fhána インタビュー - 激的アルバイトーーク!

日本最大級のアルバイト求人情報サイト“バイトル”とSkream!による“激的アルバイトーーク!”の今回のゲストは、8月7日に14枚目のシングル『僕を見つけて』をリリースし、この秋よりライヴ・ツアー“where you are Tour 2019”をスタートするfhána。数々のアニメ・タイアップを手掛け、国内外のアニメ・ファンから高い支持を受ける他、その緻密に練られたポップ世界やコンセプチュアルな音楽世界で、コアな音楽ファンやミュージシャンからも注目され、実直に音楽でファンの裾野を広げている4人だ。それぞれに音楽的な背景が違い、個々の活動もしてきた彼らは、音楽活動と共にどんなアルバイトをしてきたのか話を訊いた。また今回は、fhánaにインタビューをするドリームバイト企画で選ばれた村上麗奈さんも、Skream!編集部員として取材に参加し、直接インタビューをしてもらった。

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Profile

towana(Vo) 佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(Sampler)

-みなさんは、これまでどんなアルバイトをしてきましたか?

kevin1週間しか続かなかったホテルのパーティー会場での配膳のバイトを入れたら、7つくらいやっていますね。まず、焼肉屋のキッチンが最初で、そのあとにドラッグストアやコンビニの夜勤、ゲームセンターの店員もやって、そこからは対面の接客ではないものがいいなと思って、オンラインでハンコを注文できるサービスのオペレーターや、パソコン関係のサポート・センターのコール・センターでバイトしていました。

yuxuki俺は、高校生のときにテニス・スクールの学生コーチみたいなバイトをやって、大学に入ってからは近くにあったレンタルビデオ店で働いたんですけど、入ってひと月で店が潰れて。なんでバイト雇ったのかって話ですけどね。そのあとはスーパーの中に出店している肉屋でひたすら肉を売っていました。肉屋は、大学を出て仕事を始めるまでやっていたので、長くお世話になっていましたね。

-バイト選びは、どんなふうにしていましたか?

yuxuki最後に働いていた肉屋は、大学のサークルの先輩から、“ここがいいよ”っていう感じで代々引き継がれていたところなんです。

-それは居心地が良さそうな感じですね。

yuxukiそうですね。ただ、夜は結構暇なんですよね。夜10時くらいまでお店をやっていたんですけど、遅い時間帯に、ちょっと高い肉を売っている肉屋に客が買いに来るかというと、来ないんですよ。逆にちょっといいところだから、イベント時は、すごく忙しいんですよね。大晦日とかは、声がかれるまでひたすら呼び込みで叫んでいました。

-kevinさんは?

kevin当時僕が住んでいた実家の付近だと、求人的にコンビニとかドラッグストアのような接客業くらいしかなかったんですよね。でも、大学生になって行動範囲が広がってからは、電話のオペレーターみたいな仕事もあるなと思って──僕、お察しの通りおしゃべりなので。

fhána

towana(笑)

kevinしゃべる系の仕事が向いているなと思って。あとはパソコンも普段から触っていて機械系の仕組みも知っていたので、そういうサポート・センターでもバイトしていました。

-サポート・センターの電話での相談は、難しい対応もありそうですね。

kevinありますね。怒ったおじいちゃんとかが結構多いんですよ。“お前のところのマニュアルを読んだけど、1ミリもわからん。どうしてくれるんだ”みたいな電話もあるんです。それをなだめながら、“お客様の使っているのは、Windowsのバージョンはいくつですか? 8ですか、8でしたらこの画面のこの上から3番目にあるボタンを押していただいて……”とか、全部誘導していくんですよ。だから、MacとかWindows、そのWindowsの中の種類別に操作方法を覚えていて案内するという感じだったんです。

-プロフェッショナルじゃないですか。佐藤さんはどういうバイトをしていましたか?

