2023.08.08

【社労士監修】扶養家族について、税法上と健康保険上の違いや履歴書の書き方を解説

【社労士監修】扶養家族について、税法上と健康保険上の違いや履歴書の書き方を解説

履歴書にある扶養家族欄。実際、何人と書くべきなのかわからない方もいるようです。「扶養家族って何?」「何のために書くのだろう?」といった疑問を抱いている方もいるかもしれません。
そこで今回は、履歴書の扶養家族欄の正しい書き方をご紹介するとともに、扶養家族の意味や認定されるための条件についても解説します。

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扶養家族とは?

扶養家族とは?

扶養家族とは、扶養者(援助する人)の収入によって養っている家族のことを指し、被扶養者と呼ばれます。
扶養控除には「税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類あり、それぞれ定義が異なります。

税法上と健康保険上とでは、扶養家族(配偶者や子供など)の年収上限や対象者の範囲が異なるため、それぞれのルールをしっかり理解しておく必要があります。

扶養家族の対象範囲

扶養家族の定義は「税法上」と「社会保険上」で異なります。それぞれの扶養家族の対象範囲を説明します。

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税法上の対象範囲

税法上の対象範囲

税法上の扶養家族の対象範囲は、配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)です。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

(参考:国税庁「扶養控除」)

上図の通り、6親等内の血族とは、従兄弟(父母の兄弟姉妹の子供)の孫や再従兄弟(祖父母の兄弟姉妹の孫)などが該当し、3親等内の血族は、自身の配偶者の叔父・叔母、配偶者の兄弟姉妹やその子供、自分と配偶者から見たひ孫の配偶者が該当します。

また、配偶者は「扶養家族の対象(扶養親族)」に含まれないため、注意が必要です。配偶者が無職の場合「配偶者控除」や「配偶者特別控除」などの扶養家族とは異なる範囲で控除する必要があります。

健康保険上の対象範囲

健康保険上の対象範囲

健康保険上の扶養の対象範囲は、配偶者を含む三親等内の親族です。また、配偶者は「事実婚(婚姻届を役所に未提出)」の場合も扶養対象です。

被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。
被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。

  1. ① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
  2. ② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
  3. ③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子

※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。

(参考:全国健康保険協会「被扶養者とは?」)

扶養家族の対象となる条件

扶養家族の対象者の所得など、扶養家族に入れるための条件を税法上と健康保険上の2パターンに分けて説明していきます。

税法上の対象となる条件

扶養親族の対象となる条件は、該当年の12月31日時点で下記4つの要件を満たすことです。

  1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
  2. 納税者と生計を一にしていること。
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

(参考:国税庁「扶養控除」)

「(2)納税者と生計を一にしている」とは、同一の家計で生活をしていることを指します。つまり、同居していない場合でも生活費や教育費などを負担している場合、扶養家族の条件内に含まれます。

扶養家族の所得条件は「48万円以下」です。

扶養家族が給与を受け取っており、給与以外の収入がない場合「給与所得控除」として55万円の控除が受けられるため、扶養家族に入ることができる年収上限額は103万円となります。

■合計所得金額の計算式

103万円(給与収入)- 55万円(給与所得控除)=(合計所得金額)48万円

給与収入が103万円を超える場合は、上記の条件外となるため、扶養家族の対象にはなりません。

健康保険上の対象となる条件

健康保険上の対象となる条件 収入限度額

被扶養者の収入が以下の条件を満たしていること

  1. ① 年間収入が130万円未満である(60歳以上および障害者は180万円未満)
  2. ② 同居の場合、収入が被保険者の収入の半分未満である
  3. ③ 別居の場合、収入が被保険者からの援助(仕送り)による収入額未満であること

※後期高齢者医療制度の被保険者等である人は除きます

(参考:全国健康保険協会「被扶養者とは?」)

健康保険上の対象(被扶養者)となるためには、年間収入が130万円未満であることが条件です。
また、60歳以上および障害を持つ人は、年間収入が180万円未満でないと対象外となってしまう点には注意が必要です。

さらに、被保険者と被扶養者が同居の場合は被保険者の年収の半分未満であること、別居の場合は仕送り額未満の年収であることが条件となるため、この範囲外になると扶養家族になれません。

健康保険上、扶養家族に入れるかを簡単にチェックできるチャート診断を用意しましたので、是非活用してみてください。

健康保険上の対象となる条件 チャート

履歴書に扶養家族欄がある理由

履歴書に扶養家族欄が設けられている理由は、2つあります。一つは「福利厚生の対象者を確認するため」もう一つは「所得税を計算するため」です。

福利厚生の対象者を確認するため

福利厚生は「企業が従業員に対して通常の給与とは別に支払う非金銭報酬」を指します。先の述べた健康保険は社会保険の一種で、福利厚生に含まれるものです。

健康保険では、労働者である被保険者だけでなく、その扶養家族も対象となり、病気やケガ、出産などで保険の給付を受けたり、年金を受給したりできます。

こういった保険の手続きは企業が行なうことになるため、扶養家族について知っておく必要があります。このような理由からも、扶養家族欄を正しく書くことが大切です。

所得税を計算するため

扶養家族がいる場合は、所得税の控除の対象になります。控除を受けることで納税額が減ります。
正社員の場合、住民税や所得税の納税は、一般的に勤めている企業が行ってくれます。そのためにも、従業員の扶養家族の有無をあらかじめ知っておく必要があります。

