「サステナブル」と「サステナビリティ」は、使用される文脈に違いがありますが、本質的な意味はほぼ同じです。

サステナブルは、特定の対象や行動が持続可能であることを示す形容詞です。おもに、「サステナブルな製品」や「サステナブルな農業」のように使用されます。

一方、サステナビリティは「持続可能性」という意味を持つ名詞です。持続可能な状態や概念そのものを指し、より広い意味を持っています。「企業のサステナビリティ戦略」「サステナビリティの実現」というように使用されます。

エコとは「エコロジー」の略で、おもに環境保護に焦点を当てた概念をいいます。製品の製造やサービスを提供するうえで、環境へ負荷をかけないようにする社会全体の取り組みを指します。エコカーやエコバッグなどが代表例です。

一方、サステナブルは環境保護だけでなく、社会的・経済的側面も考慮した、より広い概念のことです。持続可能な社会の実現には、環境保護に加えて、経済の安定的な成長や社会の公平性も同時に追求する必要があります。

サステナブルが注目される最も重要な要因の一つが、環境問題です。なかでも、地球温暖化の進行や気候変動が深刻です。異常気象により、生態系や人間社会に甚大な影響を与える自然災害が増加しています。

森林減少も深刻な問題です。開発や木材利用のための伐採により、世界中の森林面積が減少しています。二酸化炭素を吸収し酸素に変える重要な役割を果たす森林が減少すると、地球温暖化が加速します。

また、化石燃料などの天然資源の消費が進み、近い将来に資源の枯渇も危惧されている状況です。ほかにも、プラスチックごみによる海洋汚染を含めた環境汚染も大きな問題となっています。

未来を脅かすこれらの環境問題を解消し、持続可能な社会を実現させるには、サステナブルな取り組みが必要不可欠です。

社会格差は、所得、教育、雇用機会などにおける不平等のことで、このような社会的側面でも、サステナブルな取り組みが必要です。

現在起きている社会格差の拡大は、今や先進国と発展途上国のような世界全体だけでなく、各国内での格差拡大にも波及しています。

例えば日本では、非正規雇用の増加や少子高齢化の進行により、所得格差拡大が問題となっています。特に、正規雇用者と非正規雇用者との賃金や待遇の差が顕著です。また、デジタル化の進展により、情報格差や産業間の格差も拡大傾向です。

さらに、ジェンダー、人種、社会的所属に基づく差別や偏見も依然として存在し、社会の公平性と多様性の尊重を阻害しています。

個人の機会や権利が制限されず、社会全体の潜在能力を最大限に発揮できる未来を実現するためには、社会格差の解消が必要です。

経済面でも、現行のシステムに対する懸念が高まっています。

従来の経済成長モデルは、短期的利益追求型の大量生産・大量消費を前提としています。これにより、環境破壊や低賃金労働、長時間労働といったさまざまな弊害が引き起こされているのが現状です。

そのため、従来の経済システムでは長期的な持続は不可能といえるでしょう。そのため、従来の経済システムから脱却し、サステナブルな概念を取り入れた新しいシステムに変えていかなければなりません。

サステナブルな経済システムの構築には、企業が長期的視点と社会的責任の重要性を認識することが重要です。

SDGs（Sustainable Development Goals）とは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」のことです。

2030年までに達成を目指す17の国際目標で構成されており、貧困や飢餓の撲滅、質の高い教育の提供、気候変動対策など、幅広い社会課題の解決を目指しています。

SDGsの特徴は、「誰一人取り残さない」という考え方です。世界中のすべての人々が幸せに暮らせる社会を目指し、先進国も途上国も一緒に取り組んでいく目標です。

また、国や政府だけでなく企業や学校、個人レベルでも参加することができます。たとえ日々の小さな行動であっても、私たち一人ひとりがSDGsの達成に向けて取り組むことが大切です。

前述したとおり、「持続可能な社会を実現する」ことがサステナブルとSDGsの共通点です。

SDGsの目標には、気候変動への対策や貧困の撲滅、教育の充実など、サステナブルな社会の実現に直結するものが多く含まれています。つまり、SDGsはサステナブルの理念を具体化し、実践するための指針といえるでしょう。

私たち一人ひとりがSDGsの目標に沿って行動することで、サステナブルな社会の実現につながります。例えば、省エネや食品ロス削減といった日常的な取り組みも、SDGsの目標達成に貢献することになり、ひいてはサステナブルな未来を築くための一歩となるのです。

SDGsのすべての目標がサステナブルに関連しています。ここでは、特に深く関係している4つの目標を紹介します。

これらの目標は、環境を守りながら社会や経済の発展を目指すサステナブルの考え方と深く結びついています。

SDGsって何？知っておきたい17の目標と現状、私たちにできることを解説

日常生活で簡単にできるサステナブルな取り組みには、以下のようなものがあります。

エコバッグやマイボトルの使用

買い物の際にエコバッグを持参したり、外出時にマイボトルを携帯したりすることはサステナブルな取り組みの一つです。レジ袋やペットボトルの使用が減り、ごみの削減やプラスチックごみによる環境負荷の軽減につながります。