佐藤今いろいろ思い出してみたら、高校生の頃から数えて10種類くらいの仕事をしてきていましたね。コンビニ、ファミレス、品出し、サービス・センターの電話サポートとかもやったんですけど、大学の3年か4年生の頃に始めた、着メロを作るバイトが一番続きましたね。

kevin着メロ、あったなぁ。

佐藤まだガラケーの時代ですね。J-POPや洋楽の曲を耳コピしてMIDIデータを1日2曲とか作るんですけど、時給が良かったんです。当時音楽活動もしていたんですけど、着メロを作るようなところだから、バンドや音楽をやっている人もたくさんいたんですよね。インディーズでリリースしていたり、作家として楽曲提供をちょこちょこしてるような人もいたりしましたね。それでバイト中もお互いのオリジナル曲を持ち寄って聴かせ合うとかしていました。“新しい曲作ったから聴いてみてよ”、“かっこいいから、どこか送ってみなよ”とか、そんなやりとりはありました。

kevin楽しそうな職場ですね。

佐藤楽しかった。今思えば、自分に役立ったと感じます。そこでは自分が選んだ曲をやるのではなくて、J-POPや洋楽のヒット・チャートの曲からほぼランダムに、“今日はこの曲やってください”って回ってくるんですよ。そうすると、自分の好みとは別で、いろんなジャンルの曲を耳コピするんですよね。

-ああいうものって、耳コピで作られていたんですね。

佐藤耳コピするということは、その曲を理解して、自分で打ち込んで再現するので、だいたいのJ-POPやポップスのパターンもわかってくるんですよね。ただ、ランダムに曲を振られるんですけど、宇多田ヒカルとか浜崎あゆみとか、その時期の超売れているアーティストのニュー・シングルなど、重要曲は、バイトの中でも精鋭がやるんです(笑)。カラオケもそうですが、耳コピ・データを作る人によって出来栄えがかなり変わりますからね。そういう人気な曲を任されたときは特に気合を入れて作ってました。

kevinなるほどね。

-バイトながら、だいぶ腕が試される仕事ですね。

佐藤着メロって45秒なんです。もともと4分くらいある曲のおいしいところをピックアップして、自分で編集するわけなんですよね

興味があるものはどんどんやればいい(kevin)
自分が将来やりたい仕事と関連性のあるバイトを見つけ出すのもありだと思う(佐藤)

fhána

kevinあ、たしかに。通常の曲の構成じゃなくて、もうAメロ、Bメロが短くなってて、いきなりサビがくる感じの曲になっていたかも。

佐藤“この構成じゃない”ってやり直しになることもたまにあったりして、楽曲への理解度や編集能力も試されるのですが、それも含めてすごく修行になりつつ、でも結構居眠りしながら作っていたんですよ。

towana寝ていたんですか(笑)。

佐藤今もそうなんですけど、曲を作っていると、眠くなるんですよ。繰り返し同じところを聴きながら頭の中ですごく考えているから。うとうとしてはハッと目が覚めてバーっと作業して、また眠くなってという感じで。“佐藤君はまた寝てる”って言われながらも、作るスピードは早かったから、“まぁ、佐藤君はええんや”みたいな感じで許されてました(笑)。

-それで結構長く続いたんですか。

佐藤大学の頃はずっとやっていましたね。ただ来る日も来る日も耳コピしていると嫌になってくるわけですよ。それでもう辞めたいですって言ったら、引き止められまして。耳コピじゃない仕事だったら残ってもいいですって言ったら、僕は美大に通っていたので、サイトのデザインをやる部署に移れたんです。そこではいろんなアーティストの公式サイトや着メロ・サイト内のデザインを作っていました。たまにポスターとかフライヤーなど紙ものも作ったり。で、大学を卒業してそのままそこで正社員になるんです。

