるのが大方針

―御社には多くのFC店がありますが、今後は何を目標に事業を展開されますか。

加藤:日本一のユニークな外食FC事業本部になるのが大方針です。当社の直営店とFC店の比率は1:4でFC店の方が多くなっています。そして、これまで50年近くにわたってFC事業本部として培ったノウハウが私たちの一番の強みだと思っています。 現在、酔虎伝、八剣伝、居心伝の3つの柱に加えて、あと3つの新ブランドを確立しようとしている状態です。今後、新たな柱を確立し、FC加盟店をさらに増やして、日本一のユニークな外食事業本部になることを目指して努力を続けていきます。

―新ブランドの「焼そばセンター」は好調だとお聞きしていますが。

加藤:まだまだ、よちよち歩きの段階です。スタートさせたばかりなので、今すぐに絶対的なブランドになるとも思っていません。今後、こうした直営店が立派に育っていって、利益率も人件費もしっかりと予測できるようにして、将来的に加盟店のみなさんに自信をもって「これで事業ができますよ」と話せるまでのブランドに育てていきたいと思っています。

―こうした新しいブランドづくりに取り組むことで何か社内に変化はありましたか。

加藤:やはり会社全体が活性化しています。焼そばセンターも餃子専門店も実は、社員から上がってきた提案です。「社長、こんな店舗はどうですか」という提案に対して「それならみんなで考えてみよう」とプロジェクトチームをスタートさせました。いずれも既存の店舗で培ったノウハウを活用して、得意なものを表に出して、他のメニューを収縮させて、新たなブランドを作っています。こうして生まれたブランドをますます強固なものに育てて、加盟店の期待に応え、これまでの恩返しをするのが私たちの役割だと思っています。

―「日本一のユニークな外食FC事業本部」におけるユニークさとはどのようなものですか。

加藤:当社は外食の中でも、居酒屋を中心に事業を展開してきました。しかし、これからますます外食の顧客層は変化していきます。現在、50代60代の方たちが私たちの居酒屋業態を支えてくれていましたが、その方たちも引退しつつあります。今は軽食的で、お酒も飲むけれど、さっと飲んで、さっと帰る、そんな飲食スタイルになっています。私たちもそうしたスタイルに視点を当てて、新しいブランドづくりに取り組んでいるのです。 もちろん、30代40代の方にはまだまだ居酒屋業態に対するニーズはあり、その層は既存ブランドが対応していけると思います。 それにプラスして、女性の方やシニアの方が働き、飲食していただける場所となる業態、新たな食のビジネスを作っていきたい。他社とは違う、私たちなりの業態プランを立てて、それがお客様に「おもしろい」「こんなんがあるんや」と思ってもらえるようなマルシェならではのユニークな業態を開発したいと思います。 加藤 洋嗣氏

思いと技術をきちんとお伝えできる受け入れ体制

―求人環境が厳しい中で、女性やシニアの方など、採用ターゲットを広げていくお考えはありますか。

加藤:女性の方やシニアの方に働いてもらいたいと思っていますが、当社の居酒屋業態では、働いてもらうことはなかなか難しいというのが正直なところです。 ただ、若い人たちの中でも夢や目標を持って仕事に取り組んでいる、私たちにとっては宝物のような人材はまだまだおられます。まずは、そんな人材が入社してからも、モチベーションを持続しながら、働いてもらえる体制づくりに力を入れて取り組んでいます。

―採用よりも育成に力を注ぐということですか。

加藤:もちろん、両方大事ですが、先ほど申し上げた通り、思いと技術をきちんとお伝えできる受け入れ体制をまずは整えたい。 出店や売上強化だけが重要視されて、育成がないがしろになって「何も教えてもらえなかった」「期待していたのと違った」という気持ちにさせてはいけないと考えています。 私たちも事業拡大を目指す会社なので、もう一度その体制を見直そうと、エルダー制度を取り入れ、新人はまずは既存店で店長一人について、基本的な仕事、技術をきちんと教えてもらい、一定の期間を経てから配属店で働くという制度を作りました。 加藤 洋嗣氏

この会社で働いて何を吸収できるのか

―社長が現場にいた時はどんな思いを持って働いていましたか。

加藤:私たちの時代は、先ほどのサンマの生焼けのエピソードのように、お客様がダメ出しや励ましてくれることで、若いスタッフを育ててくれました。また、自分が何をしたいのかという目標がはっきりとありました。私はいつか独立したいという思いがあったので、お客様に喜んでいただけた、楽しんでいただけたということが次に向かうエネルギーになりました。働くエネルギーの根幹には、独立やキャリアアップといった夢があったのだと思います。

―御社では、そうした独立したい方を支援する制度などはあるのでしょうか。

加藤:独立を支援する制度はあります。過去に直営店をどんどん増やそうという時期があり、その時に独立希望の方を数多く受け入れました。すでに、その方たちも6年前には独立し、現在は独立希望の方の積極的な募集は行っていません。 今でもある一定数の方は独立を目指していますが、そうではない人も数多くいます。会社としては、独立したい方、そうではない方の両方を追い求めることはなかなかできません。