エコバッグやマイボトルは繰り返し使用できるため、長期的には経済的なメリットもあります。

使い捨てプラスチックの削減

使い捨てのストローやカトラリー、食品包装などのプラスチック製品をなるべく使わないことも大切です。再利用可能な製品や環境に優しい素材の製品を選ぶことで、プラスチックごみを削減することが可能です。

プラスチックごみが減れば、環境汚染を軽減でき、生態系への影響を最小限に抑えられます。

節電・節水

こまめに電気を消す、シャワーの使用時間を短縮する、蛇口をこまめに閉めるなどの心がけは重要です。節電・節水によって電気や水の無駄な使用が抑えられれば、CO2排出量の削減などの環境保護に貢献できます。

小さな行動も積み重なることで大きな影響を生む、という意識を持つことが大切です。

公共交通機関や自転車の利用 

自家用車の使用を控え、バスや電車などの公共交通機関や自転車の利用を検討してみましょう。車の排気ガスによるCO2排出量を削減でき、大気汚染の改善につながることはもとより、交通渋滞の緩和も期待できます。

また、公共交通機関や自転車の利用は、自身の健康にも良い影響を与えるでしょう。

食生活においても、以下のようなサステナブルな取り組みを実践できます。

食品ロスの削減

食品ロスを削減し廃棄される食品量を減らすことで、資源の無駄遣いを防ぐことにつながります。食品ロスを減らすためには、料理は食べきれる量だけ作る、外食時には適量を注文することが重要です。

また、冷蔵庫の中身を確認してから買い物に行くことで、無駄な購入も避けられます。

地産地消の推進

地産地消とは、地元で生産された農産物や水産物を選んで購入・消費することです。地産地消の推進は、食糧輸送にかかるエネルギーの削減につながり、輸送にともなう環境負荷を低減できます。

また、地元の農家や生産者を支援することで、地域経済の活性化に貢献できる点もメリットです。

プラントベース食品の選択 

プラントベース食品とは、豆類や野菜を中心とした植物性食品のことです。プラントベース食品は、生産過程における温室効果ガス排出量が少なく、水や土地の使用効率が高いというメリットがあります。

肉類や乳製品の代わりに積極的に取り入れることで、環境への影響はもちろん、健康にも好影響で、一石二鳥の取り組みといえるでしょう。

以下のように、普段の買い物やサービスの利用など、消費活動で貢献できる取り組みもあります。

必要なものだけを購入する

普段から本当に必要なものだけを購入するように意識すれば、資源の無駄遣いを防ぐことができます。出費が減り、結果的に家計の節約にもつながるでしょう。

衝動買いなど、不要なものを買わないようにするには、事前にリストを作成し、必要性を確認してから買い物に行くことが大切です。

リサイクル製品や環境に配慮した製品を選ぶ

再生材料を使用した製品や、環境負荷の少ない製造過程で作られた製品を選択・購入することも、サステナブルな消費の一環です。これらの製品が消費されれば、資源の有効活用が進み、廃棄物の削減につながります。

また、消費者が環境に優しい選択をするようになれば、企業の持続可能な製品開発も促進されるでしょう。

シェアリングサービスを活用する

シェアリングサービスとは、個人や企業が所有するモノ、場所などを他の人と共有する仕組みを指します。カーシェアリングやフリーマーケットアプリ、コワーキングスペースなどが代表例です。

シェアリングサービスにより個人の所有物を減らし、資源の効率的な利用が促進されます。ほかにも、新しい経済機会の創出や社会的なつながりの強化など、さまざまなメリットがあります。

サステナブル経営とは、企業が長期的に存続し成長するために、環境・社会・経済の3つの観点において、それぞれのバランスをとりながら事業を行う経営方式です。

具体的には、エネルギーや廃棄物削減などの環境保護活動、地域社会への貢献、従業員の働きやすい環境づくりなど、社会の課題解決に取り組むと同時に企業としての利益も追求します。

裏を返せば、単に利益だけを追求するのではなく、企業の社会的責任を果たしながら持続的な成長を目指すのがサステナブル経営です。

環境問題や社会課題への関心が高まるなか、多くの企業がサステナブル経営を重視するようになっています。以下、サステナブル経営を実践している、具体的な企業の取り組み事例をご紹介します。

ユニリーバ・ジャパンの事例

ユニリーバ・ジャパンは、SDGsの全17目標達成に向けた積極的な取り組みを進め、サステナブル経営を実践している企業です。

同社では、「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を掲げ、廃棄物量を削減する取り組みを強力に推進。その結果、消費者の製品使用1回あたりの廃棄物量を32％削減し、全工場で埋め立て廃棄物ゼロを達成するなど、大きな成果を上げています。