-バンド活動のほうはどうだったんですか。

佐藤音楽活動は、ずっとやっていて。学生の頃やっていたバンドがレコード会社の育成部門に入っていて、所属事務所も決まったりして、いよいよデビューっていうときに空中分解しちゃったんですよね。デビューしたらバイトも辞めようと思っていたんですが、いったん白紙になっちゃったので、そのまま正社員になったんです。そのバンドの次にFLEETという僕が自分でヴォーカルをやっているバンドを始めて、わりとすぐにいろいろなレコード会社からオファーをいただいて、デビューすることになったんですよ。当時デザイナーとして正社員をやっていたわけですが、その会社も急拡大して、もともとの着メロを作っている部署もあれば、WEBサイトをつくる部署もあるし、ゲームを作る部署もあるし、テレビ番組制作やタレントのマネージメントをやっている部署もあって。“佐藤君、メジャーから話がきているんだったら、うちでマネージメントするわ”ってなって、社員兼所属アーティストになったんです(笑)。そして、ほどなくして社員のほうは辞めて、純粋に所属アーティストになりました。着メロのバイトから始まって、その会社ではいろんなドラマがありましたね。最初は小さなオフィスだったのが、数年でスタッフも10倍以上に増えて、都心のタワーオフィスビルに広大なオフィスを構えるまでになっていくのを体験するとか。映画の中みたいでしたよ。

-そのバイトが、いろんな面で今に繋がる経験になっているんですね。

佐藤繋がっていますね。FLEETのあとfhánaを始めてからも、所属事務所は変わりましたけど、今もたまに一緒に仕事をしてますしね。つい最近も、当時僕が着メロを作りながら居眠りしていたときに、“佐藤君は寝ててもええんや”って言っていた上司が、STAND UP! ORCHESTRAという若手のオーケストラのグループを担当していて、この間のfhánaの14thシングル『僕を見つけて』のMVに出演してもらったり、“アニサマ(アニメロサマーライブ)”でもアニサマのプロデューサーに繋いで出演することになったり。当時の繋がりの人は業界内にちらほらいますね。

kevinこれまでもちょこちょこと話は聞いていたけど、ここまで詳細を聞いたのは初めてで、面白いですね。

-kevinさんやyuxukiさんは、何か音楽関係のバイトをやったことはあるんですか?

kevin音楽関係はなかったですね。フリーランスとしてWEB CMの音楽を作っていたことはありましたけど、バイトではなかったです。

yuxuki僕は肉を売りながら、暇なときに歌詞とか考えていたくらいですね(笑)。

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-いつ頃から自分でプロとして音楽をやろうっていうのが芽生えたんですか?

yuxukiなんとなくずっと、音楽がやりたいなとは思っていたんです。逆に言うとそれ以外がピンとこなかったというか。大学を出て少しの間楽譜を作る会社にいたんですけど、当時ちょうど佐藤さんと知り合った頃だったんですよね。

佐藤仕事終わりに原宿で飯食うとかしていましたね。

yuxukiそうこうしているうちにfhánaとしていい感じになっていったので。

佐藤原宿のあのお店、まだあるのかな?

yuxukiいつも行っていたイタリア料理屋があったんですよ。

kevin今でもあるんじゃないかな。僕は、そこでよくサングリア飲んでいましたね。

towanaみんなのバイトの話とかは、ちょいちょい聞いてはいたんですけど、それぞれ特性に合った仕事をしていますよね。お肉屋さんはわからないけど、waga君はお料理好きだし。バイトって自分が選ぶものだから、結局は自分の趣味とか特技とかに沿っていくんだなって今話を聞いていて思いました。

fhána

-いろんなバイト経験の中で記憶に残るエピソードはありますか?

kevin一番記憶に残っているのは、パソコン系のサポート・センターでしたね。そこは、大変だったんですけど、生き生きしていました。今もその知識がちょっと生きていて。作曲でパソコンを使うんですけど、パソコン系のトラブルがよく起きるんですよ。トラブルを直している間に6時間とか経っちゃって、曲が作れなかったというのもよくあるんですよね。そういうトラブルにめちゃくちゃ強くなりました。