―今、飲食業に求められているものは何だとお考えですか。

加藤:最近の重要なキーワードは「心」だと考えています。昔の「モノ」の時代から「コト」の時代へと変わってきています。そして、モノではなく「心」はまだまだ飲食業にとっては大切なキーワードです。省力化や機械化が進んで、業界の働き手が縮小されても、飲食業においては「心」はまだまだ必要とされるはずです。 「心の診療所」を創造することを掲げる私たちにとって、「心」の部分はこれからも極めて大事になっていくと思います。 だからこそ、当社のルーツである「今日来てくれたお客様が明るくなって、帰っていただける」という価値をどんどん育てていきたいと思います。

―御社のどのような点を求職者に対してPRしていきたいですか。

加藤:売上を拡大する、店舗を増やす、それは経営にとって大切なことですが、働く上で大切なのは、この会社で働いて何を吸収できるのかということです。 当社で吸収していただけるのは、人に喜んでいただきたいという「思い」とそれを可能にする「技術」。そして、その両輪を回せる人が増えれば、よりプロフェッショナルな集団となりますし、実際にお客様のお役に立つことができれば、スタッフ・会社の両方にとって、さらにより良くなっていくと思っています。

―「思い」と「技術」が他社との差別化になるということですね。

加藤:ゆとり世代などと言われていますが、若い人たちの中には、すごく熱心に仕事をしている方がいます。例えば、農業や漁業に熱心に取り組む若い人たちがいます。当社のお店の中でも、居酒屋のことが好きで、熱心に仕事をする若い人がたくさんいます。 そんな人たちがお店の中や会社で輝いて仕事ができるようになり、その影響が広がっていけば、人手不足の中でも、自ずと人は集まってくるようになると思います。まずは、マルシェで働きたいという方々を何人増やすことができるか、ここが一番大事だと思います。 そのために、「思い」と「技術」をきちんと育成でき、自分を高めることができて、自分の力を発揮することができる。そんな人材育成にこれからも努めていきたいと思っています。 加藤 洋嗣氏

まずは自分のことを知っていただくことから始める

―御社で働く若い人材は御社のどんなところに魅力を感じていると思いますか。

加藤:当社には若い人たちが入ってきてくれています。それは、チャレンジできる環境があるからだと考えています。部門長、新業態開発チーム、店長が「こうしたい」「ああしたい」という提案を、できる限り経営陣が応援して、それが実現できる制度が機能している会社だと思います。

―社長がアルバイトやパートさんに接する時に心がけていることはありますか。

加藤:お店に行くと、初めて会うアルバイトさんの名前と趣味を必ず聞くようにしています。それは、私自身がアルバイト一人ひとりの名前さえも知らなければ、アルバイトさんに「お客様のことをよく知ってほしい」とお願いしても、自分ができていないことをアルバイトさんにお願いすることになり、つじつまが合いません。だからまず、アルバイトさんには、私は加藤という人間で、みんなと一緒に働く仲間だと知ってもらい、アルバイトさんのことを自分が知るようにする。その上で、アルバイトさんにお客様のことをよく知ってもらうようにお願いする。そんなスタンスでお店を訪問しています。

―お店にはよく行かれますか。

加藤:直営店が約130店舗、FC店が約350店舗。それを1日5軒は訪問して、アルバイトさんのことを知るようにしています。そして、アルバイトさんのことを知った上で、「お客様のことを大事にしてほしい」「星の数ほどあるお店の中からこのお店に来ていただいたのだから手抜きはしないでほしい」と話しています。

―アルバイトの方にはどんなお話をしていますか。

加藤:まずは自分のことを知ってもらって、理解してもらおうとする気持ちが大切だと考えています。飲食の現場では、特にそれがとても大切です。初めて会う店員が無愛想に注文を取れば、お客様は不快になります。逆に「いらっしゃいませ。いつもありがとうございます」とお声がけすれば、初めて話す店員が自分のことを知ってくれていると分かって、お客様の気持ちは明るくなるはずです。 私はまず自分のことを知っていただくことから始めています。アルバイトさんにも自分のことをお客様や周りのスタッフに知ってもらった上で、接客して欲しいと話しています。

―社長が大切にしている「思い」とは何ですか。

加藤:店長に品物を運んでと言われたから、単にそれを運ぶ。でも、それでは「心」は伝わらない。 経営理念である「心の診療所」を実現するために、私たちは行動指針を掲げています。 イキイキ・ハキハキと「活気」のある対応をする。温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちにお出しして「味」を大切にする。たくさんの飲食店の中から選んでいただいたことに感謝して「真心」を持って接客する。 それを実践してもらうために、事業部長と共に店を訪問して、働くスタッフを、励ましたり、喜びあったり、時には叱咤激励もしているのです。 加藤 洋嗣氏とインタビュアー

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