さらに、新たな戦略「ユニリーバ・コンパス」を掲げ、環境・社会課題の解決と成長の両立を目指し、サプライチェーン全体のサステナブルな取り組みを積極的に開示しています。

株式会社 伊藤園の事例

株式会社 伊藤園は、「茶畑から茶殻まで」をキーワードに、一貫したサステナブルなビジネスモデルを展開しています。

1976年から開始した茶産地育成事業では、茶葉の全量買い取り契約栽培を行い、持続可能な農業を推進。また、製造過程で出る茶殻を肥料や飼料に活用する、独自の「茶殻リサイクルシステム」を開発しました。

また、環境面では、ラベルレス商品の展開やリサイクルペットボトルの使用拡大に注力。2025年までに、「お～いお茶」ブランドの全ペットボトル製品を、100%リサイクル素材に切り替える目標を掲げています。

そのほか、健康に配慮した製品開発や、農薬使用量の削減、地域の環境保全活動にも力を入れており、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを積極的に行っています。

企業がサステナブルを実践することで得られるメリットはさまざまです。まず、ブランドイメージが向上し、顧客や取引先からの評価が高まります。また、将来的なリスクへの備えとなり、経営の安定性が増す点もメリットです。

さらに、社員の満足度とロイヤリティ向上による優秀な人材の確保や、新たな事業機会の創出、技術革新をもたらす可能性も期待できます。サステナブルな取り組みによって、企業の長期的な成長と持続可能性が高まれば、社会全体の発展にもつながるでしょう。

人口が都市へ集中することで起こる諸問題の解決のために、世界では持続可能な都市づくりが求められています。そのなかで、資源を有効に利用できる都市設計として注目されているのが「スマートシティの構築」と「グリーンインフラの整備」です。

スマートシティとは、IoTやAIなどの最新技術を活用して、都市のインフラやサービスを最適化し、住民の生活の質を向上させる持続可能な都市を指します。

また、グリーンインフラは、植物や水などの自然環境が持つ機能を活用し、地域の課題解決や持続可能なまちづくりを目指す取り組みのことです。

スマートシティの推進やグリーンインフラの整備が進めば、エネルギーの効率的な使用や廃棄物の削減が図られ、環境負荷の軽減につながることが期待されます。

さらに、地域住民の生活に欠かせない公共交通機関の充実も、スマートシティの構築に必要不可欠です。

国際的なサステナブルの取り組みとしては、パリ協定に基づく温室効果ガス削減や海洋プラスチック問題への対応、生物多様性の保全などが挙げられます。

例えば、EUでは2019年より使い捨てプラスチック製品が禁止になりました。日本でも、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すことを宣言しています。

これらの取り組みは、地球規模での環境問題解決に向けた重要なステップです。

ほかにも、各国政府やNGO、民間企業、地域コミュニティや市民が連携して行うプロジェクトも増えており、国際社会全体で持続可能性を高める努力が続けられています。

まず、個人レベルの大きな課題として、サステナブルな取り組みに対する情報不足や意識不足が挙げられます。さらに、環境に配慮した行動にはコストや時間を要するという抵抗感が、取り組みを妨げる要因になっていると考えられます。

これらの課題を解決するには、個人の意識や行動を変えることが重要です。日常生活での小さな取り組みの積み重ねが、最終的には大きな変化につながります。

さらに、サステナビリティに関する教育や啓発活動を通じて、社会全体の意識を高めることも必要です。地域コミュニティや学校でのワークショップ、セミナーは、知識を広める良い機会となります。

企業においては、人材不足や短期的なコストの増加、成果が見えにくいことが、サステナブルな取り組みを進めるうえでのおもな課題です。解決策としては、外部リソースの活用や段階的な導入、業績を評価する指標であるKPIの設定や評価制度の整備などが挙げられます。

サステナブルな未来を実現するうえで大きな役割を果たすのが、デジタル技術の活用です。例えば、IoTやAIの活用でデータを収集・分析し、エネルギーの使用や業務の効率などを最適化できれば、結果的に環境負荷の低減につながります。

また近年では、サーキュラーエコノミー（循環型経済）の構築も注目されています。サーキュラーエコノミーとは、資源の投入量や消費自体を最小限に抑え、そこから新たな産業や雇用を創出するといった経済システムのことです。

ほかにも、再生可能エネルギーの主力電源化についても大きく期待されています。太陽光や風力などのクリーンエネルギーを活用すれば、化石燃料への依存度が低下し、持続可能なエネルギー供給が確立されます。

今後も、デジタル技術と持続可能な経済モデルの融合は、より良い未来に向けた道筋を切り開くための重要な鍵となるでしょう。