-そうなると友達のパソコンが壊れたときにも頼まれるとかしそうですね。

kevin友達の家に直しに行ったこともありました。出張費くれっていう感じですよね(笑)。でも、そういうバイトをやって良かったなって今でも思います。

佐藤僕は、着メロで入った会社が今に繋がるくらい関係が深いですけど、それ以前で比較的続いたのは、高校生の頃のコンビニのバイトと、あとはサポート・センターのバイトで。コンビニは当時まだ高校生で選択肢がなかっただけですけど、僕がやっていたサポート・センターはそこまでひっきりなしに電話があるわけでもなく、気楽でしたね。ファミレスでも一瞬だけバイトしたことがあるんですけど、働いた瞬間に“これは俺の仕事じゃない”ってわかるんですよ。

kevinたしかに(笑)。

佐藤でも、サポート・センターとかは自然に続けられたから、向いていたのかなって思いますね。

-特にサポート・センターの電話対応は、会話術も磨かれそうです。

kevin磨かれましたよ。基本的に僕の仕事の場合は、クレーム対応が多かったので、いかに怒っている目上の方をいなすかで(笑)。話す内容もそうですけど、声の出し方が重要なんですよ。普段より4トーンくらい上げて話しなさいって言われました。(テンション高めで)“お電話ありがとうございます!”みたいな。

towanaすごい(笑)。

佐藤僕がバイトしていたのは、居酒屋とかファミレスとかの、レジと連動している発注機のシステムのサポート・センターだったから、そこまでじゃなかった(笑)。あと僕がそのバイトが続いたのは、シフトがかっちりと決まっていなくて、行きたいときに行けるというものだったからなんです。お金ないなと思ったら行くとか、調整ができたのと、仲のいい人が集まっていたから、行った先で音楽の話をしたり、基本的に電話を待っている間は暇だから、ネットサーフィンしたりしてましたね。当時はネットの黎明期でまだYouTubeとかはない時代で。好きなバンドのHPを調べたりBBSを読んだりとかしていました。今もfhána の写真を撮ってくれている笹原(清明)さんというカメラマンがいるんですけど、美大の先輩でして。笹原さんが当時やっていたバンドのHPは、デザインとかもちゃんとしていて、こういうサイトを作りたいなとか思いながら見ていましたね。

-話を聞くと、だいぶ周りにも恵まれていた感じですね。

佐藤そうですね。着メロの会社もそうですけど、音楽を作っている人たちが集まっていたのは大きかったですね。アーティストの卵や、作家事務所に所属していてJ-POPのコンペに出している人とかもいて。“佐藤君もコンペ出してみなよ”って言われたり。上司も音大生とか、音楽好きな人たちが集まっていたから。社員とバイトっていうよりも、クリエイターが集まってワイワイやっている感じでしたね。J-POPなどヒット・チャートがメインの着メロ・サイトでしたけど、サブ・レーベル的に、ほとんど趣味みたいな感じでテクノ専門の着メロ・サイトとかも作っていて。たまに海外から有名テクノDJとかエレクトロニカ系のアーティストを呼んで、渋谷WOMBとかでクラブ・イベントをやったりもしてました。そこで僕と他の社員とで謎のその場限りのユニットを組んで数曲作って、オープニング・アクトで出ちゃったりして(笑)。面白かったですね。

-では、最後にみなさんと同じように何か夢を追いながらバイトをしている人に、メッセージをお願いします。

kevinつまらないなって思っていたり、やることが少なすぎたりする仕事って、時間が永遠のように感じるんですよね。そういう仕事は、僕はお勧めしないです。コンビニの夜勤のバイトをやっていたときにすごく思いました。夜勤って人が来ないし、人がいないから、掃除とかもスムーズで、すぐに終わっちゃうんです。いっぱい仕事したいなって思っていたけど、時計見たら15分くらいしか経ってないとか。朝が来るまでまだ6時間以上あるんだけど、どう過ごせばいいのかっていう、そういうバイトは個人的につらかったなと思うんです。

fhána

yuxukiたしかに、やっていて精神的にきつくないバイトは、後々になっていろいろ生きると思うんですよね。

kevin時間が経つのが早いバイトって、そもそも適性があるってことだと思うしね。そういうのを選んだほうがいいですよ。

towanaいいアドバイスだ。

-生活のために我慢してやるっていう人もいるかもしれませんしね。

kevin世の中にはいっぱい仕事があるから、ひとつに固執しなくてもいいんですよ。居場所を気軽に変えられるのが、アルバイトのいいところだとも思うんです。一度やったからには長く続けなきゃっていう思考で頑張っている人もいるんだろうけど、興味があるものをどんどんやってみてもいいんですよ。