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履歴書の扶養家族欄の書き方

履歴書の扶養家族欄の書き方

それでは、扶養家族欄の書き方について確認していきましょう。以下では、扶養家族数に加え、配偶者ならびに配偶者の扶養義務の書き方についても解説します。

扶養家族数の書き方

履歴書では「扶養家族数」と書かれた下に人数を書くスペースがあります。ここに、自分を含めずに扶養している家族の人数を記入します。ただし、子供が配偶者の扶養に入っている場合、その子供は扶養家族数にカウントしません。

また、ほとんどの履歴書では「扶養家族数(配偶者を除く)」と記入されています。このような場合、扶養家族から配偶者を除いた人数を記入しましょう。
なお、扶養家族がいない場合は「0人」と書くようにしましょう。

配偶者の書き方

配偶者は「有・無」という二択になっていることがほとんどです。配偶者がいれば「有」に◯を、配偶者がいなければ「無」に◯を付けましょう。
また、ここでいう配偶者は、事実婚の相手も含まれます。事実婚の相手がいれば、役所に届出をしていない場合でも「有」に◯を付けてください。

配偶者の扶養義務の書き方

配偶者の扶養義務は「配偶者があなたの被扶養者として認定されているか」「配偶者が自分で健康保険に加入していないか」の2点から判断します。配偶者が被扶養者の条件を外れていたり、健康保険にみずから加入したりしている場合には「無」を選びましょう。

■扶養家族数ならびに配偶者、配偶者の扶養義務の記入見本

 

■扶養家族数ならびに配偶者、配偶者の扶養義務の記入見本

学生の場合

大学生や高校生だとしても扶養家族がいるのであれば、その人数を正しく記入する必要があります。ただし、扶養家族とは自分の収入で養う3親等以内の同居家族、または別居していても扶養可能な親族を指します。
現在収入がない学生であれば、扶養家族はいないため、扶養家族欄に「0」と記入します。

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ケース別・扶養家族数の考え方

扶養家族の意味や書き方について解説してきましたが、それでも扶養家族の人数をどう考えればいいの分かりづらい方もいるかもしれません。
そこで以下では、ケース別に扶養家族数の書き方を紹介します。自身の家族構成と照らし合わせて、扶養家族欄を書く際の参考にしてみてください。

独身・ひとり暮らしの場合

独身・ひとり暮らしの場合

配偶者とふたり暮らし(配偶者の年収が130万円以上)

配偶者とふたり暮らし(配偶者の年収が130万円以上)

配偶者とふたり暮らし(配偶者の年収が130万円未満)

配偶者とふたり暮らし(配偶者の年収が130万円未満)

配偶者と子供の三人暮らし(配偶者と子供の年収が130万円未満)

配偶者と子供の三人暮らし(配偶者と子供の年収が130万円未満)

配偶者とふたり暮らし、子供は別居で仕送りを受けている(配偶者年収が130万円未満、子供の年収が仕送り額を含み130万円未満)

配偶者とふたり暮らし、子供は別居で仕送りを受けている(配偶者年収が130万円未満、子供の年収が仕送り額を含み130万円未満)

親とふたり暮らし(親の年収が130万円未満)

親とふたり暮らし(親の年収が130万円未満)

虚偽の情報は記入しないこと
扶養家族欄に限った話ではありませんが、履歴書では絶対に虚偽の情報を記入しないようにしましょう。もしも被扶養者ではない家族まで扶養家族数としてカウントした場合、脱税にあたる可能性もあります。
また、本来であれば健康保険の対象から外れる方が保険給付を受けたことが発覚すれば、その分の医療費を全額請求されるかもしれません。加えて、応募者の採用の取り消しや解雇につながる可能性もあります。
このようなトラブルを避けるためにも、扶養家族欄には正確な人数を記入するようにしてください。

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扶養家族欄の内容は選考に影響する?

扶養家族欄の内容が書類選考に影響を与えることはほとんどありません。そもそも扶養家族欄には人数を記入するだけで、細かな内訳などを書くことがありません。これは、扶養家族欄の情報を、所得税や健康保険、手当支給の手続きといった事務的な確認にしか使わないためです。

このことからも、扶養家族欄の内容が選考に与える影響がほとんどないことが分かるでしょう。 万が一ですが、育児や介護など、家庭の事情で業務に支障をきたす懸念がある職場であれば、選考に影響が出る可能性はゼロではありません。

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まとめ:扶養家族数は正しく申告しよう

履歴書の扶養家族欄の書き方を解説してきました。少しややこしいと感じるかもしれませんが、今回ご紹介したケース別の扶養家族の定義と、自身の家族構成を照らし合わせることで、扶養家族として認定されるための条件が理解できたのではないでしょうか。

扶養家族欄は税金や福利厚生の手続きに必要な項目です。家族の収入などをしっかり確認し、正しい扶養家族数を応募先に伝えましょう。

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記事監修
荒武 慎一

荒武 慎一(あらたけ しんいち)

社会保険労務士、中小企業診断士

昭和53年同志社大学卒業、富士ゼロックス株式会社を経て平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金をわかりやすく解説することで高い評価を得ている。(連絡先:0422-90-9990)

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