佐藤例えば、僕の場合は音楽がやりたかったから、そういう系の仕事がいいなと思ったし。物書きになりたかったら、出版社で編集のバイトをするとか、編プロ(編集プロダクション)のバイトを探してみるとか、デザイナーになりたかったらデザイン制作会社とか、写真が好きだったらプロのカメラマンのアシスタントのバイトをするとか、音楽好きならライヴハウスでバイトをすれば必然的にバンドの知り合いも増えますし。ライヴハウスでバイトしていて、そこで人脈を広げてレコード会社に就職したり、レコーディング・エンジニアになったりした知り合いも何人かいますね。あと僕は美大だったので、実力のある知り合いは学生の頃からデザイン会社でバイトをしていたり、少年漫画誌ですでに連載を持っていたり、セミプロみたいな感じでした。“エヴァンゲリオン”や“サマーウォーズ”のキャラクター・デザインをしている、貞本義行さんも大学の先輩にあたるのですが、学生の頃からアニメーターのバイトをしていて、当時参加した“超時空要塞マクロス”の現場で、庵野秀明さんらと知り合ったそうですからね。そうやって自分が将来やりたい仕事と関連性のあるバイトを、なんとかして見つけ出して、希望の業界や会社に入り込むっていうのもありだと思う。そういう仕事って専門的だから、あまり募集をしてなかったり、どうやって入り込めばいいかわからなかったりもするじゃないですか。そこで募集を探してみるだけじゃなくて、いろいろ友達や先輩や、大学の教授や学校の講師なんかを片っ端から当たってみるのもいいと思います。そのままプロになっちゃうにしても、最終的に就職活動をするにしても、確実にその経験や人脈はプラスになりますからね。

kevinそれは同意見ですね。友達の紹介ってすごくいいんですよ。誰も知り合いがいないところに飛び込むよりも、ひとりでも知っている人がいる状態のほうがやりやすいし。うまいこと人脈を使える人は、使ってみるのもいいよね。

佐藤明確に夢ややりたいことがない人もたくさんいると思うんです。そういう人は、いろいろやってみて、そこまで嫌じゃないことをやるっていうことですかね。続けられるということは、向いているということだと思うんですよ。そういう適正を知るのも大事かな。

-ではここでドリームバイトの村上さんにバトンタッチします。村上さんは、ライター志望の学生さんです。

towanaそうなんですね、よろしくお願いします。

村上村上です、今日はよろしくお願いします。では早速、最初の質問です。今までfhánaはアニメのタイアップなどをたくさんやってきて、アニソンだとfhánaのファン以外でも広く聴いてもらえますが、最近はファンクラブを立ち上げたり、自主企画ライヴをしたりしていて、“対ファン”というところに強く目が向いているなと感じます。そのへんについては、何か考えが変わったことがあったのでしょうか。

佐藤ファンクラブは以前から作りたかったんですよね。でも、なかなか話が具体的に進まなかったり、いろんな仕事で忙しかったりもあったんで、最近ようやくできたという感じなんです。活動をしていて思ったのが、fhánaってファンと交流できる場所が少なかったんですよ。ワンマン・ライヴやツアー、あとはリリース・イベントくらいしかなかったんですね。ファンと触れ合う場所がないから、そこをまず作りたかったんです。それでファンクラブを作ったり、自主企画をしたりというのを始めたんですけど、そこは、僕たちメンバーとファンが触れ合う場であり、ファン同士でももっと交流が生まれたらいいなという思いがありますね。

村上ありがとうございます。では、次の質問です。私は音楽ライター志望なんですが、7月16日の主催イベント“Sound of Scene #01” curated by fhána”に行ってライヴ・レポートを書いたところ、それを佐藤さんがリツイートしてくださったんです。

佐藤あぁ、あれはそうだったんですね。いいレポートでした。

村上すごく嬉しかったです。そういったfhánaのライヴの様子を文にするときに、こういうことを特筆して書いてくれたら嬉しいとかはありますか。

yuxukiこれは難しいね。

towana私は、“ハイトーン・ヴォイスが”という記述がどうしても多いんですよね(笑)。読む人にfhánaというものを伝えるなら、そうなるだろうなとも思うんですけど。

佐藤ライヴ・レポだけでなく、こういうライターさんやインタビュアーさんだと嬉しいなというのは、その人なりの独自の視点があることですね。例えば、“fhánaは、こういうふうに考えているんじゃないですか?”っていうのをぶつけてくれると、自分たちが今まで考えてみなかった発見があって、話が盛り上がったりするんです。だから、他のメディアや他のライターさんとは違った独自の視点とか、時代との関わりなど独自の分析みたいなものがあったりすると、アーティストとしてもそれをきっかけに考えが深まったり、相乗効果が生まれますよね。あとそうやって熱意を持って向かい合ってくれるのは単純に嬉しいなと思います。

僕たちメンバーとファンが触れ合う場であり、ファン同士でもっと交流する場を作りたかった(佐藤)

fhána

yuxukiあとはライヴ・レポートだと、すげぇ盛り上がっている瞬間とか印象的な瞬間をがっつりと書いてくれると、あとから自分たちで読んだときにも、“あぁこんなふうになっていたんだな”って思えるので、どう見えていたのかなっていうのが伝わると面白いです。逆に、1曲目には何をやって良かったというのが羅列されているだけだと、何も伝わってこないですしね。佐藤さんが言うように、書いている人の熱意が伝わってくるような文章が、読んでいて面白いですよね。

村上すごく勉強になります。それでは次の質問です。fhánaの楽曲は、曲や歌詞もそうですが、アルバムのジャケットやブックレットも含めてひとつの世界観が定まっているのが、特徴的だなと思います。最近、音楽業界としてはCDを買う人が減って、サブスクリプションやストリーミングに移行している流れもあります。それは、ジャケットやブックレットを手に取る人が少なくなってしまうことでもありますが、そういうことについて、アーティストとして考えることはありますか?

佐藤紙に印刷されたCDジャケットを手に取ることは少なくなってしまって、配信されるにしても、アートワークやヴィジュアルというのは、必ずセットで出回るものなので、そこは変わらずに大事なものだと考えていますね。

村上CDという物質としてのこだわりという点ではどうですか?

佐藤物質として買うなら、満足度が高いものがいいなとは思うんです。これからもっと配信やストリーミング中心になっていくと、CDはよりファン・グッズに近いものになってくるかもしれないから、むしろCD中心の時代よりも、物質として、つまり、ジャケットやブックレットのデザインやパッケージングまで含めて、トータルで満足度が高いものじゃないといけないなと思いますね。今の話はちょっと違うんですけど、そのフォーマットに適したデザインのバランスというのがあるはずなんです。昔だったらレコードのような大きなサイズにちょうどいい、かっこいいデザインになっていて、CDだったら12センチ四方で見たときにかっこいいと思うデザインで。配信とかだと小さなサムネイルやアイコンで表示されることが多くなるので、レコードやCDでちょうどいいサイズで作ると、スマホの画面上で見たときには小さすぎるので、そこは意識していますね。スマホで小さなサムネイル画像で見てもいい感じに見えるバランスだけど、紙に印刷されたときも悪くないという、その塩梅で考えています。

村上これから、ファンクラブならではのものを何か作りたいなとかいうのはあるんですか?

yuxukiそれはやりたいですよね。いろんなことができそうだなと思うので。

kevinまだ走り出したばかりなんですけど、そういうのはやりたいですよね。

村上楽しみにしています。では最後の質問で、みなさんは職業として音楽をやられていますが、普段音楽を聴くときにどんな思いで聴いているのかがとても気になります。

yuxuki昔から好きな人の曲は、普通にファン目線で聴くことが多いんですけど、なんとなく聴くときには、かなり分析しちゃうことがあるかな。

kevinそう、それね。

yuxukiなるほど、このパターンねとか。素直に聴けないことが多くて。でも、それを超えてくると、いい曲だなってなるかな。

kevin中学生くらいの、音楽のことを何も知らないときに聴いて、“なんかわからないんだけど超いい!”っていうあのゾクゾク感みたいな感覚には戻れない感じはありますね。yuxukiさんも言っていましたけど、分析して聴いちゃったりして。もうあの頃には戻れないんだろうなっていう悲しさはあります。

佐藤はははは(笑)。

kevinそれは切ないですよね。でも、なんでもそうだと思うんです。絵を描く人だったら、他の絵を見ても技術的なことが気になってしまうとか。自分の分野でいろんな知識が増えてくるとね、どうしても素直になれないというか。

佐藤俺は最近そういう感覚の、“その先”がきていて──

kevinマジで!?

佐藤資料のような感じで聴いてしまって、昔みたいに純粋に楽しめない時期もあったんだけど、もう一歩進むと、自分でも音楽を作っているから、作ることの難しさもわかるわけじゃない? 曲単体とかアレンジとかもそうだし、さらにそこに歌詞やいい歌が乗って、奇跡のようなバランスでできあがっているものを作り上げることの困難さを、身を持って知っているので。しかも、アニソンとかだと、曲と映像が調和してすごいものが生まれるようなことって、自分たちだけでは作れないし、他の作品を観ていても、なかなかそういうものってなかったりするじゃない。

kevinうんうん。

佐藤だから、奇跡みたいにいろいろな要素がカチッとハマっている熱量の高い作品を見つけると、そこに感動するんですよね。それは、中高生のときに単純に音楽を聴いてかっこいいと感動したものとは違うのかも知れないけど、もう一歩進んで、この奇跡的なバランスで作れたことってすごく尊いなというか。なかなかそれってできないことなので、この作品を作り上げた人たちがいるんだ! って、そこにもウルウルっと涙ぐむんですよね。この曲を考えて、この歌詞が乗って、この歌を歌った人がいて、それがこのタイミングでリリースされて、こういうアニメの主題歌になっていて、ストーリーと融合していて、出演している役者さんやスタッフやファンの人たちもそれに感動して、とか。それってすごい奇跡じゃないですか。普通だったら起こり得ない奇跡的なバランスや、いろんな人の熱意でこれが実現しているというところに、僕はグッとくるようになっているんですよね。

村上ファン目線から言うと、「僕を見つけて」が、まさにそういう曲だなと今話を聞いていて思いました。佐藤さんが書いたブログとかも読んだのですが、そこに書かれていたレクイエム的な意味合いも含めて、不思議な現象が起きている曲だなって。

fhána

佐藤ありがとうございます。そういう本質的なものってあると思うんですよね。ライヴとかでも、本当にいいライヴができたと感じる瞬間って、自分たちやその場のお客さんたちの意志だけでなく、もっと大きな何かの一部に触れているような感じがするんですよ。よくインタビューとかでも、“あなたが音楽を作る理由はなんですか”という定番の質問があると思うんですけど、ファンの喜ぶ顔を見ると幸せだから作っていますとか、自分が聴きたい音楽を作っていますとか、純粋に仕事として作っていますとか、いろいろな答えがあるじゃないですか。そういうのも全部関係なく、本当にすごい作品とか、すごい熱量を持った瞬間に触れると、自分の意志や考えがどうこうというよりも……ちょっとスピリチュアルっぽい話ですけど、キラキラと輝いている大きな何かに触れているような感じがして。その感覚を味わいたいんです。それが、生きている感じがするから、そこに近づきたいというのはありますね。

村上素敵だなと思います。towanaさんはいかがですか。

towana私は、小さいときからお家の中でずっと歌を歌っているような子供だったんです。自分が何か曲を聴くときも、自分が歌いたいものというか、歌えるものというのが基準だったから、基本女性ヴォーカルのものばかり聴いているんですよ。あとは、簡単なものよりは、ちょっと歌いづらそうなものや難しいものばかり聴いてきたような気がします。それが歌えたときが楽しいんです。といっても、家の中で鼻歌で歌うくらいなんですけどね。ずっとそうやって聴いてきたから、プロになって聴き方が変わるというのはなかったです。でも、ちゃんと商品になるような歌を歌うという意識にはなりました。この人はこの曲を歌っているとき、難しいけど、どうやって歌っているんだろうなとか、ここはファルセットにするんだなとか、そういうちょっとした分析みたいなものをすることはあります。でも、自分が歌って楽しいものとか、歌いたくなるものとかを聴いているということでは、あまり変わっていないと思いますね。

村上特によく聴く曲はありますか?

towana先ほど女性ヴォーカルしか聴かないと言ったんですけど(笑)、スピッツさんがすごく好きで。スピッツだけは別格なんです。草野(マサムネ/Vo/Gt)さんは声も高いし、私が自分で歌うにしても楽しく歌えるので、よく聴いていますね。

村上小さい頃は、いろんな歌手を真似て歌うとかもしていたんですか?

towanaまさに真似していたんです。自分がオリジナルの曲を歌うとなったとき、これは今でも思っているんですけど、私の歌声ってあまりオリジナリティがないなって感じるんですよ。

村上そんなことはないです。

towanaフラットだなというか。売れている方ってそれぞれ特徴があったりしますけど、そういうのを真似て遊びで楽しく歌っていた感じだったので、いざ自分がオリジナルの曲に声を乗せるとなったとき、どうしたらいいんだろうってなりました。今でもそんな感じなんです。でも周りの方からは、“fhánaの歌声はこんな感じ”っていう特徴的なものとして、捉えてもらえている感じがするので、これでいいのかなって。周りの人の声や環境で、これでいいんだなってなっている感じなんです。

村上スタイルができあがっているのかと思っていました。

towana迷っていましたね。

kevinその“個性とは”というのは、普遍的にみんなが悩むところですよね。それこそ今アルバイトをしている人たちも、自分は何が得意なのか、どんな個性があるのかってわからなくてモヤモヤしていることもあると思うんです。それに通じる話だなと。

towanaうん、なかなか自分ではわからないっていうことかもしれないですけどね。

村上そこを周りが認めてくれることで、自信になっていく感じですか。

towanaそうですね。

佐藤音楽だけではなく、なんでもそうですけど、すべての表現は過去にあった何かの真似から始まっているんですよね。完全にオリジナルな表現というのは、存在しないんです。真似からスタートするんだけど、それをいろいろやっているうちに気がつけば自分ならではのものができあがってくる。仮に自分らしさを出さないようにしたとしても、滲み出てきちゃうというのはあるかもしれないですね。で、towanaに関しては、客観的に見ても、towanaっぽいヴォーカルって他にいないんですよ。これはオリジナリティがあると思いますね。

村上towanaさんの歌で、fhánaにしてくれる感じがありますしね。

towanaそれは歌い方に癖があるとかではないと思うんですよね。声質の話なのかな。

佐藤ヴォーカルって、これは良くも悪くもだと思うんですけど、生まれつきのものだと思うんです。誰でも練習である程度、80点くらいまではいくと思うんですけど、その先は本物の才能がないといけないですね。この人の歌は本当にいいなって世の中の誰もが感じるような人って、もう生まれつきの才能というか、歌うために生まれてきているというか、それは訓練でどうこうという次元じゃないんですよ。訓練することで技術的にピッチが安定したり、表現力が増したりというのはもちろんありますが、根本的には生まれ持った才能ですね。そういう本当の才能があるヴォーカリストって、プロの中でもそうそういないんじゃないかなと。もちろん、才能を持って生まれたうえで、それを磨いていくことで本物になっていくわけですけど、声質が特徴的というのは、生まれ持ってのものなので、ある意味ギフテッド、神に与えられたものっていうのはあるかもしれないですよね。

村上そう思います。今日は、いいお話をたくさんありがとうございました。

インタビュアー:吉羽 さおり Photo by うつみさな

 

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